問題一覧
1
憲法の概念に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにはチェックせよ。
ア. 国家統治の基本を定めた法としての憲法を「固有の意味の憲法」と呼び、そのうち国家権力を制限して国民の権利を保障するという思想に基づくものを特に「立憲的意味の憲法」と呼んで、その余の「固有の意味の憲法」と区別することがある。 この区別は、憲法の内容に着目した区別であり、憲法の存在形式とは無関係である。, イ. 憲法という名前で呼ばれる成文の法典(憲法典)を「形式的意味の憲法」と呼び、「実質的意味の憲法」と区別することがある。 この区別の意義は,本来憲法典に書かれるべきことが書かれないことがあり、逆に,本来憲法の内容となるべきでないものが憲法典の中に書かれることがあるという点に注意を促すことにあるといえる。
2
諸種の憲法概念に関する次のアからエまでの各記述について,明らかに誤っているもの二つをチェックせよ。
ウ.法の内容に着目すると,「固有の意味の憲法」と「立憲的意味の憲法」を区別することができる。 「権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていない社会は,すべて憲法を持つものではない」という1789年のフランス人権宣言の有名な一節は,前者の趣旨を示したものである。, 工. 形式的意味の憲法にはいかなる内容を盛り込むことも可能であるが、歴史的には立憲主義の成文化を求める動きが憲法典の普及を促進した。 日本国憲法はこの経緯を踏まえ,憲法の形式的優位性の実質的根拠を示すため、第10章「最高法規」中に公務員の憲法尊重擁護義務を定める第99条を置いている。
3
憲法の概念に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにはチェックせよ。
イ.「形式的意味の憲法」とは,憲法という名称を与えられた成文の法典(憲法典)を指す。 これに対して「実質的意味の憲法」とは,その存在形式のいかんを間わず、内容的に憲法と観念されるもののことをいう。
4
憲法の意義に関する次のアからエまでの各記述について,正しい場合にはチェックせよ。
イ.「憲法」が成文の憲法を指す場合に「形式的意味の憲法」と呼ばれるが、この意味の憲法は,その内容において人権保障に関する規定が含まれているかどうかを問わない。, ウ.国家であれば、権力の組織や構造が定まっていると考えられ、この意味では全ての国家は憲法を持つと言われるが、この場合の「憲法」は「固有の意味の憲法」と呼ばれる。, エ. 1789年フランス人権宣言第16条において,権利の保障が確保されず,権力の分立が定められていない社会は,全て憲法を持つものではない旨が示されているが、この場合の「憲法」は,「立憲的意味の憲法」あるいは「近代的意味の憲法」と呼ばれる。
5
次の文章は,「法の支配」に関するものである。AからDまでの各空欄に適切なものをチェックせよ。 「法の支配」の原理は,中世における「古き良き法」の優位の思想から生まれ、英米法の根幹として発展してきた。古典的には「法の支配」とは専断的な国家権力の支配、すなわち,「【A】支配」を排斥し、権力を法で拘束することによって,国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理である。 「法の支配」の原理にいう「法」の観念が問題となる。それは、議会が一定の手続に従って制定したという形式的要件だけではなく、その内容が「理にかなっている」ものでなければならないという実質的要件を含む観念である。法の支配という場合の「法」とは、【B】の思想と固く結びついているのであり、権威主義的な法概念ではなく,民主主義的な法概念である。 日本国憲法も,「法の支配」の原理に立脚しているといえる。それは,憲法の最高法規性の明確化,【C】 人権の保障,適正手続の保障、【D】に見られるような司法権の拡大強化,そして裁判所の違憲審査権の確立からみて明らかである。 1.神の 2.憲法第76条第2項後段の行政機関による裁判の全面的禁止 3.憲法第11条及び第97条に規定されているように,理念として「不可侵」である 4. 権力分立 5.人の 6. 憲法第76条第2項前段の特別裁判所の設置の禁止 7. 基本的人権 8.憲法第12条に規定されているように「常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」
A-5,B-7,C-3,D-6
6
「法の支配」の原理に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア.「法の支配」は,「人による支配」を排斥し,権力を「法」で拘束することによって国民の権利・自由を保障することを目的とする原理である。, ウ、日本国憲法も,憲法の最高法規性、基本的人権の保障、特別裁判所の設置の禁止、そして裁判所による違憲立法審査権等からして,「法の支配」の原理に立脚しているといえる。
7
人権の国際的保障に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア.第二次世界大戦以前には人権を国際的に保障する制度は構築されておらず,第一次世界大戦後に国際連盟が結成されたが、人権問題は専ら国内問題とされていた。, ウ、第二次世界大戦後,国際連合において採択された国際人権規約は,世界人権宣言の内容を基礎として,これを条約化したものであり、法規範性を有している。
8
日本国憲法における「主権」の概念に関する次のアからエまでの各記述について,誤っているものをチェックせよ。
ア.日本国憲法前文には「われらは,いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって,政治道徳の法則は,普遍的なものであり、この法則に従ふことは,自国の主権を維持し,他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」とあるが、ここにいう「主権」は「国家の統治権」を意味する。, エ、日本国憲法の国民主権原理が明治憲法の天皇主権の否定として表明されたものだという趣旨からすると、日本国憲法下において,少なくとも天皇は国民ではないことは明らかである。
9
国民主権の観念における権力性の契機と正当性の契機に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ理論的に成立するものにチェックせよ。
ア. 国民主権の観念は,本来,君主主権との対抗関係の下で生成し、主張されてきたものである。このような経緯を踏まえると,国民主権の担い手は,抽象的なものではないし,特別の資格を持った君主でもないことになる。, イ.主権の権力性の契機において,主権の主体である国民は有権者(選挙権者の総体)を指す。 しかし、国民を有権者ととらえることは,必ずしも憲法が直接民主主義を採用しているという結論を帰結するわけではない。
10
主権に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア.憲法の国民主権の原理における国民とは,最高裁判所の判例が示すところによれば、主権が日本国民に存するとする憲法前文及び第1条の規定に照らして,日本国の国籍を有する者を意味するものとされる。, イ. 主権という言葉は多義的であり、国民主権、国家主権のほかに,国家権力(統治権)そのものを意味する場合もあって,憲法第9条第1項及び第41条で使われている「国権」とは,この国家権力そのものを表すものとして使われている
11
主権に関する次のアからエまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ア. 絶対王政の時代には,国家の主権と国王の主権を区別することに意味がなく,現に両者は一体的に捉えられていた。, エ.統治権という意味での主権は国家に属すると考える国家法人説は,君主主権と国民主権のどちらにも結び付き得る考え方である。
12
主権に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ア. 憲法前文第3段で「自国の主権を維持し」という場合の主権は,対外的な独立性に重点を置いた意味で使われている。, イ.憲法第1条で「主権の存する日本国民の総意」という場合の主権は,国の政治のあり方を最終的に決定する権力又は権威を意味する。, ウ.憲法第96条第1項の規定する憲法改正手続における国民投票は、国民主権の権力的な契機の表れといえる。
13
憲法第43条第1項の「全国民の代表」に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ア.憲法第43条第1項は、国会が民意を反映すべき機関であると同時に,国民代表機関であることも意味する。, イ.各選挙区において選出された議員は,「全国民の代表」となるので,選挙区民から法的に責任を問われることはない。
14
天皇の権能に関する次の1から8までの各記述について,正しいと認められるものを二つ選びなさい。
3.天皇は,内閣の助言と承認が不当なものであると判断した場合でも、その助言と承認を拒むことは一切認められていない。, 6. 天皇に衆議院の解散権があるとしても,それが内閣の助言と承認によって行われる以上、国会が天皇の政治責任を追及することは認められない。
15
天皇の国事行為及び内閣の助言と承認に関する次のアからウまでの各記述について、それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア. 国事行為のうち、その行為自体が名目的・儀礼的なものであっても、天皇は、自らの判断に基づき,内閣の助言と承認を拒むことは許されない。
16
天皇の地位又は権能に関する次のアからウまでの各記述について,明らかに誤っている記述をチェックせよ。
ア. 天皇の国事行為に関する最高裁判所の判例によれば,内閣の「助言」とは内閣から天皇への事前の申出であり、「承認」とは天皇の行為が「助言」の趣旨に合致するものであると事後に認めることであって,いずれも閣議により決定しなければならないとされている。, イ.天皇の「象徴としての行為」を認める立場からは,天皇が全国植樹祭に出席すること及び魚類学の研究成果を公表することは,いずれも「象徴としての行為」に該当することとなるので,内閣の助言と承認により行われなければならない。
17
天皇の国事行為に関する次のアからエまでの各記述について,明らかに誤っているものをチェックせよ。
ア. 天皇は内閣の指名に基づいて最高裁判所長官を任命するが、内閣は、最高裁判所長官の指名及びその任命に関する助言と承認を1回の閣議で行うことはできない。, エ、天皇は国会の開会式に参列するが、その際の「おことば」は天皇の象徴としての行為であるとする立場からすると,「おことば」について内閣の補佐は不要である。
18
天皇に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア. 内閣が総解職した後に、国会により新たな内閣総理大臣が指名された場合、この新たな内閣総理大臣の任命は,総辞職した内閣の助言と承認により天皇が行うことになる。, ウ、内閣の助言と承認は国事行為の実質的決定権を含まないとの立場からは,憲法第69条の規定する場合以外の衆議院解散の実質的決定権の根拠を,憲法第7条以外に求めざるを得ない
19
天皇が国会開会式に出席した上で述べる「おことば」の憲法上の位置付けに関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ア.「おことば」を象徴としての地位に基づく公的行為であると捉える見解については、象徴としての地位が天皇の一身専属のものであることを前提にすると,天皇の権能を代行する摂政は「おことば」を述べることができないのではないかという問題点がある, ウ.「おことば」は国事行為である「儀式を行ふ」(憲法第7条第10号)に含まれるという見解については,上記「儀式を行ふ」を「儀式を主宰する」という意味に解すると,文理上無理があるという問題点がある。
20
天皇に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ウ.憲法第2条は,皇位が世襲のものである旨定めているところ,その具体的な在り方を定める皇室典範において,皇位の継承において皇長子の長子より皇次子を優先させることとしても憲法に反するものではない。
21
天皇に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
イ、憲法第4条第2項の定める国事行為の委任は、憲法第5条の定める摂政を置く場合とは異なり、国事行為の臨時代行に関する法律の定める事由が発生した場合に,天皇が内閣の助言と承認に基づいて国事行為を委任するものである。
22
天皇又は皇室に関する次のアからエまでの各記述について,正しいもの2つにチェックせよ。
イ、皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が財産を譲り受け、若しくは腸与することは国会の議決に基づかなければならない,というのが憲法の定める原則である。, ウ、皇位の継承について,大日本帝国憲法は「皇男子孫之ヲ継承ス」と定めていたが、日本国憲法は,男系男子主義までも求めるものではない。
23
天皇及び皇室に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ウ、摂政は、天皇の名で国事行為を行う天皇の法定代理機関であり、天皇が未成年のときなど皇室典範に定める原因が生じることにより設置される。
24
憲法第9条に関する次のアからエまでの各記述について,最高裁判所の判例の要約として,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア. 憲法第9条は,我が国が主権国として持つ固有の自衛権を否定するものではなく,憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではない。, イ. 憲法第9条第2項がその保持を禁止した戦力とは,我が国が主体となってこれに指揮権,管理権を行使し得る戦力をいうものであり、外国の軍隊は,たとえそれが我が国に駐留するとしても,ここにいう戦力には該当しない。, エ.憲法第9条の宣明する国際平和主義、戦争の放棄,戦力の不保持などの国家の統治活動に対する規範は,私法的な価値秩序とは本来関係のない公法的な性格を有する規範であるから、それに反する私法上の行為の効力を一律に否定する作用を営むことはない。
25
憲法第9条に関する次のアからウまでの各記述について,誤ってるものにチェックせよ。
ア. 政府は、憲法第9条第2項は自衛のために必要な最小限度の実力、すなわち自衛力の保持を禁じていないという立場をとっている。 その論拠は,同条第1項は「国際粉争を解決する手段として」の戦争、すなわち侵略戦争を放棄するものであることと,同条第2項冒頭の「前項の目的を達するため」という文言からして,同条項における「戦力」の不保持は侵略戦争の放棄という目的にとって必要な限りのものであるということである。, イ. 最高裁判所は,自衛隊機の離着陸の差止めが求められた訴訟において,当該飛行場の設置及び航空機の配備・運用が違法か否かは、自衛隊の組織・活動の合法性に関する判断に左右されるのであるから、主権国としての我が国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度に政治的な問題であり、純司法的な機能を使命とする司法裁判所の審査には原則としてなじまず、法律上の争訟に当たらないと判示した。, ウ、憲法第9条についての政府の解釈によれば,同条によって集団的自衛権の行使が禁じられており、個別的自衛権の行使に当たらないような武力の行使は許されないが、武力の行使に当たらない武器の使用は許される。 いわゆるPKO等協力法などの自衛隊の海外派遣を認める法律においては,このような解釈を前提として,自衛隊員による自衛隊員等の生命、身体を防衛するための必要最小限の武器の使用が認められている。
26
憲法第9条に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものにチェックせよ。
ア.憲法第9条は,我が国が主権国として持つ固有の自衛権を否定するものではない。 憲法前文の趣旨からして,憲法第9条は,国際連合のような国際機関にばかりでなく,他国に安全保障を求めることを禁じるものではない。, ウ、憲法第9条は国の基本的な法秩序を示した規定であるから,憲法より下位の法形式による全ての法規の解釈適用に当たって,その指導原理となり得るものであることはいうまでもないが、私法上の行為の効力を直接規律するものではない。
27
憲法第9条に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものにチェックせよ。
ウ、国が自衛隊の用地を取得するために私人と締結した土地売買契約は,当該契約が実質的にみて公権力の発動たる行為と何ら変わりがないといえるような特段の事情のない限り、憲法第9条の直接適用を受けず、私人間の利害関係の公平な調整を目的とする私法の適用を受けるに過ぎない。
28
次のaの①及び②は憲法第9条第1項についての見解であり、bの③及び④は同条第2項についての見解である。また、次のアからウまでの各記述は,それらの見解を組み合わせて考えた場合に,憲法第9条による戦争放棄の範囲等がどのように帰結されるかを述べたものである。アからウまでの各記述について、正しいものにチェックせよ。 a. ①. 第1項は,戦争と,武力による威嚇又は武力の行使を、国際紛争を解決するための手段として放棄したものであり、自衛目的によるものは放棄していない。 ②. およそ戦争とは全て国際紛争解決の手段として行われるものであり、その目的のいかんを問わず,戦争と,武力による威嚇又は武力の行使は,第1項により一切放棄されている。 b. ③.「前項の目的を達するため」とは,第1項による戦争放棄の目的を達するためという意味であり、第2項はそのための戦力の保持を禁止したものである。 ④.「前項の目的を達するため」とは,戦争を放棄するに至った動機を一般的に示すものであり、第2項は一切の戦力の保持を禁止したものである。
ア. ①及び③の見解を前提とすると,自衛のための戦争は認められるので,そのための戦力保持は許されることになる。, イ. ①及び④の見解を前提とすると,一切の戦力の保持が禁止される結果として、自衛のための戦争も放棄されることになる。, ウ、②及び④の見解を前提とすると,侵略戦争はもとより、自衛のための戦争も認められず、そのための戦力の保持も一切許されないことになる。
29
憲法第9条について,第1項は侵戦争を放棄したものであり自衛戦争は放棄されていないとし、第2項は第1項全体の企図する目的,すなわち、日本国民が正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求して戦争等を放棄するという動機のもとに、その実効性を確保するために,一切の戦力の不保持を定めるとともに、国家として戦争を行う権利である交戦権を否認するものであるとする見解がある。 次のアからウまでの各記述について,この見解と整合するものをチェックせよ。
イ. 非武装平和主義を掲げた憲法の特徴は第9条第2項にあり、同項は,単なる確認的規定ではなく,実質的な意義を有する規定と解するべきである。
30
憲法第9条の解釈に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ア. 憲法第9条第1項について,侵略戦争を放棄したものであり、自衛戦争を放棄したものではないという考え方に立ったとしても,同条第2項前段によって第1項の目的を達成するために一切の戦力の保持が禁止されており、同条第2項後段によって交戦権も否認されているとの考え方に立てば,結果として自衛のための戦争も放棄されていることになる。
31
憲法第9条に関する次のアからウまでの各記述について,bの見解がaの見解の根拠となっている場合にチェックせよ。
ウ. a.憲法第9条に違反する具体的な立法又は行政処分により、個人に何らかの不利益が生じたとしても、同条で保障された個人の権利が侵害されたものということはできない。 b. 憲法第9条は,前文における平和主義の原則を受けて規定されたものであり、平和達成のための禁止事項を前文よりも具体的に列挙しているが、これは国家機関に対して一定の行為を禁止するものであって,その保護法益は国民一般の公益である。
32
憲法第9条の解釈に関する次のアからウまでの各記述について、正しいものにチェックせよ。
ア、第1項で,侵略戦争は放棄されているが、自衛戦争は放棄されていないとし、第2の「前項の目的を達するため」を、侵戦争放棄の目的を達するためとする見解に対しては,日本国憲法には,第66条第2項の文民条項以外に戦争や軍隊を予定する規定が存在しないとの批判が当てはまる。, ウ. 第1項で,侵略戦争は放棄されているが、自衛戦争は放棄されていないとし、第2理の「前項の目的を達するため」を,戦争を放棄するに至った動機を一般的に指すとする見解と。第1項で,自衛戦争を含む全ての戦争が放棄されているとする見解のいずれの見解を採っても、憲法第9条により,全ての戦争が放棄されているとの結論が導かれる。
33
東京都管理職選考受験資格確認等請求事件判決(最高裁判所平成17年1月26日大法廷判決民集59巻1号128真)に関する次のアからウまでの各記述について,当該判決の趣旨に照らして,正しいものにはチェックせよ
ア、普通地方公共団体は、職員に採用した在留外国人について,国籍を理由として、給与等の勤務条件につき差別的取扱いをしてはならないが、合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることまで許されないとするものではない。, イ.普通地方公共団体が,公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任できる措置を執ることは,憲法第14条第1項に違反しない。
34
地方公共団体において,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができる措置を執ることは,憲法第14条第1項に違反しないとした最高裁判所の判決(最高裁判所平成17年1月26日大法廷判決,民集59巻1号128頁)に関する次のアからエまでの各記述について,正しいもの二つにチェックせよ。
イ. この判決は,日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める「特別永住者」の公務就任権を制限する場合について,一般の在留外国人とは異なる取扱いが求められると解する余地を否定した。, エ、この判決は,当該地方公共団体の管理職の中に,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするものが含まれていることを前提としている。
35
障害福祉年金の受給資格について国籍要件を課すことは,憲法第14条第1項,第25条に違反しないとした最高裁判所の判決(最高裁判所平成元年3月2日第一小法延判決,判例時報1363号68頁)に関する次のアからエまでの各記述について,正しいもの二つチェックせよ。
イ.この判決は,障害福祉年金の給付に関し、廃疾の認定日に日本国民でない者に受給資格を認めないことは憲法第14条第1項に反しないとしたが、これは,同項の規定の趣旨は外国人に対しても及ぶとする考え方と矛盾しない。, エ、この判決は,社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかは,立法府の広い裁量に委ねられており、国は特別の条約の存しない限り、その政治的判断によりこれを決定できるという考え方を前提としている。
36
外国人の人権に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ィ.我が国に在留する外国人には、居住する地方公共団体の長及びその議会の議員に対する選挙権が憲法上保障されていない。, ウ、社会保障の施策において外国人をどのように処遇するかについては,憲法上立法府の裁量に委ねられている。
37
外国人の人権に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照して,正しいものをチェックせよ。
ア. 地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするものについては、原則として日本国籍を有する者が就任することが想定され、外国人が就任することは想定されていない。, ウ.基本的人権の保障は,権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き,外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきで,政治活動の自由についても,政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑み相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ。
38
次のアからウまでの各記述について,団体の自律性と構成員の思想の自由に関する最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものにチェックせよ。
イ. 政治資金規正法上の政治団体に寄附するか否かは選挙における投票の自由と表裏をなし、会員各人が個人的な政治思想等に基づいて自主的に決定すべき事柄である。 会員に脱退の自由のない強制加入団体である税理士会が,上記の寄附のために特別会費の納入を会員に強制することは,許されない, ウ、大震災で被災した他県の司法書士会へ復興支援拠出金寄附のための負担金の徴収は、同法書士会の目的の範囲を逸脱するものではない。 司法書士会が強制加入団体であることを考慮しても,本件会員の政治的又は宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく,会員の協力義務を否定すべき特段の事情があるとは認められない。
39
政党に対する寄付に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものにチェックせよ。
ア、 労働組合は、組合員の経済的地位の向上を本来の目的とする団体であり、その目的のために,組織として支持政党又はいわゆる統一候補を決定し、その選挙運動を推進すること自体は自由であるが,その政党に寄付する資金の費用負担を組合員に強制することは許されない。, イ、会社は,法令の規定に従い定款で定められた目的の範囲内において権利を有し、義務を負うところ、会社が特定の政党に政治資金を寄付することも,客観的,抽象的に観察して,会社の社会的役割を果たすためにされたものと認められる限りにおいては、定款所定の目的の範囲内の行為とみることができる。
40
人権の享有主体に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ウ.憲法第3章の人権規定は、未成年者にも当然適用される。 もっとも、人権の性質によっては,社会の構成員として成熱した人間を主として対象としており、それに至らない未成年者に対しては,その保障の範囲や程度が異なることがある。
41
人権の享有主体に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ、税理士会は公益法人であり,また,その会員である税理士に実質的に脱退の自由が認められないから,税理士会がする政治資金規正法上の政治団体に対する政治献金は、それが税理士法改正に関わるものであったとしても,税理士会の目的の範囲外の行為と解される。
42
人権の享有主体に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ゥ. 未成年者は,精神的・肉体的に未成熟なことから、成人とは異なった特別の保護を必要とする場合があり、このような趣旨から,憲法は児童の酷使を禁止している。
43
公務員の人権に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして、それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア、国家公務員は、憲法において「全体の奉仕者」とされていることや、実質的にはその使用者が国民全体であることなどから、その人権についても、一定の制約に服することがあると解されている。, イ、国家公務員の労働関係は、国民の代表者により構成される国会の制定した法律、予算によって定められることなどから,争議行為を企てる行為や,これをあおる行為に対して刑罰を科すことは違憲ではないと解されている。
44
私人間における人権保に関する次のアから工までの各記について、最高裁判所の判例の要約として、それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ウ、労働組合による統制と組合員が市民又は人間として有する自由や権利とが矛盾衝突する場合、問題とされている具体的な組合活動の内容・性質,これについて組合員に求められる協力の内容・程度・態様等を比較考量して,組合の統制力とその反面としての組合員の協力義務の範囲に合理的な限定を加えるべきである。, エ、憲法の自由権的基本権の保障規定は,私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでなく、私立大学には学生を規律する包括的権能が認められるが、私立大学の当該権能は,在学関係設定の目的と関連し、かつ,その内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲においてのみ是認される。
45
私人間における人権保障に関する次のアからエまでの各記述について,明らかに誤っているもの二つチェックせよ。
ア. 憲法は,国家対国民の関係を規律する法であるから、憲法の人権規定は、特段の定めのある場合を除いて私人間においては適用されないとする説は、国家と社会を分離する自由主義的国家論と,人権はすべての法秩序に妥当すべき価値であるとの考え方を理論的背景としていると指摘されている。, ウ、市民社会の自律的作用を尊重すべきであることから,民法第90条の公序良俗規定等の私法の一般条項を媒介として,憲法の人権規定を私人間において間接的に適用するとする説に対しては,資本主義の高度化に伴い,国家類似の組織を有し、国家類似の機能を行使する社会的権力の登場による人権侵害の危険性と可能性が増大していることを看過していると指摘されている。
46
私人間における人権保障に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ.大学は学生を規律する包括的権能を有するが、特に,建学の精神に基づく独自の伝統と教育方針を有する私立大学においては,政治活動を目的とする学外の団体に学生が加入することについて届出制あるいは許可制を採ることで,これを規制することも社会通念上不合理なものといえない。
47
人権保障規定の私人間効力に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
イ、間接効力説は,私法の一般条項に人権価値を充しようとするものであるから,充塡の程度により結論が大きく異なり得る。, ウ、直接効力説は、私人間に憲法規範を直接適用するものであるが、国家が私人の自由な活動領域に過度に介入する糸口を与えかねない
48
私人間における人権保障に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア.「憲法の人権規定は、私人間においても直接適用される」とする説のうち、私的自治の原則により、人権の効力は私人相互間の場合にはその本質的な核心が侵されない限度で相対化されることを認める見解は,こうした相対化を認める限度において,直接適用説といっても間接適用説に類似したものになる。, ウ.「私人間の関係においても,相互の社会的力関係の相違から,一方が他方に優越し、事実上後者が前者の意思に服従せざるを得ない場合,憲法の人権規定は私人間に直接適用される」とする説について,判例は,こうした支配関係はその支配力の態様、程度、規模等において様々であり、どのような場合にこれを国又は公共団体の支配と同視すべきかの判定が困難であるとしている。
49
私人間における人権保障に関する次のアからウまでの各記述について,判例の趣旨に照らして、それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ. 大学は、その設置目的を達成するため,必要な事項を定めて学生を規律する権能を有するから,私立大学が、その伝統、校風や教育方針に鑑み、学内外における学生の政治的活動につき、かなり広範な規律を及ぼしても,直ちに不合理ということはできない。
50
いわゆる特別権力関係論に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ア. 特別権力関係論によれば、公権力と特別な関係にある者に対して公権力が包括的な支配権を有し,公権力は法律の根拠なく人権を制限することができ,それについて裁判所の審査は及ばない。, ウ、 特別権力関係論には,本質的な問題がある。それは、特別権力関係に属する者が一般国民としての地位に何らかの修正を受ける点で共通の特色を持つにとどまるにもかかわらず,権力服従性という形式的要素によって包括し、人権制約を一般的・観念的に許容する点である。
51
公権力との間で特別な法律関係にある個人に対する人権の制約に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ア. 公務員の労働基本権の制限に関し,全農林警職法事件判決(最高裁判所昭和48年4月25日大法廷判決,刑集27巻4号547真)以降の最高裁判所の判例は,職務の内容にかかわらず公務員の争議行為を一律に禁止することについて,合憲とする判断を維持している。, イ.公権力が特別権力関係に属する個人に対して包括的な支配権を有し、その個人の人権を法律の根拠なくして制限することができるほか,特別権力関係内部における公権力の行為は司法審査に服さないとする特別権力関係論は、日本国憲法の下では妥当し難い。
52
国又は地方公共団体との特殊な法律関係における人権に関する次のアからウまでの各記述について、bの見解がaの見解の根拠となっている場合にチェックせよ。
ア. a.当該法律関係の特殊性だけを理由とする基本的人権の制約は正当化できず,個々の法律関係ごとに,いかなる人権が、いかなる理由で,どの程度制限されるのかを具体的に検討すべきである。 b. 特殊な法律関係といっても様々な関係があり、それらを特殊な法律関係として一律に捉え,同様の人権制約が妥当すると解するのは相当でない。, イ. a. 特別な法律関係にある者に対して公権力が包括的な支配権を有し、法律の根拠なく人権を制限することができ,それについて裁判所の審査が及ばないとする伝統的な特別権力関係論は,日本国憲法下では妥当し得ない。 b. 日本国憲法は、国会を唯一の立法機関とし、徹底した法治主義の原則をとり、基本的人権の尊重を基本原則としている。
53
公務員の政治活動に対する制約に関する次のアからウまでの各記述について,猿払事件判決(最高裁判所昭和49年11月6日大法廷判決,刑集28巻9号393頁)に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ.国家公務員法第102条第1項は国家公務員に禁止される政治的行為の具体的定めを広く人事院規則に委任しているが、一般に公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁じることは許されるのであり、同条同項はそのような行動類型の定めを委任するものであって,委任の限界を超えることにはならない。
54
次の対話は、公務員の人権に関する教授と学生の対話である。教授の各質問に対する次のアからウまでの学生の各回答について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
教授、あなたの言うその判決は,国家公務員法第102条第1項が一定の行動類型に属する政治的行為を禁止していることに伴い生じ得る意見表明の自由の制約については,どのような判示をしていますか。 イ. 公務員の政治的中立性を損なうおそれのある行動類型に属する政治的行為を禁止することに伴い意見表明の自由が制約されることになっても,そのような制約は行動の禁止に伴う限度での間接的・付随的制約にとどまると判示しています。, 教授.堀越事件判決(最高裁判所平成24年12月7日第二小法廷判決,刑集66巻12号1337頁)は,公務員のしたある行為が国家公務員法第102条第1項にいう「政治的行為」に該当するか否かの判断についてどのような枠組みを示していますか。 ウ.同項にいう「政治的行為」の意義を,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものと解した上,その判断においては、当該公務員の地位,その職務の内容や権限等、当該公務員がした行為の性質、態様、目的、内容等の諸般の事情を総合して判断するのが相当であると判示しています。
55
国家公務員法第102条第1項にいう「政治的行為」の意義について判断した最高裁判所の二つの判決(最高裁判所平成24年12月7日第二小法延判決、刑集66巻12号1337頁及び同1722頁)に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ア.「政治的行為」とは,公務員の政治的な行為一般ではなく,公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められるものを指す。, イ. 管理職的地位にある公務員が政党機関紙の配布といった殊更に一定の政治的傾向を顕著に示す行動に出た場合には,その指揮命令や指導監督を通じてその部下等の職務の遂行や組織の運営にもその傾向に沿った影響を及ぼすことになりかねず、「政治的行為」に該当する。
56
公務員の労働基本権についての判例の動向に関する次のアからエまでの各記述について、それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア、一切の公務員の団体交渉権及び争議権を否認する昭和23年政令第201号の合憲性が争われた弘前機関区事件判決(最高裁判所昭和28年4月8日大法延判決)において,最高裁判所は、憲法第13条の「公共の福祉」論と憲法第15条第2項の「全体の奉仕者」論を根拠にして,公務員の労働基本権の一律禁止を合憲とした。, ウ.地方公務員法の規制をめぐる都教組事件判決(最高裁判所昭和44年4月2日大法廷判決) と国家公務員法の規制をめぐる全司法仙台事件判決 (最高裁判所昭和44年4月2日大法廷判決)において,最高裁判所は,全逓東京中郵事件判決を継承しつつ,さらに,争議行為をあおる等の行為に対する刑事罰について,合憲限定解を行った。
57
公務員の争議権に関する次のアからウまでの各記述について,いわゆる全農林警職法事件判決(最高裁判所昭和48年4月25日大法廷判決、刑集27巻4号547頁)以降の最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア. 国家公務員は,その地位の特殊性や職務の公共性に加え、勤労条件が法律・予算により定められており、人事院をはじめとする代償措置が講じられていることなどからすれば、その争議行為を全面的に禁止することは、やむを得ない制約である。
58
刑事施設の被収容者の人権に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものにチェックせよ。
ア. 刑事施設及びその管理態勢に関する現状を前提とした場合、火災が発生する危険性,火災発生時に被収容者が逃走するおそれ、喫煙中の通謀により罪証隠滅がされるおそれなどを考慮すると,未決拘禁者について喫煙の自由を一般に認めないのはやむを得ない措置というべきである。, ウ. 受刑者が国会議員あての請願書の内容を記した手紙を新聞社に送付しようとする場合,刑事施設の長がこれを制限し得るのは、具体的事情の下でそれを許可することが施設内の規律及び秩序の維持等の点において放置できない程度の障害が生ずる相当のがい然性があるときに限られる。
59
「公共の福祉」に関する次のアからウまでの各記述について、それぞれ正しい場合にチェックせよ
ア、憲法第13条の「公共の福祉」は、人権の外にあって,すべての人権を制約する一般的な原理であり、憲法第22条、第29条が特に「公共の福社」を掲げたのは,特別な意味を着しないという見解がある。 しかし,このような見解では、「公共の福祉」が極めて抽象的な概念であるだけに,人権制限が容易に肯定されるおそれが生じ、ひいては「公共の福祉」が明治憲法の法律の留保のような機能を実質的に果たすおそれがある。, イ、「公共の福祉」によって制約される人権は経済的自由権と社会権に限られ、その他の権利・自由には内在的制約が存在するにとどまり、憲法第13条は公共の福社に反しない限り個人に権利・自由を尊重しなければならないという,言わば国家の心構えを表明したものであるという見解がある。 しかし、このように同条の法規範性を否定する見解は、プライバシー権などの「新しい人権」を憲法上の人権として基礎付ける根拠を失わせる。
60
プライバシーに関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ
イ.京都府学連事件判決(最大判昭和44年12月24日)は,個人の私生活上の自由として、何人もその承諾なしにみだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有するとし、警察官が正当な理由もないのに個人の容貌等を撮影することは,憲法第13条の趣旨に反するとした。, ウ、講演会参加者名簿提出事件判決(最二小判平成15年 9月12日)は,大学が学生から収集した参加申込者の学籍番号、氏名,住所及び電話番号は、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となるとし、個人の人格的な権利利益を損なうおそれがあるものであるとした。
61
憲法の明文で規定されていない権利・自由に関する次のアからウまでの各記述について、最高裁判所の判例の趣旨に照らして、正しいものにチェックせよ。
ウ.住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の本人確認情報を収集、管理又は利用する行為は,当該住民がこれに同意していなくとも,個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。
62
憲法の明文で規定されていない権利・自由に関する次のアからウまでの各記述について,判例の趣旨に照らして、正しいものにチェックせよ。
ウ.個人の私生活上の自由の一つとして,何人もその承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するが、速度違反車両の自動撮影を行う自動速度監視装置による写真撮影は,犯罪捜査の必要性・相当性があるから,本人の同意や裁判官の令状がなくても許される。
63
憲法の明文で規定されていない権利・自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ウ. 何人も、その承諾なしに,みだりに容ぼう・姿態を撮影されない自由を有するところ,現に犯罪が行われ若しくは行われた後間がないと認められる場合であって,証拠保全の必要性及び緊急性があり、かつ,その撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われるときは,警察官による犯人の容ぼうの写真撮影は,憲法に違反しない。
64
夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称すると定める民法第750条の規定が、憲法第13条の規定に違反するか否かについて判示した最高裁判所の判決(最高裁判所平成27年12月16日大法廷判決,民集69巻8号2586頁)に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア. 前記判決は,氏名について,その個人からみれば、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって,人格権の一内容を構成するが、具体的な法制度を離れて,氏が変更されること自体を捉えて直ちに人格権を侵害し,違憲であるか否かを論ずるのは相当ではないとした。
65
幸福追求権に関する次のアからエまでの各記述について,正しいもの二つチェックせよ。
ウ.学説における一般的自由説は、包括的基本権である幸福追求権の内容について,「人格的生存」にとって不可欠という要件で限定しない。しかし、一般的自由説を採ることは,当該自由や権利の保障の程度という点で「人格」との関連性を考慮することと必ずしも矛盾しない。, エ、学説における人格的利益説の場合,どのような権利・自由が「人格的生存にとって不可欠な利益」であるかは,必ずしも明らかでない。例えば,自己決定権としての髪型の自由について,人格的利益説を採る論者の間でも「人格的生存にとって不可欠な利益」であるか否か、見解が分かれる。
66
幸福追求権の内容については,「公共の福祉に反しない限り一般的に自由を拘束されないという一般的自由権をその内容とする。」という一般的行為自由説に対し、「個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総体である。」という人格的利益説がある。これら二つの見解に関する次のアからウまでの各記述について、正しいものにチェックせよ。
ア. 裁判所が「新しい人権」を明確な基準なしに憲法上の権利として承認することになると,裁判所の主観的な判断によって権利が創設されるおそれがある。その点、人格的利益説は「新しい人権」の承認について種々の要素を考慮して慎重に決定することを求める見解といえる。, イ、一般的行為自由説は,公権力による制約に対して人権保障の範囲を広げる見解であるのに対し、人格的利益説は,不可欠性という厳しい要件の下で人権保障の範囲を決するので,人権保障の範囲が狭くなりすぎるおそれがある。
67
投票価値の平等に関する次のアからエまでの各記述について,最高裁判所の判例に照らして、それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ. 衆議院議員選挙において,選挙区間の投票価値の最大格差が3倍を超える場合には、憲法の要求する投票価値の平等に反する程度に至っているといえるが、必ずしもそれだけでは、当該議員定数配分規定が憲法に違反しているということまではできない。
68
下記文章は,参議院議員選挙における議員定数配分規定の違憲性について,次の①ないし③を含む最高裁判所の判決の流れを述べたものである。文中における(ア) から(ウ)までの各記述(それぞれ下線部分)について,正しいものにチェックせよ。 ①昭和58年4月27日大法廷判決,民集37巻3号345頁(最大較差1対5.26倍) ②平成8年9月11日大法廷判決,民集50巻8号2283頁(最大較差1対6.59倍) ③平成21年9月30日大法廷判決,民集63巻7号1520頁(最大較差1対4.86倍)
その後,平成4年7月施行の参議院議員選挙において最大較差が1対6.59倍に及ぶに至り, (イ) ②は,違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態が生じているとしたが、是正のための合理的期間は徒過していないとして,合意とした。, この②判決の後に施行された選挙は,最大較差が1対5倍前後であり、最高裁判所は著しい不平等状態が生じているという判断をしてこなかったが、較差是正のため国会における不断の努力が求められるなどの指摘がされてきた。 それらの判決の流れを受け、 (ウ) ③は,結論的には合意としつつも,投票価値平等の観点からは大きな不平等が存し較差の縮小を図ることが求められること,そのためには現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となり、国会において速やかに適切な検計が行われることが望まれると判示した。
69
衆議院議員定数不均衡訴訟判決(最高裁判所昭和51年4月14日大法廷判決,民集30巻3号223質)に関する次のアからウまでの各記述について,当該判決の趣旨に照らして,正しいものにチェックせよ。
ア. 憲法第14条第1項に定める法の下の平等は、選挙権に関しては、国民は全て政治的価値において平等であるべきとする徹底した平等化を志向するものであり,選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値の平等も、憲法が要求するところである。
70
法の下の平等に関する次のアからエまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア. 地方公共団体が売春の取締りについて各別に条例を制定する結果、その取扱いに差異を生じることがあっても,憲法第14条第1項に反しないとした判決(最高裁判所昭和33年10月15日大法廷判決)の多数意見は,憲法が認めた地方公共団体の条例制定権の尊重を論拠とするものである。, ウ.尊属殺に関する削除前の刑法第200条は憲法第14条第1項に反するとした判決(最高裁判所昭和48年4月4日大法廷判決)の多数意見の内容に着目すると,仮に、刑法が定める執行猶予の要件が緩和され、所定の減軽を経て執行猶予を付することが可能になれば,削除前の刑法第200条は違憲ではないと解する余地がある。, エ、女性のみに再婚禁止期間を定める民法第733条の立法趣旨は、父性推定の重複の回避と父子関係をめぐる紛争の防止にあるという判例(最高裁判所平成7年12月5日第三小法廷判決)の理解からすると,立法当時に比べて父子関係の立証がはるかに容易になっている現状の下でも,立法目的の合理性を肯定することは可能である。
71
法の下の平等に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア. 日本国籍は重要な法的地位であり、父母の婚姻による嫡出子たる身分の取得は子が自らの意思や努力によっては変えられない事柄であることから,こうした事柄により国籍取得に関して区別することに合理的な理由があるか否かについては,慎重な検討が必要である。, ウ. 尊属殺という特別の罪を設け、刑罰を加重すること自体は直ちに違憲とはならないが、加重の程度が極端であって,立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し。これを正当化し得べき根拠を見出し得ないときは,その差別は著しく不合理なものとして違憲となる。
72
法の下の平等に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして、それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア. 国民の租税負担を定めるには、国政全般からの総合的政策判断と、極めて専門技術的な判断が必要となるので,租税法の分野における取扱いの区別は,立法目的が正当で、区別の態様が目的との関連で著しく不合理でない限り、憲法第14条第1項に違反しない。, イ、 憲法第14条第1項後段に列挙された事由は例示的なものであって,必ずしもこれに限る趣旨ではない。また,第14条第1項は,合理的理由のない区別を禁止する趣旨であるから,事柄の性質に即応して合理的と認められる区別は許される。
73
法の下の平等に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ、併給調整条項の適用により、障害福祉年金を受けることのできる者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別が生じても,両給付が基本的に同一の性格を有し、併給調整に立法裁量があることなどに照らすと,合理的理由のない不当なものとはいえない。, ウ.相税法の定立は立法府の政策的、技術的判断に委ねるほかないから,この分野における取扱いの区別は,立法目的が正当であり、かつ,区別の態様が立法目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り,憲法第14条第1項に違反するとはいえない。
74
法の下の平等に関する次のアからウまでの各記述について,判例の趣旨に照らして,正しいものにチェックせよ。
イ. 選挙権の平等には各選挙人の投票価値の平等も含まれるが、国会によって定められた選挙制度における投票価値が不平等であっても,その不平等が国会の有する裁量権の行使として合理的と認められるのであれば,憲法第14条に違反しない。
75
法の下の平等に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものにチェックせよ。
ア. 子にとって自ら選択できないような事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきたという事情は、嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠が失われたと判断すべき根拠となる。, ウ、地方公共団体が法律の範囲内で条例を制定することができるとしている条例制定権の規定(憲法第94条)に照らすと,地方公共団体が売春の取締りについて各別に条例を制定する結果,その取扱いに差別を生ずることがあっても,地域差の故をもって憲法第14条第1項に反するとはいえない。
76
法の下の平等に関する次のアからウまでの各記述のうち,aは最高裁判所の判例を要約したものであり、bはその批判として書かれたものである。bがaの批判となっている場合にチェックせよ。
ア. a.尊属の殺害について,尊属に対する尊重報恩は、社会生活上の基本的道義である人たり,このような自然的情愛ないし普遍的倫理の維持は、刑法上の保護に値するから,これを刑の加重要件とする規定を設けても,直ちに合理的な根拠を欠くものとは認められない。 b.尊属がただ尊属なるがゆえに特別の保護を受けるべきであるとの考えは,個人の尊厳と人格価値の平等を基本とする民主主義の理念と抵触する。, ウ. a.出生後に認知を受けた子について,準正のあった場合に限り日本国籍を取得させると定める規定は,準正のない子に対し,日本国民である父から胎児認知された又は母が日本国民である非嫡出子と比較して,著しく不利益な差別的取扱いを生じさせている。 b. 日本国民が母である非嫡出子は出生時において母の親権に服し、また,胎児認知は任意認知に限られるため,出生の時点で既に血統を超えた我が国社会との結び付きがある。
77
憲法第14条第1項に関する次のアからエまでの各記述について,明らかに誤っているもの二つチェックせよ。
ア. 人種とは、身体的特徴によって区別される人類学上の種類であり,国によって人々の身体的特徴は異なるので,憲法上,国籍差別も人種差別と同様に扱われる。, エ.性別とは男女の別をいうが,歴史的に差別されてきたのは女性であるから,憲法上は男性差別を問題にする必要はない。
78
憲法第14条に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ、憲法第14条第2項は,明治憲法下における華族制度と類似の制度が復活することを禁止しているから,特権を伴う世襲の身分を法律で新たに設けることは許されない。
79
旧民法第900条第4号ただし書前段をめぐる最高裁判所の決定(最高裁判所平成7年7月5日大法廷決定,民集49巻7号1789頁)に関する次のアからウまでの各記述について、それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ. 多数意見によれば、法定相続分の嫡出性に基づく別異の取扱いは民法が採る法律婚主義から生じるものであって,不合理な区別ではない。それに対し、反対意見によれば,生まれてきた子供には何の責任もないし,自らの意思や努力によって変えることができない属性に基づく差別である。, ウ.多数意見は,相続制度が総合的な立法政策によるものであることと法定相続分規定の補充性を理由に、相続制度の法定に関する広い立法裁量を帰結する。それに対し,反対意見は,立法裁量にも憲法上の限界があるとした上で,そのような限界として個人の尊厳を挙げる。
80
日本国民である父親から出生後に認知された子の日本国籍の取得をめぐる国籍法違憲判決(最高裁判所平成20年6月4日大法廷判決,民集62巻6号1367頁)に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ.前記判決は,日本国民である父親から出生後に認知された子について,父母の婚姻が日本国籍の取得の要件とされている点をして,立法目的との合理的関連性の認められる範囲を著しく超える手段を採用したものであるとした。
81
市立小学校の校長が音楽専科の教諭に対し,入学式における国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏を行うよう命じた職務命令が、憲法第19条に違反しないとした最高裁判所の判決(最高裁判所平成19年2月27日第三小法廷判決、民集61巻1号291頁)に関する次のアからウまでの各記述について,正しいものにチェックせよ。
ウ.この判決は,入学式の国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏をする行為は,音楽専科の教諭にとって通常想定され期待されるものであり、当該教諭が特定の思想を有するということを外部に表明する行為であると評価することは困難であって,校長の職務命令は当該教諭に対し特定の思想を持つことを強制したり禁止したりするものではないとした。
82
思想・良心の自由に関する次のアからエまでの各記述について,誤っているもの二つチェックせよ
イ. 江戸時代の日本においてキリシタンであるか否かを告白させる目的で行われた「踏絵」は,内心における宗教的信条の告白を強制するものであるが、信教の自由を保障している日本国憲法の下では,このような事例に対して憲法第19条を適用する余地はない。, エ。憲法第19条は,内心の告白を強制されないという意味では「沈黙の自由」を保障したものと解することができるから,「自己に不利益な供述を強要されない」と規定する憲法第38条第1項は、憲法第19条との関係では一般法に対する特別法の関係にあると一般に解されている。
83
憲法第19条に関する次のアからウまでの各記述のうち、aは最高裁判所の判例を要約したものであり、bはその批判として書かれたるのである。bがaの批判となっている場合にチェックせよ。
イ. a.内申書に記載されたのは事実である外部的行為であり,それによってその者の思想、信条を了知し得るものではない。 b. 思想、信条とその者の外部的行為の間の密接な関係を認めた三菱樹脂事件判決(最大判昭和48年12月12日)の趣旨と相違する。, ウ. a. 本件における使用者による労働者の政党所属調査は,社会的に許容し得る限界を超えて労働者の思想の自由を侵害した違法行為であるということはできない。 b.労働者の思想信条は、これを理由とする労働条件の差別的取扱いの有無にかかわらず、それ自体において憲法第19条に即して尊重されるべきである。
84
思想・良心の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,正しいものにチェックせよ。
イ. 司法書士会が大震災で夜災した他県の司法書士会に復興支援拠出金を寄付することは,司法書士会の目的の範囲を逸脱せず、また,司法書士会がその寄付のために会員から負担金を徴収することは,強制加入団体であることを考慮しても,会員の政治的又は宗教的立場や思想,信条の自由を害するものではない。, ウ. 破壊活動防止法第39条及び第40条のせん動罪は,政治目的をもって,所定の犯罪のせん動をすることを処罰するものであるが、せん動として外形に現れた客観的な行為を処罰の対象とするもので,行為の基礎となった思想、信条を処罰するものではないから,せん動罪が政治思想を処罰するもので憲法第 19条に違反するとの主張は前提を欠く。
85
憲法第19条の保障する思想・良心の自由に関する次のアからゥまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして、正しいものにチェックせよ。
ア. 企業が従業員に対して特定政党の党員か否かを調査することは、当該調査の必要性があり、不利益な取扱いのおそれがあることを示唆せず、強要にわたらない限り,許容される。, イ、 裁判所が謝罪広告を強制しても,単に事態の真相を告白し,陳謝の意を表明するにとどまる場合は、良心の自由を不当に制限することにはならない。
86
思想・良心の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして、それぞれ正しい場合にチェックせよ
イ. 市立小学校の入学式における国歌斉唱の際に「君が代」のピアノ伴奏をする行為は、音楽専科の教諭にとって通常想定され期待されるものであり、当該教諭が特定の思想を有するということを外部に表明する行為であると評価することは困難なものである。
87
憲法第19条の保障する思想・良心の自由に関する次のアからウまでの各記述について、bの見解がaの見解の批判となっている場合にチェックせよ
ア. a. 思想・良心の意味は,人の内心における物の見方ないし考え方であり、事物に対する是非弁別を含む内心一般と捉えるべきである。 b. 思想・良心の自由が保障される範囲を広範に捉えることは,その高い価値を低下させ,むしろ,その自由の保障を弱めるものである。, ウ. a、思想・良心の自由のうち,良心の自由については,信教の自由,とりわけ信仰選択の自由ないし信仰の自由と同じ意味に捉えるべきである。 b.欧米諸国では良心の自由と信教の自由が不可分とされてきた歴史もあるが、日本国憲法は第20条で信教の自由を保障しており,あえて良心の自由を限定的に解する必要はない。
88
都立高等学校の校長が教諭に対し,卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令が、憲法第19条に違反するか否かについて判示した最高裁判所の判決(最高裁判所平成23年5月30日第二小法延判決、民集65巻4号1780頁) に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア. 卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立斉唱行為は、一般的、客観的に見て、これらの式典における慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり、校長の職務命令は、「日の丸」や「君が代」に関する当該教諭の歴史観ないし世界観それ自体を否定するものということはできない。, ウ. 卒業式等の式典における国歌斉唱の際の起立育唱行為は、一般的,客観的に見て、国旗及び国歌に対する敬意の表明の要素を含む行為であり、歴史観ないし世界観との関係で「日の丸」や「君が代」に敬意を表明することには応じ難いと考える者が上記行為を求められることは,思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることは否定し難い。
89
信教の自由に関する次のアからエまでの各記述について,誤っているもの二つチェックせよ
ウ.宗教的行為の自由は,憲法第20条第1項前段ではなく,「宗教上の行為」等に「参加することを強制されない」と規定する同条第2項により保障される。, エ、特定の宗教の宣伝や共同で宗教的行為を行うことを目的とする団体を結成する自由は、信教の自由ではなく、憲法第21条第1項の結社の自由として保障される。
90
信教の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして、それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ. 信教の自由の保障は,何人も他者の信仰に基づく行為に対して,それが強制や不利益の付与を伴うことにより自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請しているものというべきである。このことは,死去した配偶者の追慕,慰霊等に関する場合においても同様である。, ウ. 患者が、輸血を受けることは宗教上の信念に反するとして,輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合には,その意思決定をする権利は尊重されなけこればならない。医師としては,手術の際に輸血以外には救命手段がないと判断したときは輸血するとの方針を採っていることを患者に説明し,手術を受けるか否かをその意思決定にゆだねるべきである。
91
信教の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして、正しいものにチェックせよ。
ウ.宗教法人が法令に違反して著しく反社会的な行為を組織的に行ったため、裁判所から宗教法人法所定の解散命令を受け、法人格を失った宗教団体やその信者が宗教上の行為を継続する上で支障が生じても,その支障は間接的で事実上のものにとどまるので、やむを得ない。
92
信教の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ、 信仰上の理由から剣道実技の履修を拒否した高等専門学校の生徒に対して学校長が行った原級留置処分及び退学処分は,履修拒否が生徒の信仰の核心部分と密接に関連する真しな理由からのものであり、代替措置の申入れに対して学校側はそれが不可能でないのに何ら検討することなく拒否したなどという事情の下では,裁量権の範囲を超えて違法である。, ウ.宗教法人に対する解散命令のような法的規制は,たとえ信者の宗教上の行為を法的に制約する効果を伴わないとしても,これに何らかの支障を生じさせることがあり得ることから、信教の自由の重要性に鑑み、憲法上、そのような規制が許容されるものであるかどうかは慎重に吟味しなければならない。
93
信教の自由に関する次のアからウまでの各記述について,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ.信教の自由は、同じ信仰を有する者が集まることによって宗教的団体を結成する自由をも内容として含むものであるが、このような自由は、宗教法人として法人格を取得することまでをも当然に含むものではない。
94
信教の自由に関する次のアからウまでの各記述について,判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ. 僧侶が病者の平癒を祈願して加持祈祷を行うに当たり、病者の手足を縛って線香の火に当てるなどして同人を死亡させることは,医療上一般に承認された治療行為とは到底認められず,信教の自由の保障の限界を逸脱したものであって許されない。
95
信教の自由に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして、正しいものにチェックせよ。
イ、憲法第20条第1項前段及び同条第2項によって保障される信教の自由は,自己の信仰と相容れない信仰を持つ者の信仰に基づく行為に対しても寛容であることを要請するものであり、県護国神社による殉職した自衛官の合祀は,遺族が同神社の宗教行事に参加を強制されるなどの干渉等とならない限り、同神社が自由になし得る。, ウ.憲法第20条第3項の禁止する宗教的活動に含まれないとされる宗教上の祝典,儀式行事等であっても,国又はその機関が、宗教的信条に反するとしてその参加を拒否する者に対してそれらへの参加を強制することは,その者の信教の自由を直接侵害するもの」として同条第2項に違反する。
96
政教分離原則に関する次のアからエまでの各記述について,最高裁判所の判例に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
イ. 憲法第20条第2項の狭義の信教の自由とは異なり、同条第3項による保障には限界があるが、同項にいう「宗教的活動」に含まれない宗教上の行為であっても,国及びその機関がそれへの参加を強制すれば,第20条第2項に違反することになると解される。, エ、神社自体がその境内において挙行する恒例の祭祀に際して地方公共団体が玉串料等を奉納することは,建築主が主催して建築現場において土地の平安堅固,工事の無事安全等を祈願するために行う儀式である起工式の場合とは異なり,既に慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっているとはいえない。
97
政教分離に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして、それぞれ正しい場合にチェックせよ
ア. 県知事の大嘗祭への参列は,日本国及び日本国民統合の象徴である天皇に対する社会的儀礼を尽くすことを目的とするものであり、その効果も、特定の宗教に対する援助、助長,促進又は圧迫、干渉等にはならず、政教分離規定に反しない。, ウ、町会は,地域住民によって構成される町内会組織であって、宗教的活動を目的とする団体ではなく,町会が地蔵像の維持管理を行う行為も宗教的色彩の希薄な伝統的習俗行事にとどまるから,市が地蔵像建立のために市有地を町会に無償提供した行為は,政教分離規定に反しない。
98
宗数法人法に基づくオウム真理教に対する裁判所の解散命令は、憲法第20条第1項に違反しないとした最高裁判所の決定(最高裁判所平成8年1月30日第一小法廷決定,民集50巻1号199頁)に関する次のアからエまでの各記述について,正しいもの二つチェックせよ。
ア. この決定は、解散命令の制度は専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、かつ,専ら世俗的目的によるものであって、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容かいする意図によるものではないとした。, ウ.この決定は,当該宗教法人に対する解散命令は,宗教法人法第81条の規定に基づき、裁判所の司法審査によって発せられたものであるから,その手続の適正も担保されているとした。
99
政教分離原則に関する次のアからゥまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして,それぞれ正しい場合にチェックせよ。
ア. 日本国憲法が政教分離規定を設けたのは、戦前の信教の自由の保障が不完全なものであったことや、各種の宗教が多元的、重層的に発達,併存してきているという我が国の事情を考慮して,信教の自由の確実な保障のためには国家と宗教との結び付きを排除する必要があると考えられたためである。
100
政数分離原則に関する次のアからウまでの各記述について,最高裁判所の判例の趣旨に照らして、正しいものにチェックせよ。
ア. 市有地が神社の敷地となっており、政教分離原則に違反するおそれがあったことから、その状態を解消するために、良好な地域社会の維持及び形成に資することを目的とした地域的活動を行う町内会組織に当該土地を無償譲渡することは、憲法第89条に違反しない。