問題一覧
1
法定実効税率と実際の支払い税額は、大きく違うことがある。これはなぜか、個人企業レベルの理由を説明せよ
〇法定実行税率は「課税所得」にかかるのに対し、実質税負担率は「税引前当期純利益」にかかる。つまり法定実効税率と実質税負担率の違いは、「税引前当期純利益」と税引前当期純利益から税務調整を行なった「課税所得」の不一致から起こる。 〇試験研究関係など、税務申告上の税額控除 〇在外支店等の所在国の税制の影響
2
法人税は、法人の設立から解散までの間にどこの部分で課税されるか
まず会社は元手で会社を設立し利益を得るが、社外流出と内部留保で成り立つ所得全てに課税される。また清算時には含み益の実現部分が課税される。
3
法人税・所得税の重複的課税とは何か
事業年度所得合計に法人税が一度かかり、その後所有主に所得を配当した際、さらに所有主個人に所得税が課税されると、二回課税されることになる。それを重複的課税と言う。
4
法人税が所得税から分離した理由はなにか
所得税が累進課税だと、法人が所得の多くを内部留保してその後配当した個人に所得税がかけられた場合、法人は多くの利益を得ているのに対して株主の配当が少ないため、税金収入が少なくなる。だから個人段階で税金をかける前に、内部留保分も含めて税をかけるために法人税が作られた。
5
法人所得の課税の考え方を二つ挙げ、そのうち日本はどちらかを答えよ。また日本の税の考え方の例を挙げよ
法人所得の課税の考え方は、法人実在説と法人擬制説がある。法人実在説は、法人と個人は別々の課税主体であるという考え方で、法人擬制説は、法人が株主の集合体であるとして、両社に対する税制は有機的・総合的でなければならないという考え方である。日本は法人擬制説の考え方に近く、法人段階の措置としては①受け取り配当等益金不算入制度、資本概念、比例税率がある。個人段階の措置としては、配当控除制度がある。
6
受取配当等の益金不算入はなぜ行われるのか
法人税をかけた後、株主に対しても所得税をかけた場合、二重課税になるわけだが、株主が法人だった場合、法人税が何重にもかかった後、最終的に個人株主へ配当が行われる流れになる。その際、最初に法人税をかけられた会社と最終的な個人の株主には、二重課税に対する措置が取られているが、最初と最後以外の法人は何重にもわたって法人税がかかるため、法人税が累積されないように、財務会計上では受取配当を利益として扱っても、税金として計算するときには収益から除く。そうすれば課税所得は少なくなり、法人税が累積されない仕組みになる。
7
事業形態が多様化してきているうえで新たに生まれた課税方式を二つ挙げ、それぞれ説明せよ
ペイスルー課税とパススルー課税がある。ペイスルー課税は、内部留保せずにすべての利益を配当することにより、法人税をなくすという方法である。パススルー課税は、法人の所得には課税せず、利益配分を受けた個人に対して所得課税するというものである。
8
青色申告法人の特典と義務を述べよ。また白色申告法人についても述べよ。
青色申告法人は所轄税務署長の承認を受けた場合に申告できる。大きな特典は欠損金の繰越である。義務は複式簿記による一定の帳簿の備付け・保存の義務である。ほとんどの法人は青色申告をしている。白色申告法人は下にな帳簿書類の備付け義務がある。この申告を行う法人は少ない。
9
同族会社の特徴と特別規定を説明せよ
同族会社とは、上位三株主グループが発行済み株式総数の50%超を保有辞ている会社である。我が国法人の9割超は同族会社で、オーナーの個人意志によって会社の管理・運営されがちである。特別規定は留保金課税、行為計算否認、役員の認定・使用人兼務役員の制限があり、そのうち留保金課税とは、配当を減らして留保金を増やせば、ある一定の金額に達すると税をかけるというものである。ただし、資本金1億円超の特定同族会社(1株主グループだけで50%超の株式総数を保有している会社)に限る。
10
留保金課税はなぜあるのか
株主に配当しないで留保金にすると、企業の価値が上昇して、個人株主が高い譲渡価格で株を譲渡する。このとき、配当を受け取り所得と合算したうえで所得課税を受け取るよりも大きな利益が手に入る。その対策として、留保金課税を設けている。
11
事業年度独立の原則とは何か。また例外を挙げよ
事業年度独立の原則とは、各事業年度に生じた課税所得を各事業年度ごとに独立した課税の対象としており、前期からの繰越利益金、繰越欠損金は当期の所得計算に関係させないというものである。例外としては翌年度以降10年以内の事業年度への繰越という、赤字を繰り越せる機能がある。
12
欠損金の繰越控除について、資本金1億円以下の中小企業の場合と、資本金1億円超の大企業の場合にわけて説明せよ
中小企業の場合、例えば1年目に500円の赤字が出て、7年目から100円の黒字になったとする。繰越欠損金を適用すると、1年目の赤字を繰り越して、7年目の黒字と相殺できる。そのとき、7年目の所得が0になって、法人税がかからなくなる。大企業の場合、同じ設定でも例えば2018年だとすると、黒字の50%までしか相殺できなくなるため、50円の所得が生じ、法人税が課税される。
13
取引価額の操作と課税の公平性とは何か説明しながら、無償による資産の譲渡に別段の定めがある理由を答えよ
取引価額を恣意的に決めて、譲渡益が発生する場所を操作できる。例えば大幅な子会社を親会社が支援するために、親会社が子会社に時価より低い簿価で土地を売却すると、売却益は0になる。そのまま第三者に時価で売却すると、土地売却益が生まれ、赤字の補填に仕える。もし時価で子会社に売却すれば、親会社が土地売却益を得ることになる。このように、利益が発生する場所を操作できるようになると、「課税の公平性」がなくなるため無償による資産の譲渡には別段の定めと言う制限が課されている。
14
株主拠出資本説的考え方をとっている理由は?
元手からの払い戻しか、配当かを明確に分けなければ、税金がかかるか否かがはっきりしないため、区別をつけるために狭い考え方をとっている
15
無償譲渡の考え方について説明せよ
無償譲渡のとき、財務会計上では簿価で記入するのに対し、税務会計上では「課税の公平性」の観点から時価ベースで判断する。例えばA法人の時価1000万円(簿価200万円)の土地をB法人に無償で譲渡したとき、A法人での処理は以下の通りになる 財務会計:①譲渡損失200万円/土地200万円 税務会計:①寄付金1000万円/土地譲渡益1000万円②譲渡原価200万円/土地200万円 税務会計の①の仕分けは、土地譲渡益を受け取った後すぐに寄付したという意味である。
16
キャッシュ・インフローとキャッシュ・アウトフローの期間配分について、それぞれ例を挙げて答えよ。また、なぜ支出額を機関配分するのか述べよ
支出額を機関配分する理由は、支出した分どれだけ収益を得ているのか、対応関係を重視しているからである。キャッシュアウトフローは、減価償却を例に挙げると、定額法などによって、固定資産の費用を一定期間内に使用する分と未配分額を対応させるために機械配分を行う。またキャッシュインフローの期間配分は、プリペイド・カードで発行時に収入を受け取るが、役務の提供が2期間にわたる場合などに適用される。
17
税務会計において、なぜ引当金は損金にならないのか述べよ
税務会計は債務確定主義をとっている。債務確定は、①債務が期末までに成立②給付の原因となる事実が期末までに発生③期末までに金額を合理的に計算できる、の3つが条件となる。発生主義は債務成立の段階で費用計上されるが、債務確定主義は、債務確定の段階で費用計上される。引当金は、実際のお金の出入りを伴わないため、経営者側が操作できる。よって、引当金は税務会計によって厳格に規制されている。
18
引当金の損金不算入の考え方を、財務会計のロジックと税務会計のロジックとともに述べよ
製品保証引当金を例に挙げると、財務会計では当該製品を販売した年度末に引当金を設定する。故障修理費用を当該製品の売り上げ収益に対応させて見積もりをし、繰入費用を販売年度の費用に計上する。しかし税務会計の観点では、期末時点で「いつ・だれに」修理するかも、引当費用の金額も不明であり、故障も起こっていないのに損金に計上すると恣意的になるので、実際に故障が発生し、修理の請求があり、修理を行って初めて損金として認める。
19
減価償却費はなぜ損金に算入されるのか。引当金と比較しながら答えよ
減価償却費は、すでに支払っている金額から公式をもって費用を配分している。支払いが完了した金額をベースに計算しているので、恣意的な金額の操作はできない。一方引当金は、まだ発生していない将来の支出を見越しているため、恣意的にある可能性がある。だれに・いつ・いくら支出するかはわからないため、損金に算入されない。
20
欧米大陸型と英米型の違いを答えよ
欧米大陸型は、例えば企業会計で定額法を選択した場合、税務会計で定率法を選択できない。しかし、英米型では選択できる。そのため、欧米大陸型では利益が大きければそれだけ税金を多く払うことになるし、税をとられたくないからと利益を少なくすれば、それだけ経営者のインセンティブも減る。英米型は利益が大きくても税金を少なく抑えることが可能になるので、それだけ差額が激しいと問題になる。
21
資本を蓄積するために行った政策を、高度経済成長期と今で比較しなさい
高度経済成長期では、収益から費用を差し引く段階で政策を実行していた。利益処分による資金の社外流出も減少し、納税額減少による資金の社外流修出も期待できた。当時は資本蓄積に大きく貢献していたが、そうすると利益のゆがみが起こり、客観性に欠けるため、現在では利益処分の段階で政策を行い、あとで税務調整をするという方法がとられている。そうすると政策の効果も高度経済成長期と同じものが見込める。
22
取引価格の配分について、以前の基準と新しい基準を比較したうえで、「独立価格の比率」という言葉を使い説明せよ
例えば取引価格が21万円、内訳は財Aが20万、サービスBが1万(2年間)、独立価格は財Aが20万、サービスBが5万とする。すると独立価格の比率は、財Aの場合20万÷25万=0.8、サービスBは5万÷25万=0.2である。その比率で取引価格21万を配分すると、財Aは21万×0.8=16万8千円、サービスBは21万×0.2=4万2千円である。以前の基準では契約価格の内容を操作することで、収益を恣意的に操作できたが、新基準では独立販売価格によって配分されるため、財AとサービスBの価格が固定され、同じ結果となる。