問題一覧
1
経済学とは何か?本コースのために最も適切な選 択肢をひとつ選べ。
限られた資源がどのように人々に分配されているか、また分配されるべきか探究する学問
2
行動経済学とは何か?本コースのために最も適切な選 択肢をひとつ選べ。
利己的で合理的な経済人の仮定を置かない経済学
3
神経経済学とは何か?本コースのために最も適切な選 択肢をひとつ選べ。神経経済学とは何か?本コースのために最も適切な選 択肢をひとつ選べ。
経済行動を生み出す脳の働きを脳科学の手法を用いて解明し、実際の人間の経済行動をよりよく説明できるような新しい経済理論を作ろうとする学問
4
Kahneman et al. (1990) のマグカップの実験で「売り 手」のWillingness to accept (WTA)と「買い手」の Willingness to pay (WTP)について
被験者たちがホモ・エコノミカスのように行動すれ ば、マグカップをもらった被験者の所得が少し増え ているが、所得はマグカップ以外の財にも使えるの で、WTA はWTP よりも高いとしても、差はかなり 小さく、ほぼ一致するはずである。
5
Kahneman et al. (1990)のマグカップのて実験6,7の 実験結果について最も的確な答えをひとつ選べ。
「売り手」のWTAは、「選択者」のWTPよりも、 はるかに高く、「選択者」のWTPは、「買い手」の WTPよりも、少し高い。
6
仮にKahneman et al. (1990)のマグカップの実験6,7 の実験結果が実験手順によって変化しない頑健性のあ る結果であったとして、結果の解釈について、最も的 確な答えをひとつ選べ。
参加者の選好には、マグカップをもらうと即座に WTAが高くなる初期保有効果がある。
7
Plo! and Zeiler (2005)は初期保有効果として解釈でき ると考えられてきた実験結果について
実験手順を変えるだけでWTPとWTAの有意な差が 消えてしまうことを示した。
8
Isoni, Loomes, and Sugden (2011) は初期保有効果に関 する実験で
お金を賞品とするくじについて、実験手順にかかわ らず、初期保有効果と解釈されてきた有意な効果が見られた
9
ある経済主体が期待効用理論に従って行動していると する。この主体が初期保有として10,000円を持ってい て、効用関数は u(2,000)=10, u(2,700)=18, u(3,000)=20, u(12,000)=30, u(12,700)=32, u(13,000)=40とする。この主体は(2,000,1/2; 3,000, 1/2)のくじをもらうのと、確実に2,700円をも らう選択なら、どちらを選ぶか?最も的確な答えをひ とつ選べ。
(1/2)×u(12,000)+(1/2)×u(13,000)はu(12,700)より大 きいので、くじを選ぶ。
10
ある経済主体が期待効用理論に従って行動していると する。この主体が初期保有として1000円を持っていて、効用関数は u(1500)=220,u(1600)=227, 。 u(1700)=233, u(2100)=240として、この問題と下記の 問題に答えよ。この主体は(500,1/2; 1100, 1/2)の くじをもらうのと、確実に700円をもらう選択なら、 どちらを好むか?あるいは、無差別か?
確実なお金
11
前問の主体は(500,1/2; 1100, 1/2)のくじをもらう のと、確実に600円をもらう選択なら、どちらを好む か?あるいは、無差別か?
くじ
12
期待効用理論が成立するとする。AさんはBさんより も、どのような所得のレベルでもより高い絶対危険回 避度を持っているとする。くじ1は、50%の確率で所 得 x+h、50%の確率で所得 x-h、を支払う。くじ2は 所得xを確実に支払う。これらのくじのどちらかを得 る以外には2人に所得がないとして、最も的確な答え をひとつ選べ。
AさんがBさんよりも、くじ1に対してより高いリ スク・プレミアムを要求する、と確実に言える。
13
期待効用理論が成立するとする。BさんはCさんより も、どのような所得レベルでもより高い相対危険回避 度を持っているとする。くじ1は、50%の確率で所得 x(1+h*)、50%の確率で所得 x(1-h*)を支払う。くじ2 は所得xを確実に支払う。これらのくじのどちらかを 得る以外には2人に所得がないとして、最も的確な答 えをひとつ選べ。
BさんがCさんよりも、くじ2に対してより高い相 対的リスク・プレミアムを要求する、と確実に言え る。
14
相対的危険回避度が1で一定であるときの効用関数 は (ただし本コースで^はべき関数を表し、 例えば z^(1-α)はzの (1-α)乗とする)
u(z) =log(z)
15
相対的危険回避度が0.5で一定であるときの効用関数 は
相対的危険回避度をαをとして、u(z)= z^(1-α)
16
相対的危険回避度が2で一定であるときの効用関数は
相対的危険回避度をαをとして、u(z)=-z^(1-α)
17
相対的危険回避度が0で一定であるときの効用関数は (ヒント:相対的危険回避度が0で一定であれば、絶対 的危険回避度はどうなるか考える)
u(z)= z
18
絶対的危険回避度が1で一定であるときの効用関数は
u(z)= -e^(-z)
19
アレのパラドックスのように実際に行動をする人は
期待効用仮説で説明できないような意思決定の方法を持っている。
20
アレのパラドックスは
期待効用仮説ではどのような効用関数を仮定しても説明できない。
21
臨時アルバイトで得た9千円を関わる地震の被災者の ための寄付のために使うか、自分の趣味のために使う か、という意思決定問題について、寄付をするべきだ と考えている人が、趣味のために使う誘惑を受けてい る、という状況であるとする。Gull and Pesendofer (2001)の誘惑下の自制モデルを考える。9千円を確率1 で寄付のために使うくじをx1、確率1で趣味のため に使うくじをx2として、部分集合としてB={ x 1}, C={ x1, x2}、D={x2}とする。u をコミットメント効用関 数、vを誘惑効用関数とすると、Zのある部分集合A に対し、MaxがA上での最大値を求めるとして U(A)=Max (u(x)+v(x)) – Max v(x) をAに対する効用の値として、選好を表現できる。こ こで u(x1)=95, u(x2)=55, v(x1)=45, v(x2)=65 という数値例を考える。U(B), U(C), U(D) の値は
U(B)=95+45-45=95, U(C)=95+45-65=75, U(D)=55+65-65=55。
22
ある主体が初期保有e円を持っているとする。この主 体がx円を失うときの期待効用理論での効用は効用関 数をuとして
u(e − x)
23
ある主体が初期保有e円を持っていて、初期保有が参 照点になっているとする。この主体がx円を失うとき のプロスペクト理論での価値は価値関数をvとして
v(-x)
24
ある主体が初期保有e円を持っているとする。この主 体がx円をもらうときの期待効用理論での効用は効用 関数をuとして
u(e+x)
25
ある主体が初期保有e円を持っていて、初期保有が参 照点になっているとする。この主体がx円をもらうと きのプロスペクト理論での価値は価値関数をvとして
v(x)
26
本講義で説明しているアレのパラドックスについて、 参照点が全く動かない場合は、損失回避性は
パラドックスの説明に寄与しない。
27
本講義で説明しているアレのパラドックスでのくじの選択結果について、参照点の移動はないとすると、
意思決定ウェイト関数が劣確実性を満たしていなければ、どのような価値観数を使っても、プロスペクト理論でパラドックスの選択結果を説明することはできない。
28
Knetsch (1989)のマグなどの財の交換実験による初期 保有効果の検証では
WTPを測る実験と同様に、初期保有効果と解釈でき ると考えられるような結果が得られた
29
Plo! and Zeiler (2007)の交換実験での実験結果は初期 保有効果として解釈できると考えられたKnetsch (1989)の実験結果について
実験手順を変えるだけで初期保有効果と解釈されていた実験結果の有意な差が消えてしまうことを示して、初期保有効果による解釈に疑問を投げかけた
30
Camerer, Babcock, Lowenstein, and Thaler (1997) は、 ニューヨーク市のタクシー運転手が、一時的に需要が 低く、賃金率の低い日に、高い日より
長時間働く傾向があることを示した。
31
競馬の最終レースにおいて、勝つ可能性がききわめて 低いゆえに配当賞金の高い馬(つまり大穴)を狙う 人々が多いことをプロスペクト理論で説明する際に最 も適切な答えを選べ。
競馬場に来る前の状態を参照点としている人々は、 最終レース前の段階で損をしていれば危険愛好の領 域にいるから。
32
株式投資である株を買った人が、その株の株価がかなり下がって、上がる見込みが少ないときも、その株を持ち続けることが多いことをプロスペクト理論で説明する際に最も適切な答えを選べ。
最初に株を買った時の状態を参照点とすると、株価が下がって損をしていれば危険愛好の領域にいるから。
33
R. ネイジェル(Nagel 1995)の「美人コンテスト・ゲ ーム」の実験で、平均値にpを掛けた数値に一番近い 数字を投票した人が勝者となるとする。ネイジェルが 提唱した思考ステップ・モデルでは、思考のステップ の第k段階では、他のすべてのプレイヤーは第 (k-1)段階の思考をしていると仮定する。このモデ ルについて、この問題と下記の問題に答えよ。 思考のステップの第0段階では、無作為に0から 100までの数字をひとつ選ぶので、平均は50になると 推定される。思考のステップの第1段階では
pが1/2なら25を選ぶ
34
思考のステップの第1段階では
pが1/5なら10を選ぶ
35
思考のステップの第2段階では
pが1/2なら12.5を選ぶ
36
思考のステップの第2段階では
pが1/5なら2を選ぶ
37
R. ネイジェル(Nagel 1995)の「美人コンテスト・ゲ ーム」の実験で、平均値にpを掛けた数値に一番近い 数字を投票した人が勝者となるとする。全ての参加者 がホモ・エコノミカスであってp=1/2である場合のナ ッシュ均衡では
平均値は0となる
38
R. ネイジェル(Nagel 1995)の「美人コンテスト・ゲ ーム」の実験で、平均値にpを掛けた数値に一番近い 数字を投票した人が勝者となるとする。全ての参加者 がホモ・エコノミカスであってp=1/2である場合の Nagel (1995)の実験結果では
実験ラウンドが繰り返されると多くの参加者はだんだん小さい数を選んだ
39
ヒューリスティックスとは
推論によらない直感が使う発見的な判断の方法
40
Tversky and Kahneman (1974) は、不確実性下のヒュ ーリスティックスを調べ、
代表性、利用可能性、アンカリングの3種類を提唱した
41
Kahneman and Frederick (2002) は属性代替を用いた 判断方法を、ヒューリスティックスの新しい定義とし た。属性代替とは、
判断に用いる目標属性を、より簡単に心に浮かぶ別の属性(ヒューリスティック属性)に置き換えること
42
Tversky and Kahneman (1974) の
代表性と利用可能性は、属性代替の特殊ケースである
43
2期間モデルのオイラー方程式では、第0期と第1期 の限界代替率は
(1+r)に等しい
44
多期間指数割引モデルのt期と(t+k)期のオイラー方程 式では、限界代替率は
(1+r)^kに等しい
45
下記の指数割引モデルの理論予測について、不況であ る期間の所得が一時的に低下したり、好況である期間 の所得が一時的に高くなったりするときの消費はどの ように変化しますか?
所得の変動に関わらず一定となるはずである。
46
指数割引モデルと双曲割引モデルを比べると
双曲割引モデルは貯蓄の先送りをしようする誘惑による時間不整合性の行動を説明できる
47
双曲割引関数を持つ意思決定者で、ナイーブな人と洗 練された人を比べると
洗練された人は将来の自分が誘惑を受けるのを知っているのでコミットメントなどの誘惑対策を行う
48
貯蓄の先送りの誘惑に対抗するためのコミットメントの方法として
非流動資産への投資がある
49
コミットメントの例としての結婚は
将来に配偶者を裏切りたくなる誘惑に対抗する。
50
Tanaka et al. (2007)の時間割引についての神経経済学 の実験研究の結果と解釈について
脳内のセロトニンレベルが高いと実験参加者は時間割引率が低いと考えられる選択を取る傾向があり、線条体上部が強く活動した。
51
強化学習の報酬予測誤差をε(t)=r(t)+δV(s(t+1))−V(s(t))と する。ここでr(t)はt期に受け取る報酬、δは割引因子、 s(t)はt期の状態、V(s(t))は状態がs(t)の時の報酬予測を 与える価値関数である。報酬予測誤差を学習信号とし て用いる強化学習について最も的確な答えをひとつ選 べ。
ε(t+1)>0ならば、実行した行動は比較的好ましいも のと考えられるので、この行動をより高い確率で取 るように学習則を更新する。
52
最近の幸福の経済学で用いられている厚生の3概念と は違うものを次から1つ選べ。
エウダイベンダサン
53
感情的幸福度とは
瞬間的あるいは一時的な喜び、悲しみ、怒りなどの快い感情と不快な感情の頻度と強度に関わる感情的な質。
54
生活満足度とは
伝統的経済学で研究されてきた効用の概念に対応する面があり、自分の生活の消費と余暇の状態を評価することが中心となる。
55
エウダイモニアとは
徳を実践して習慣づけることによって獲得し、徳を活用して生きることにより「善く生きる」「善く行っている」とほぼ同義。
56
下記から最も適切な回答をひとつ選べ。個人間の厚生比較を避けて幸福の経済学の研究を進めるためには
特定の個人の2つ以上の時点での主観的厚生のデー タが必要である
57
Clark, Diener, Georgellis, and Lucas (2008, Economic Journal) のパネルデータを用いた生活満足度の研究に ついて最も的確な答えをひとつ選べ。
結婚前後に生活満足度が上がる有意な効果が見られ、その変化は持続的ではなく、結婚2年後には有意な効果は消えてしまった。
58
下記から最も適切な回答をひとつ選べ。一国の時系列 データで見ると、イースタリン・パラドックスとは
経済成長で国民所得が増えても平均的な幸福度は上昇しないことである。
59
下記から最も適切な回答をひとつ選べ。効用の個人間比較について
公理によっては理論的に可能である場合も存在するが、可能であっても文化の違う個人間比較可能な効用を実際に測定することには困難がある。
60
Dunn et al. "Spending Money on Others Promotes Happiness"(2008, Science)の実験について最も的確な 答えをひとつ選べ。
アンケートでの予測に反して、実験で受け取ったお金を他の人のために使った被験者のほうが自分のために使った被験者よりも主観的幸福感が上がった。
61
慶應義塾大学大学院経済学研究科・商学研究科/京都 大学経済研究所連携グローバルCOEプログラムの「東 日本大震災に関する特別調査」の第1回調査の回顧評 価データによると、大震災前の2011年2月と大震災後 の調査時の2011年6月を比べて全国での幸福度は
変化しなかった人は約68%、下がった人は約4%、 上がった人が約28%であった。
62
慶應義塾大学大学院経済学研究科・商学研究科/京都 大学経済研究所連携グローバルCOEプログラムの「東 日本大震災に関する特別調査」の第1回調査の回顧評 価データによると、大震災前の2011年2月と大震災後 の調査時の2011年6月を比べて、生活満足度は不変で あるか下がったが、幸福感は上がった人々が全国で
約14%だった。