問題一覧
1
訴因変更が可能かどうかは「公訴事実の同一性」(312Ⅰ)が認められるかどうかによる。では「公訴事実の同一性」をいかにして判断するべきか?
まず、312Ⅰが「公訴事実の同一性」を要求する趣旨は、同一訴訟内における被告人に対する処罰関心の拡張を禁止することにあると解される。 そこで、「公訴事実の同一性」とはかかる拡張とはいえない場合、すなわち新旧訴因間に基本的事実関係の同一性が認められる場合に認められると解する。 そして、新旧訴因間に共通性ないし、非両立性が認められる場合は「公訴事実の同一性」が認められると解する。
2
検察官が訴因変更を行わない場合、裁判所は訴因変更を命じ(312Ⅱ)、またはこれを積極的に促す義務を負うか
法が当事者主義を採用している以上(256Ⅵ、298Ⅰ、312Ⅰ等)裁判所はかかる義務は負わないのが原則である。 ただし真実発見という312Ⅱの趣旨に照らし、①訴因変更をすれば証拠上明らかであり、②その罪が相当重大なものである場合は、裁判所は例外的にかかる義務を負う。
3
317条は一定の事実につき証拠能力があり、適式な証拠調べを経た証拠による証明たる厳格な証明を要求するものと解される。では具体的にいかなる事実につき、厳格な証明が必要か?
⑴まず、刑罰権の存否及び、その範囲を定める事実と それを推認させる間接事実は厳格な証明が必要。 ⑵被告人が立証する、刑罰権の不存在を基礎づける事実については、法は「犯罪事実の存否の証明」との表現を用いており(314条3項、321条1項3号)また、被告人に有利な証拠についても証拠能力を要求している。(322条1項)そこで厳格な証明を要すると解する。 ⑶情状事実については、犯情は犯罪事実そのもの、または犯罪事実を推認させる間接事実にあたることから、厳格な証明が必要だが、一般情状については自由な証明で足りると解する。
4
伝聞証拠(320条1項)の趣旨と意義は?
趣旨は、供述証拠は知覚・記憶・叙述と言う過程を経るところ、各過程に誤りや虚偽の恐れがあるため、公判での証人尋問による吟味が必要と言う点にある。 そしてかかる吟味は、供述がその内容の真実性を証明するために用いられる場合にのみ必要である。 よって、伝聞証拠とは、公判外の供述を内容とする供述又は書面で、当該公判外供述の内容の真実性を証明するために用いられるものを言うと解する。
5
「被害者vが、生前『被告人は好きではない』と言っていた」というAの公判供述が、供述時のvの嫌悪の感情の証明に用いられる場合、伝聞証拠にあたらないか?
320条1項の趣旨は、供述証拠は、知覚・記憶・叙述と言う過程を経るところ、各過程に誤りや虚偽の恐れがあるために公判での証人尋問による吟味が必要という点にある。本件でaの供述は、vの嫌悪の感情に用いられるので、vの公判外供述の内容の真実性の証明に用いられる場合にあたり、伝聞証拠に当たるとも思える。 しかし、精神状態の供述には、知覚・記憶のプロセスがなく、叙述に関しても伝聞供述者(この場合a)に対する公判での証人尋問により吟味すれば足りる。 そこでaの供述は非伝聞にあたると解する。