問題一覧
1
主量子数とはなにか
特定の原子軌道における原子核から電子の平均距離と関 係しており,n がより大きくなれば,その原子軌道における原子核から電子の平均 距離は大きくなり, したがって原子軌道も大きくなる
2
方位量子数とはなにか
原子軌道の“形状”を支配する.l の値は主量子数n の値に依存する.あるnに対して, l は0からn −1までの可能な整数をとる.l の値は一般に,文字 s, p, d・・・によって 表記され,s軌道,p軌道,d軌道とよぶ. 同一のn の値をもつ原子軌道の集合は殻とよび,同一のn とl 値をもつ原子軌道を, 副殻とよぶ.たとえば,n =2をもつ殻は,n =2に対して許された値であるl =0と1 に対応する二つの副殻から構成され,これらの副殻はそれぞれ, 2s副殻,2p副殻と よぶ. ここで2はn の値を示し, sおよびpはそれぞれのI の値を表している
3
磁気量子数とはなにか
空間における原子軌道の配向を表す
4
スピン量子数とはなにか
回転する電荷は磁場を発生し,磁石のようにふるまうものと推定される. 電子がとり得る2種類の回転(スピン運動) は時計まわりと反時計まわりのスピンで あり,この電子スピンの方向を記述するものがスピン量子数である
5
s軌道について簡単に説明
l(方位量子数) = 0, 1個のmⅠ(磁気量子数).1個の軌道のみであり,形状は球である.主量子数が増大するほど球も大きくなる
6
p軌道について簡単に説明
l = 1, 3個のml. 3個の軌道があり,npx, npy, npzと表記され,形状は原子核に対し て逆側に位置する二つの球 (ローブ) である.主量子数が増大するほど原子軌道も 大きくなる
7
パウリの排他原理について簡単に説明
いかなる2個の電子も同一の4個の量子数の組をもつことができない. 同じ原子軌道を占めることができるのは2個の電子だけであり,これらの電子は異 なった符号のスピンをもたねばならない
8
常磁性物質とはなにか
全体として対をつくっていないスピン をもち,磁石に引きつけられる物質である
9
波⻑,振動数,振幅,速度について説明し,波⻑,振動数,速度 の関係式を示しなさい
波は振動によってエネルギーが伝達される現象である 波⻑λは連続する波の等 価な点の間の距離(m, cm, nm) 振動数νは1秒間にある特定の点を通過する波の 数 (回/s, Hz, s-1) 振幅は波の中心線から頂点,あるいは谷底までの垂直距離,速 度 uは1秒間に進む距離 (m/s)を示す. 波⻑,振動数,速度の関係は以下の式で示される.
10
プランクの量子論について説明しなさい
ある温度の物体から放射される放射エネルギーの量は,その波⻑に依存する,と いう考え方であり,原子や分子は不連続な量(量子)を単位としたエネルギーを 電磁波の形で放出あるいは吸収するというものである. その際,電磁波(光)の エネルギー,すなわち量子1個のエネルギー( E ) はE = hν(ここでνは振動数, hはプランク定数 6.63 x 10-34 J s)で表され,振動数を波⻑,光の速度で置き換えると,E = h・c/λとなり,量子のエネルギーは波⻑に依存する
11
アインシュタインの光量子仮説について説明しなさい
アインシュタインの光量子仮説はそれまでの光は波動性を示すものであるという 考え方とは異なり,光は粒子(光子,光量子)性を示すという考え方である. 実際に 金属表面に光を照射する光電効果の実験より,金属表面に,ある最小の振動数(し きい振動数)より高い振動数をもつ光を照射しなければ,その表面から電子が放出 されず,光がより強いほど,金属表面から放出される電子の数は大きくなり,光 の振動数がより高いほど,放出される電子の運動エネルギーは大きくなった. 現在では,光は粒子的性質と波動的性質を併せ持つという二元性の性質を持つと 考えられている
12
ボーアの理論によって水素原子の発光スペクトルを説明しなさい
水素原子(1H)は原子番号1であり陽子1個,電子1個から構成される. ボーアは電子 は量子化されたある特定のエネルギーをもつ軌道のみを占めていると考え,水素 原子の発光スペクトルの理由を次のように考えた.許された軌道を占めている電 子(基底状態)はエネルギーを放出しないが,電子がよりエネルギーの高い軌道 (励起状態)からより低い軌道へ落ちる際に,光の形態でエネルギー量子(光子)を 放出する.この際,電子が占める円軌道の半径は主量子数 n の2乗に依存する. n が増加するにつれて,軌道の半径は急速に増加し,励起状態のエネルギーが高い ほど,電子は原子核からより遠くに位置し,原子核による束縛はより少なくなる. 実際にバルマー系列として知られるn が3, 4, 5, 6から2へ落ちる際の発光スペクト ルのエネルギーは計算とよく一致している. しかし,水素原子以外の多電子原子ではこの発光スペクトルをボーアの理論では 十分に説明できない
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励起状態,基底状態について説明しなさい
上述のボーアの量子エネルギーの式において,電子が原子核に接近する(主量子数n が減少)につれて,量子エネルギーEnの絶対値はより大きくなり,より大きな負の 値になる. n=1のときに最も大きな負の値となり,最も安定なエネルギー状態と なる. この状態を基底状態という.逆に電子の安定性は,n=2, 3, ...となるにつれ て減少する. これらの準位をいずれも励起状態という. 励起状態は基底状態より もエネルギーが高い状態である. 量子化された電子の移動は,一連の階段を上る,下るテニスボールの動きに類似 しており,ボールは段に位置することはできるが,中間にとどまることは決して できない. 低い段から高い段への移動はエネルギー吸収過程(例えば基底状態→ 励起状態),高い段から低い段への移動はエネルギー放出過程(例えば励起状態 →基底状態)を示す
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ハイゼンベルグの不確定性原理ならびにシュレディンガー方程式 から導かれる量子力学について説明しなさい
ハイゼンベルグの不確定性原理とは粒子の運動量(質量と速度の積)と位置を同 時に正確に決定することは不可能であるという考え方である. これに対し,近似 ではあるが,シュレディンガー方程式では粒子性(質量:m)と波動性(波動関数:ψ) を同時に決定することが可能である. これにより,電子の位置は空間のある領域 に電子を発見する確率 (電子密度ψ2)として求めることが可能である. 最子力学で は,ある時間において電子が存在する可能性のある領域を明確に示すことはでき, 電子密度が高い領域は電子が存在する確率が高いことを意味し,電子が存在する 軌道を原子軌道とよぶ. それぞれの原子軌道は,量子化され,特徴的な電子密度 分布と特徴的なエネルギーをもっている
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有効核電荷について説明しなさい
遮へい効果によってある電子と原子核内の正電荷をもつ陽子との静電気的な引力 は,原子に含まれる他の電子の存在によって弱められ,この際に原子核がもつ電 荷Zと,遮へい効果を考慮して,ある電子に対して実効的に及ぼされる原子核の電 荷のことを有効核電荷(Zeff)といい,Zeff = Z − σであらわされる. σは遮蔽定数 である. 例えば,He原子の場合,1つ目よりも2つ目の電子を取り除くエネルギー の方が遮へいをうけなくなるので大きくなる. また,内殻電子が価電子を原子殻 から遮へいする効果は,価電子が互いを遮へいする効果よりもずっと大きい. 一 般に主要族元素の有効核電荷は同じ周期では左から右へ,また同じ族では上から 下へ移動するにつれて増大する
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原子半径,イオン半径について説明し,さらに原子半径を周期表 の元素間で比較しなさい
原子半径は,2個の隣接する原子における原子核間距離の2分の1の距離であり,原 子において電子密度は,原子核からはるか遠くまで広がって分布しているが,普 通,原子の大きさは,原子殻の周囲に全電子密度の約90%が含まれる領域と考え る. イオン半径は,陽イオン,あるいは陰イオンの半径であり,陰イオンは原子核電 荷は変わらないが,付け加わった電子がひき起こす反発力によって,電子雲の存 在する領域が広がり,陰イオンの半径は原子よりも大きくなる. 一方,原子から1 個,あるいはそれ以上の電子を除去した陽イオンは電子間の反発は減少するが, 原子核電荷は変わらないため,電子雲は収縮し,陽イオンの半径は原子よりも小 さくなる. 同一周期では原子番号が増加するにつれて有効核電荷は増大し,価電子が付け加 わるたびに,その前の価電子よりも強く原子核に引きつけられ,原子半径は減少 する. 同族元素では主量子数n の増加に伴って原子軌道が大きくなるので,有効核 電荷が増大しても,原子半径は増加する
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イオン化エネルギーについて説明しなさい
イオン化エネルギーは,基底状態の気体原子から電子を1個除去するために必要と なる最小のエネルギーであり,一般にkJ/mol単位で表される. 気体状態の原子で あるのは,気相の原子は実質的に隣接する原子の影響を受けず,原子間力を考慮 する必要がないからである. イオン化エネルギーの大きさは,電子がどの程度 しっかりと原子に保持されているかの尺度で,イオン化エネルギーが大きいほど, 電子は除去されにくい. 一般に周期表の同一周期では原子番号が増加するにつれ て有効核電荷は増大し,第一イオン化エネルギーはより大きくなる. 一方,同族 元素では主量子数n の増加に伴って内殻電子の遮へい効果が大きくなるので第一イ オン化エネルギーはより小さくなる
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ホウ素の方がベリリウムよりも,酸素の方が窒素よりも第一イオ ン化エネルギーが小さい理由を述べなさい
ベリリウムは1s2, 2s2の電子配置を示し,ホウ素は2s^2から2s^2,2p^1へと電子が1個増 えるが,この際にp副殻の1個の電子は内殻の電子によって原子核から遮へいを受 けるため,第一イオン化エネルギーが小さくなる. 窒素は1s2, 2s2, 2p3の電子配置を示し,酸素が2p3から2p4へと電子が1個増える際 に増える1個の電子はフントの規則に従って3個の別々の原子軌道に入っているp副 殻の電子のいずれかと対を形成するため,同じ原子軌道に入った2個の電子は互い に接近し,大きな静電的反発が生じ,この反発力が原子核の正電荷が一つ増加す るよりも大きいため,第一イオン化エネルギーは小さくなる
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電子親和力について説明し,リチウムがベリリウムよりも電子親 和力が大きいと推定される理由,炭素が窒素よりも電子親和力が大きい理 由について説明しなさい
電子親和力は,原子が1個,あるいはそれ以上の電子を受け入れる能力であり,気 体状態の原子が電子を1個受容して陰イオンを生成する過程のエネルギー変化に負 の符号をつけた値で表される.陰イオンから電子を1個除去するために供給すべき エネルギーとみることもできる. 基底状態のベリリウムに電子を1個受容させるには2p軌道に入る. しかし,2p軌 道は2s2の電子によって効果的に遮へいされているため,原子核から受ける引力が 比較的弱い. 一方,基底状態のリチウムに電子を1個受容させるには2s軌道に入る. この2s軌道にはベリリウムの場合のような遮へいがないため,原子核から静電的 な引力を受ける. このため,リチウムの方が電子親和力が大きい. 窒素の1s22p3の電子配置に電子を1個付け加えるということはフントの規則に 従って3個の別々の原子軌道に入っているp副殻の電子のいずれかと対を形成し, 同じ原子軌道に入った2個の電子同士は互いに接近し,大きな静電的反発を受ける. 一方,炭素の1s2、2p2の電子配置に電子を1個付け加えるということは1個の空のp副 殻に入るため,大きな静電的反発は起きない. このため炭素の方が電子親和力が 大きくなる
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イオン化合物の格子エネルギーについて説明しなさい
イオン化エネルギーと電子親和力を考慮すると,どの元素がイオン化合物を形成 しやすいかを予想することができるが,イオン化合物の安定性は評価できない. 安定性を定量的に評価するために,格子エネルギーが用いられる. 1 atm,25°Cで はすべてのイオン化合物は固体であるが,格子エネルギーは固体のイオン化合物 1 molを気体状態のイオンに完全に解離させるために必要なエネルギーと定義される. 格子エネルギーはクーロンの法則により求められ,2個のイオン間に働くポテン シャルエネルギーE は,イオンの電荷(Q+, Q-)の積に比例し, イオン間の距離(r ) に反比例する. また,格子エネルギーを間接的に求める方法としてボルンーハー バーサイクルによる方法がある. これは,イオン化エネルギーや電子親和力,お よび他の原子や分子の性質と関連させることによって求める方法で反応の標準エ ンタルピー変化から,昇華エネルギー,解離エネルギー,イオン化エネルギー, 電子親和力などを差し引くことで格子エネルギーを算出する
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共有結合についてオクテット則,結合⻑,極性結合を考慮して説 明しなさい
共有結合は2個の原子が2個の電子を共有することによって形成される結合で,水 素以外の原子は8個の価電子によって取り囲まれるまで結合を形成する傾向があり, これをオクテット則と呼ぶ. 2原子間においてオクテット則を満たすために2対 以上の電子対を共有し,多重結合を形成する場合もあり,これらの結合の⻑さは 単結合>二重結合>三重結合の順である.異なる2原子からなる結合電子対にお いては結合電子対の非等価な共有により,その結合を極性結合とよび,電子が一 方の原子の近傍に存在する時間は,他方の原子の近傍に存在する時間よりも⻑く なり,電子が正確に等しく共有されている非極性の共有結合と,電子がほとんど 完全に移動しているイオン結合の中間的な結合と見なすことができる.共有結合 が極性であるか,非極性であるかを見分けるためには,電気陰性度を用いること ができ,原則として電気陰性度の差が2.0 以上の時はイオン結合,0.3~2.0未満の 時は極性結合,0.3以下の時は全く極性をもたない共有結合とみなすことができる
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炭酸イオン(CO32-)を例にして共鳴について説明しなさい.また, 平衡式との違いについても説明しなさい
ただ一つのルイス構造では正しく表記できない単一の分子に対する,複数のルイス構造のうちの一つを共鳴構造と呼ぶが,あくまでも共鳴構造はそれ自身が固有の安定な構造をもつ実在の分子を表したものではなく,人間の便宜的な創造物である. 共鳴構造は複数のルイス構造間で電子が移動した構造であり,構造間に"↔"を用いる. 一方,平衡式は結合の切断,生成など原子やイオンの移動を伴うものであり,⇆を用いる
23
結合エンタルピーを用いることでわかる反応物分子と生成物分子 の熱化学的情報について説明しなさい
あ
24
メタン分子の構造について原子軌道の観点から図示しなさい
あ
25
エチレン分子の構造について原子軌道の観点から図示しなさい
あ
26
アセチレン分子の構造について原子軌道の観点から図示しなさい
あ