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問題一覧
1
連結基礎概念には①親会社説と②経済的単一体説がある。 それぞれの考え方を説明しなさい。
① 親会社説とは, 連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置付け, 主として親会社の株主の立場から連結財務諸表が作成されるとみる考え方をいう。 ② 経済的単一体説とは, 連結財務諸表を親会社とは区別される企業集団全体の財務諸表と位置付け, 非支配株主も含む企業集団全体の株主の立場から連結財務諸表が作成されるとみる考え方をいう。
2
連結貸借対照表における非支配株主持分の表示区分について, ① 親会社説と②経済的単一体説のそれぞれの立場から説明しなさい。
① 連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置付ける親会社説によれば, 親会社の株主の持分のみが株主資本に反映されるため、 非支配株主持分は株主資本以外の区分に表示すべきとされる。 ② 連結財務諸表を親会社とは区別される企業集団全体の財務諸表と位置付ける経済的単一体説によれば,企業集団を構成する全ての会社の株主の持分が株主資本に反映されるため、 非支配株主持分は株主資本に含めて表示すべきとされる。
3
連結損益計算書における非支配株主に帰属する当期純利益の表示方法につい て, ①親会社説と②経済的単一体説のそれぞれの立場から説明しなさい。
① 連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置付ける親会社説によれば, 連結損益計算 書の当期純利益には親会社の株主に帰属する部分のみを反映させるため, 非支配株主に帰属す る当期純利益は当期純利益の算定上控除する。 ② 連結財務諸表を親会社とは区別される企業集団全体の財務諸表と位置付ける経済的単一体説 によれば, 連結損益計算書の当期純利益には企業集団を構成する全ての会社の株主に帰属する 部分を反映させるため, 非支配株主に帰属する当期純利益を当期純利益の算定上含める。
4
平成25年の改正前の 「連結財務諸表に関する会計基準」 が、 親会社説の考え方 によっていた理由を2つ挙げなさい。
・連結財務諸表が提供する情報は, 主として親会社の投資者を対象とするものであると考えられ るため ・親会社説による処理方法が, 企業集団の経営を巡る現実感覚をより適切に反映すると考えられ るため
5
平成25年の改正後の 「連結財務諸表に関する会計基準」 が、 親会社株主に帰属する当期純利益を区分して内訳表示または付記することとした理由を2つ挙げなさい。
・親会社株主と非支配株主とではリスク及びリターンは大きく異なることを考慮すれば, 親会社株主に係る成果とそれを生み出す原資に関する情報は投資家の意思決定に引き続き有用であると考えられるため。 ・親会社株主に帰属する当期純利益と株主資本との連撃 (クリーン・サープラス関係)に配慮すべきであるため。
6
平成25年の改正後の 「連結財務諸表に関する会計基準」 が非支配株主持分を株主資本とは区別して表示することとした理由を説明しなさい。
親会社株主に帰属する当期純利益と株主資本との連繋に配慮した結果, 親会社株主に帰属する株主資本のみを株主資本として表示することとしたため。
7
子会社の判定基準には① 持株基準と②支配力基準がある。 それぞれの意義と特徴を説明しなさい。
① 持株基準とは, 親会社が直接・間接に議決権の過半数を所有しているかどうかにより子会社の判定を行う方法をいう。 持株基準によれば, 子会社の判定が客観的に行われるが, 恣意的な連結外しが行われることにより, 連結財務諸表が企業集団の実態を正しく反映しないおそれがある。 ② 支配力基準とは, 実質的な支配関係の有無に基づいて子会社の判定を行う方法をいう。 支配力基準によれば, 子会社の判定に主観的な判断が介入するおそれがあるが, 連結財務諸表に企業集団の実態を正しく反映することができる。
8
制度会計上, 子会社の判定基準として支配力基準が採用されている理由を説明しなさい。
議決権の所有割合が50%以下であっても, 役員派遣等によってその会社を事実上支配しているケースもあり、そのような被支配会社を連結の範囲に含まない連結財務諸表は,企業集団に係る情報としての有用性に欠けることになるため。
9
制度会計上, 共同支配の実態にある合弁会社に対し比例連結を採用することは認められるか, 理由とともに説明しなさい。
混然一体となっている合弁会社の資産、負債等を一律に持分比率で按分して連結財務諸表に計上することは不適切であると考えられるため, 比例連結を採用することは認められない。
10
親会社及び子会社が採用する会計方針は,同一環境下で行われた同一の性質の取引等について 原則として統一するものとされている。 その理由を説明しなさい。
同一の環境下にあるにもかかわらず, 同一の性質の取引等について連結会社間で会計方針が異なっている場合には, その個別財務諸表を基礎とした連結財務諸表が企業集団の財政状態, 経営成績及びキャッシュ・フローの状況の適切な表示を損なうため。
11
同一環境下で行われた同一の性質の取引等について, 親会社及び子会社が採用する会計方針は, 原則として統一するものとされており、 親会社と各子会社の会計方針を画一的に統一することは求められていない。 その理由を説明しなさい。
親会社と各子会社は, それぞれの置かれた環境の下で経営活動を行っているため、 親会社と各子会社の会計方針を画一的に統一することは,かえって連結財務諸表が企業集団の財政状態, 経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適切に表示しなくなることが理由である。
12
在外子会社の財務諸表が国際財務報告基準 (IFRS) または米国会計基準に準拠して作成されている場合, それを連結決算手続上利用することができるものの、一部の項目については在外子会社の会計処理を修正することが求められている。この修正が要請されている理由を説明しなさい。
一部の項目については,各会計基準に準拠した会計処理が,我が国の会計基準に共通する考え方と乖離するものであり, 一般に当該差異に重要性があるため, 修正なしに連結財務諸表に反映することは合理的でなく, その修正に実務上の支障は少ない。 そこで, 財務報告において提供される情報の中で特に重要とされる当期純利益が適切に計上されるように, 会計処理を修正することが要請されている。
13
在外子会社の財務諸表が国際財務報告基準 (IFRS) または米国会計基準に準拠して作成されている場合, それを連結決算手続上利用することができるものの,一部の項目については各会計基準に準拠した会計処理が, 「我が国の会計基準に共通する考え方と乖離する」 ものであることから, 在外子会社の会計処理を修正することが求められている。 この我が国の会計基準に共通する考え方とは何か, 例示しなさい。
我が国の会計基準に共通する考え方としては, 当期純利益を測定する上での費用配分,当期純利益と株主資本との連繋及び投資の性格に応じた資産及び負債の評価などが挙げられる。
14
子会社の資産及び負債の評価方法には①部分時価評価法と②全面時価評価法がある。 それぞれの考え方, 時価評価方法及び整合する連結基礎概念を説明しなさい。
① 部分時価評価法は、 親会社が投資を行った際の親会社の持分を重視する考え方が基礎にあり、子会社の資産及び負債のうち、 親会社の持分に相当する部分について, 株式の取得日ごとに当該日における時価により評価する方法である。 この方法は, 親会社持分を重視する親会社説と整合的である。 ② 全面時価評価法は、 親会社が子会社を支配した結果, 子会社が企業集団に含まれることになった事実を重視する考え方が基礎にあり, 支配獲得日において, 子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価する方法である。 この方法は、 企業集団全体の株主持分を重視する経済的単一体説と整合的である。
15
子会社株式の投資が複数の取引により達成された場合、親会社の子会社に対する投資の金額については、①支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額とする方法と②支配獲得日の時価とする方法がある。それぞれの論拠を、投資の継続性の観点から説明しなさい。
① 当初の非支配株主としての投資から, 影響力を及ぼすに至る投資, そして支配を獲得することとなる投資といった一連の取得取引は,当該投資先の企業に対する継続した投資であると考えるならば,個々の交換取引はあくまでその時点での等価交換取引であり, 取得が複数の交換取引により達成された場合, 取得原価は個々の交換取引ごとに算定した原価の合計額とすることが経済的実態を適切に反映する。 ② 親会社が子会社となる会社に対する支配を獲得した場合には、 当該支配の獲得により, 過去に所有していた投資の実態または本質が変化し, 支配獲得時にいったん投資が清算され、 改めて投資を行ったものと考えるならば,当該子会社の支配を獲得するために必要な支出額である支配獲得日における時価を新たな投資原価とすることが経済的実態を適切に反映する。
16
子会社株式の取得が複数の取引により達成された場合, 親会社の子会社に対する投資の金額については, ①支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額とする方法と②支配獲得日の時価とする方法がある。 それぞれの論拠を, 投資の継続性の観点から説明しなさい。
①当初の非支配株主としての投資から、影響力を及ぼすに至る投資、そして支配を獲得することとなる投資といった一連の取得取引は、当該投資先の企業に対する継続した投資であると考えるならば、個々の交換取引はあくまでその時点での等価交換取引であり、取得が複数の交換取引により達成された場合、取得原価は個々の交換取引ごとに算定した原価の合計額とすることが経済的実態を適切に反映する。 ②親会社が子会社となる会社に対する支配を獲得した場合には、当該支配の獲得により過去に所有していた投資の実態または本質が変化し、支配獲得時にいったん投資が清算され、改めて投資を行なったものと考えるならば、当該子会社の支配を獲得するために必要な支出額である支配獲得日における時価を新たな投資原価とすることが経済的実態を適切に反映する。
17
連結財務諸表におけるのれんの計上範囲については, ①購入(買入) のれん方式と②全部のれん方式がある。 それぞれの方式の論拠を説明しなさい。
①・のれんの計上は有償取得の場合に限られるべきであるが, 非支配株主持分に相当するのれんは自己創設のれんにほかならず, この計上を禁止している現行の制度会計と整合しない。 ・支配獲得時における非支配株主持分を親会社持分から推定した額によって測定する場合, 客観的な測定ができない。 ②のれんは資産の定義を満たすと考えられるため, 全部連結の観点からは, 他の資産と同様に親会社持分にかかわらず, その総額で表示することが利用者に対して有用な情報を提供する。 ・経済的単一体説の立場からは、 親会社株主と非支配株主は同等であるため、 非支配株主持分に相当する部分についても計上すべきである。
18
子会社に欠損が生じている場合の会計処理について, 連結基礎概念と関連させて説明しなさい。
親会社説では非支配株主に配分する子会社の欠損を非支配株主が負担すべき額に限定する。これは,非支配株主を企業集団の外部者とみる親会社説では, 非支配株主には子会社の欠損を負担させないことを理由とする。 経済的単一体説では子会社の欠損を親会社と非支配株主の持分割合に応じてそれぞれに配分する。これは,非支配株主も企業集団の内部者とみる経済的単一体説では, 非支配株主にも子会社の欠損を負担させることを理由とする。
19
子会社株式の追加取得及び一部売却の会計処理については2つの考え方がある。これについて, 連結基礎概念と関連させて説明しなさい。
非支配株主を企業集団の外部者とみる親会社説では, 子会社株式の追加取得及び一部売却は外部者との取引として、 損益取引として取扱う。 そのため, 追加取得で生じた差額はのれんまたは 負ののれんとして, また, 一部売却で生じた差額は子会社株式の売却損益として, それぞれ処理する。 非支配株主も企業集団の内部者とみる経済的単一体説では, 子会社株式の追加取得及び一部売却は内部者との取引として, 資本取引として取扱う。 そのため, のれんや売却損益は計上されず, 追加取得及び一部売却で生じた差額を資本剰余金として処理する。
20
子会社株式を一部売却した場合 (支配は継続しているものとする) ののれんの取扱いについては,① のれんを減額する方法と②のれんを減額しない方法がある。 それぞれの論拠を説明しなさい。
① のれんの未償却額を減額しない場合には, 一部売却した親会社持分相当額に対応するのれんの償却費が次期以降にも認識され, 「親会社株主に帰属する当期純利益」 が適切ではなくなる。 購入のれん方式を採用している以上, のれんは投資原価の一部であり, 子会社株式を一部売却した場合には売却割合だけ投資原価を減額するべきである。 ・のれんは親会社持分相当額しか計上されていないという特殊性があるため、 他の資産や負債とは異なる会計処理が許容される。 ②支配獲得後の追加取得時にはのれんが追加計上されない一方, 一部売却時にのれんを減額すると, 追加取得時の会計処理と整合した取扱いにはならない。
21
アップ・ストリームによる未実現損益の消去方式について, ① 親会社説と②経済的単一体説のそれぞれの立場から説明しなさい。
① 非支配株主を企業集団の外部者とみる親会社説では, 内部取引の損益のうち非支配株主持分相当額は実現しているものとされるため, 親会社持分相当額のみが未実現損益として消去され,これを親会社が負担する部分消去・親会社負担方式による。 ② 非支配株主も企業集団の内部者とみる経済的単一体説では、内部取引の損益はすべて未実現とされるため, 親会社持分相当額と非支配株主持分相当額の全額が未実現損益として消去され,これを親会社株主と非支配株主が負担する全額消去・持分按分負担方式による。
22
次の ① ~ ④ について, 連結と持分法のそれぞれの会計処理を簡潔に説明しなさい。 ① 資産及び負債の時価評価の範囲 ② 段階取得の場合の会計処理 ③ 付随費用の会計処理 ④ 追加取得及び一部売却の会計処理
①連結 親会社の持分に相当する部分のみならず, 非支配株主持分に相当する部分を含めて,全てを支配獲得日の時価により評価する (全面時価評価法)。 持分法 投資会社の持分に相当する部分に限定する方法により、原則として, 投資日ごとに当該日における時価によって評価する (部分時価評価法)。 ②連結:支配獲得日に一括して投資と資本を相殺消去するため, 投資の支配獲得日における時価とこれに対応する子会社の資本との差額を, のれんまたは負ののれんとして処理する。 なお, 支配獲得日における時価と支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額との差額は当期の段階取得に係る損益として処理する。 持分法 持分法適用関連会社に対する投資が段階的に行われている場合であっても、原則として、 投資日ごとの原価とこれに対応する被投資会社の資本との差額を, のれんまたは負ののれんとして処理する。 ③連結:発生した連結会計年度の費用として処理する。 持分法:取得原価に含める。 ④連結: 追加取得持分と追加取得額との差額または売却 (減少) 持分と売却価額 (払込額)との差額は、資本剰余金とされる。 持分法: 追加取得持分と追加取得額との差額または売却 (減少) 持分と売却価額 (払込額)との差額は、のれんもしくは負ののれんまたは売却損益とされる。
23
非連結子会社と関連会社では, 持分法を適用する際の資産及び負債の評価方法が異なる。これについて、 理由とともに説明しなさい。
非連結子会社の場合には当該非連結子会社を支配しており, 連結子会社の場合との整合性を図るため全面時価評価法によるが、 関連会社の場合には影響力を有しているものの, 関連会社を支配しているわけではないため部分時価評価法による。
24
投資会社が持分法適用関連会社に資産を売却したことに伴う未実現損益の消去方式について、 理由とともに説明しなさい。
未実現損益のうち第三者の持分部分については、連結財務諸表上, 実現したものと考えられるため、売手側である投資会社に生じた未実現損益のうち、 原則として関連会社に対する投資会社の持分相当額を消去する持分相当額消去方式による。
25
税効果会計を適用しない場合の問題点について,損益計算書及び貸借対照表のそれぞれの観点から説明しなさい。
税効果会計を適用しない場合は, 課税所得を基礎として計算された法人税等の額が税金費用として計上される。 その結果, 会計上の利益と課税所得との間に差異があるときは,損益計算書上, 法人税等の額が法人税等を控除する前の当期純利益と期間的に対応せず,また, 貸借対照表上、 将来の法人税等の支払額に対する影響が表示されないという問題点が指摘される。
26
税効果会計の方法としての① 繰延法と② 資産負債法のそれぞれについて, 意義を述べなさい。
① 繰延法とは, 会計上の収益または費用の額と税務上の益金または損金の額との間に差異が生じており,当該差異のうち損益の期間帰属の相違に基づくもの (期間差異) について 当該差異が生じた年度に当該差異による税金の納付額または軽減額を当該差異が解消する年度まで,繰延税金資産または繰延税金負債として計上する方法をいう。 ② 資産負債法とは、会計上の資産または負債の額と課税所得計算上の資産または負債の額との間に差異が生じており、 当該差異が解消する時にその期の課税所得を減額または増額する効果を有する場合に,当該差異 (一時差異) が生じた年度にそれに係る繰延税金資産または繰延税金負債を計上する方法をいう。
27
① 繰延法と② 資産負債法について, それぞれの考え方 (税効果の意味, 適用税率)を説明しなさい。
① 繰延法は, 差異が発生した期間に関心を向け, 差異の発生年度の損益計算書上, 法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等との対応を図ることを重視する。 繰延法における税効果額は、差異発生年度に支払った法人税等の金額をどれだけ減少あるいは増加させたのかを意味するため, 適用される税率は差異の発生年度の課税所得計算に適用された税率であり,その後に税率の変更があっても税効果額の修正は行わない。 ② 資産負債法は, 差異が解消する将来の期間に関心を向け, 差異の解消年度における税金支払額に対してどれだけの影響を有するのかを見積もった額を貸借対照表に示すことを重視する。 資産負債法における税効果額は, 差異解消年度に支払うべき法人税等の金額をどれだけ減少あるいは増加させるのかを意味するため, 適用される税率は差異の解消見込年度に適用される税率であり, その後に税率の変更があれば税効果額の修正を行う。
28
制度会計上, 税効果会計の方法として資産負債法が採用されている理由を2つ挙げなさい。
・資産負債法は,税率変更に応じて繰延税金資産または繰延税金負債の金額を修正するため, 繰延税金資産または繰延税金負債は将来の法人税等の支払額を減額する効果または増額する効果をより適切に示すことができる。 ・資産負債法では, 資産の評価差額に対する税効果額を税効果会計の対象に含めることができる。
29
期間差異と一時差異の意義と両者の違いを示すとともに, 一時差異が税効果会計の対象とされる理由を説明しなさい。
期間差異 : 会計上の収益 費用の金額と税務上の益金 損金の額との相違のうち収益 費用の期間帰属の相違に基づく差異 一時差異: 会計上の資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額 違い: 資産または負債の評価替えにより生じた評価差額が直接純資産の部に計上され,かつ, 課税所得の計算に含まれていない場合の当該差額 (評価差額) は, 一時差異ではあるが期間差異ではないため,この部分について期間差異と一時差異の範囲が異なる。 理由: 差異解消期間における税金支払額に対してどれだけの影響を有しているのかを見積もった金額を貸借対照表に表示するためには, 期間差異のみならず, 評価・換算差額等にも税効果を適用する必要があるため。
30
税効果会計の適用上, 税務上の繰越欠損金はどのように取扱われるか説明しなさい。
税務上の繰越欠損金は一時差異ではないが, その発生年度の翌期以降で繰越期限切れとなるまでの期間(繰越期間) に課税所得が生じた場合には, 課税所得を減額することができ, その結果, 課税所得が生じた年度の法人税等として納付すべき額は、税務上の繰越欠損金が存在しない場合に比べて軽減されるため,一時差異と同様の税効果を有する。 したがって, 税効果会計の適用上、税務上の繰越欠損金は一時差異に準ずるものとして取扱う。
31
税効果会計の方法として資産負債法を採用した場合における繰延税金資産及び繰延税金負債の性格について説明しなさい。
・繰延税金資産は、 将来の法人税等の支払額を減額する効果を有し, 一般的には法人税等の前払額に相当するため, 資産としての性格を有する。 ・繰延税金負債は、 将来の法人税等の支払額を増額する効果を有し、 法人税等の未払額に相当するため、 負債としての性格を有する。
32
繰延税金資産については、 将来の回収可能性について検討しなければならない。 その理由を説明するとともに, 回収可能性の判断要件を3つ挙げなさい。
繰延税金資産は, 将来の法人税等の支払額を減額する効果を有し, 一般的には法人税等の前払額に相当するが,これは将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金を超える課税所得が計上されることを前提としている。そのため,次に示す回収可能性の判断要件に基づき, 繰延税金資産が将来の税金負担額を軽減する効果を有するかどうかを判断しなければならない。 ① 収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得 ② タックスプランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得 ③ 将来加算一時差異
33
未実現利益の消去に係る税効果の会計処理について, ①繰延税金資産の計上額,②適用される税率及び税率変更時の取扱い, ③繰延税金資産の回収可能性の検討のそれぞれを, 理由とともに説明しなさい。
① 未実現利益が発生した連結会社と一時差異の対象となった資産を保有する連結会社が異なるという特殊性を考慮し、売却元の連結会社において売却年度に納付した当該未実現利益に係る税金の額を繰延税金資産として計上する。 ② 売却元での課税関係は完了しており, 売却元の連結会社で発生した税金は確定した金額であるため, 未実現利益が発生した連結会社 (売却元) に適用された税率を使用し、 未実現利益の消去に係る繰延税金資産の額については、税法の改正に伴い税率等が変更されても修正しない。 ③ 売却元での課税関係は完了しており, 売却元の連結会社で発生した税金は確定した金額であることから、 他の繰延税金資産とその性格が異なるため, 繰延税金資産の回収可能性の判断要件は適用しない。
34
未実現損益の消去に係る一時差異の会計処理について, ①繰延法と②資産負債法のそれぞれによった場合の損益計算に与える影響を説明しなさい。
① 繰延法によれば, 未実現利益を消去する時に当該利益に対して納付した税金相当額を繰延税金資産として計上し税金費用を消去することにより、 実際に税金を納付した時点において利益と税金費用が対応する。 ② 資産負債法によれば, 未実現利益が実現した時に当該利益に対して納付すると仮定した場合の税金相当額を税金費用として計上することにより、 実際に資産が売却された時点において利益と税金費用が対応する。
35
子会社株式等の取得に伴い, 資本連結手続上,認識したのれんについては,一時差異に該当するものの税効果は認識しない。 その理由を説明しなさい。
のれんは税務上の資産計上もその償却額の損金算入も認められておらず,また, 子会社における個別貸借対照表上の簿価は存在しないため、 将来加算一時差異となる。 しかし, のれんは,投資額と子会社の資産及び負債の時価評価の純額の親会社持分額との差額, すなわち配分残余としての性格を有しており, のれんに対して子会社が税効果を認識すればのれんが変動し, それに対してまた税効果を認識するという循環が生じることから, 税効果は認識しない。
36
繰延税金資産及び繰延税金負債の表示については, ①流動・非流動区分を行う方法と② すべて非流動区分に表示する方法がある。 それぞれの方法の論拠を説明しなさい。
① 一時差異等に関連した資産及び負債と, その税金費用に関する資産及び負債(当該一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債) が同時に取崩されるという特徴があるため,これらを同一の区分に表示することが適切である。 ② 繰延税金資産は換金性のある資産ではなく, また, 決算日後に税金を納付する我が国においては,1年以内に解消される一時差異等について, 1年以内にキャッシュ・フローは生じないため, すべてを非流動区分に表示することが適切である。
37
外貨だて資産・負債の換算方法としての流動・非流動法の論拠を説明しなさい。
短期間のうちに現金化ないし決済される流動項目に関わる為替相場の変動の影響については,確定的な性格のものとみなして, それが生じた期に認識することが投資家に対する有益な情報となるため, 決算時の為替相場による円換算額を付する。 一方現金化決済されるまでの期間が長期にわたる非流動項目に関わる為替相場の変動の影響については, それが生じた時点では暫定的な性質のものにすぎず, 為替相場変動の不確実性を考慮すれば, 不確定な損益を認識することで投資家の判断を誤らせるおそれがあるため, 取得時または取引発生時の為替相場による円換算額を付する。
38
外貨だて資産・負債の換算方法としての貨幣 非貨幣法の論拠を説明しなさい。
貨幣項目は法令または契約により金額が確定しており, 将来金銭の流出または流入があるため、決算時の為替相場による換算によって決算日現在の自国通貨による回収可能額または弁済額を表示すべきである。 一方, 非貨幣項目は一般に取得時または取引発生時における支出額または収入額で測定されるものであるため, 取得時または取引発生時の為替相場による換算によって自国通貨による支出額または収入額を表示すべきである。
39
外貨だて資産・負債の換算方法としてのテンポラル法の論拠を説明しなさい。
外貨によって既に測定されている項目の属性を変更しないように, 測定時点と同じ時点における為替相場により換算するため, 測定数値の属性を維持した換算を行うことができる。
40
平成11年に外貨建取引等会計処理基準が改訂された際、外貨建金銭債権債務について流動・非流動法による区分を設けないこととした理由を説明しなさい。
外貨建金銭債権債務については, 外貨額では時価の変動リスクを負わず、したがって時価評価の対象とならないものであっても, 円貨額では為替相場の変動リスクを負っていることを重視し,流動・非流動法による区分は設けずに決算時の為替相場により換算することとした。 これは,金融商品に関する会計基準の考え方との整合性等を考慮し, 為替相場の変動を財務諸表に反映させることをより重視する観点を重視したためである。
41
外貨建金銭債権債務について、 決算時の為替相場による円換算額を付する理由を説明しなさい。
外貨建金銭債権債務については, 外貨額では時価の変動リスクを負わず、したがって時価評価の対象とならないものであっても、円貨額では為替相場の変動リスクを負っていることを重視したため。
42
外貨建未収収益及び未払い費用について, 決算時の為替相場による円換算額を付する理由を説明しなさい。
外貨建未収収益及び未払費用は, 外貨建金銭債権債務を基礎とした経過勘定であり, 期日が到来した時点で外貨建金銭債権債務となるため, 外貨建金銭債権債務に準ずるものとして扱うことが適切であるため。
43
外貨建満期保有目的の債券について, 決算時の為替相場による円換算額を付する理由を説明しなさい。
金銭債権との類似性を考慮し、 外貨建金銭債権と同様に処理することとしたため。
44
外貨建売買目的有価証券及び外貨建その他有価証券について、 時価の算定に決算時の為替相場を用いる理由を説明しなさい。
時価評価が行われる有価証券の換算は, その円貨額による時価評価額を求める過程としての換算であるため。
45
外貨建子会社株式及び外貨建関連会社株式について, 取得時の為替相場による円換算額を付する理由を説明しなさい。
子会社株式及び関連会社株式への投資は事業投資としての性格を有し、 外貨の属性が取得原価であるため。
46
その他有価証券に属する債券については, 外国通貨による時価を決算時の為替相場で換算した金額のうち, 外国通貨による時価の変動に係る換算差額を評価差額とし、それ以外の換算差額については為替差損益として処理することができる。この会計処理の背景にある考え方を説明しなさい。
その他有価証券に属する債券については、 金銭債権債務の換算方法との整合性の観点から, 価格変動リスクと為替変動リスクを分解して取扱い, 外国通貨による取得原価に係る換算差額は当期の損益に計上すべきとする考え方が背景にある。
47
外貨建新株予約権について, 決算時の円貨への換算方法とその理由を説明しなさい。
外貨建自社発行新株予約権の決算時の円貨への換算は, 発行時の為替相場による。 これは, 新株予約権が将来株主資本または利益に振替えられる可能性のある仮勘定であり、返済義務のある負債ではないことを理由とする。
48
外貨建転換社債型新株予約権付社債の権利行使時 (新株を発行するものとする) の換算には, ①新株の発行価額を権利行使時の為替相場により換算する方法と②新株の発行価額を社債発行時の為替相場により換算する方法がある。 それぞれの方法の基礎にある考え方を説明しなさい。
① 転換社債型新株予約権付社債の発行と権利行使による新株の発行をいったん切断して考え、転換社債型新株予約権付社債の権利行使による新株の発行を現物出資や相殺と解する考え方。 ② 転換社債型新株予約権付社債の発行を新株予約権の権利行使による新株の発行の一環として考え, 転換社債型新株予約権付社債の発行を潜在的株式の発行と解する考え方。
49
外貨建取引の処理基準である一取引基準と二取引基準のそれぞれについて, 意義及び会計処理について説明しなさい。
一取引基準とは, 外貨建取引と代金決済取引とを連続した一つの取引とみなして会計処理を行う考え方をいう。 これによれば, 取引時から決済時までの為替相場の変動の影響が取引価額の修正により営業損益として処理され, 円貨建取引価額は決済時の為替相場により換算した金額で確定する。 二取引基準とは, 外貨建取引と代金決済取引とを独立した別個の取引とみなして会計処理を行う考え方をいう。 これによれば, 円貨建取引価額は取引時の為替相場により換算した金額で確定し, 取引時から決済時までの為替相場の変動の影響が財務損益として処理される。
50
外貨建取引の処理基準である一取引基準と二取引基準のそれぞれについて,論拠を説明しなさい。
いち取引基準は,企業が為替相場の変動を考慮に入れ, その最終的な決済額を見込んで取引条件を決定しているならば, 為替相場の変動の影響を営業損益に含めて処理することが実務感覚に合致していることを論拠とする。 二取引基準は, 為替相場の変動により発生した損益が, 財務活動としての為替対策の巧拙を示すものと考えるならば, 為替相場の変動の影響を独立に財務損益として処理することが企業内容開示の観点から適切であることを論拠とする。
51
外貨建金銭債権債務に係る為替相場の変動リスクをヘッジする目的で為替予約等を行う場合, 特別な会計処理としてのヘッジ会計は不要となる。 その理由を説明しなさい。
この場合, ヘッジ対象である外貨建金銭債権債務には決算時の為替相場による円換算額が付され、 換算差額が当期の為替差損益として処理される。 一方, ヘッジ手段である為替予約等は時価をもって貸借対照表価額とされ、 評価差額が当期の損益として処理される。 このように, ヘッジ対象に係る換算差額とヘッジ手段に係る評価差額が同時に損益計算書に計上され, ヘッジの効果を自動的に反映させることができるため, ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し, ヘッジの効果を会計に反映させるための特別な会計処理としてのヘッジ会計は不要となる。
52
その他有価証券に分類される外貨建有価証券に為替予約等の振当処理を行うことは可能か, 理由とともに説明しなさい。
振当処理の対象となる外貨建金銭債権債務等は, 為替予約等が振当処理されることにより将来のキャッシュ・フローが固定されるものに限られる。 この点, 外貨建満期保有目的債券以外の外貨建有価証券については, その保有目的が多義的であることから売却時期が未確定であり, また, 時価の変動により受取る外貨金額が変動することから, 為替予約等によりキャッシュ・フローを固定することは困難であると考えられる。 したがって, その他有価証券に分類される外貨建有価証券については, たとえヘッジ会計の要件を満たした場合でも、為替予約等の振当処理は認められない。
53
①本国主義と②現地主義のそれぞれについて, その考え方、 在外事業体の外貨表示財務諸表の位置付け及び換算に求められる効果と整合する換算方法を説明しなさい。
① 本国主義とは,在外事業体を従属的事業体と位置付け、その活動を本国の事業体の一部ないし延長とみる考え方である。 これによれば、在外事業体の財務諸表の構成要素は本国の事業体の財務諸表の構成要素の一部として意味をもつため、 換算の前後において資産・負債の属性を維持し、 あたかも本国の事業体がその取引ごとに円貨で会計処理を行ったかのような換算結果を得られることが求められる。したがって, テンポラル法が整合する。 ② 現地主義とは、 在外事業体を独立事業体と位置付け、その活動を本国の事業体から独立して行っているとみる考え方である。これによれば、 在外事業体の外貨表示財務諸表自体が独立した財務諸表としての意味をもつため、 財務諸表項目相互の比率を換算前後で保持することが求められる。したがって, 決算日レート法が整合する。
54
外貨表示財務諸表項目の換算方法としてのテンポラル法について, その長所及び短所をそれぞれ説明しなさい。
(長所) ・測定時点と同じ時点における為替相場により換算するため, 測定数値の属性を維持した換算を行うことができる。 ・在外事業体の取引を当初から本国の事業体が行っていたならば付されたはずの円貨額に換算することができる。 (短所) ・複数の為替相場を用いて換算を行うため、 換算のパラドックスが生じることがある。 ・複数の為替相場を用いて換算を行うため、 事務的に煩雑である。
55
外貨表示財務諸表項目の換算方法としての決算日レート法について, その長所及び短所をそれぞれ説明しなさい。
(長所) ・決算日レート法によると、 在外事業体の財務諸表項目相互の比率を換算前後で保持することができるため、 換算のパラドックスが生じない。 ・単一の為替相場を用いて換算を行うため、実務的に簡便である。 (短所) ・外貨では過去の取引価額で測定されている項目についても決算時の為替相場により換算することで、測定数値の属性を変更してしまうことがある。
56
在外支店の外貨表示財務諸表項目の換算に関する考え方と原則的な換算方法について説明しなさい。
在外支店の外貨表示財務諸表項目の換算については,在外支店を本国の本店の一部ないし延長 とみる本国主義の考え方が採られている。 すなわち, 在外支店の財務諸表の構成要素は個別財務諸表の構成要素となることから, 本店の外貨建項目の換算基準と整合的であることが望ましいと考えられるため、あたかも本店がその取引ごとに円貨で会計処理を行ったかのような換算結果を得ることができるテンポラル法が原則的な換算方法として採用されている。
57
在外子会社等の外貨表示財務諸表項目の換算に関する考え方と換算方法について説明しなさい。
在外子会社等の外貨表示財務諸表項目の換算については,在外子会社等を本国の親会社とは独立したものとみる現地主義の考え方が採られている。 すなわち, 在外子会社等では外貨表示財務諸表自体が独立した財務諸表としての意味をもつと考えられていることから, 現地通貨による測定値そのものが重要視されるため, 外貨表示財務諸表における項目相互の比率を換算前後で保持することができる決算日レート法が換算方法として採用されている。
58
在外子会社等の収益及び費用の換算には, ①期中平均相場により換算する方法と②決算時の為替相場により換算する方法がある。 それぞれの方法の論拠を説明しなさい。
① 当期純利益は1期間にわたって計上されたものであることから, 当期純利益を構成する収益および費用は期中平均相場によって換算することが望ましいため。 ② 当期純利益は決算時に確定されたものであることから, 当期純利益を構成する収益および費用は決算時の為替相場によって換算することが望ましいため。
59
現行制度における外貨表示財務諸表項目の換算は,在外事業体の法的形態に基づき, 在外支店はテンポラル法が, 在外子会社は決算日レート法が, それぞれ適用されている。このように法的形態に基づいて在外事業体の外貨表示財務諸表項目の換算方法を使い分けることの問題点について説明しなさい。
在外事業体の法的形態として支店と子会社のいずれを採用するかは,必ずしも事業の独立性の程度という経済的実態の相違のみを考慮して決定されるものではないため, 現実には事業の独立性の程度が高い在外支店や, 事業の独立性の低い在外子会社等が存在する。 このため、 在外事業体の法的形態に基づき外貨建財務諸表項目の換算方法を使い分けると, 事業の独立性の程度が同ーであり経済的実態に大差がない場合でも、 支店と子会社等との間で異なる換算方法が採用されたり、事業の独立性の程度が異なり経済的実態が全く異なる場合でも, 支店間または子会社等間で同一の換算方法が採用されたりするため, 財務諸表が経済的実態を示さなくなるという問題が生じる。
60
為替換算調整勘定を資産または負債としない理由を説明しなさい。
為替換算調整勘定は在外子会社等の貸借対照表項目の円貨への換算手続の結果発生する項目であり、資産性または負債性を有していないため。
61
為替換算調整勘定を当期の損益としない理由を説明しなさい。
為替換算調整勘定は在外子会社等の貸借対照表項目の円貨への換算手続の結果発生し、 在外子会社等の経営成績とは無関係に発生するものであるため。
62
在外子会社ののれんの換算には, ① 発生時の為替相場により換算する方法と②決算時の為替相場により換算する方法がある。 それぞれの方法の論拠を説明しなさい。
① のれんは親会社の投資と子会社の資本の相殺消去の結果生じる親会社による取得原価の一部であり、 親会社に帰属する資産と考えると、 親会社の他の資産と同様に, 発生時の為替相場により換算し, 為替相場の変動による影響を反映させるべきではない。 ② のれんは子会社に存在する超過収益力であり, 子会社に帰属する資産と考えると, 在外子会社の取得により生じたのれんは現地通貨で発生したものであるため, 子会社の他の資産と同様に,各期の為替相場の変動を反映させるべきである。
63
株主資本等変動計算書の記載範囲については, ① 純資産の部のすべての項目とする考え方と② 純資産の部のうち株主資本のみとする考え方がある。 それぞれの論拠を2つずつ挙げなさい。
① 資産と負債の差額である純資産について, 国際的な会計基準では,株主資本以外の項目についても、一会計期間の変動を開示する考え方であるため, 国際的な会計基準との調和を重視すべきである。 ・評価・換算差額等の残高が大きい場合には, その変動が将来の株主資本の変動に大きな影響を与える可能性があり, その変動事由を示すことも財務諸表利用者にとって有用な場合がある。 ② 財務報告における情報開示の中で、 財務諸表利用者にとって特に重要な情報は投資の成果を表す利益の情報であり、 当該情報の主要な利用者であり受益者である株主に対して,当期純利益とこれを生み出す株主資本との関係を示すことが重要である。 ・ 包括利益は当期純利益を超える有用性が確認されていないといわれることから, 評価・換算差額等については変動事由ごとに表示することが必ずしも必要とはいえない。
64
制度会計上, 株主資本等変動計算書の表示方法は,株主資本とそれ以外の項目とで差異が設けられている。 その理由を説明しなさい。
表示方法に差異が設けられたのは, 株主資本とそれ以外の項目とでは一会計期間における変動事由ごとの金額に関する情報の有用性が異なること, また, 株主資本以外の各項目を変動事由ごとに表示することに対する事務負担の増大などを考慮したためである。
65
包括利益及びその他の包括利益の内訳を表示する目的を述べるとともに, 包括利益の表示により期待される効果を説明しなさい。
包括利益及びその他の包括利益の内訳を表示する目的は, 期中に認識された取引及び経済的事象 (資本取引を除く) により生じた純資産の変動を報告するとともに, その他の包括利益の内訳項目をより明瞭に開示することである。 包括利益の表示によって提供される情報は, 投資家等の財務諸表利用者が企業全体の事業活動について検討するのに役立つことが期待されるとともに, 貸借対照表との連携 (純資産と包括利益とのクリーンサープラス関係)を明示することを通じて, 財務諸表の理解可能性と比較可能性を高め、 また、国際的な会計基準とのコンバージェンスにも資する。
66
純利益の問題点を指摘することにより, 包括利益の優位性を主張する見解がある。これについて説明しなさい。
未実現の評価差額及び換算差額を, 経営者の意思によっていつでも実現させて利益に算入することができる純利益は, 恣意的に調整することができるため, 利益の透明性を確保することができないという問題がある。 これに対し 未実現の評価差額及び換算差額の変動額がその他の包括利益として利益に含められる包括利益は、恣意的な調整を行うことができないため, 利益の透明性を確保できる点に優位性があるとされる。
67
その他の包括利益のリサイクリングについては, ① リサイクリングをしない方法と② リサイクリングをする方法がある。 それぞれの意義を述べるとともに, 特徴を純利益の性質, クリーン・サープラス関係, 一致の原則の成否及び包括利益の二重計上の観点から説明しなさい。
① これは過去にその他の包括利益として認識された項目を,当期純利益を構成する項目として認識しない方法であり, その他の包括利益が実現した際に利益剰余金に直接加減する。そのため、 「純利益=リスクから解放された投資の成果 (実現利益)」の関係, 株主資本と純利益の間のクリーンサープラス関係, 純利益についての一致の原則はいずれも成立しない。 また,この方法では, 過去にその他の包括利益とされた金額を純利益の計算に含めないため, 包括利益の二重計上が回避される。 ② これは過去にその他の包括利益として認識された項目を, 当期純利益を構成する項目として再度認識する方法であり, その他の包括利益が実現した際に当期純利益を通じて利益剰余金が増減する。そのため, 「純利益=リスクから解放された投資の成果 (実現利益)」 の関係、株主資本と純利益の間のクリーンサープラス関係, 純利益についての一致の原則はいずれも成立する。また、この方法では, 過去にその他の包括利益とされた金額が純利益の計算に含められるため,そのままでは包括利益が二重に計上されるが, その他の包括利益から控除する処理を行うことにより, 包括利益の二重計上が回避される。
68
リサイクリングの必要性を, 企業価値評価の観点から説明しなさい。
リサイクリングにより, 純利益に確定した投資の成果という性格が備わるとともに, 純利益情報の完全性がキャッシュ・フローとの整合性で裏付けられるため, 純利益が総合的な業績指標としての有用性を備える。 また, 報告主体の所有者に帰属する純利益と資本取引を除く株主資本の増減額が一致するという関係が成立するため, 会計情報の信頼性を高められる。 その結果, 純利益が企業成果の予測を通じた企業価値評価に役立つものとなるため, リサイクリングが必要とされる。
69
包括利益を表示する計算書の形式について, ①2計算書方式と②1計算書方式のそれぞれの利点を説明しなさい。
① 当期純利益と包括利益とが明確に区別され、 当期純利益が強調されるため, 当期純利益を重視するわが国の考え方と整合的である。 ② 当期純利益と包括利益をまとめて開示するため、 一覧性 明瞭性 理解可能性等の点で利点がある。
70
市場性のある一時所有の株式等が「現金同等物」 に含まれない理由を説明しなさい。
一時所有の有価証券のうち、 価値変動リスクを有する株式等の金融商品と短期の支払に充てることを目的とした現金及び現金同等物とは異なる投資意図及び内部統制手続の下に取引が行われるのが一般的であり, 株式等の価値変動リスクを有する金融商品への資金運用は, それが短期間であっても、投資活動としての性格を有すると考えられるため。
71
「短期投資」に該当しない, 運用期間が比較的長期の投資が 「現金同等物」 に含まれない理由を説明しなさい。
運用期間が比較的長期のものについては,通常, 短期の支払資金準備のためというよりは,資金管理上は異なる意図をもって運用されていると考えられるため。
72
「現金及び現金同等物」 の内容が会計方針としての注記を求められる理由を説明しなさい。
現金同等物として具体的に何を含めるかについては,各企業の資金管理活動により異なることが予想されるため,一律の基準を設けることは必ずしも適切ではない。 したがって, 現金同等物の範囲は経営者の判断に委ねることが適当と考えられるため, 資金の範囲に含めた現金及び現金同等物の内容に関して、 会計方針として注記する必要がある。
73
機械を割賦取引により取得した場合の割賦代金等の支払額は, キャッシュ・フロー計算書においてどの区分に記載するか, 理由とともに説明しなさい。
機械を割賦取引により取得した場合の割賦代金等の支払は, ファイナンスとしての性格が強いと考えられることから, その支払額は 「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する。
74
法人税等に係るキャッシュフローを 「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する理由を説明しなさい。
法人税等に係るキャッシュフローは、 営業活動, 投資活動及び財務活動の結果として生じるものであることから, 三つの区分のそれぞれに分けて記載する方法も考えられる。 しかし、課税所得をそれぞれの活動に分割することは一般的には困難であると考えられるため, 「営業活動によるキャッシュ フロー」の区分に一括して記載する。
75
利息及び配当金に係るキャッシュ・フローについては, ① 受取利息, 受取配当金及び支払利息は 「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し, 支払配当金は 「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する方法と②受取利息及び受取配当金は「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、支払利息及び支払配当金は「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する方法がある。 それぞれの方法が重視している点を説明しなさい。
① この方法はキャッシュ・フローが損益の算定に含まれるか否かに着目するものであり、 営業活動によるキャッシュフローの区分において損益と収支のズレを把握できるように表示することを重視している。 ② この方法はキャッシュフローの発生源泉に着目するものであり, キャッシュフローがいかなる活動から生じたものかを各キャッシュフローの区分において明らかにすることを重視している。
76
資産除去債務に係るキャッシュ・フローを「投資活動によるキャッシュ・フローの区分に記載する理由を2つ挙げなさい。
・現行制度上,資産除去債務に対応する除去費用を有形固定資産の取得に関する付随費用と同様に処理するものとしていることを考慮すると, 固定資産の取得による支出と同様に投資活動に係る支出とみることが整合的と考えられるため。 ・固定資産の除去に伴う支出を固定資産の売却収入の控除項目と考えれば, 投資活動によるキャッシュフローとみることができるため。
77
連結範囲の変動を伴わない子会社株式の追加取得または一部売却に係るキャッシュ・フローは, 連結キャッシュ・フロー計算書においてどの区分に記載するか, 理由とともに説明しなさい。
連結範囲の変動を伴わない子会社株式の追加取得または一部売却は, 非支配株主との取引として、 当該取引に伴う親会社の持分変動による差額が資本剰余金に計上されるため, この処理との整合を図る観点から,当該取引に係るキャッシュ・フローは「財務活動によるキャッシュフローの区分に記載する。
78
「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分において小計欄が設けられる理由を説明しなさい。
「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュフローも含まれるため, 小計欄において本来の意味での営業活動によるキャッシュ・フローを明らかにするとともに,これと投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュフローを区別するために小計欄が設けられる。
79
営業活動によるキャッシュ・フローに関する表示方法には、 ①直接法と②間接法がある。 それぞれの方法の論拠を説明しなさい。
① 営業活動に係るキャッシュ・フローが総額で表示される点。 ②一部を除き基礎データを用意する必要がないため、 直接法に比べて実務上簡便である点。 ・純利益と営業活動に係るキャッシュ・フローとの関係が明示される点。
80
制度会計上、営業活動によるキャッシュ・フローに関する表示方法として, 直接法と間接法が選択適用とされる理由を説明しなさい。
直接法による表示方法は、営業活動に係るキャッシュ・フローが総額で表示される点に長所が認められるが,直接法により表示するためには親会社及び子会社において主要な取引ごとにキャッシュ・フローに関する基礎データを用意することが必要であり、 実務上手数を要すると考えられる。 一方, 実務上簡便である間接法による表示方法にも, 純利益と営業活動に係るキャッシュ・フローとの関係が明示される点に長所が認められる。 このように、 直接法と間接法はそれぞれ長所が認められるため、 選択適用とされている。
81
キャッシュフロー計算書において, 重要な非資金取引を注記する理由を説明しなさい。
キャッシュ フローを伴わない非資金取引の中には,翌期以降長期にわたりキャッシュ・フローに影響する取引があるため。
82
マネジメントアプローチの意義を述べるとともに, 長所 (3つ) 及び短所 (2つ)をそれぞれ挙げなさい。
意義 : 経営上の意思決定を行い, 業績を評価するために, 経営者が企業を事業の構成単位に分別した方法を基礎としてセグメント情報の開示を行う方法。 長所:財務諸表利用者が経営者の視点で企業を見ることにより, 経営者の行動を予測し, その予測を企業の将来キャッシュフローの評価に反映することが可能になる。 ・当該セグメント情報の基礎となる財務情報は, 経営者が利用するために既に作成されており, 企業が必要とする追加的費用が比較的少ない。 ・実際の企業の組織構造に基づく区分を行うため,その区分に際して恣意性が入りにくい。 短所: 企業の組織構造に基づく情報であるため, 企業間の比較を困難にし、 また,同一企業の年度間の比較が困難になる。 ・内部的に利用されている財務情報を基礎とした情報の開示を要求することは, 企業の事業活動の障害となる可能性がある。
83
「セグメント情報等の開示に関する会計基準」 では, マネジメント・アプローチの採用理由として, 討議資料 「財務会計の概念フレームワーク」 における「会計情報の質的特性」 に示される2つの特性間の優劣関係に言及している。 そこで、この2つの特性を示すとともに,その優劣関係について説明しなさい。
この2つの特性は, 意思決定との関連性と比較可能性である。 意思決定との関連性は, 信頼性とともに, 会計情報に求められる最も基本的な特性である意思決定有用性を直接支える特性であり, 会計情報が利用者の意思決定にとって有用であるか否かを直接判定する規準として機能する。 これに対して, 比較可能性は, 会計情報が有用であるために必要とされる最低限の基礎的な条件であり,この特性によって意思決定有用性が直接的に判断されるわけではない。 したがって,この2つの特性間において, 意思決定との関連性は比較可能性に優先するという関係にある。
84
セグメント情報の開示にあたりマネジメント・アプローチを採用することについて,そのメリットとデメリットを,討議資料 「財務会計の概念フレームワーク」の考え方を踏まえて説明しなさい。
マネジメント・アプローチに基づくセグメント情報は, 財務諸表利用者が経営者の視点で企業を見ることにより, 経営者の行動を予測し,その予測を企業の将来キャッシュフローの評価に反映することが可能になるため, 意思決定との関連性の観点からメリットがある。 一方で,当該セグメント情報は、 企業の組織構造に基づく情報であるため, 企業間の比較を困難にし,また,同一企業の年度間の比較が困難になるため, 比較可能性の観点からデメリットがある。
85
「会計方針の開示, 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」では,「会計上の変更」と「過去の誤謬の訂正」 を区別して定義している。 その理由を説明しなさい。
遡及処理については,それが過去の誤謬の訂正に関して行われたものであるのか,それとも,会計方針の変更及び表示方法の変更のように専ら比較可能性を担保する会計情報を提供するために行われたものであるのかの区別が,開示制度等との関係で重要であると考えられるため。
86
会計基準等の改正に伴う会計方針の変更以外の会計方針の変更を行うためには正当な理由が必要であるが,どのような要件が満たされれば正当な理由がある場合に該当するか, 2つ挙げなさい。
① 会計方針の変更が企業の事業内容または企業内外の経営環境の変化に対応して行われるものであること。 ② 会計方針の変更が会計事象等を財務諸表に,より適切に反映するために行われるものであること。
87
会計方針の変更を行った場合に遡及適用を行う理由を2つ挙げなさい。
・会計方針の変更を行った場合に過去の財務諸表に対して新しい会計方針を遡及適用すれば,原則として財務諸表本体のすべての項目に関する情報が比較情報として提供されることにより, 特定の項目だけではなく、 財務諸表全般についての比較可能性が高まるものと考えられるため。 ・当期の財務諸表との比較可能性を確保するために、 過去の財務諸表を変更後の会計方針に基づき比較情報として提供することにより, 情報の有用性が高まることが期待されるため。
88
会計上の見積りの変更を行った場合に遡及処理しない理由を説明しなさい。
会計上の見積りの変更は, 新しい情報によってもたらされるものであるとの認識から、過去に遡って処理せず, その影響は将来に向けて認識するため。
89
臨時償却 (キャッチアップ方式) が廃止された理由を3つ挙げなさい。
・キャッチアップ方式は, 実質的に過去の期間への遡及適用と同様の効果をもたらす処理となることから, 新たな事実の発生に伴う見積りの変更に関する会計処理としては、適切な方法ではないため。 ・キャッチアップ方式による処理が適切と思われる状況があったとしても, その場合には耐用年数の短縮に収益性の低下を伴うことが多く, 減損処理の中で両方の影響を含めて処理できるため。 ・臨時償却として処理されている事例の多くが、 将来に生じる除却損の前倒し的な意味合いが強く、本来の意味での臨時償却として行われている実務は多くはないため。
90
固定資産の減価償却方法の変更については, ①会計方針の変更に該当するという考え方と②会計上の見積りの変更に該当するという考え方がある。 それぞれの論拠を説明しなさい。
① 固定資産の経済的便益の消費パターンの見積りが固定資産の取得時点では難しいからこそ,計画的 規則的な償却を行うという考え方に立てば、減価償却方法の変更は,当該計画的、規則的な償却方法の中での変更であるから, 見積りの要素とは直接的な関係を持たない。 ② 減価償却方法を, 減価償却を認識するという会計方針を適用する際に使用する手法と位置付ければ、その手法である減価償却方法の変更は会計方針の変更ではなく、 資産に具現化された将来の経済的便益の予測消費パターンの見積りの変更を意味するものである。
91
固定資産の減価償却方法の変更を会計上の見積りの変更として捉える場合の問題点を3つ挙げなさい。
・減価償却方法の変更を会計上の見積りの変更の1つとして捉える場合には, 経済的便益に関する消費のパターンに合致した減価償却方法が認められることが必要となるが, このような考え方は、現実に用いられている減価償却方法がいくつかの方法に限られている実態と整合していない。 ・より実態に即した減価償却方法が選択されることによる便益よりも、 会計方針であれば必要とされる継続性の原則による牽制効果が期待できなくなることや, 実質的には複数の会計処理の選択の余地を増やすことになる弊害の方が大きい。 ・会計上の見積りの変更と捉えれば, 採用している減価償却方法が合理的な見積りを反映しているかどうか確認する必要があるが, その合理性を常時検証し続けるという対応は現実には不可能である。
92
過去の誤謬が発見された場合に修正再表示する理由を説明しなさい。
我が国における従来の過去の誤謬の取扱いとしては, 前期損益修正項目として当期の損益で修正する方法が示されており, 修正再表示する方法は定められていなかったが, 誤謬を修正再表示する考え方を導入することは, 期間比較が可能な情報を開示するという観点からも有用であり,国際的な会計基準とのコンバージェンスを図るという観点からも望ましいと考えられるため。
93
「会計方針の開示, 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」が 「遡及適用」と 「修正再表示」 を区別した理由を説明しなさい。
誤謬のある過去の財務諸表を修正再表示することは, 会計方針の変更に関する遡及適用等とは性格が異なっており, 比較可能性の確保や会計基準のコンバージェンスの促進という観点からではなく,当然の要請として会計基準に定めておくべきであるため。
94
四半期財務諸表の性格としての実績主義と予測主義について, それぞれ説明しなさい。
実績主義とは, 四半期会計期間を年度と並ぶ一会計期間とみた上で, 四半期財務諸表を, 原則として年度の財務諸表と同じ会計処理の原則及び手続を適用して作成することにより,当該四半期会計期間に係る企業集団または企業の財政状態, 経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する情報を提供するという考え方をいう。 予測主義とは, 四半期会計期間を年度の一構成部分と位置付けて, 四半期財務諸表を, 年度の財務諸表と部分的に異なる会計処理の原則及び手続を適用して作成することにより、 当該四半期会計期間を含む年度の業績予測に資する情報を提供するという考え方をいう。
95
制度会計上, 四半期財務諸表について実績主義が採用されている理由を3つ挙げなさい。
・四半期財務諸表及び年度の財務諸表は, 四半期会計期間または事業年度に係る企業集団または企業の財政状態及び経営成績を明らかにすることにより, いずれも投資家に対して将来の業績の予測に資する情報を提供するものと性格付けることが適当である。 ・予測主義による場合は恣意的な判断の介入の余地が実績主義よりも大きいと考えられる。 実績主義によれば, 四半期財務諸表を年度の財務諸表と同様の基準により作成することができ計算手続が明確であるため, 実行面で優れている。
96
四半期財務諸表の作成にあたり, 簡便的な会計処理が認められている理由を説明しなさい。
年度の財務諸表や中間財務諸表よりも開示の迅速性が求められているため。
97
四半期財務諸表の作成にあたり, 収益及び費用の認識及び測定について簡便的な会計処理によることは認められるか, 理由とともに説明しなさい。
認められない。なぜなら, 収益及び費用の認識及び測定は、財務諸表の信頼性の根幹をなす重要なものであるため、 年度の財務諸表と四半期財務諸表とで同一の会計処理が適用されなければならないからである。
98
原価差異の繰延処理が四半期特有の会計処理として認められた理由を説明しなさい。
四半期財務諸表では, 中間財務諸表よりも売上原価が操業度等により大きく変動し、売上高と売上原価の対応関係が適切に表示されない可能性があることから, 例外的に四半期特有の会計処理を認めた方が、経済的実態をより適切に表し、 財務諸表利用者に対して将来の業績予測に資する情報を提供することができる。