福祉国家は、確かに国民の生活水準を向上させることには寄与したが、他方では国民に受益者意識や国家への依存心を植え付けやすい。

　社会民主主義者のラッサールは、消極国家が自由経済の問題点を解決しようとしないことを「夜警国家」と批判し、そのうえで国家の社会への積極的介入を提唱した。

　ファシズム体制は、政治的意見の多様性を前提としないため、国家の意思決定機関としての議会は必ずしも必要とはされなかった。

　議院内閣制では、内閣は与党に支えられながらも、内閣の遂行する政策が与党の責任として認識されないように、与党と一定の距離を維持するのが一般的である。

　国民の投票は州ごとに集計され、その州の最多得票者がその州の「選挙人」をすべて獲得する。全米でより多くの「選挙人」を獲得した候補者が大統領に当選する。

　ドイツの政治制度は議院内閣制であるため、大統領は存在するものの、基本的には政策決定に関与せず、主に儀礼的な役割を果たしている。

　三読会制を採用するイギリスでは、第二読会に当たる委員会での審議で否決された法案も、第三読会である最終の本会議での審議にかけられることがある。

　身分制議会の伝統を色濃く残すイギリスの議会では、貴族院の審議の立法過程における影響は限定されており、下院（庶民院）の優越が確立している。

　比例代表制は、小党分立状況をもたらすことが多く、そのために少数政党がいわゆるキャスティング・ボートを握って政権の行方を左右することがありうる。

　ドイツの比例代表制では、過度の小党分立を避けることを目的に、日本とは異なり、議席配分に必要な最低得票率（阻止条項）を設けている。

　フランスの国民議会選挙では、小選挙区制を用いているが、2回投票制である。選挙協力のチャンスがあるため、選挙に参加する政党数が比較的多くなる傾向を持つ。

　マニフェストは自治体の首長選挙においても利用可能だが、国政選挙で政党が配布するような書籍・パンフレット型ではなく、A4判1枚の「ビラ」として配布しなければならない。

　参政権が認められておらず、また政治的知識を得る機会もない時代には「伝統的無関心」に基づく黙従が一般的であったが、現在の日本はこの伝統的無関心の状況にはない。

　人々が「脱政治的態度」の状況に陥るのは、政治に参加した経験が期待外れに終わった場合である。現代の政治状況ではこのような無関心はしばしば見られる。

　政治的無関心層は、いわゆる無党派層の一部を構成するものの、その投票行動は概念上、選挙結果を大きく左右するものとはならない。

　業績投票論によれば、有権者は政権担当者の過去の業績の評価に基づいて投票する。その際、有権者が各党の政策争点上の立場を知っていることは必ずしも必要ない。

「1党優位制」とは、政党間の競合はあるが政権交代が事実上実現困難になっている政党制であり、55年体制下の日本などが該当する。

　サルトーリの「穏健な多党制」は、政党数が3～5程度で、主要政党間のイデオロギーの相違が小さく、そのために政党間の競合が求心力を伴いやすい。

　アメリカの2大政党は、イギリスの2大政党と異なり、党議拘束が弱い。そのために、交差投票（クロス・ヴォーティング）が見られる。

「2大政党制」の代表国とされるイギリスでは、2010年の総選挙で2大政党がどちらも庶民院の過半数議席を得られず、保守党と自由民主党の連立政権が発足した。

　1955年に日本社会党と自由民主党が誕生したが、社会党に単独で政権を獲得する力はなく。その後、日本では約40年にわたり自民党が政権を維持する「55年体制」が続いた。

　1999年から2009年までの10年間。自民党を中心とした連立政権が続いたが、このうち2003年以降は自民党と公明党の2党だけによる連立政権であった。

　日本の政党助成法で助成金の交付を認められる政党は、国会議員を5人以上有するか、直前の衆参どちらかの選挙で2%以上の得票をし、かつ国会議員のいる政党である。

　ネオ・コーポラティズムとは、利益団体の頂上組織が政府や官僚機構と協議機関を設置し、重要な政策をそこで決定するという利益団体重視型の政治システムである。

　ウェーバーの3類型において、カリスマ的支配は一時的には強い服従を確保しやすいが、伝統的支配と合法的支配においても正統化が十分になされれば服従は確保される。

　関係的権力論によれば、Xからの働きかけがなければしなかったであろうことをYがしたとき、Xの作為の有無にかかわらず、XはYに対して権力を行使したことになる。

　ダールは、地域政治の研究によって、政治・経済・社会など多様なエリートが争点ごとに政治的決定に参与していることを確認し、多元的エリート論の主唱者となった。

　バクラックとバラッツは、争点について決定する権力とは別に、決定を意図的に回避するように働く権力もあるとして、これを「非決定権力」と呼んだ。

　ダールは、現実の政治体制がどの程度民主化されているかを公的異議申し立てと包括性という2つの尺度によって区分し、2つがともに高い状態を「ポリアーキー」と名づけた。

　多数決原理は、多数派と少数派との区別が相対的であることを前提としており、両者の亀裂が社会・文化的条件によって絶対的である場合には有効に作用しない。

　科学的な調査法を用いた現代の世論調査は世論の動向を的確に示すことができるが、それによって世論の合理性が高まったとはいえない。

　イデオロギーは、現実の解釈の方法を提供したり理想を示したりすることによって、人々の理性とともに感情にも働きかけ、その政治的認識を一定の方向へと導こうとする。

　ホッブズは、人間の自然権を生命維持と自由の2権と考え、社会の自然状態を戦争状態と想定した。そして、この克服のためには、社会契約による国家形成が必要であると主張した。

　ロックによると、各人が社会契約を結んで自然権の一部を信託し国家を形成するのは、自然権を保全するための裁判制度などを整備するためである。

　ルソーは、社会契約によって成立する国家の主権は国家それ自体ではなく人民が保有するものとなるとして、明確に「人民主権」を提唱した。

　ベンサムは、快楽を求め苦痛を避ける性向を人間の基本ととらえ、社会全体の快楽を最大限に実現する「最大多数の最大幸福」を政治目標に据えるべきであるとした。

　フランス人のトクヴィルは、アメリカを訪れた際、社会が平等であるうえに自由も根づいていることに驚き、その著作でデモクラシーとリベラリズムの両立可能性を指摘した。

　ノージックは、福祉国家型の自由主義を自由主義の本質からの逸脱であるとし、限定された機能だけを果たす「最小国家」を望ましいものとした。

　コミュニタリアニズム（共同体主義）は、リベラリズムが個人を共同体から切り離しすぎたと批判し、正義は共同体の価値を優先して考えられるべきだと主張する。

　国家は他の社会集団と同様に一定の機能を遂行する集団にすぎないとし、複数の集団に所属する個人の忠誠を求めて各集団は互いに競うことになると主張した。

　福祉には膨大な予算が必要であることから、基本的に福祉国家は「大きな政府」を指向することなく、福祉以外の分野での民営化や規制緩和に努力する。

　行政による過保護をもたらした福祉国家に対する反省から、近年、国家が介入すべき政策領域を極小化すべきであるという夜警国家論が再評価されている。

　ファシズム体制は、国民投票などさまざまな政治参加の制度を設けるが、それは「見せかけ」にすぎず、本質的にはファシズムと民主主義は相容れない。

　代表性の空洞化を避けるためにも、立法府の地位の優越を前提に権力分立を実現しようというのが、議院内閣制の基本的な考え方である。

　アメリカでは、各党の候補者は各州で開かれる党の代表者会議で指名されるが、そのうち最多の州から指名された者が、それぞれの党の公認候補となって大統領選挙に臨む。

　フランスの大統領は、国民の直接選挙で選ばれる任期5年の元首であるが、首相の任命権を議会の下院が持つため、事実上その政治的権限は外交儀礼だけに限定されている。

　アメリカ議会でも、日本の国会と同じく、下院に条約批准における優越権が認められているが、日本と異なり、上院の3分の2以上の議員が求めれば批准作業は停止される。

　二院制は、2つの院の代表原理が著しく異なっている場合に有効性を発揮することが難しく、そのため国家分裂の危険性の高い連邦国家では一般に二院制は採用されない。

　拘束名簿式の比例代表制では、有権者は個人を選択できないため、著名人のネーム・バリューなどの影響を少なくすることができる。

　ドイツでは比例代表制と小選挙区制を併用しているが、日本と同じく、2つの選挙の結果は相互の連関なく別個のものとして扱われる。

　絶対多数決を重視するフランスでは、過半数を獲得する候補が現れるまで何度でも投票をやり直す。そのためフランスの国民議会選挙は3か月以上の長期に及ぶ。

　選挙運動を総括主宰した者が買収の罪を犯して利に処せられた場合であっても、それによって当選人の当選が無効になることはない。

　政府の役割が複雑化した現代社会では、庶民は政治からの隔絶感を感じており、しばしば政治についての理解を拒絶して、無知と黙従を特徴とする伝統的無関心の状況に陥る。

　政治に対する関心がまったくない『無政治的態度』は、現代の政治状況への不満を要因としていることから、潜在的な野党支持者と見ることができる。

　政治的無関心層は選挙の際にはいわゆる無党派層となって予測しえない投票行動をとることから、選挙結果にも重大な影響を及ぼす。

　ミシガン・モデルによれば、アメリカの有権者は政党の名前によってではなく、候補者の掲げる政策を比較検討して、政策が自分の立場に最も近い候補者に投票する。

　サルトーリの分類による「1党優位制」では、政権を担当する1党以外の小政党は、存在を容認されていても、その政権交代を試みることができないように活動を制約されている。

　サルトーリの「分極的多党制」は、政党間のイデオロギーの差が段階的に多様化しており、政党間の連合交渉がまとまりやすいため、分極していても政権が安定する政党制である。

　アメリカの2大政党は、イデオロギー的に正反対の経済政策を選挙で掲げる。そのため政権交代ごとの政策変更が激しく、しばしば国際的な経済問題を引き起こしてきた。

「穏健な多党制」の代表国とされるドイツでは、2つの大政党のどちらかと小政党による連立政権が続いており、これまで2つの大政党による連立政権は組まれたことはない。

　自民党の分裂と内閣不信任案の可決を受けて行われた1993年の総選挙を経て、社会党の村山富市を首班とする非自民連立内閣が誕生し、55年体制は終わった。

　金権政治を批判して1976年に自民党から分裂した自由党は、選挙ごとに党勢を拡大し、1980年には自民党と組んで自自連立政権を樹立した。

　アメリカの民主党と共和党は全国に多数の党員を擁し、両党とも党員から徴収される「党費」によってその活動資金の大半を賄っている。

　ネオ・コーポラティズムは、政府が労働組合や経営団体の全国組織などと非公式に協議して経済政策を決定するシステムであり、日本だけでなく西欧諸国の一部にも見られる。

　ウェーバーは、カリスマ的支配の危険性を指摘し、権力の正統化において望ましいのは伝統的支配から合法的支配への漸進的移行であるとした。

　実体的権力論は、権力の源泉を価値の保有に置くが、何を価値とするかは認識の違いを反映するので、価値の量で権力量を推定することはできないとする。

　エリートの周流理論によると、民主政治ではエリートと非エリートの定期的な交代現象が見られ、非エリートによる多数支配が行き詰まると、エリートによる少数支配に戻る。

　ルークスは、利益の喪失すら意識させない権力の行使がありうることを指摘し。これを非決定とは異なる次元の権力であるとして「2次元的権力」と呼んだ。

　ポリアーキー以外の政治体制について、ダールは「閉鎖的へゲモニー」などを類型化した。閉鎖的へゲモニーをポリアーキーに移行させるには包括性のレベルを高めればよい。

　多数決原理は、少数者に対する多数者の寛容があって初めて成立するものであり、ときには少数意見が多数意見を抑えて議会の意思となることも期待されている。

　世論は民主政治の基礎情報であり、政策決定者はその時々の世論調査の結果を速やかに政策立案に反映させるように努力しなければならない。

　イデオロギーは、近代人に特有の世界認識における準拠枠組みであり、神話的思考を放逐した純粋な合理性にその基礎を置いている。

　ホッブズは、社会の自然状態を平和状態と仮定したが、そこから抜け出すためには社会契約を結んで国家を形成したうえで、それを権力分立制度によって管理すべきであるとした。

　ロックは、国家権力を立法・行政・司法の3権に分離し、それぞれの力を均衡させ、相互に抑制させることで、権力の濫用を予防しようとした。

　ルソーは、人民間の私的利害を調整する形で成立する合意を「一般意志」と呼び、これをもとに政治体制を打ち立てれば、国家は人民の意向に反するものとはならないと主張した。

　ミルは、「最大多数の最大幸福」を実現するためには、多数者が政治に参加することが重要であるとして、ギリシャ的な直接民主制の復活を願った。

　トクヴィルは、議会政治が根づいているイギリスにおいて労働者階級が政治参加を阻まれていることを嘆き、民主主義と社会主義とは両立しないとして、革命の必要性を指摘した。

　ハイエクは、福祉国家型の自由主義を理念化し、国家を理性によって設計し直せば、すべての個人を自由にすることができると述べた。

　コミュニズム（共産主義）は、革命あるいは選挙を通じた政権奪取が実現すれば、労働者は搾取から解放され、私有財産と自由を獲得できると主張する。

　ラスキは、現代の政治的意思決定が国家のさまざまな部署で行われていることに驚き、国家の一元性は崩壊したとして「多元的国家論」を提唱した。