問題一覧
1
もとの里に帰りて月日を送れども、さらに人に語らず
元の里に帰って年月を送るけれども、決して人に話さない。
2
ゆめゆめ人に語るべからず。
決して人に話してはならない
3
かかる深山に隠れて、あえて人に知られず。
このような深山に隠れて、全く人に知られない
4
「これこれ御覧候へ」
「これこれをご覧なさいませ」
5
いかさま、これはただの人にてはよもおはせじ
きっと、これは普通の人ではまさかいらっしゃらないだろう
6
今出川の辺より見やれば、院の御桟敷のあたり、さらに通りうべうもあらず立ち込みたり。
今出川の辺りから見やると、院の御桟敷の辺りは、全く通ることも出来なさそうなほど(人が)立て込んでいる。
7
おしなべて、二三日のわづらふこと侍りしをぞ、
大体、二日三日と人が病気になることがありましたのを、
8
筆にも書きとどめぬれば、やがてまた定まりぬ。
文章にも書き留めてしまうので、そのままやはり(事実であると)定まってしまう。
9
いとけなき心地しておはしければ、母上、これをのみ憂きことに思し召し、
幼い気持ちでいらっしゃったので、母上は、このことばかり辛いこととお思いになり、
10
やさしきこともこそあんなれ
優雅なこともあるかもしれないようだ
11
情けとはいかなるものにて侍るらん
情趣とはどのようなものでございましょうか。
12
「男子にてましまさば、大宮司殿にこそ使はれさせ給はんに、…
もし男の子でいらっしゃるならば、大宮司殿に使われなさるだろうが、
13
いつきかしづき給ふほどに、光るほどの君に見え給ふ。
大切におそだてなさるうちに、光るほど(美しい姫)君にお見えなさる。
14
われは世にも出で交らはず、陰にかくれたらむやうにていたるを見るも、
自分は世間に出て人付き合いもせず、ひっそりと世間から隠れているようにして過ごしているのを見るにつけても、
15
「今の世の人は、さのみこそは出で立て。さてもおのづから良き例もあり。」
今の世の中の人は、そのようにばかり宮仕えするものだ。そうすると自然と良い例もある。
16
あれかにもあらず、うつつともおぼえで、
茫然自失の状態で、現実とも思われないで、
17
心も慰みやせむと思う折々ありしを、
気持ちも慰められることになるだろうかと思う折々もあったが、
18
いとはしたなく悲しがるべきことにこそあべかめれ
たいそう中途半端で悲しいことだろうことであるようだ
19
あわれに思い出でられなどして、心もそらにながめくらさる。
しみじみと思い出さずにいられなくして、ぼんやりと物思いにふけって暮らさずにはいられない(思い出されてしまう)。
20
「いまだありとばかりだにも、故郷人に聞かればや」と思ふ甲斐なし。
「せめてまだ生きているということぐらいだけでも、故郷の人に聞かれたい。」と思ってもどうしようもない
21
「年ごろの人を持ちたまへれども、いかがはせむ」
長年連れそう人を持ちなさっている人がどうしようか、いやどうしようもない。
22
「日ごろここにものし給ふとも見ぬ人々の、かく戦ひし給ふは、いかなる人ぞ」
「数日ここ(の屋敷)にいらっしゃるとも見えない方々で、このように戦いをしなさるのは、どのようなお方ですか。」
23
「年ごろ頼みて、朝な朝な召しつる土大根らにさうらふ」
「長年頼りにして、毎朝召し上がっていた大根どもでございます。」
24
深く信をいたしぬれば、かかる徳もありけるにこそ。
深く信じていたからこそ、このような功徳(くとく)もあったのであろう。
25
〜と人の語りしこそ、さてはいみじくこそとおぼえしか。
〜と人が語ったのは、それならば立派なことだと思われた。