問題一覧
1
消費者の購買行動に対応しようとするとき,マーケティング担当者は①と②という代表的な思考の枠組みを用いる.
①マーケティング・コンセプト,②販売コンセプト
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①マーケティング・コンセプトと②販売コンセプトについて説明しなさい
①消費者に喜ばれる製品・サービスをどう作るかという発想を企業経営や事業運営の基本的な指針とするという考え方. ②自社の製品・サービスを消費者にどう売るかという発想を企業経営や事業運営の基本的な指針とするという考え方. これら2つの思考の枠組みの間を行き来することで,マーケティングの戦略立案や意思決定の選択の幅を広げることができる. 例えば,マーケティング・コンセプトに沿った発想をするマーケティング担当者は,消費者の嗜好の変化に直面したとき,それに合わせてこれまでのマーケティングマネジメントを見直そうとするだろう.しかし,同時に販売コンセプトに沿った問題の検討を行う必要がある.そうすることで,今までと同じ製品の中に,消費者にアピールする新たな特性を見出し,それをプロモーションに結びつけることで,さらに売り上げを伸ばすことができるかもしれない. このように,マーケティングマネジメントで求められる創造的な問題解決のアイデアは,これら2つの思考の枠組みを柔軟に交差させていく中で生み出される.
3
①と②も,消費者の購買行動に対応する際の基本的な思考の枠組みである.
①インプット-アウトプット分析,②メカニズム分析
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インプットーアウトプット分析について説明しなさい
刺激‐反応モデルと呼ばれることもある.「どのように消費者を刺激したら(インプット),どのような購買行動を引き出せるか(アウトプット)」という図式で焼死者の購買行動を理解しようとするものである. 例えば,広告量を増やすというインプットに対し,消費者の購買数量というアウトプットがどのように変化するかという分析は,典型的なインプットーアウトプット分析である.消費者の購買行動に変化を引き起こす刺激には,サービスの水準を上げることや,所得やライフスタイルなど消費者自身の変化も含まれる. このように,マーケティングミックスの変更,あるいは所得水準やライフスタイルの変化という刺激に対して,消費者の購買行動がどのように変化するのかをとらえるのが,インプットーアウトプット分析の枠組みである.ただしこのとき,消費者の購買行動の変化を導く内的な要因やそのメカニズムについては,まったく問われていないという点に注意が必要である.
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メカニズム分析について説明しなさい
マーケティング活動によって与えられた刺激が消費者の反応を引き起こすには,消費者の認知や意思決定のプロセスを経なければならない.この刺激と反応との間を取り持つプロセスの作動を解明するのが,メカニズム分析である. インプットーアウトプット分析で問われなかった,消費者の購買行動の変化を導く内的な要因を解明しようとしている. マーケティング活動によって与えられた刺激に対して,消費者に想定外の反応が現れた場合や,刺激に対する反応が一定でない場合にメカニズム分析が必要となる. 同じ製品でも,パッケージや広告表現が違えば,売り上げが大きく異なる.こうした多様な反応があると,インプットーアウトプット分析だけでは対処できないため,消費者の購買行動を生み出すメカニズムにまで踏み込んだ分析が必要となる.
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消費者の購買行動のなかで何がどのように変化すれば,自社の製品・サービスに対する購買行動に変化が生じるのだろうか.これを理解することが,有用なマーケティングミックスを考える上で重要である. 消費者の購買意思決定のプロセスは,消費者の心の中では①と②という局面で構成される.
①最適な製品・サービスを選択する場面 ②購買の必要や欲求を確立する場面
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①最適な製品・サービスを選択する場面と②購買の必要や欲求を確立する場面について説明しなさい
①製品・サービスを購買するとき,様々な選択代案を近くして,それらを評価し,最も最良なものを選ぼうとする.このメカイズムは「消費者情報処理」と呼ばれる枠組みによってとらえることができる. ②そもそも消費者が「その製品・サービスを手に入れたい」と思わなければ,知覚や評価は始まらない.購買意思決定は,特定の製品・サービスに対する必要や欲求を確立することから始まる.このメカニズムは「手段-目的の連鎖」と呼ばれる枠組みによってとらえることができる.
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消費者情報処理について説明しなさい
購買意思決定に際し,消費者は対象となる様々な製品・サービスを知覚し,評価する.例えば,缶コーヒーを購入しようとしたとき,様々な銘柄の缶コーヒーが存在する.消費者はこれらを比較して最適なものを選択しようとするとき,複数の銘柄について,多岐にわたる属性(味,香り,製法,価格,量,パッケージなど)とその細目(味:苦味・甘味・コクなど)を知覚し,評価しなければならない.このプロセスを「消費者情報処理のプロセス」という. 消費者情報処理にあたって,まず代替案となる製品・サービスに関する情報が収集される.これを知覚のサブ・プロセスといい,外部情報を選択しながら取得するとともに,過去の経験との統合が図られる. 続いて,最良と判断される代替案が選ばれる.これを評価のサブ・プロセスという.知覚された様々な属性の情報を比較して,代替案を評価・選択する.
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知覚あるいは評価のサブ・プロセスで行われる情報の取得や統合は,①と②という手続きの組み合わせによってなされる. ①と②について説明しなさい.
①ボトムアップ型の処理 対称の属性を網羅的に集め,積み上げ型で知覚と評価を行うというやり方.缶コーヒーであれば,個々の缶コーヒーのパッケージの色,デザイン,ブランド名,缶のサイズ,原材料といった属性をひとつひとつとらえ,比較し,全体としての知覚や評価に結びつけるという方法. ②トップダウン型の処理 知覚対象や評価方法をあらかじめ特定化するやり方.缶のサイズやブランド名だけを見る.
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ボトムアップ型の処理とトップダウン型の処理を組み合わせる上でのカギとなるのが①である・ ①について説明しなさい.
①ヒューリスティクス 知覚や評価の進め方のルールのこと.例えば,知覚のプロセスでは「割引されている商品だけを見る」「見慣れたブランドだけを見る」,評価のプロセスでは「商品の各属性について,最低限の許容位置を設定し,この許容値を満たすものだけを検討する」とか「商品の各属性の重要性を順序付け,重要性が最も高い属性で最高の評価を得た商品を選択する」といったヒューリスティクスが用いられたりする.
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対称や状況によって,消費者が知覚する銘柄の数も,注目する属性の数も,許容する最低限の水準も,過去の経験や知識の活用方法も異なる. 例えば,自動車や住宅のような,購買頻度が少なく価格の高い商品を購入する場面だと,時間をかけた慎重な意思決定が行われる.また,同じ缶コーヒーでも,電車に乗る前に急いで買う場合と,仕事帰りにコンビニでゆっくり選ぶ場合とでは,異なった購買意思決定の方法がとられるだろう. このように,消費者情報処理では①と②という2重の選択が行われる.
①製品・サービスの選択,②ヒューリスティクスの選択 消費者情報処理とは,ヒューリスティクスに従って製品・サービスを選択することであると同時に,置かれた状況に応じて,様々なヒューリスティクスの中から,どれか一つを選択することでもある.
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製品・サービスの「非代償的な属性」について説明しなさい.
製品・サービスの属性には,一定の水準を満たしていることを消費者が不可欠であると考えているものがある.こうした属性について許容水準が満たされていないと,消費者はその製品・サービスを選択しようとしない.このような属性を「非代償的な属性」という. 例えば,食品の衛生管理や自動車の安全性など.(代償性が低い)
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製品・サービスの「代償的な属性」について説明しなさい.
消費者が不可欠と考えているわけではないが,その水準を高めることで製品・サービスに対する評価が向上する属性のこと.マーケティングにおいては重要な属性だが,場合によっては他の属性で代替することもできる. 例えば,食品のパッケージや自動車のアクセサリー的な装備など.(代償性が高い)
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消費者の購買行動を導く「購買の必要や欲求」の基本的な構成は①と呼ばれる図式を用いて説明することができる. ①について説明しなさい
①手段‐目的の連鎖 消費者の必要や欲求を,手段と目的の連鎖的な構成物としてとらえたものである. 例えば,オフィスの自動販売機で缶コーヒーを購入しようとしている場面を考える. 消費者は「缶コーヒーを飲みたい」から缶コーヒーを購入する.だが同時に「缶コーヒーを飲むこと」は,「会議の合間に気分転換をする」といった,さらに上位の目的の手段でもある.そしてそのさらに上位には,「会議での集中力を保つ」といった目的が考えられ,「会議の合間に気分転換をする」ことはそのための手段となる. このように手段-目的の関係を追求していくことで,買い手の必要や欲求が連鎖しあっている姿を浮き彫りにすることができる.
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手段‐目的の連鎖の問題点を説明しなさい.
①手段‐目的の連鎖はどこまでもさかのぼることができる 「缶コーヒーを飲む」のは「会議の合間に気分転換をする」ためだという答えに対して,「なぜ会議の合間に気分転換をする必要があるのか」という問いが生まれる.それに対し,「会議での集中力を保つため」と答えれば,「なぜ会議での集中力を保つ必要があるのか」という問いがさらに生まれる.このように,目的はどこまでもさかのぼることができる. ②手段‐目的の連鎖をさかのぼることで,必要や欲求が相対化されてしまう 例えば,手段-目的の連鎖を「缶コーヒーを買う」から「会議の合間に気分転換する」へと遡ったとする.しかし「会議の合間に気分転換をする」という目的にこたえる手段は,「缶コーヒーを買う」ことだけではない.コーヒー以外の飲み物でもいいし,歩いたり体操をするという手段もある.このように,手段‐目的の連鎖をさかのぼることで,必要や欲求は相対的な選択肢のひとつになってしまう. 手段-目的の連鎖をさかのぼっていくと,そこから分かるのは,製品・サービスに対する消費者の必要や欲求の根源的な理由ではなく,その偶有性(他でもありうる可能性)である.
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手段-目的の連鎖により,消費者の必要や欲求は,揺らぐことのない基盤に根差しているわけではなく,他でもありうる可能性に常にさらされていることが分かった. しかし消費者は,「缶コーヒーを飲もう」とか「この冬はロングブーツを買わなければ」といった具合に,自らの必要や欲求をかなり限定した形で確立している. →消費者が特定の製品・サービスに対して必要や欲求を確立しているのは,他でもありうる可能性が遮断されているから. この相対化の遮断のメカニズムを説明しなさい.
①消費者の情報処理能力には限界がある 一定時間の中で消費者が処理できる情報は有限である.また,消費者がおかれた状況の中で,アクセス可能な製品・サービス,それにかかわる情報も有限である. ②手段-目的の連鎖は,循環する関係の中で生成される 缶コーヒーを例に説明する.手段と目的の間に次のような循環的な関係が生成されることがある. ⒜太郎は仕事に疲れを感じたので,缶コーヒーが飲みたくなった ⒝太郎は缶コーヒーを飲みたくなったので,仕事に疲れていることに気付いた こうした問題の覚醒(疲れているな)と手段の覚醒(缶コーヒーを飲みたい)の反転により,手段-目的の連鎖は「疲れの自覚→缶コーヒーを飲みたい→疲れの自覚→缶コーヒーを飲みたい・・・」と循環する関係になる. こうした関係が回り続けることで,この手段-目的の連鎖以外の可能性(散歩や体操)は出現しなくなる. 以上のようなメカニズムにより,個々の消費者の購買意思決定において,なぜ特定の必要や欲求が絶対化するのかを理解することができる.
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消費者ひとりひとりによって,生活行動や何に買いがあるかという判断は異なる.こうした違いにひとつひとつ対応して製品を作ったりプロモーションを行えば,コストがかかり,製品・サービスは効果になりすぎてしまう. そこで,①を用いて対応することができる.
①市場細分化マーケティング 製品・サービスの用途が同じでも,消費者によって異なる必要や欲求,知覚や評価の方法,あるいは生活行動などで市場を分割し(市場細分化),その市場ごとに異なるマーケティングの手法と活動を適用すること.
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細分化された市場(市場細分)に対する企業の対応には①②③という選択肢がある. なお,①から②,③へと移行するにつれて,その実行には潤沢な経営資源が必要となる.
①集中化 特定の市場細分のみに特化するという対応 ②専門家 自社の強みを発揮できる複数の市場細分を選択するという対応 ③フルカバレッジ すべての市場細分にアプローチするという対応
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市場細分化のメリットを答えなさい
・マーケティングの手法や活動の効果と効率を高めることができる. 市場細分化によって,消費者の多様な必要や欲求,知覚と評価の方法,あるいは生活行動などに対して,焦点を絞った的確な対応を行うことができるようになるからである. ・また,市場細分化マーケティングを進めることで,市場全体の規模が拡大することがある. 標準的な製品・サービスでは十分に満たすことのできなかった必要や欲求に対応した製品・サービスが供給されるようになるため.
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市場細分化のデメリットを答えなさい
企業のコスト負担を増加させる. 市場細分化によって製品・サービスの種類が増えるため,生産工程や在庫の管理が複雑化する.また,必要となるプロモーションの数が増え,表現政策や媒体管理のコストが増す.さらに,市場調査の数も増加する.
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市場細分化にあたって設定された市場細分が満たすべき3つの条件を答えなさい.
①独自性 それぞれの市場細分ごとに,マーケティングの手法や活動に対する反応が異なっていなければならない.(例えば,必要となる製品の仕様や,価格に対する感受性,利用頻度の高いメディアなど) 例えば,性別により市場を細分化した場合,男女間で製品の好みや広告への対応などに違いが無ければ,わざわざマーケティングの手法や活動を変える必要はない.(市場細分の内部については,反応の違いが少ない方が効果や効率は高まる.) ②十分な規模 市場細分は,十分な売上と利益が確保できる規模でなければならない. ③確実性 市場細分は,マーケティング・ミックスの計画・実行・評価を確実に行うことが可能なものでなければならない.そのためには,①市場細分の規模が推定できること,②市場細分の特性から具体的なマーケティング・ミックスの在り方が示唆されること,③過大なコストをかけずに,市場細分に特化した企業活動が展開できること,といった条件が満たされなければならない.
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マーケティングの独善化について説明しなさい
消費者行動に対応するため、企業は消費者の意向や要望な一歩先を行き、リードしていかなければならない。 しかし、この局面だけを強調し過ぎると、今度は消費者を置き去りにし、マーケティング担当者の思惑や信念の一方的な押し付けになってしまう。これをマーケティングの独善化という。