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遺伝子工学
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  • 問題数 47 • 11/17/2023

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  • 1

    RNAがDNAと異なる点を,構造,生物学的安定性,機能の観点から説明しなさい.

    DNAがチミンを用いるのに対しRNAはウラシルを,デオキシリボースを用いるのに対しリボースを用いる.DNAが二本鎖を基本とするのに対し,RNAは一本鎖を基本とする〔これ以外にも以下のような特徴がある.RNAは5′末端が三リン酸となる.塩基修飾が,DNAはメチル化が主であるが,RNAにはそれ以外の特殊な修飾塩基が(特にtRNAに)みられる.真核生物のmRNAは5′末端に特殊なキャップ構造がある.RNAは分子内で多数のステム-ループ構造をとりやすい〕.DNAは生物学的に安定で,生細胞内では分解されないが,RNAは不安定で,比較的速やかに分解される.機能面では,DNAはもっぱらゲノムとして遺伝情報の保持と転写のための鋳型として働くが,RNAはそれ以外の多様な働き(例:酵素,結合・運搬,制御因子,プライマー)をもつ.

  • 2

    点変異が細胞増殖を維持する必須遺伝子のタンパク質コード領域内に起こったとき,細胞の増殖が①変化しない,②低下した,③死滅した,という表現型のいずれかになる.転写はどれも正常として,翻訳でどのようなことが起こったかを推定しなさい.

    ①の場合は,同義コドンに変化してアミノ酸の置換がない場合が考えられる.アミノ酸が置換する変異の場合,影響の大きさにより①,②,③のいずれのケースも考えられるが,影響はそのアミノ酸がタンパク質の機能にどれだけ重要かにより異なる.ナンセンス変異が起きて終止コドン(ナンセンスコドン)ができた場合,異常なタンパク質ができたり,あるいはタンパク質が全くできないため,多くは③となる.ペプチド鎖のごくC末端に起こった場合のみ①や②となる.

  • 3

    スター活性とは。

    反応条件が揃わないと配列認識の厳格性が低くなり、本来の認識部位以外の部分も切断してしまう制限酵素の活性のこと。  

  • 4

    数塩基の3′突出末端を,突出末端までの長さを短くしないようにして平滑末端化する方法を考えなさい.

    ヌクレアーゼによる平滑化ではDNAは短くなり,またDNA合成法は使えない(DNA合成は5′へは進まないため).そこで,突出末端にオリゴヌクレオチドをアニールさせ(ただしあらかじめ5′末端をリン酸化しておく),DNAリガーゼで連結する.

  • 5

    真核生物では転写活性化配列が遺伝子の数千塩基対上流側にあっても機能を発揮するものがあるが,この理由を説明しなさい.

    真核生物の転写活性化配列(エンハンサー)には転写制御因子(転写活性化タンパク質)が結合する.エンハンサーに結合した転写制御因子はクロマチンの状態で遠方にある基本転写装置と相互作用をする(結果的にプロモーターに近づかせる).またメディエーターが転写制御因子と基本転写装置,さらにはRNAポリメラーゼを結合する.このため,エンハンサーとプロモーターの間のDNAが押し出される(ループアウト)形で,細胞内でエンハンサーがプロモーターを活性化する.

  • 6

    シャトルベクターとは。

    使用宿主生物に該当する複数のoriをもち、複数の生物種の中で増幅できるベクターのこと。

  • 7

    滅菌と殺菌はどこがどう違うか.遺伝子工学にかかわる操作で無菌操作が必要な理由も併せて説明しなさい.

    滅菌とはすべての生命体を死滅させることで,DNAなどの遺伝物質の不活化も含まれる.滅菌は十分な高温(オートクレーブ,乾熱滅菌,火炎滅菌)で達成できる.これに対し,殺菌は増殖型の生物や細胞を死滅させることで,煮沸や消毒薬(界面活性剤,酸化剤,ハロゲン化合物,重金属など),あるいは紫外線などが使われる.ただカビや細菌の胞子は殺菌では死滅させることができない.遺伝子工学において細菌などの微生物,あるいはウイルスなどを使用する場合,無菌状態を維持しないと,雑菌などが混入して大腸菌が死滅したり,ほかの微生物にDNAが入るなどが原因で,純粋な「大腸菌を用いた操作」ができなくなる.

  • 8

    大腸菌が遺伝子工学に汎用される理由として,どのような要因が考えられるか.「培養」も念頭に入れて述べなさい.

    大腸菌は大部分が非病原性で,単純な組成の培地で簡単に人工的に増やすこと(培養)ができ,しかも約15分で2倍になるという高い増殖能をもつ.遺伝子工学で使用されるK12株などの菌株は,グルコースと少数の無機塩類を含む組成の明らかな合成培地でも増殖できるので,栄養要求などに関する遺伝学が可能であるとともに,プラスミドやファージを導入・感染させることによる分子遺伝学的な解析も可能である.遺伝子工学ではさまざまな突然変異体も使用されるが,変異体であっても,大部分は半合成培地で容易に増殖させることができる.

  • 9

    カウンター選択とは。

    酵素遺伝子が壊れた細胞を選択的に生存させる方法のことで出芽酵母においてよく用いられる。例としてURA3遺伝子の破壊が5-FOA耐性になるものがあり、細胞からURA3遺伝子をもつプラスミドの排除やURA3マーカーの除去で使われる。

  • 10

    制限酵素NheⅠ(G/CTAGC)とXbaⅠ(T/CTAGA)で切断したDNA断片同士は容易に連結できるか(注:斜線は切断点を示す).また,再結合したものをいずれかの酵素で再度切断できるか.理由も含めて説明しなさい.

    両DNAは末端に共通の粘着末端(CTAG)をもつので,簡単に粘着し,連結できる.しかし,できた組換え型DNAの連結部分はいずれの酵素認識部位に関しても6塩基全部が一致していないので切断されない.

  • 11

    化学合成した(二本鎖)オリゴヌクレオチドを,制限酵素で平滑末端化したDNAとライゲーションで連結しようとしても全くできない.その理由と解決法について説明しなさい.

    通常,化学合成DNAはいずれの末端もOHになっているので,ライゲーションができない.そこで,合成する際に5′末端にリン酸基が入るように発注時に指示するか,合成品の5′末端を前もってT4ポリヌクレオチドキナーゼとATPを使ってリン酸化する.

  • 12

    ベクターに求められる条件を挙げよ。

    制限酵素認識部位をもち、遺伝子工学的操作ができる。その存在を細胞で検出するための選択マーカー遺伝子をもつ 。多くの場合、複製や遺伝子発現のための制御配列をもつ。

  • 13

    ポリシストロニック転写とはなにか。

    複数の遺伝子座が1つのプロモーターでまとめて転写されること。

  • 14

    真核生物の細胞機構の研究や遺伝子工学の実施において,酵母は重要な位置を占める.酵母の種類や性質なども考え,その理由を述べなさい.

    酵母は菌類に属する真核生物のうち,単細胞で増殖するものの総称である.単細胞生物は細胞=個体であるため,細胞で得られる結果が完全な個体の性質とみなされる.酵母は大腸菌のように細胞がバラバラの状態でよく増殖し,培地の組成も単純である.遺伝子工学で使用される酵母はむろんすべて非病原性であるが,主に使用されるものは出芽酵母である.ゲノムのサイズが小さく,遺伝子数も少なく,一倍体でも増えるために遺伝解析が容易で,分子生物学的に最もよく理解されている生物である.分裂酵母は二分裂する酵母で,動物細胞に近い性質がある.ピキア酵母は大腸菌並みに高い増殖能があるため,物質生産に適している.

  • 15

    物理的あるいは化学的に切断されたDNA断片に対し,そのままDNAリガーゼを作用させても,DNA断片はほとんど連結されない.この理由を説明しなさい.

    物理・化学的切断ではたとえ平滑末端をもっていたとしても,3′-OH,5′-リン酸基となっているとは限らない.DNAリガーゼはそのような末端の組合わせでないと作用しないため,連結効率が落ちる.まして,突出末端をもっている場合はなおさらである.連結は末端の形状と化学基(原子団)の構造が偶然に揃ったときにのみ起こる.

  • 16

    一本鎖繊維状ファージのDNAがどのようにして制限酵素で切断するなどの操作ができるのかを説明しなさい.

    一本鎖繊維状ファージが感染した細胞では二本鎖環状DNA(プラスミド状)になった複製中間体が大量に存在する.これを使って通常プラスミドのように操作できる.

  • 17

    プラスミドとは。

    細胞内で複製され、娘細胞に分配される染色体以外のDNA分 子の総称。 細菌や酵母の細胞質内に存在し、核様態のDNAとは独立して 自律的に複製を行う。一般に環状2本鎖構造をとる。

  • 18

    薬剤耐性遺伝子のほかに,細胞の生存/死に注目して使用されるベクターの選択マーカーにはどのような種類のものがあるか? 代表的なものを原核生物と真核生物に分けてあげなさい.

    原核生物では毒性を示すDNA結合タンパク質(GATA因子,強DNA結合性CRP/CAP)がある.真核生物では,栄養要求変異を補う酵素遺伝子,代謝系に欠損のある酵素を補う遺伝子,基質を加えるとそれが毒性物質に代謝される酵素遺伝子(致死遺伝子)などがある.

  • 19

    動物ウイルスベクターは一般的に,ウイルスゲノムの一部分のみを含み,あとは目的DNA配列やマーカー遺伝子などが組込まれている.ウイルスゲノムとかけ離れたこのような構造のベクター核酸が,なぜウイルス粒子のパーツとなることができるのかを説明しなさい.

    ベクターDNAサイズが適当で,ウイルス殻に包まれる配列さえ備わっていれば,ウイルスタンパク質の供給によってDNAはウイルス殻に包まれて出てくる.このような反応を行える細胞では,ベクターがつくることのできないパッケージングに必要なタンパク質が,複製欠損型のヘルパーウイルス,あるいはゲノムに組込まれたウイルスの遺伝子から供給されている.

  • 20

    性線毛遺伝子に欠陥をもつHfr菌にM13ファージを感染させようとした.ファージは増殖するか.

    M13ファージはF因子(あるいはF′やHfr)のつくる性線毛に付着して感染する.性線毛形成に欠陥があるHfr菌ではM13ファージは感染できない.

  • 21

    cDNAを合成することができる逆転写酵素と適当なプライマーを使ってmRNAを逆転写させたところ,RNA-DNAヘテロ二本鎖はなく,二本鎖DNAができた.どのような機構でこのような結果になったかを説明しなさい.

    通常使われるレトロウイルス由来の逆転写酵素は,RNA依存DNAポリメラーゼ活性のほか,DNA依存DNAポリメラーゼ活性,そしてRNアーゼH活性もある.このためcDNAが合成される場合にはRNAも漸次分解される.できたcDNA末端の塩基配列にある短い相補性を利用して自身でアニールし,DNAの末端がヘアピン状になるため,ここがプライマーになるセルフプライミングによってcDNAから二本鎖DNAができた.

  • 22

    染色体DNAは損傷とは異なる修飾が生理的に起こっている.原核生物と真核生物に分けて,DNA修飾の内容とその意義について説明しなさい.

    原核生物とりわけ大腸菌では,5′-GATC配列中のAがDamメチラーゼで,5′-CCWGG配列の2番目のCがDcmメチラーゼによってメチル化されている.前者のメチル化は,複製直後のDNA(メチル化されていない)に誤って取り込まれた塩基を除く細胞性因子が,誤対合塩基を含む側を判別する目印となる(注:ミスマッチ修復機構がメチル化されていない方の誤対合塩基を「間違い」と判断する).真核生物の場合,CpG配列のCがDNAシトシンメチラーゼでメチル化される場合がある.メチルシトシンは転写阻害の原因となり,しかも複製後も受け継がれるため(注:子孫に伝達される場合もある),塩基配列によらない遺伝(後成的遺伝)の原因となる(⇒14章).

  • 23

    DNAにタンパク質が結合している状態を,酵素を使って検出するいくつかの方法について説明しなさい.

    DNA(一方は平滑末端)の平滑末端ではない端の5′側を標識し,タンパク質を結合させた後エキソⅢを作用させ,3′末端からの削り込みを起こさせ(結合部位で停止する),その後残ったDNAを検出し,DNA結合部位の3′末端を決定するエキソⅢマッピングという方法がある.二本鎖の一方の端のいずれかの鎖が標識されたDNAにタンパク質を結合させ,DNアーゼⅠで軽く切断し(あるいはニックを入れ),電気泳動で結合範囲を検出するDNアーゼⅠフットプリント法がある(⇒13章-5).クロマチンDNAをMNアーゼで軽く処理し,サザンブロッティングで特定DNA領域のヌクレオソーム状態を検出するクロマチン状態の解析手法がある.標識DNAは使わないが,タンパク質とDNAを共有結合させたクロマチンをMNアーゼで切断し,タンパク質の抗体を使ってDNA断片を回収し,複合体を解離・精製後,目的DNAをPCRで解析するクロマチン免疫沈降法という方法もある(⇒14章-6).

  • 24

    TK遺伝子やecogpt遺伝子がマーカーとして使える原理

    HAT倍地中ではアミノプリテンでプリンヌクレオチド新生合成とチミンヌクレオチド合成が阻害されるが、ヒポキサンチンとチミジンがあると細胞は生存できる。TK-細胞はHAT培地中で増殖できないが、TK遺伝子の導入により増殖できるようになる。一方ミコフェノール酸はIMPからXMPへの経路を阻害して細胞増殖を止める。しかしキサンチンからXMP、あるいはグアニンからGMPをつくる大腸菌の酵素(Ecogpt)が供給されると増えることができる。哺乳類の類似酵素(HGPRT)はヒポキサンチンとグアニンは利用できるがキサンチンは利用できないため、キサンチンを用いると通常の細胞においてecogptが生存マーカーになる。

  • 25

    Tn5(抗生物質のカナマイシン耐性遺伝子をもつ)を含むR因子をもつ大腸菌をカナマイシン存在下で長期間培養していたら,R因子がなくなっていた.細胞の中で何が起こったかを推定しなさい.

    Tn5は転移因子であり,他のDNAの中に移動しやすい.おそらく,R因子中のカナマイシン耐性遺伝子は染色体DNA中に転移したと考えられる. 

  • 26

    RNAはつくられた後修飾や加工を受けてから作用を現す.修飾や加工にどのようなものがあるか列挙しなさい.

    末端部分の切断・除去(トリミング),内部配列の除去(スプライシング),塩基の修飾(例:キャップ構造,特殊塩基の構築),ヌクレオチドの末端付加(例:ポリA鎖付加),内部のヌクレオチドの挿入・欠失・置換〔エディティング(編集)〕がある.

  • 27

    大腸菌培養液に,細胞に入ってLacリプレッサーに結合するIPTGという物質を加えたところ,細胞内のβ-ガラクトシダーゼ酵素の量が上昇したが,グルコースを添加したところ酵素量が低下した.この理由を遺伝子発現制御の観点から説明しなさい.

    大腸菌のlacオペロンとそれを活性化するCRP(CAP)の機能が低下したため,IPTGが誘導物質となりLacリプレッサーを阻害し,lacオペロンが動き(発現し),その遺伝子の1つであるβ-ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)が発現して酵素活性がみられた.この発現はcAMPが結合して活性型になった転写活性化因子CRPが,lacオペロンの上流側に結合することで高められている.グルコースがあるとcAMP濃度が下がりCRP機能が低下するため(カタボライト抑制,グルコース効果),lacオペロンの転写が下がり,酵素活性も低下した.

  • 28

    真核生物のDNAを制限酵素で切断して得た適当なDNA断片を,チミジンキナーゼ(TK)cDNAのアミノ酸コード領域に連結し,プラスミド状にしてTK欠損細胞に入れた.TK遺伝子が発現するとして,DNAが導入された細胞をどのように選んだらよいか.ただしここに述べた方法だと,TK陽性細胞は得られないが,その理由も述べよ

    HAT培地(ヒポキサンチン,アミノプテリン,チミジンを含む)を使用して選択する.TK陰性細胞はHAT培地で増えることができないが,TK遺伝子の入った細胞は増える.TK遺伝子が発現しないのは,真核細胞内での発現のために必要な,プロモーターなどの制御配列が備わっていないためである.

  • 29

    λファージとP1ファージの溶原化と形質導入について説明しなさい

    λファージは宿主染色体に組込まれて溶原化する.切り出しのときに宿主染色体を取り込むことがあり,特殊形質導入ファージが生じやすい.これに対し,P1ファージは宿主に組込まれず,プラスミド状で維持されることにより溶原化され,普遍形質導入ファージを生成しやすい.

  • 30

    一本鎖DNAの3′末端にプライマーをアニールさせ,polⅠを使って通常のようにDNA合成を行ったが,できた二本鎖DNAは5′末端が削れるなどの欠陥が多く見つかった.この理由を説明しなさい.

    polⅠにはDNA重合活性のほか,3′と5′に向かうエキソヌクレアーゼ活性があり,後者には二本鎖DNAの5′末端から3′に向かって一本鎖を削る活性もある.問題にあるDNAはこの活性によってできたと考えられる.

  • 31

    PCRに必要なものをあげよ。

    鋳型となるDNA、DNAポリメラーゼ、Mg2+、dNTP、プライマー

  • 32

    原核生物と真核生物の特徴と違いとは何かを述べなさい。また古細菌とは生物界でどの位置にあるかも説明しなさい。

    生物は細胞膜で包まれた細胞を基本単位とし,内部に遺伝子を含む染色体がある.原核生物には真正細菌と古細菌が含まれるが,染色体(DNA)が裸の状態で細胞質に浮遊している.細胞小器官や細胞骨格系もない.他方,真核生物では染色体DNAはヒストンなどが結合したクロマチンとなっており,それらが核膜で包まれて細胞質から隔離されている.細胞質には多くの細胞小器官や細胞骨格系がみられる.分化した多数の細胞から個体が構成されるものも多く,原核生物に比べ,遺伝子構成や遺伝子発現様式が多様で規模も大きいのが特徴である.古細菌は遺伝子構造や遺伝子発現機構に関し,真核生物がもつ特徴が部分的にみられ,真正細菌と真核生物の中間に位置すると考えられる.

  • 33

    「ゲノム=遺伝子=タンパク質をつくる」は完全には正しくない.その理由を説明しなさい.

    ゲノムとは細胞がもつ遺伝子1セット分を含む染色体DNAである.ゲノム中には遺伝形質の決定にかかわるDNA部分としての遺伝子が含まれるが,遺伝形質の決定にかかわらない(機能をもたない)DNA部分も含まれる.それゆえ,「遺伝子はDNA」ではあるが,「DNAは遺伝子」は正しくない.ゲノムに含まれる非遺伝子領域は真核生物では特に多い.またDNAから転写されるRNAのうち,mRNAはタンパク質をコードするが,それ以外のすべてのRNAはRNA自身で遺伝的機能を発揮する.この理由によって,「遺伝子がタンパク質をつくる」も厳密には正しくない

  • 34

    Tiプラスミドは細菌(アグロバクテリウム)を宿主とするプラスミドなのに,植物ゲノムにDNAを組込むためのベクターに使うことができるのはなぜか.

    アグロバクテリウムは植物細胞内に感染し,中にTiプラスミドをもつことができる.Tiプラスミド中のT-DNAには植物ゲノムに組込まれる性質がある.このため,目的DNAをT-DNA内に組込んだTiプラスミドをもつアグロバクテリウムを植物細胞内に感染させれば,T-DNAとともに目的DNAが植物ゲノムに入る.

  • 35

    相同組換えと非相同組換えの違い。

  • 36

    紫外線は生物にとって功罪の両面があるが,圧倒的に罪の方が大きい.紫外線がDNAにとって不利な効果を与える理由とその機構について説明しなさい.また,紫外線のこの効果をわれわれが利用している例をあげなさい.

    ピリミジンが並んでいる部分に紫外線が当たると,260 nm付近の紫外線が塩基によって吸収されて構造が変化する(塩基同士が結合したピリミジン二量体,特にチミン二量体ができる).この構造は転写や複製を阻害するため,そのままだと細胞の死につながり,また突然変異(塩基置換)しやすく,それががんなどの原因にもなる(注:フロンガスなどによるオゾン層の破壊により,地表に届く太陽光の紫外線の量が増加し,極地に近い地域では皮膚がんの発症率が上昇したといわれている).ただ,このような紫外線のDNA損傷効果は,衣服の日干しによる微生物や寄生虫の死滅や,殺菌灯による医療器具や手術室の殺菌に利用されている.

  • 37

    真核生物のmRNAをRNアーゼAで消化しようとしたが,どうしても150塩基程度の長いRNA分子が残ってしまう.この理由を考えなさい.またこのようなことが起こらないように,RNAを十分に消化するにはどうしたらよいかも答えなさい.

    RNアーゼAはピリミジン塩基特異的に一本鎖RNAを切断する.真核生物のmRNAの3′末端には20〜200塩基長のアデニル酸の鎖(ポリA鎖)が存在し,この部分は酵素では切れず,これが検出されたと考えられる.RNアーゼAでの切り残しをなくすため,RNアーゼT1を同時に作用させるか,大腸菌のRNアーゼⅠを使用する.

  • 38

    DNAを構成するヌクレオチドの化学的特徴と,ヌクレオチド同士の結合様式を述べなさい.また塩基を表す略語を述べなさい.

    DNAを構成するヌクレオチドはデオキシリボース(2′-デオキシリボース)の1′位に塩基が(N-グリコシド結合で)結合し,5′位にリン酸基が1個結合している〔注:塩基が付いていない糖の場合は′(プライム)を付けない〕.ヌクレオチド同士の結合は,ヌクレオチドの3′-OH と別のヌクレオチドの5′-リン酸基の間で水が除かれる形で結合し,-O-P(=O)OH-O-というリン酸ジエステル結合で連結される.リン酸基にある-OH基は解離しやすく,-O−となって水素イオン[H+]を出すため,水素イオン濃度が増えて溶液は酸性になる(核酸が酸といわれる理由).アデニン,グアニン,シトシン,チミンの塩基はそれぞれA,G,C,Tと略記される.RNA中の塩基であるウラシルはUと略記される.

  • 39

    ともに制限酵素Xによって切断されうるDNA(A)とDNA(B)を,酵素反応で連結した.このDNAを,Aにある制限酵素X認識部位のみで切断し,Bにある部位は切断させないためにはどうしたらよいか.

    配列特異的メチラーゼを使う.ライゲーション前にDNA(B)をX認識部位特異的メチラーゼで処理する.そうすると,ライゲーション後のDNAはXを作用させてもAの部位にしか作用しない.

  • 40

    DNAは二本鎖で存在し,しかもそれが右回りのらせん「二重らせん」構造をとる.この構造の立体的特徴を述べるとともに,その構造が,DNAが遺伝子として適している理由について考えなさい.

    2本のDNA鎖は3′→5′と5′→3′という方向の異なる鎖として塩基同士の水素結合で結合する.塩基には遺伝情報が含まれているが,それを保護するために塩基は内側に位置する.さらにDNA(B型DNA)は全体が約10塩基に1回転の割で右にねじれている.らせんの直径は2 nm,ピッチは3.4 nmである.ねじれによってタンパク質などが結合しやすい2種類の溝ができる.らせん構造はさらに超らせん構造をとる原因になる(⇒このような構造には位置エネルギーが蓄積されており,部分的変性などのDNA鎖の二次構造のわずかな変化を誘導して,DNAの組換えや複製,RNAへの転写などDNAがかかわる細胞機構に有利に働く).

  • 41

    制限修飾系によりファージⅠは大腸菌Aで増えるがBでは増えない.他方,ファージⅡは大腸菌Bで増えるがAでは増えない.仮に,AとBが融合した細胞が存在したとして,それぞれのファージはその細胞で増えることができるか.

    できた大腸菌はAタイプとBタイプの両方の制限能をもつことになる.制限能は優性に働くため,ファージⅠが感染しても制限系Bで抑えられ,ファージⅡは制限系Aで抑えられる.したがってファージは増えない.

  • 42

    トランスポゾンの性質を示すウイルスを2つあげ,簡単に説明しなさい.

    Muファージ:DNAトランスポゾンである.レトロウイルス:レトロトランスポゾンと類似の形式で増殖し,ゲノムDNAに組込まれる.

  • 43

    あるR因子A(薬剤Aに耐性を示す)と,同種のR因子B(薬剤Bに耐性を示す)がある.これらを使い,薬剤AとBの両方に耐性を示す細胞をつくる場合にはどうしたらよいか.

    A,Bは同種なので1つの細胞に安定に共存させにくい.そこで,耐性遺伝子A(B)を切り出し,R因子B(A)に挿入して組換えプラスミドとし,それを細胞に導入する.

  • 44

    M13ファージベクターは組込みDNAサイズに制限がなく,プラスミドと一本鎖DNAの両方が扱え,λファージベクターより優れているようにみえる.しかし,遺伝子クローニングにはもっぱらλファージベクターが使われる.その理由を考えなさい.

    λファージベクターの利点は,DNAをファージ殻の中に入れる操作を通して,微量であっても効率よく細菌にDNAを導入できることにある.他方,DNA操作ができるM13ファージのRF(複製中間体)はプラスミド状で加工はできるが,裸のDNAとして細胞へ導入されるため,導入効率は低い.したがって微量の未知DNAを材料にもれなくクローニングするためのベクターとしては使えない.

  • 45

    RNAのハンドリングで気をつけること。

    RNA分解酵素(RNase)は非常に不活性化するのが難しく、抽出途中また抽出後の検体への混入を極力避ける努力をしなければならない。実験時はマスクと手袋を着用し、RNase freeの器具とDEPC水を使う。

  • 46

    A種細菌から取り出したDNAにB種細菌から精製した制限酵素を作用させたら切断されたが,同じ配列を認識して切断するC種から精製した制限酵素では切れなかった.この理由を考えなさい.

    B,C両種細菌の制限酵素は互いにイソシゾマーの関係になる.イソシゾマーは別のタンパク質であり,メチル化DNAを切断するかしないかの違いなどにより,同じ挙動を取らなかったと考えられる.

  • 47

    ベクター内にあるlacPOZのカセット内のMCS中の特定酵素認識部位に,AAAあるいはAAAAの短いDNAを挿入し,適当な大腸菌を使って青白選択を行った.コロニーの色がどうなるかを予想しなさい.

    β-galαタンパク質が発現すれば,α相補によってβ-galの酵素活性が現れる.MCSはβ-galαコード領域内部の,酵素活性へのかかわりの弱いN末端近くにある.AAA挿入の場合,アミノ酸が1個挿入され,翻訳の読み枠は維持されるので,酵素活性にはほとんど影響せず,コロニーは青くなる.ただし,挿入部位のすぐ上流がコドンの1文字目でTの場合は,ナンセンスコドンTAAが生じ,コロニーは白くなる.AAAA挿入では読み枠がずれる挿入破壊が起こり,コロニーは白くなる.