問題一覧
1
No.1 未成年者に関する次の記述のうち、最も適当なのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。
3. 未成年者が、法定代理人の同意を得ないで締結した売買契約を、未成年者であることを理由として取り消した場合、取り消すことについて法定代理人の同意がなかったとしても、その取消しの意思表示自体は有効である。
2
No.2 行為能力に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 未成年者が不動産の売買契約を締結するには親権者の同意を得なければならないが、親権者が二人いる場合であっても、当該同意は、原則として一方の親権者のみでよい。 イ. 成年被後見人が締結した売買契約は、いかなる場合においても取り消すことができる。 ウ. 被保佐人が保佐人の同意を得ずに不動産の売買契約を締結した場合において、当該契約の相手方が、被保佐人に対し、1ヶ月以上の期間を定めて、保佐人の追認を得るよう催告したときは、その期間内に被保佐人が追認を得た旨の通知を発しなければ、追認があったものとみなされる。 エ. 被保佐人が借主となった金銭消費貸借契約が取り消された場合、被保佐人は、その行為によって現に利益を受けている限度において返還義務を負うため、当該契約によって被保佐人が得た利益のうち、賭博に浪費されて現存しない部分については返還の義務を負わないとするのが判例である。 オ. 行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、当該行為を行った制限行為能力者自身も、単独で取り消すことができる。
5. エ、オ
3
No.3 民法の規定する制限行為能力者に関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか。
3. 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4
No.4 行為能力に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。また、法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産も、未成年者が自由に処分することができる。 イ. 被保佐人は、保佐人の同意なしに単独で日用品の購入をすることができるが、成年被後見人は、成年後見人の同意を得て日用品の購入をした場合でも、その行為を取り消すことができる。 ウ. 後見開始、保佐開始又は補助開始の審判が家庭裁判所によってなされると、その事実が戸籍に記録される。これは、制限行為能力者のプライバシーの保護に配慮しつつ、本人の行為能力の制限を公示することで、取引が円滑に行われるようにするためである。 エ. 家庭裁判所は、被保佐人たる本人以外の者の請求によって、特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をする場合には、本人の同意を得なければならない。また、被補助人たる本人以外の者の請求によって、特定の法律行為について補助人に同意権を付与する旨の審判をする場合にも、本人の同意を得なければならない。 オ. 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は民法第17条第1項の審判を受けた被補助人に対しては、1ヶ月以上の期間を定めて、その取り消すことができる行為について、保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内に追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を追認したものとみなされる。
2. ア、エ
5
No.5 制限行為能力者に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 成年被後見人は、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者であるため、成年被後見人自身が行った、日用品の購入その他日常生活に関する行為を取り消すことができる。 イ. 被保佐人の相手方は、被保佐人が行為能力者とならない間に、その保佐人に対し、その権限内の行為について、1ヶ月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その保佐人がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなされる。 ウ. 被保佐人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者であるため、元本の領収や借財をするといった重要な財産上の行為を、保佐人の同意があったとしても行うことができない。 エ. 被補助人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者であるが、自己決定の尊重の趣旨から、本人以外の者の請求によって補助開始の審判をするには本人の同意が必要である。 オ. 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために「詐術」を用いた場合には、取消権を行使することができない。「詐術」とは、制限行為能力者が相手方に対して、積極的に詐術を用いたときに限られるものではなく、単に制限行為能力者であることを黙秘しただけであっても、詐術にあたる。
3. イ、エ
6
No.6 民法に規定する制限行為能力者に関する記述として、妥当なのはどれか。
2. 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
7
No.7 次の事例に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 被保佐人Aは、Aにとって重要な財産である乗用車を保佐人Bの同意なしに200万円でCに譲渡し、AはCから受け取った200万円のうち150万円を日常の生活費に充て、残りの50万円を遊興費として費消した。 ア. AがCに乗用車を譲渡する行為は、Bの同意を要する行為であり、AはBの同意がなくても 単独で取り消すことができるが、Bは、Aが単独で行った取消しの意思表示を行為能力の制限を理由に取り消すことができない。 イ. Aから乗用車を譲り受けたCが当該乗用車を第三者Dに譲渡した後、AがCへの譲渡を取り消した場合、Aが被保佐人であることについてDが善意であるときは、Aは当該取消しの効果をDに対抗することができない。 ウ. Aが、自らがCに乗用車を譲渡した行為を取り消した場合、AはCから受け取った200万円のうち現存利益の範囲でCに対して返還義務を負うが、日常の生活費と遊興費は共に現存利益に含まれるので、AはCに対して200万円すべてを返還しなければならない。 エ. Aから乗用車を譲り受けたCは、Aが当該乗用車を譲渡したら行為を追認するか否かの催告を、A又はBのいずれに対してもすることができるが、それらのいずれに催告したかを問わず、定められた期間内にA又はBが確答を発しない場合には、A又はBは当該行為を追認したものとみなされる。 オ. AがCに乗用車を譲渡する際に、自らが被保佐人であることを黙秘していたことに加え、普通に人を欺くに足りる言動を用いてCの誤信を招き、又は誤信を強めたと認められるときは、詐術に当たると解されるが、単に被保佐人であることを黙秘していたという事実のみをもって詐術に当たるとするのは相当でない。
1. ア、オ
8
No.8 制限能力者の行為に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。 ア. 被保佐人Aは、Cから土地を購入するに当たり、自らが制限能力者であることを黙秘した上で、能力者であると思わせるような言動を積極的に用いた結果、CにAが能力者であるとの誤信をさせ、保佐人Bの同意を得ないまま、Cとの間で当該土地の売買契約を締結した。この場合、Bは、AC間の売買契約を取り消すことができる。 イ. 未成年者Aは、叔父Cから学費の援助をしたい旨の申込みがされたため、法定代理人Bの同意を得ないまま、Cとの間で贈与契約を締結した。この場合、Bは、AC間の贈与契約を取り消すことができない。 ウ. 成年被後見人Aは、自己の所有する建物をCに売却するために、成年後見人Bの同意を得た上で、Cとの間で当該建物の売買契約を締結したが、その後、Bは同意を与えたことが適切でないと判断した。この場合、Bは、AC間の売買契約を取り消すことができない。 エ. 被補助人Aは、不動産を売却するには補助人Bの同意を得なければならない旨の家庭裁判所の審判を受けた。その後、Aは、自己の所有する土地を売却しようとしたが、Aの利益を害するおそれがないにもかかわらずBが同意しなかったため、家庭裁判所に請求して売却の許可を得た上で、Cとの間で売買契約を締結した。この場合、Bは、AC間の売買契約を取り消すことができる。 オ. 被保佐人Aは、A所有の建物を借用したい旨のCの依頼を受け、保佐人Bの同意を得ないまま、Cとの間で当該建物を5年間貸与する旨の賃貸借契約を締結した。この場合、Bは、AC間の賃貸借契約を取り消すことができない。
2. イ
9
No.9 行為能力者に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 未成年者Aが、親権者Bの同意を得ずに、祖父Cから大学進学の資金として100万円の贈与を受けた場合には、Bは、Aが締結したCとの贈与契約を取り消すことができる。 イ. 成年被後見人Aが、成年後見人Bの同意を得ずに、自宅近くにあるスーパーマーケットCで日常の食事の材料として食料品を購入した場合には、Bは、Aが締結したCとの売買契約を取り消すことができる。 ウ. 家庭裁判所は、保佐人Aの請求により、被保佐人Bの同意を得ることなく、Bが所有する家屋の売買についてAに代理権を付与する旨の審判をすることができる。 エ. 家庭裁判所が、補助開始の審判によってAを被補助人とし、補助人としてBを選任した上で代理権を付与したが、同意権は付与しなかった場合には、Aの行為能力は制限されない。 オ. 未成年者Aが、親権者Bの同意を得ずに、大型家電量販店Cで高価な家電製品を購入した場合において、Cは、Aが成年に達しない間に、Bに対し、1ヶ月以上の期間を定めて、Aが締結したCとの売買契約を追認するかどうかその期間内に確答すべき旨の催告をすることができる。
5. エ、オ
10
No.10 権利の主体等に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
4. 後見開始の審判を受けた者に付される成年後見人は法定代理人として代理権を有するが、保佐開始の審判を受けた者に付される保佐人は当然には代理権を有しない。
11
No.11 権利能力、意思能力及び行為能力に関する次のア〜エの記述の正誤の組合せとして最も妥当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. Aは、夫Bとの間の子Cを妊娠しており、出産を3か月後に控えていたが、Bは、自動車事故に巻き込まれ死亡した。胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなされるため、Aは、Cの出産前であっても、Cの代理人として、自動車事故の加害者に対して損害賠償請求ができる。 イ. 行為能力者であっても、法律行為時に意思能力を有している必要があり、意思能力を欠く者による法律行為は無効である。意思能力の有無は、個々の具体的な法律行為ごとに個別的に判断される。 ウ. 法人として登記されていなくても、団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず、団体そのものが存続し、代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定している団体であれば、権利能力を有し、権利義務の帰属主体となることができる。 エ. Aについて失踪宣告がされたため、Aの唯一の相続人Bは、Aの所有していた甲建物を相続し、これを売却して得た金で世界一周旅行をした。その後、実はAが生存していることが判明し、Aの失踪宣告が取り消された。この場合、Bは、甲建物の売却代金相当額をAに返還する義務を負う。
1. ア誤、イ正、ウ誤、エ誤
12
No.12 権利能力及び行為能力に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 自然人の権利能力は死亡によって消滅するため、失踪者が、失踪宣告によって死亡したものとみなされた場合には、その者が生存していたとしても、同宣告後その取消し前にその者がした法律行為は無効である。 イ. 未成年者は、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産については、法定代理人の同意を得なくとも、その目的の範囲内において自由に処分することができるが、法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産については、個別の処分ごとに法定代理人の同意を得なければ処分することはできない。 ウ. 未成年者が法定代理人の同意を得ずに土地の売買契約を締結した場合、当該契約の相手方は、当該未成年者が成人した後、その者に対し、1ヶ月以上の期間を定めて、その期間内に当該契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、その者がその期間内に確答しなかったときは、追認したものとみなされる。 エ. 成年被後見人は、日用品の購入その他日常生活に関する行為を単独で確定的に有効になすことができるが、これ以外の法律行為については、成年後見人の同意を得ても、単独で確定的に有効になすことはできない。 オ. 被保佐人が、保佐人の同意を得ずに、同意が必要とされる行為をした場合、被保佐人自身のほか、保佐人も当該行為を取り消すことができる。
5. ウ、エ、オ
13
No.13 錯誤に関する次のア〜ウの記述の正誤の組合せとして最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. Aは、Bから、実際には粗悪品であったジャムを一般に通用しているジャムであるという前提で、1箱3,000円で購入した。このとき、売買契約の目的物であるジャムの品質についてのAの錯誤は法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものになり得るが、Aに軽過失があったときは、Aは、その意思表示の取消しを主張することはできない。 イ. Aが、Bに対して、A所有の土地を売ったが、Aには意思表示に対応する意思を欠く錯誤があり、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであった場合、その錯誤がAの重大な過失によるものであったとしても、BがAに錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったときには、Aは、錯誤による取消しを主張することができる。 ウ. Aが、Bから代物弁済により甲土地を取得したと主張し、Bは代物弁済の効力を争っていたところ、AとBとの間で、BがAに甲土地の所有権があることを認め、AがBに対し甲土地の明渡しを猶予する旨の和解が成立した。その後、代物弁済が無効であることが判明した場合、和解によって合意した事項は、甲土地の所有権がAに帰属することであるから、Bは、その前提である代物弁済の効力については、錯誤による取消しを主張することができる。
3. ア誤、イ正、ウ誤
14
No.14 Aは自らの所有する甲建物をBに対して売却し、BはCに対して甲建物を転売したが、その後、AはAB間の売買契約をBの詐欺又は強迫を理由に取り消すとの意思表示をした。この事例に関する次のア〜ウの記述の正誤の組合せとして最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. AB間の売買契約はBの詐欺に基づくものであった。Cが民法第96条第3項に基づき保護されるためには、Aの取消前に、甲建物について所有権移転登記を備えることが必要がある。 イ. AB間の売買契約はBの強迫に基づくものであった。Cは、Bの強迫について善意であるにとどまらず、無過失であったとしても、民法第96条第3項に基づき保護されない。 ウ. AB間の売買契約はBの暴行によるものであったが、その際、Aは完全に意思の自由を失うには至らなかった。この場合であっても、AがBの暴行によって畏怖し、畏怖の結果甲建物を売却したという関係が主観的に存在すれば、AはBの強迫を理由としてAB間の売買契約を取り消すことができる。
2. ア誤、イ正、ウ正
15
No.15 民法の規定する意思表示に関するA〜Dの記述のうち、妥当なものを選んだ組合せはどれか。 A. 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのために効力を妨げられないが、相手方が表意者の真意を知っていたときに限り、その意思表示は無効となり、当該無効は、善意の第三者に対抗することができない。 B. 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日から2週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなすが、表意者が相手方を知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生じない。 C. 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができるが、当該取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。 D. 意思表示は、表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは取り消すことができ、当該取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたか否かを問わず、することができる。
4. B、C
16
No.16 法律行為に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 法律行為が公の秩序に反する場合には、当該法律行為は無効であり、当該法律行為をした者以外の第三者であっても、かかる無効を主張することができる。 イ. 意思表示の表意者が、表示行為に対応する意思のないことを知りながら単独でした意思表示は、原則として無効である。 ウ. 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、原則として意思表示の取消しをすることができないが、相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったときには、表意者に重大な過失があっても意思表示の取消しをすることができる場合がある。 エ. 強迫による意思表示は、取り消すことができるが、当該意思表示の取消しは、当該取消し前に出現した善意無過失の第三者に対抗することができない。 オ. 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合、当該意思表示には瑕疵が存在することから、当該意思表示の相手方が詐欺の事実について善意無過失であっても、表意者は当該意思表示を取り消すことができる。
2. ア、ウ
17
No.17 民法に規定する意思表示に関する記述として、妥当なのはどれか。
3. 強迫による意思表示は、意思表示の相手方以外の第三者が強迫した場合にも取り消すことができ、また、強迫を理由とする取消しの効果を善意無過失の第三者に対しても主張することができる。
18
No.18 意思表示に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. Aは、その意思がないにもかかわらず、Bに対して自分の所有している甲土地を売却すると話を持ちかけたところ、Bは、Aの話を過失なく信じて、甲土地を購入する意思を示した。この場合、Aの意思表示は無効であり、Bは甲土地の所有権を取得することができない。 イ. Aは、その意思がないにもかかわらず、Bに対して自分の所有している甲土地を売却すると話を持ちかけたところ、Bは甲土地を購入する意思を示した。しかし、Bは、甲土地の上にAが自宅を建設中であるため、Aには甲土地を売却する意思がないと知っていた。この場合、Aの意思表示は無効であり、Bは甲土地の所有権を取得することができない。 ウ. Aは、債権者Xからの強制執行を免れるため、Bと通謀し、その意思がないにもかかわらず、自分の所有している甲土地をBに売却したことにしてその登記をBに移した。この場合、AB間の売買契約は有効に成立しているため、Xは甲土地に対して強制執行をすることはできない。 エ. Aは、債権者Xからの強制執行を免れるため、Bと通謀し、その意思がないにもかかわらず、自分の所有している甲土地をBに売却したことにしてその登記をBに移した。その後、Bは甲土地を自分のものであると偽ってCに売却し、登記もCに移した。この場合において、Cが、甲土地の真の所有者はBであると過失なく信じて購入したときは、Cは甲土地の所有権を取得することができる。 オ. Aは債権者Xからの強制執行を免れるため、Bと通謀し、その意思がないにもかかわらず、自分の所有している甲土地をBに売却したことにしてその登記をBに移した。その後、Bは甲土地を自分のものであると偽って、過失なくBの話を信じたCに売却し、登記もCに移した。後日、Cが甲土地の真の所有者はBではないことを知った場合、AはCに対してAB間の売買契約の無効を主張することができる。
4. イ、エ
19
No.19 民法の規定する意思表示に関する記述として、妥当なのはどれか。
4. 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合において、相手方がその事実を知っていたときには、表意者は、その意思表示を取り消すことができる。
20
No.20 意思表示に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 表意者が真意でないことを知りながらした意思表示は、原則として有効であるが、相手方がその真意ではないことを知っている場合や知ることができた場合は無効となる。 イ. 相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することはできないが、第三者が利害関係を持った時点では善意であっても、その後に虚偽であることを知った場合は、善意の第三者ではなくなるから、意思表示の無効を対抗することができる。 ウ. 相手方と通じてした虚偽の意思表示の無効を対抗することができないとされている第三者は、善意であることに加えて、無過失であることが必要である。 エ. 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、原則として意思表示の取消しをすることができないが、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときには、意思表示の取消しをすることができる場合がある。 オ. 詐欺による意思表示は、善意無過失の第三者に対してもその取消しを対抗することができ、強迫による意思表示も、詐欺と比べて表意者を保護すべき要請が大きいため、当然に善意無過失の第三者に対してその取消しを対抗することができる。
2. ア、エ
21
No.21 意思表示に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 強迫による意思表示における強迫とは、違法に相手方を恐怖させて意思表示をさせることであるが、相手方が意思の自由を完全に奪われる必要はない。しかし,相手方の意思の自由が完全に奪われたときであっても、意思表示は当然無効ではなく、相手方はその意思表示を強迫による意思表示として取り消すことができる。 イ. 詐欺による意思表示の取消しは、これをもって取消前の善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。そして、詐欺の被害者を保護する要請から、この第三者は対抗要件を備えた者に限定され、目的物が不動産の場合、その対抗要件とは仮登記ではなく本登記まで必要である。 ウ. 意思表示は、その通知が相手方に到達した時点で効力を生じる。そして、相手方が不在のため、意思表示を記載した内容証明郵便が配達されず、留置期間が満了し差出人に還付された場合であっても,不在配達通知書の記載その他の事情から相手方が郵便内容を十分に推知でき、相手方に受領の意思があれば容易に受領できた事情があるときは、遅くとも留置期間満了時には、相手方に到達したと認められる。 エ. 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤については、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであれば、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていなくても、その錯誤による意思表示を取り消すことができる。 オ. 相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効であるが、この無効は虚偽表示の外形が除去されない間に取引関係に入った善意の第三者に対抗することはできず、その理由は外形を信頼して取引をした者の権利を保護し、取引の安全を図ることにある。よって、虚偽の意思表示をした者は、目的物が不動産の場合において、この善意の第三者が登記を備えていないときであっても、登記の欠缺を主張して物権変動の効果を否定することはできない。
4. ウ、オ
22
No.22 意思表示に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられないが、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は無効である。また、かかる意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。 イ. AがBとの間で土地の仮装売買を行い,A所有の土地の登記名義をBとしていたところ、Bがその土地を自分のものであるとしてCに売却した。この場合、Cが保護されるためには、AB間の売買契約が通謀虚偽表示に基づくものであることにつき、Cが善意かつ無過失であることが必要である。 ウ. 意思表示に対応する意思を欠く錯誤があり、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、当該意思表示は、原則として取り消すことができる。 エ. Aは、Bから金銭を借りる際に、Cを欺罔し、Cは自らがAの保証人となる保証契約をBと結んだ。この場合、BがAの欺罔行為を知っていたとしても,Cは当該保証契約を取りすことができない。 オ. Aは、Bから金銭を借りる際に、Cを強迫し,Cは自らがAの保証人となる保証契約をBと結んだ。この場合、BがAの強迫行為を過失なく知らなかったときは、Cは当該保証契約を取り消すことができない。
2. ア、ウ
23
No.23 意思表示に関するア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. Aは、自己所有の甲土地を真意では売るつもりがないことを知ることができたBに売却した。その後、Bは、Aの真意を知らないCに転売し、Cへ登記を移転した。この場合、Aは、心裡留保を理由にBとの売買契約の無効を主張して、Cに対して甲土地の返還を請求することができる。 イ. Aは、Bにだまされて、Bの債務についてAが保証人となる旨の保証契約をCとの間で締結した。この場合、CがBの詐欺の事実を知っていたときは、AはBの詐欺を理由にCとの保証契約を取り消すことができる。 ウ. Aは、Bにだまされて、自己所有の甲土地をBに売却した。AはBの詐欺を理由にBとの売買契約を取り消したが、その後、まだ登記名義がBである間に、Bは甲土地を詐欺の事実を知らないCに転売し、Cへ登記を移転した。この場合、Cは民法第96条第3項の「第三者」として保護される。 エ. Aは、Bに強迫されて、自己所有の甲土地をBに売却した。Bは、甲土地を強迫の事実について善意でかつ過失がないCに転売し、Cへ登記を移転した。その後、AがBの強迫を理由にBとの売買契約を取り消した場合、AはCに甲土地の返還を請求することができる。
4. イ、エ
24
No.24 民法に規定する意思表示に関する記述として、妥当なのはどれか。
2. 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効であるが、その意思表示の無効は、当該行為が虚偽表示であることを知らない善意の第三者に対抗することができない。
25
No.25 意思表示に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力が生じるところ、内容証明郵便を送付したが、相手方が仕事で多忙であるためこれを受領することができず、留置期間経過後に差出人に返送された場合には、相手方が不在配達通知書の記載等により内容証明郵便の内容を推知することができ、受取方法を指定すれば容易に受領可能であったとしても、その通知が相手方に到達したとはいえず、意思表示の効果が生じることはない。 イ. A所有の不動産について、BがAの実印等を無断で使用して当該不動産の所有権登記名義をBに移転した場合において、Aが当該不動産につき不実の登記がされていることを知りながらこれを明示又は黙示に承認していたときであっても、AB間に通謀による虚偽の意思表示がない以上、その後にBから当該不動産を購入した善意のCが保護されることはない。 ウ. 錯誤は、表意者の重大な過失によるものであった場合は、取り消すことができないが,偽物の骨董品の取引において当事者双方が本物と思っていた場合など、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときは、取り消すことができる。 エ. 詐欺とは、人を欺罔して錯誤に陥らせる行為であるから、情報提供の義務があるにもかかわらず沈黙していただけの者に詐欺が成立することはない。 オ. 相手方に対する意思表示について第三者が強迫を行った場合、相手方が強迫の事実を知らなかったとしても、その意思表示を取り消すことができるが、相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合において、相手方が詐欺の事実を知らず、かつ、知ることもできなかったときは、その意思表示を取り消すことはできない。
4. ウ、オ
26
No.26 民法に規定する取消しに関する記述として、妥当なのはどれか。
3. 取消しにより法律行為が遡及的に無効となり、原状回復養務が生じた場合、制限行為能力者については、その行為によって現に利益を受けている限度において返還すれば足りる。
27
No.27 無効と取消しに関するア〜カの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 意思表示が、それに対応する意思を欠く錯誤に基づいて行われ、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、その意思表示は無効とされる。 イ. 表意者は、強行法規に反する法律行為を取り消すことができる。 ウ. 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効とされる。 エ. 強迫による意思表示は無効とされる。 オ. 不法な条件を付した法律行為は無効とされる。 カ. 成年被後見人の法律行為は無効とされる。
2. ウ、オ
28
No.28 民法に規定する無効又は取消しに関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか。
5. 取り消すことができる法律行為について、追認をすることができる時以後に、取消権者が履行の請求をした場合には、異議をとどめたときを除き、追認をしたものとみなす。
29
No.29 無効及び取消しに関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、遡及的に有効となる。 イ. 無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であることを知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。 ウ. 無効は、取消しとは異なり、意思表示を要せず、最初から当然に無効であり、当事者に限らず誰でも無効の主張ができるものであるから、無効な行為は、強行規定違反又は公序良俗違反の行為に限られる。 エ. 取り消すことができる行為の追認は、原則として、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。 オ. 追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について取消権者から履行の請求があった場合は、取消権者が異議をとどめたときを除き、追認をしたものとみなされる。
5. イ、エ、オ
30
No.30 民法に規定する無効又は取消しに関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか。
4. 取り消すことができる法律行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相手方に対する意思表示によって行う。
31
No.37 民法に規定する代理に関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか。
2. 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。
32
No.38 代理に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 委任による代理人は、本人の許諾又はやむを得ない事由がなくても、自己の責任で復代理人を選任することができるが、やむを得ない事由により復代理人を選任した場合には、その選任及び監督についてのみ、本人に対してその責任を負う。 イ. 代理人が本人のためにすることを示さないで意思表示をした場合には、その意思表示は、原則として本人のみならず代理人に対してもその効力を生じないが、相手方が、代理人が本人のために意思表示をしたことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。 ウ. 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。また、追認は、相手方が追認の事実を知ったときを除き、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。 エ. 権限の定めのない代理人は、財産の現状を維持・保全する保存行為をすることはできるが、代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為をすることはできない。 オ. 委任による代理権は、原則として本人の死亡により消滅する。ただし、当事者間において本人の死亡によって代理権が消滅しない旨の合意があれば、代理権は消滅しない。
5. ウ、オ
33
No.39 代理に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 復代理とは、代理人が自らの責任で新たな代理人(復代理人)を選任して本人を代理させることをいい、復代理人の選任は、法定代理では常に行うことができるが、任意代理では本人の許諾を得た場合又はやむを得ない事由がある場合にのみ行うことができる。 イ. 自己契約及び双方代理は、代理権を有しない者がした行為とみなされるが、本人があらかじめ許諾している行為や債務の履行については例外とされており、例えば、登記申請行為における登記権利者と登記義務者の双方を代理することは、債務の履行に当たり、許される。 ウ. 契約の締結時に相手方から代理人に対し詐欺があった場合、代理人の意思表示に瑕疵があったかどうかは、本人ではなく,代理人を基準として判断することになるため、本人の事情について考慮されることはない。 エ. 無権代理人である子が本人である親を単独相続した場合においては、本人が死亡前に無権代理行為の追認拒絶をしていたときであっても、無権代理人が本人の追認拒絶の効果を主張することは信義則に反し許されないため、無権代理行為は当然に有効となる。 オ. 代理権踰越の表見代理が認められるためには、代理人が本人から何らかの代理権(基本代理権)を与えられている必要があるが、基本代理権は、私法上の行為についての代理権であることが必要であり、公法上の行為についての代理権がこれに含まれることはない。
1. ア、イ
34
No.40 民法に規定する代理に関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか。
3. 権限の定めのない代理人は、保存行為及び代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為をする権限を有する。
35
No.41 代理に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 代理人が、本人のためにすることを示さないで相手方に意思表示をした場合において、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、本人に対して直接に効力を生ずる。 イ. 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が、ある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、原則として、代理人を基準として決する。 ウ. 制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は、行為能力の制限を理由として取り消すことができない。 エ. 委任による代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができるが、法定代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。 オ. 復代理人は、その権限内の行為について代理人を代表し、また、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。
1. ア、イ
36
No.42 代理に関する次のア〜エの記述の正誤の組合せとして、最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 未成年者Aの法定代理人Bは、Aの許諾を得ずに、またやむを得ない事由もないのに、友人Cを復代理人に選任した。この場合、Cは適法な復代理人ではない。 イ. Aは、Bを代理してB所有の自動車をCに譲渡したが、この売買契約の際、CはAを欺罔した。この場合、詐欺を理由として意思表示を取り消すことができるのはAであって、Bは取り消すことはできない。 ウ. 本人Aの無権代理人Bと契約を締結した相手方Cが、Bに対して履行請求をした場合、この請求に対するBの「表見代理が成立し、契約の効果はAに帰属するから、自分は履行の責任を負わない」との主張は認められない。 エ. Aは、何らの代理権もないにもかかわらず、Bの代理人と称してCとの間でB所有の土地を譲渡する契約をした。この場合、BはAに対して追認をすることができるが、Cが追認の事実を知った後でなければ、BからCに対して追認の効果を主張することはできない。
5. ア誤、イ誤、ウ正、エ正
37
No.43 代理に関する次のア〜エの記述の正誤の組合せとして最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 代理人が本人のためにすることを示さずに意思表示をした場合、相手方において、代理人が本人のためにすることを知らず、かつ、知らなかったことについて過失がなかったときは、代理人と相手方との間にその意思表示の法律効果が発生し、代理人は、表示と内心の意思との不一致を理由とする錯誤の主張をすることもできない。 イ. 無権代理人がした契約を本人が追認する場合、その契約の効力は、別段の意思表示がない限り、追認をした時から将来に向かって生ずる。 ウ. 無権代理人が本人所有の土地に抵権権を設定したため、本人が抵当権設定登記の抹消登記請求訴訟を提起した後に死亡した場合、無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為は有効とならない。 エ. 代理権授与の表示による表見代理が成立するためには、代理行為の相手方が、無権代理人が代理権を有すると信じ、かつ、そのように信じたことについて無過失であったことを、その相手方において主張立証しなければならない。
2. ア正、イ誤、ウ正、エ誤
38
No.44 代理に関するア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 代理人が保佐開始の審判を受けた場合、法定代理と任意代理のいずれにおいても、代理権は消滅する。 イ. Aが、BにA所有の土地の売却に関する代理権を与えたところ、Bは、売却代金を自己の借金の弁済に充てる目的で、その土地をCに売却した。この場合、BはAに土地売買の効果を帰属させる意思があることから、Bの代理行為は常に有効となる。 ウ. Aの子Bは、Aに無断でA所有の土地をCに売却した。その後、Aが何らの意思表示もせず亡くなり、Aの子B、D及びEがAを相続した場合に、Bの無権代理行為につきD及びEが追認を拒絶したときは、Bの法定相続分についても無権代理行為は有効とはならない。 エ. 無権代理行為を本人が追認した場合、別段の意思表示がなければ、その効力は契約の時に遡って生ずる。この本人の追認は、無権代理人と無権代理の相手方のいずれに対して行ってもよいが、無権代理人に対して行った追認は、追認の事実を知らない相手方に対抗することができない。
4. ウ、エ
39
No.45 代理に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 代理人が、本人のためにすることを示さずに相手方との間で売買契約を締結した場合、相手方が、代理人が本人のために売買契約を締結することを知り又は知ることができたときは、本人と相手方との間に売買契約の効力が生ずる。 イ. 代理人が、相手方の詐欺により、本人のためにすることを示して相手方との間で売買契約を締結した場合、本人はその売買契約を取り消すことができない。 ウ. 法定代理人は、やむを得ない事由がなくとも復代理人を選任することができ、この場合、本人に対して、復代理人の選任及び監督についての責任のみを負う。 エ. 判例の趣旨に照らすと、既に合意されている契約条項に基づいて、代理人が双方の当事者を代理して公正証書を作成する場合には、双方代理の禁止に関する規定の法意に違反しない。 オ. 無権代理行為の相手方は、表見代理が成立する場合であっても、表見代理の主張をせずに、直ちに無権代理人に対して、履行又は損害賠償の請求をすることができるが、これに対し無権代理人は、表見代理の成立を主張してその責任を免れることができる。
2. ア、エ
40
No.46 代理に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 同一の法律行為についてであっても、債務の履行や本人があらかじめ許諾した行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることができる。 イ. 無権代理行為の相手方は、本人の追認後であっても相当の期間内であれば、無権代理行為を取り消すことができる。 ウ. 本人が無権代理行為を追認した場合、別段の意思表示がないときは、追認の時点からその効力を生ずる。 エ. 本人が無権代理人を単独相続した場合、無権代理行為は本人の相続により当然有効となるものではないとするのが判例である。 オ. 無権代理人を本人とともに相続した者がその後更に本人を相続した場合、当該相続人は、本人の資格で無権代理行為の追認を拒絶することができるとするのが判例である。
2. ア、エ
41
No.47 代理に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 無権代理人がした契約について、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知らなかった場合、本人が追認をしない間は、相手方はこれを取り消すことができる。 イ. 相手方が本人に対して無権代理行為の追認をするかどうかを確答すべき旨の催告を行い、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされる。 ウ. 本人が無権代理行為を追認した場合には、別段の意思を表示しない限り、追認した時から本人に効果が帰属する。 エ. 本人が無権代理行為の追認を拒絶して死亡した後、無権代理人が本人を相続した場合には無権代理行為が無効であることを主張することができない。 オ. 無権代理人と他の相続人が本人を共同して相続した場合、他の共同相続人全員の追認がなくても、無権代理人の相続分に該当する部分については、当然に有効になる。
1. ア、イ
42
No.48 無権代理に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのある場合は判例の見解による。 ア. Bは代理権がないのにAの代理人であると称して、Cとの間でA所有の不動産について売買契約を締結した。その後に、AがCに対してこの売買契約を追認したときは、代理権のある代理人が代理行為をしたことになるが、本人も相手方も、当該売買契約を遡って有効にすることを期待していないから、Aの追認の効果は、別段の意思表示がない限り、追認の時点から生ずる。 イ. 民法第117条により無権代理人が相手方に対して負う責任について、無権代理人が代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、無権代理人は責任を負わない。しかし、無権代理人が代理権を有しないことを相手方が過失により知らなかったにすぎないときには、無権代理人は常に責任を負わなければならない。 ウ. 無権代理行為の相手方は、本人が追認又は追認拒絶するまで不安定な状態に置かれるため、主導的に効果を確定させる手段として、本人に対する催告権を有している。この催告権とは、本人に対して相当の期間を定めて期間内に追認をするかどうかの確答をすべき旨の催告をなし得るとし、その期間内に本人が確答しなければ追認を拒絶したものとみなすものである。 エ. Aの子であるBが、代理権がないのにAの代理人であると称して、Cとの間でA所有の不動産について売買契約を締結したが,AはBの無権代理行為を追認することを拒絶した。このAの追認拒絶により無権代理行為の効力が本人Aに及ばないことが確定し、その後、Aが死亡した結果、無権代理人BがAを単独相続しても、無権代理行為が有効になるものではない。 オ. Aの子であるBが、代理権がないのにAの代理人であると称して、Cとの間でA所有の不動産について売買契約を締結したが、Aは、Bの無権代理行為に対する追認も追認絶もしないままに、死亡した。Aの相続人がBとAの配信者Dの2名であって、Dが無権代理行為の追認を拒絶している場合でも、無権代理行為をしたBが責任を免れることは許されるべきではないから、当該無権代理行為は無権代理人Bの相続分に限って当然に有効になる。
4. ウ、エ
43
No.49 Bが、代理権がないのにAの代理人と称して、Cとの間でC所有の土地の売買契約を締結したという事例に関する次のア〜オの記述のうち、適当なもののみをすべて挙げているのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. AはBに対しBの行為を追認したが、Cは、Aの追認の事実を知らなかったので,当該売買契約を取り消した。この場合、Cは、Aからの土地引渡請求を拒むことができる。 イ. CがAに対して、相当の期間内にBの行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をし、Aが期間内に返答をしない場合には、Aは追認したものとみなされる。 ウ. CがBに代理権がないことを知っていた場合であっても、Cは、当該売買契約を取り消すことができ、その取消しの意思表示は、A、Bのいずれにしてもよい。 エ. AがBの行為について追認拒絶した後に死亡し、Bが単独で相続した場合、BはCに対し、Aによる追認拒絶の効果を主張することはできない。 オ. Cは、Bが行為能力の制限を受けていた場合には、Bに対し,無権代理人としての責任を追及して、売買代金の支払を請求することはできない。
2. ア、オ
44
No.50 無権代理及び表見代理に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 無権代理人がした契約の相手方は、本人が追認をしない間は、当該契約を取り消すことができるが、契約の時に無権代理であることを知っていたときは、これを取り消すことができない。 イ. 無権代理人は、本人の追認を得たときであっても、無権代理行為の相手方に対し、相手方の選択に従い、履行又は損害賠償の責任を負う。 ウ. 無権代理行為の本人が、無権代理人を相続した場合、被相続人の無権代理行為は本人の相続により当然に有効にはならないから、相続人たる本人は被相続人の無権代理行為の追認を拒絶することができる。 エ. 権限外の行為の表見代理の成立要件である基本代理権は、私法上の行為についての代理権でなければならず、公法上の行為についての代理権は、登記申請行為のように私法上の契約による義務の履行のためになされるものであったとしても、これに該当しない。 オ. 代理人が、本人から与えられた代理権が消滅した後に、第三者との間でその代理権の範囲外の行為をした場合、第三者が、その行為について代理人に代理権があると信じるべき正当な理由があったとしても、本人はその行為についての責任を負わない。
2. ア、ウ
45
No.51 法人又は権利能力のない社団に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
2. 税理士会が政党など政治資金規正法上の政治団体に金員の寄付をすることは、税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するためのものであっても、税理士法で定められた税理士会の目的の範囲外の行為であり、当該寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効であるとした。
46
No.52 権利能力のない社団に関するA〜Dの記述のうち、最高裁判所の判例に照らして、妥当なものを選んだ組合せはどれか。 A. 権利能力のない社団より脱退した構成員は、当該社団に総有の廃止その他財産処分に関する定めがなくても、当然に、その脱退当時の当該社団の財産につき、共有の持分権又は分割請求権を有する。 B. 権利能力のない社団の資産たる不動産については、社団の代表者が、社団の構成員全員の受託者たる地位において、個人の名義で所有権の登記をすることができるにすぎず、社団を権利者とする登記をし、または、社団の代表者である旨の肩書を付した代表者個人名義の登記をすることは、許されない。 C. 権利能力のない社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、一個の義務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、構成員各自は、取引の相手方に対し、直接には個人的債務ないし責任を負わない。 D. 団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体が存続するが、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していない場合、この団体は、民法上の組合としては認められないが、権利能力のない社団としては認められる。
4. B、C
47
No.53 権利能力のない社団に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
1. 権利能力のない社団の成立要件は、団体としての組織を備え、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定しているものでなければならないとした。
48
No.54 権利能力なき社団・財団に関するア〜エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。 ア. 権利能力なき社団といい得るためには、団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることが必要である。 イ. 権利能力なき社団の代表者が社団の名においてした取引上の債務は、その社団の構成員全員に、一個の義務として総有的に帰属するとともに、社団の総有財産だけがその責任財産となり、各構成員は、取引の相手方に対し、直接に個人的債務ないし責任を負わないのが原則であるが、権利能力なき社団の代表者は、取引の相手方に対し、直接に個人的債務ないし責任を負う。 ウ. いわゆる権利能力なき財団の代表者が代表者として約束手形を振り出した場合、当該代表者は、個人として、当然に振出人としての責任を負うものではない。 エ. 権利能力なき社団の資産である不動産について、登記上の所有名義人となった代表者がその地位を失い、これに代わる新代表者が選任されたときは、新代表者は、旧代表者に対して、当該不動産について自己の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求めることができる。
5. ア、ウ、エ
49
No.55 時効に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
5. 時効の完成前に時効の利益をあらかじめ放棄することは許されないが、時効の完成後に時効の利益を放棄することは認められる。
50
No.56 民法に規定する時効に関する記述として、判例、通説に照らし、妥当なのはどれか。
4. 裁判上の請求及び強制執行により、時効の完成が猶予される場合があるが、裁判上の請求について、訴えの却下又は取下げがあった場合には、その時から6か月を経過するまでの間、時効の完成が猶予される。
51
No.57 民法に規定する時効に関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか。
3. 時効期間の満了時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため、裁判上の請求や強制執行といった時効の完成猶予事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から3ヶ月を経過するまでの間は、時効は完成しない。
52
No.58 取得時効に関する記述として最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。
1. 被相続人の占有により取得時効が完成した場合において、その共同相続人の一人は、自己の相続分の限度においてのみ、取得時効を援用することができる。
53
No.59 取得時効に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、土地賃借権の時効取得が可能である。 イ. 占有者がその占有開始時に目的物について他人の物であることを知らず、かつ、そのことについて過失がなくても、その後、占有継続中に他人の物であることを知った場合には、悪意の占有者として時効期間が計算される。 ウ. 時効取得を主張する相続人は、自己の占有のみを主張することも、被相続人の占有を併せて主張することもできる。 エ. 賃借人が、内心では所有の意思をもって占有している場合、その占有は自主占有となる。 オ. 他人の物を占有することが取得時効の要件であるから、所有権に基づいて不動産を占有していた場合には、取得時効は成立しない。
1. ア、ウ
54
No.60 時効に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 一般の債権については、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、又は、債権者が権利を行使することができる時から10年間、権利を行使しないと、時効によって消滅する。 イ. 債務不履行に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、又は、権利を行使することができる時から20年間、権利を行使しないと、時効によって消滅する。 ウ. 不法行為に基づく人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間、又は、不法行為の時から20年間、権利を行使しないと、時効によって消滅する。 エ. 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、確定の時に弁済期の到来していない債権であっても、裁判上の請求等が終了した時から10年間、権利を行使しないと、時効によって消滅する。 オ. 債権又は所有権以外の財産権については、権利を行使することができる時から10年間、権利を行使しないと、時効によって消滅する。
1. ア、イ
55
No.64 物権的請求権に関する次の記述のうち、最も適当なのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。
4. 土地を利用する権原なくその土地上に建物を所有するBがCに対し建物を譲り渡したが建物の登記名義人はBのままである場合、土地の所有者は、Cに対し、所有権に基づく物権的請求権により建物収去土地明渡しを求めることができる。
56
No.65 所有権に基づく物権的請求権に関する次のア〜オの記述のうち、適当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. AがBに対して所有権に基づく妨害排除請求権を行使する場合、Aの請求が認められるためには、妨害状態の発生についてBに故意又は過失があることが必要である。 イ. Aがその所有する建物をBに賃貸し、当該賃貸借契約が終了したとき、Aは、Bに対し、賃貸借契約の終了に基づいて当該建物の返還を求めることはできるが、所有権に基づいて返還を求めることはできない。 ウ. Aは、自己の所有する土地をBに譲渡したが、所有権移転登記が未了である場合、Bは、同士地上に権原なく自動車を置いているCに対し、所有権に基づく物権的請求権を行使することができない。 エ. Aは、Bの所有する土地上に無断で建物を建築したが、AC間の合意により当該建物の所有権保存登記は所有権者ではないCの名義でなされていた場合、Cは、Bに対し、当該建物の収去義務を負わない。 オ. Aの所有するギターをBが無断でCに賃貸し、当該賃貸借契約に基づいてCがこれを占有している場合、Aは、当該ギターを直接占有するCに対してだけでなく、Bに対しても、所有権に基づく返還請求権を行使することができる。
5. エ、オ
57
No.66 所有権に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 他人の土地上にある建物の所有権を取得した者が、自らの意思に基づいて所有権取得の登記を経由した場合には、たとえ建物を他に譲渡したとしても、引き続き当該登記名義を保有する限り、土地所有者に対し、当該譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。 イ. 不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得するから、A所有の土地に賃借権を有するBが、その権原に基づき当該土地上で農作物を栽培している場合には、農作物は土地に従として付合し、Aが当該農作物の所有権を取得する。 ウ. 売主の所有に属する特定物を目的とする売買において、当事者間に所有権移転時期についての特約がない場合は、所有権移転の効力は、買主に対して直ちに生じるのではなく、買主が売主に代金を支払った時に生じる。 エ. 各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができるが、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることは可能である。 オ. A、B及びCが建物を共有する場合において、Aの持分について、第三者Dの名義で実体関係に合致しない持分移転登記がされたときであっても、Bは、自己の持分権を侵害されたわけではないから、Dに対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することはできない。
2. ア、エ
58
No.67 共有に関する次の記述のうち、最も適当なのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。
3. 農地の共有者の1人が、他の共有者の同意を得ることなく宅地への造成を行っている場合、他の共有者は、各自単独で造成工事の差止めを請求することができる。
59
No.68 A.B.Cの3人が各3分の1の持分で甲建物を共有している事例に関する次の記述のうち、最も適当なのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。
3. 甲建物のBの持分について、無権利者Dが不実の持分移転登記を経由している場合、Aは、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を求めることができる。
60
No.69 民法に規定する共有に関する記述として、判例、通説に照らして、妥当なのはどれか。
3. 共有物の管理に関する事項は、共有物の著しい変更の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決するが、共有物の保存行為は、各共有者が単独ですることができる。
61
No.70 共有に関する次のア〜オの記述のうち、適当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. A,B,Cの3人が各3分の1の持分で甲土地を共有しているが、Aが、B及びCの承諾を得ずに単独で甲土地を占有し、B及びCが甲土地を使用できない場合、B及びCの持分を合計すると過半数を超えるから、B及びCは、Aに対して、当然に甲土地の明渡しを請求することができる。 イ. A,B,Cの3人が各3分の1の持分で甲土地を共有しているが、Aが、B及びCの承諾を得ずに単独で甲土地を占有し、B及びCが甲土地を使用できない場合、Aは、B及びCに対して、自己の持分を超える使用の対価を償還しなければならない。 ウ. A,Bの2人が各2分の1の持分で甲土地を共有している場合、Aは、Bの承諾なしに、Aの持分をCに譲渡することができる。 エ. A,Bの2人が各2分の1の持分で甲土地を共有している場合、CがBからその持分の譲渡を受け、その旨の持分移転登記をしたが、この譲渡が無効であったとき、Aは、Cに対し、単独でこの持分移転登記の抹消登記手続を求めることはできない。 オ. A,Bの2人が各2分の1の持分で甲土地を有している場合、Aがその特分を放棄したとき、この持分はBに帰属する。
4. イ、ウ、オ
62
No.71 民法に規定する共有に関する記述として、判例、通説に照らして、妥当なのはどれか。
2. 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負うが、共有者が1年以内にこの負担義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
63
No.72 A,B及びCが甲建物を同一の持分で共有している場合に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 甲建物について、無権利者Dが単独名義の登記を有する場合、Aは、Dに対して、単独で登記の全部抹消登記手続を求めることができる。 イ. 甲建物について、CがA及びBに無断で単独名義の登記を有する場合であっても、A及びBは、Cに対して、自己の持分を超えて更正の登記手続を請求することはできない。 ウ. Aは、B及びCに対して、いつでも甲建物の分割を請求することができ、A,B及びCの三者間の契約によっても、これを制限することはできない。 エ. 甲建物について、A,B及びCの各持分の登記がされている場合において、CがEに対しその持分を譲渡し、登記も移転したが、当該譲渡が無効であったときは、Aは、自己の持分を侵害されているわけではないため、Eに対して、単独で持分移転登記の抹消登記手続を求めることができない。 オ. Cが単独で甲建物に居住してこれを占有している場合であっても、A及びBは、甲建物の明渡しを求める理由を主張・立証しない限り、Cに対して、甲建物の明渡しを請来することはできない。
4. ア、イ、オ
64
No.73 所有者不明土地・建物管理命令及び管理不全土地・建物管理命令に関するア~オの記述うち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては,共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、職権により、所有者不明土地管理人による管理を命ずる処分をすることができる。 イ. 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)にある動産に及ぶ。 ウ. 所有者不明土地管理人が、保存行為の範囲を超える行為、又は、所有者不明土地等の性質を変えない範囲内を超える利用又は改良を目的とする行為をするには、裁判所の許可を得なければならず、許可がないことをもって善意の第三者に対抗することができる。 エ. 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、土地所有者による管理を命ずる処分をすることができる。 オ. 管理不全土地管理人が管理不全土地管理命令の対象とされた土地を処分するには、裁判所の許可が必要となるが、許可に際して、当該土地の所有者の同意が必要である。
4. イ、オ
65
No.74 民法に規定する占有権の取得に関する記述として、妥当なのはどれか。
2. 占有権の譲渡は、占有物の引渡しによってするが、譲受人又はその代理人が現に占有物を所持する場合には、当事者の意思表示のみによってすることができる。
66
No.75 占有権に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 代理占有が成立するためには、本人と占有代理人との間に賃貸借等の占有代理関係が存在することが必要であるから、賃貸借関係が終了した場合には、賃借人が引き続き占有している場合であっても、賃貸人の代理占有は当然に消滅する。 イ. 被相続人の事実的支配の中にあった物は、原則として当然に相続人の支配の中に承継されると見るべきであるから、被相続人が死亡して相続が開始するときは、相続人が相続の開始を知っていたか否かにかかわらず、特別の事情のない限り、相続人は、被相続人の占有権を承継する。 ウ. 占有者は、所有の意思で占有するものと推定されるから、占有者の占有が自主占有に当たらないことを理由として取得時効の成立を争う者は、当該占有が他主占有に当たることについての立証責任を負う。 エ. 民法187条1項の規定は、相続のような包括承継の場合にも適用されるから、相続人はその選択に従い、自己の占有のみを主張し、又は被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することができる。 オ. 善意の占有者は、占有物から生じる果実を取得するが、本権の訴えにおいて敗訴したときは、その判決が確定したときから悪意の占有者とみなされるから、そのとき以後の果実を取得することはできない。
4. イ、ウ、エ
67
No.76 占有権に関する炊のア~エの記述のうち、適当なもののみをすべて挙げているのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 賃借人は、賃貸人以外の真の所有者から目的物の返還の請求を受けた場合、その所有者に対し、必要費及び有益費の全額を請求することができる。 イ. Aが動産をBに賃貸した場合、Bがその動産の占有権を取得するが、Aはその動産の占有権を失わない。 ウ. 占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定されるから、取引による動産の占有取得者Aは、前占有者であるBに所有権があると信じることについて過失がないものと推定される。 エ. 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷した場合、所有の意思のない占有者であっても、善意であるときは、その回復者に対し、その滅失又は損傷によって現に利益を受けている限度において損害の賠償をすれば足りる。
4. イ、ウ
68
No.77 民法に規定する占有権に関する記述として、妥当なのはどれか。
5. 占有者は、その善意、悪意を問わず、占有物の改良のために支出した有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。
69
No.78 民法に規定する占有権に関する記述として、妥当なのはどれか。
3. 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができるが、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
70
No.79 占有権に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 不動産の所有者が当該不動産を第三者に賃貸した場合、賃借人は当該不動産の占有権を取得するが、賃貸人の占有権も失われるわけではなく、代理占有により占有権を有することとなる。 イ. 権原の性質上、占有者に所有の意思がある場合を自主占有といい、所有の意思がない場合を他主占有という。権原の性質によって所有の意思の有無は決定されるから、例えば、売買契約の買主が取得する占有は、当該売買契約が無効なものであったとしても自主占有となる。 ウ. 占有権とは、物に対する現実の支配に基づいて認められる権利であり、前の占有者における占有期間は、現在の占有者自身が当該物を現実に支配していたとはいえないから、現在の占有者が取得時効の成立を主張する場合において、前の占有者の占有期間を併せて主張することは認められない。 エ. 占有者は、第三者にその占有を奪われた場合には、占有回収の訴えにより、その物の返還を請求することができるが、当該第三者が訴訟において自身に所有権があることを主張・立証した場合には、裁判所は、占有者が所有権を有しないことを根拠として、当該占有回収の訴えを棄却することになる。 オ. 占有者は、所有の意思をもって、善意・無過失で、平穏かつ公然と占有をするものと法律上推定される。
1. ア、イ
71
No.80 民法に規定する占有権に関する記述として、妥当なのはどれか。
4. 占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければその物を回復することができない。
72
No.81 占有権に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
3. AB間でB所有の甲土地についてBを貸主としAを借主とする賃貸借契約が成立している場合において、賃貸借契約期間中に、AがBに対し、今後は所有の意思をもって甲土地を占有すると表示したときは、Aの占有は自主占有となる。
73
No.82 占有の承継による土地の事項取得に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
5. AがCの土地を借りて14年間継続して占有した後、登記記録を見て当該土地の名義人がCであることを知っていたBに譲渡した。Bは、その後7年間継続して占有しても、当該土地の所有権を時効取得することはできない。
74
No.83 占有権及び所有権に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 所有の意思がある占有を自主占有といい、この所有の意思の有無は、占有取得の原因たる事実によって外形的客観的に決められるべきものであるから、盗人の占有も自主占有に当たる。 イ. 相続人が、被相続人の死亡により、相続財産の占有を承継したばかりでなく、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始し、その占有に所有の意思があるとみられる場合においては、当該被相続人の占有が所有の意思のないものであったときでも、当該相続人は民法第185条にいう新権原により所有の意思をもって占有を始めたものということができる。 ウ. 占有者が他人に欺かれて物を交付した場合、当該占有者の占有移転の意思には瑕疵があるといえるため、当該占有者は、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。 エ. 他人の土地上の建物の所有権を取得した者が、自らの意思に基づいて自己名義の所有権取得登記を経由した場合には、たとえ建物を他に譲渡したとしても、引き続き当該登記名義を保有する限り、土地所有者による建物収去・土地明渡しの請求に対し、当該譲渡による建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。 オ. 建築途中のいまだ独立の不動産に至らない建前に第三者が材料を供して工事を施し独立の不動産である建物に仕上げた場合における建物所有権の帰属は、動産の付合に関する民法第243条の規定に基づいて決定される。 (参考)民法 (動産の付合) 第243条 所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなったときは、その合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。分離するのに過分の費用を要するときも、同様とする。
2. ア、イ、エ
75
No.84 不動産の物権変動に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なのはどれか。
4. Aが自己の所有する甲不動産をBに譲渡したが、Cが甲不動産を不法に占有している場合、不法占有者は民法第177条にいう第三者に当たらないため、Bは、登記がなくとも甲不動産の所有権の取得をCに対抗することができ、その明渡しを請求することができる。
76
No.85 物権変動に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. AはBにだまされて自己所有の土地をBに譲渡し、Bはその登記を備えた。その後、Aは、Bによる詐欺を理由に、AB間の契約を取り消したが、Bは、Aによる詐欺取消し後、登記がまだ自己にある間に、Cに当該土地を譲渡した。この場合、AとCは対抗関係に立つことから、Cは登記を備えなければ、Aに当該土地の所有権を対抗することができない。 イ. AがBに不動産を売却し、その後、BがCに当該不動産を売却した。その際、Aから直接Cへ当該不動産の移転登記がなされた。この場合、既にCへの移転登記がなされており、現在の権利関係については合致しているのであるから、Bによる抹消登記の請求が認められることはない。 ウ. Aが土地をBとCに二重に譲渡し、登記を備えたCが背信的悪意者であった場合、Cから更に当該土地を譲り受け、登記を備えたDは、Cが背的悪意者である以上、自己が善意であっても当該土地の所有権をBに対抗することができない。 エ. Aの所有していた土地をBとCが共同相続したが、BがCに無断で、当該土地を自己名義に単独登記した上で、Dに当該土地を譲渡した。この場合、BはCの持分については無権利者であり、登記に公信力がないことから、DはCの持分について権利を取得することができない。 オ. Aが所有していた土地をBとCが共同相続したが、Bが相続による持分を放棄した。その後、Bの債権者DがBの持分を差し押さえた場合、Cは、Bの持分を取得したことを、登記なくしてDに対抗することができない。
1. ア、エ
77
No.86 不動産の物権変動に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. AがBの強迫によりA所有の不動産をBに売却した後、Bが当該不動産を更に善意のCへ売却した場合において、Aが強迫を理由としてAB間の売買を取り消したのがBC間の売買の前であったときは、AはCに対し登記なくして自己の権利を対抗することができ、AB間の売買を取り消したのがBC間の売買の後であったときも、同様である。 イ. Aが、Bに自己の所有する不動産を売却したところ、Bが代金を支払わないため売買契約を解除した場合において、AB間の契約解除前にBがCに当該不動産を売却していたときには、CはAに対し登記なくして自己の権利を対抗することができないが、AB間の契約解除後にBがCに当該不動産を売却していたときには、CはAに対し登記なくして自己の権利を対抗することができる。 ウ. Aが死亡し、その相続人であるBが、共同相続人であるCに無断で相続財産である不動産について自己名義の単独登記をし、Dに当該不動産を売却した場合、CはDに対し登記なくして自己の共有持分を対抗することができない。 エ. Aが死亡し、その相続人であるBが、共同相続人であるCとの遺産分割協議の結果、その相続財産である不動産を単独で相続した後に、Cが当該不動産に係る遺産分割前の自己の共有持分をDに譲渡した場合、BはDに対し登記なくして遺産分割による法定相続分を超える当該不動産の権利取得を対抗することができない。 オ. AがBに自己の所有する不動産を売却し、その後当該不動産についてCの取得時効が完成した場合には、CはBに対し登記なくして自己の権利取得を対抗することができるが、Cの時効完成後にAがBに当該不動産を売却した場合には、CはBに対し登記なくして自己の権利取得を対抗することができない。
5. エ、オ
78
No.87 不動産の物権変動に関するア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 民法第96条第3項が、詐欺による意思表示の取消しは善意無過失の第三者に対抗することができないとするのは、取消しの遡及効を制限する趣旨であり、その「第三者」とは、取消しの遡及効により影響を受けるべき第三者、すなわち取消し後にその行為の効力につき利害関係を有するに至った第三者と解すべきである。したがって、取消し前の不動産に係る権利の得喪変更については、同項ではなく、民法第177条が適用され、不動産を売り渡しその所有権を買主に移転した者は、詐欺を理由にその売買契約を取り消した場合でも、登記名義を自己に回復しない限り、取消し前にその不動産の権利を取得した第三者に対し、所有権の復帰を対抗することはできない。 イ. 遺産の分割は、相続開始時に遡ってその効力を生ずるが、第三者に対する関係においては、相続人が相続によりいったん取得した権利について分割時に新たな変更を生ずるのと実質上異ならないものである。したがって、遺産の分割により相続分を超える不動産の権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後にその不動産について権利を取得した第三者に対し、法定相続分を超える自己の権利の取得を対抗することはできない。 ウ. 不動産物権の存在・変動を公示する登記制度は、不動産に係る実体的な権利関係を正確に表示しその静的安全及び動的安全を保護するためにあるから、不動産の所有権を正当な理由に基づき取得した者においても、実体的な権利変動の過程と異なる移転登記を請求する権利は認められない。したがって、甲乙丙と順に所有権が移転したのに登記名義は依然として甲にあるような場合に、現に所有権を有する丙は、中間省略登記をするについて甲及び乙の同意があるときであっても、甲に対し直接自己に登記を移転すべき旨を請求することは許されない。 エ. 背信的悪意者が民法第177条の「第三者」から除外されるのは、第1の譲受人の売買等に遅れて不動産を取得し登記を経由した者が登記を経ていない第1の譲受人に対してその登記の欠缺を主張することがその取得の経緯等に照らし信義則に反して許されないからであり、背信的悪意者である第2の譲受人が不動産を取得する行為は信義則違反として当然無効となる。したがって、所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、背信的悪意者である丙がその不動産を甲から二重に買い受けて登記を完了した後、さらに丁が丙からその不動産を買い受け登記が丁に移転された場合、丁自身は乙に対する関係で背信的悪意者であると評価されなくとも、丁はその不動産の所有権取得を乙に対抗することはできない。
2. イ
79
No.88 民法に規定する不動産物権変動に関するA〜Dの記述のうち、最高裁判所の判例に照らして、妥当なものを選んだ組合せはどれか。 A. 相続人は、相続の放棄をした場合には相続開始時に遡って相続開始がなかったと同じ地位に立ち、当該相続放棄の効力は、登記等の有無を問わず、何人に対してもその効力を生ずべきものと解すべきであって、相続の放棄をした相続人の債権者が、相続の放棄後に、相続財産たる未登記の不動産について、当該相続人も共同相続したものとして、代位による所有権保存登記をした上、持分に対する仮差押登記を経由しても、その仮差押登記は無効であるとした。 B. 不動産を目的とする売買契約に基づき買主のため所有権移転登記があった後、当該売買契約が解除され、不動産の所有権が売主に復帰した場合には、契約が遡及的に消滅することから、売主は、その所有権取得の登記をしなくても、当該契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し、所有権の復帰をもって対抗できるとした。 C. 家屋が、甲から乙、丙を経て丁に転々譲渡された後、乙の同意なしに丁のため当該家屋について中間省略登記がなされたときは、乙は、当該中間省略登記の抹消登記を求める法律上の利益の有無に関わらず、登記に実体的権利関係を忠実に反映させるため、抹消請求が許されるとした。 D. 宅地の賃借人としてその賃借地上に登記ある建物を所有する者は、当該宅地の所有権の得喪につき利害関係を有する第三者であるから、賃貸中の宅地を譲り受けた者は、その所有権の移転につき登記を経由しなければこれを賃借人に対抗することができず、したがってまた、賃貸人たる地位を主張することができないとした。
3. A.D
80
No.89 不動産の物権変動に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. AがBに、Cが賃借している不動産を売却した場合、Bの所有権とCの賃借権は両立するため、Cは民法第177条の「第三者」に当たらず、Bは登記なくしてCに賃料を請求することができる。 イ. AがBに不動産を売却し、その登記が未了の間に、Cが当該不動産をAから二重に買い受け、更にCからDが買い受けて登記を完了した。この場合に、Cが背的悪意者に当たるとしても、Dは、Bに対する関係でD自身が背信的悪意者と評価されるのでない限り、当該不動産の所有権取得をBに対抗することができる。 ウ. AがBに不動産を売却し、その登記が未了の間に、Bが当該不動産をCに転売して所有権を喪失した場合には、Bは、Aに対する登記請求権を失う。 エ. AがBに不動産を売却し、その登記を完了したが、Aは、Bの債務不履行を理由に、Bとの売買契約を解除した。その後、まだ登記名義がBである間に、BがCに当該不動産を売却した場合には、Cは、民法第545条第1項により保護されるため、登記なくして、当該不動産の所有権取得をAに対抗することができる。 オ. A所有の不動産をBが占有し続けた結果、取得時効が完成したが、Bの時効完成前に、AはCに当該不動産を売却していた。この場合に、Bの時効完成後にCが登記を完了したときは、Bは時効完成による所有権取得をCに対抗することができない。
1. イ
81
No.90 Aは、自らが所有する甲土地をBへ売却した。Aは、Bへ売却する前、甲土地をCに対して賃貸して引き渡し、Cは、甲土地上に建物を建築して保存登記を行っていた。この事例に関する次のア~エの記述の正誤の組合せとして最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. Bは、AからBへの譲渡について所有権移転登記を備えなければ、Bが甲土地の賃貸人であることを争っているCに対し、賃貸人の地位を主張して賃料の支払を請求することができない。 イ. AがBに対して甲土地を売却する前にAC間の賃貸借契約が終了していた場合、Bは、AからBへの譲渡について所有権移転登記を備えなければ、Cに対し、甲土地の所有権に基づく明渡請求をすることができない。 ウ. Aは、Bに対して甲土地を売却する前にDに対して甲土地を売却し、所有権移転登記も行ったが、Bへ売却する前にAD間の売買契約は解除された。この場合、Bは、AからBへの譲渡について所有権移転登記を備えなければ、Dに対し、甲土地の所有権を主張することができない。 エ. Aが甲土地をBへ譲渡した後、Aの債権者であるEが強制競売の申立てを行い、甲土地を差し押さえた。Bは、AからBへの譲渡について所有権移転登記を備えていなければ、Eに対し、甲土地の所有権を主張することができない。
3. ア正、イ誤、ウ誤、エ正
82
No.91 不動産物権変動に関する次のア〜エの記述の正誤の組合せとして、最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. Aは、自己の所有する甲土地をBに売却し、その後、Aは、甲土地をCに売却して登記を移転した。Cは、いわゆる背情的悪意者であったが、甲土地をDに売却して登記を移転した。DがAB間の売買契約について単なる悪意である場合、Dは、Bに対して甲土地の所有権を対抗することができる。 イ. Aは、Bの所有する甲土地を時効取得した。その後、Bは、甲土地をCに売却して登記を移転した。CがAの時効取得について単なる悪意である場合、Aは、Cに対して甲土地の所有権を対抗することができる。 ウ. Aは、自己の所有する甲土地をBに売却し、Bは、甲土地をCに転売したが、登記はBとCのいずれにも移転していなかった。その後、Aは、AB間の売買契約をBの債務不履行を理由として解除した。CがAB間の売買契約について単なる悪意である場合、Cは、Aに対して甲土地の所有権を対抗することができる。 エ. Aが死亡し、相続人であるBとCがAの所有する甲土地を共同相続した。その後、Bは、甲土地を単独相続した旨の虚偽の登記を備え、これに基づいて甲土地をDに売却して登記を移転した。DがBとCの共同相続について善意である場合、Cは、Dに対して甲土地の自己の相続分を対抗することができる。
3. ア正、イ誤、ウ誤、エ正
83
No.92 民法に規定する不動産物権変動に関するA〜Dの記述のうち、最高裁判所の判例に照らして、妥当なものを選んだ組合せはどれか。 A. 土地の元所有者亡甲が当該土地を乙に贈与しても、その旨の登記手続をしない間は完全に排他性ある権利変動を生ぜず、被上告人丁が甲の相続人丙から当該土地を買い受けその旨の登記を得た場合、乙から更に当該土地の贈与を受けた上告人戊はその登記がない以上、所有権取得を被上告人丁に対抗することはできないとした。 B. 不動産を目的とする売買契約に基づき買主のため所有権移転登記があった後、当該売買契約が解除せられ、不動産の所有権が売主に復帰した場合でも、売主は、その所有権取得の登記を経由しなければ、当該契約解除後において買主から不動産を取得した第三者に対し、所有権の復帰をもって対抗し得ないとした。 C. 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し、自己の持分を登記なくして対抗することはできないとした。 D. 不動産の取得時効が完成しても、その登記がなければ、その後に所有権取得登記を経由した第三者に対しては時効による権利の取得を対抗し得ず、第三者の当該登記後に占有者がなお引続き時効取得に要する期間占有を継続した場合にも、その第三者に対し、登記を経由しなければ時効取得をもって対抗し得ないとした。
1. A.B
84
No.93 不動産物権変動に関する次のア〜エの記述の正誤の組合せとして最も妥当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. Aが所有し、自己名義の登記をしている甲土地につき、Bが書類を偽造して自己名義に登記を移転し、さらにBが甲土地をCに譲渡して所有権移転登記をした場合、Aは、Cに対し、甲土地の所有権を主張できない。 イ. Aが、その所有する甲土地をBに売却し、さらにBが甲土地をCに売却した後、AB間の売買契約が合意により解除された場合、Cは、Aに対し、所有権移転登記をしなくても、甲土地の所有権取得を主張することができる。 ウ. Aが、その所有する甲土地をBに譲渡し、さらにBが甲土地をCに譲渡した場合Cから直接Aに対し所有権移転登記を請求することは、A,B及びC間で中間省略登記の合意があったとしても許されない。 エ. Aが、その所有する甲土地をBに売却する契約をBとの間で締結した場合、甲土地の所有権は、原則として、その売買契約成立時に移転する。
5. ア誤、イ誤、ウ誤、エ正
85
No.94 民法第177条に関するア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 時効期間経過中の登記名義の変更は、取得時効とは無関係であり、取得時効の主張者は、時効完成時の登記名義人に対し、登記なくして時効による所有権の取得を対抗することができるとするのが判例である。 イ. Aが死亡し、その子B及びCが共同相続人となったが、Bが相続放棄をした場合において、Cは、相続財産たる不動産がBの相続放棄により自己の単独所有となったことにつき登記を経なければ、当該相続放棄後に当該不動産につきBに代位してB及びCの共有の相続登記をした上でBの持分を差し押さえたBの債権者Dに対して、当該相続放棄の効力を対抗することはできないとするのが判例である。 ウ. A名義の不動産を、Bが文書を偽造して自分の名義に移転し、Cに譲渡して所有権移転登記を経た場合であっても、Cは民法第177条にいう「第三者」に当たり、Aから当該不動産を有効に譲り受けたDは、登記なくしてその所有権取得をCに対抗することができない。 エ. 売主から不動産を買い受けた買主が所有権移転登記を経ていない場合において、売主の債権者が当該不動産を差し押さえたときは、買主は当該不動産の所有権取得を登記なくして当該債権者に対抗することができず、また、売主の一般債権者に対しても同様であるとするのが判例である。
1. ア
86
No.95 不動産物権変動に関する次のア~オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. Aは、その所有する甲土地をBに売却し、Bへの所有権移転登記がされたが、Bの債務不履行を理由としてAB間の売買契約を解除した場合、その解除後に、Bが、甲土地をCに売却し、Cへの所有権移転登記がされれば、Aは、Cに対し、契約解除による甲土地の所有権の復帰を対抗することができない。 イ. Aが、その所有する甲土地をBに売却した後、Bが、甲土地をCに売却した場合、甲土地につきCへの所有権移転登記がされていなければ、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができない。 ウ. BがA所有の甲土地を占有し、取得時効が完成した後Aが、甲土地をCに売却した場合、甲土地につきCへの所有権移転登記がされていたとしても、Bは、Cに対し、甲土地の所有権の時効取得を対抗することができる。 エ. Aが、A所有の甲土地をBに売却し、Cに対しても甲土地を売却した後で、AB間で上記売買契約を合意解除した場合、Cへの所有権移転登記がされていなければ、Cは、Bに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができない。 オ. Aは、A所有の甲土地をBに売却した後Cに対しても甲土地を売却し、さらにCがDに対して甲土地を売却した場合、CがBとの関係で背信的悪意者にあたるが、DがBとの関係で背信的悪意者と評価されないとき、Bへの所有権移転登記がされていなければ、Bは、Dに対し、甲土地の所有権の取得を対抗することができない。
2. ア、オ
87
No.96 不動産の物権変動に関するア~オの記述のうち、妥当なもののみを全てげているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. Aの所有する土地に地上権の設定を受けて建物を所有していたBが、Aからその土地の所有権を取得した場合、地上権は土地所有権に吸収される形で消滅するが、地上権を目的とする抵当権が設定されていたときは、地上権は消滅しない。 イ. 土地がAからB、BからCへと譲渡された場合、その土地の登記をAからCに直接移転することは、中間省略登記となり無効であるから、Bは、Cからその土地の代金を受け取っていたとしても、Bの同意なくAからCに直接移転された登記の抹消を請求することができる。 ウ. Aは、Bにだまされて自己の土地をBに譲渡し、その登記をBに移した後に、詐欺であることに気付きAB間の契約を取り消したが、登記がまだBに残っている間に、Bがその土地をCに譲渡し、Cが登記を完了した。この場合、Aは、その土地の所有権を、登記なくしてCに対抗することができる。 エ. Aが、Bに土地を譲渡した後、Bがいまだ登記をしていないことを奇貨として、その土地をCにも譲渡した場合において、Cが背信的悪意者であるときは、Cからその土地の譲渡を受けて登記を完了したDは、善意であったとしても、その土地の所有権をBに対抗することができない。 オ. Aが死亡し、いずれもAの子であるBとCが相続財産の土地を2分の1ずつの持分で共同相続したが、Bは、その土地を単独で相続したものとして登記し、更にDに譲渡して移転登記も完了した。この場合、Cは、その土地の自己の持分の所有権を、登記なくしてDに対抗することができる。
2. ア、オ
88
No.97 Aが、自ら所有する甲土地をBに売却し、登記も移転した。この事例に関する次のア〜エの記述の正誤の組合せとして最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. Aが、Bによる詐欺を理由にAB間の売買契約を取り消したが、その後、登記がBのところにある間に、Bが、甲土地をCへ売り渡したという場合、Aは、登記なくして甲土地の所有権をCに対抗することができる。 イ. Aが、Bによる債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除したが、その後、登記がBのところにある間に、Bが、甲土地をCへ売り渡したという場合、Aは、登記なくして甲土地の所有権をCに対抗することができる。 ウ. 甲土地の所有権につき、AB間の売買契約及び登記の移転より先にCによる取得時効が完成したという場合、Cは、Bに甲土地の登記を自己に移転するよう請求することができる。 エ. 甲土地の所有権につき、AB間の売買契約及び登記の移転の後にCによる取得時効が完成したという場合、Cは、Bに甲土地の登記を自己に移転するよう請求することができる。
5. ア誤、イ誤、ウ誤、エ正
89
No.98 次の文章は、時効と登記の関係について述べたものである。空欄A〜Dに入るものの組合せとして妥当なのはどれか。 X所有の土地を、Yが平穏・公然に21年間占有したとする。Yの21年間の占有によって時効期間が経過しており、Yは( A )当該土地の所有権を取得していることになる。しかし、Xが第三者に当該土地を売った場合は、YとZのどちらが土地の所有権を取得できるのかが問題となる。判例によれば、次のように解されている。Yが悪意で占有を開始してから15年後にXが当該土地をZに売却したがYの現実の占有状態に変化がなかった場合、Yの占有開始から23年後の時点では( B )が当該土地の所有権を取得している。また、Yが悪意で占有を開始してから22年後にXが当該土地をZに売却したがYの現実の占有状態に変化がなかった場合、Yの占有開始から23年後の時点では、( C )が当該土地の所有権を取得している。この判例理論に対しては、( D )という批判がなされている。 A-ア. 登記を具備していれば A-イ. 登記を具備していなくても B-ア. Y B-イ. Z B-ウ. 先に登記を具備した方 C-ア. Y C-イ. Z C-ウ. 先に登記を具備した方 D-ア. 先に登記を具備した者が常に所有権を取得することになる D-イ. 取引の安全を重視するあまり、時効取得者の保護が薄くなりすぎる D-ウ. 10年の所有権の取得時効の方が時効取得者の保護が薄くなる D-エ. 20年の所有権の取得時効の方が時効取得者の保護が薄くなる
3. A-イ、B-ア、C-ウ、D-ウ
90
No.99 次の甲及び乙の会話のうち、ア〜オの下線部分が適当なもののみをすべて挙げているのはどれか。 甲 : 従前Aが所有していた土地をBが時効により取得し、Bによる取得時効の完成した後にCがその土地をAから買い受けて所有権移転登記を了したという事例について検討してみることにしよう。この場合、「(ア)判例によると、時効により不動産の所有権を取得した者は、時効完成前に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対して、時効取得した所有権を対抗することができないし、時効完成後に当該不動産を譲り受けて所有権移転登記を了した者に対しても、特段の事情がない限り、これを対抗することができないとされているよね。そうすると、BはCに対し、特段の事情がない限り、時効取得した所有権を対抗することができないことになる。」 乙 : この事例の場合、BがCの登記時からさらに引き続きその土地の占有を継続して、Cの登記時から時効が成立する期間占有したとしても、「(イ)判例によれば、時効の起算点は動かすことができないとされているから、Bは再び時効取得することはなく、Bは登記なくしてCに対しその土地の所有権を対抗することはできないね。」 甲 : 民法177条にいう第三者については、「(ウ)条文上、善意者に限るとの文言はないが、判例によると、実体法上物権変動があった事実を知る者において、同物権変動について登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情がある場合には、登記欠缺について正当な利益を有しないものであって、このような背信的悪意者とされる者は、民法177条にいう第三者に当たらないとされているよね。」 乙 : 先ほどの事例で、「(エ)Cが背信的悪意者に当たる場合には、Bは、時効取得した土地について登記を有していなくても、Cに対し、その土地の所有権を対抗することができるね。取得時効の成否については、その要件の充足の有無が容易に認識して判断することができないことからすると、Cは、Aから土地を買い受けた時点において、Bが取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても、背信的悪意者と認められる場合があるというべきだけど、その場合であっても、少なくとも、Bによる多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解するべきだよね。」 甲 : また、先ほどの事例で、さらにDが背信的悪意者に当たるCから土地を買い受け移転登記を了した場合は、判例の見解を前提とすると、たとえその土地について既にBが時効取得していることを知らなくても、「(オ)CがBに所有権を対抗することができないことから、もはやCから土地を承継したDも、Bに対しその土地の所有権を対抗することはできないことになるよね。」
4. ウ、エ
91
No. 100 民法に規定する不動産物権変動の対抗要件に関する記述として、妥当なのはどれか。
3. 最高裁判所の判例では、所有者甲から乙が不動産を買い受け、その登記が未了の間に、丙が当該不動産を甲から二重に買い受け、更に丙から転得者丁が買い受けて登記を完了した場合、丙が背信的悪意者でも、丁が乙との関係で背信的悪意者に当たらない限り、丁は所有権取得をもって乙に対抗できるとした。
92
No.101 動産に関する次の記述のうち、最も適当なのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。
1. 所有者を異にする数個の動産が、付合により、損傷しなければ分離することができなくなった場合において、付合した動産について主従の区別をすることができるときは、合成物の所有権は、主たる動産の所有者に帰属する。
93
No.102 動産の物権変動に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのある場合は判例の見解による。 ア. 即時取得制度は、取引の安全のため、処分権限のない占有者を処分権限のある者と信じて取引をした者を保護する制度であり、包括承継である相続により動産を取得した場合には適用されない。 イ. 即時取得制度は,取引の安全のため、処分権限のない占有者を処分権限のある者と信じて取引をした者を保護する制度であり、無権代理人を権限のある代理人であると信じた場合には適用されない。 ウ. BはAとの間でA所有のピアノを買い受ける旨の契約を締結してAに対し代金を支払ったが、Aがピアノを1か月間使いたいというのでAに預けておいたところ、AはCに対しピアノを売却し、Cがピアノを自宅に持ち帰った。この場合は、Cが購入時に、Aをピアノの所有者であると信じ、信じたことに過失がないときであっても、CはBに対してピアノの所有権の取得を対抗することができない。 エ. AはBにA所有のピアノを預けていたが、Bは処分権限を有しないにもかかわらずCとの間でピアノを売却する旨の契約を締結した。この場合は、BC間で売買契約が締結された以上、CがピアノをBに預けておいたままであっても、CはAに対してピアノの所有権の取得を対抗することができる。 オ. AはBとの間でA所有のピアノを売却する旨の契約を締結した。その後、AからBへのピアノの引渡しが未了のうちに、AがCに対しピアノを売却して現実に引き渡した場合において、CがAB間の売買契約の存在を知っていたときは、CはBに対してピアノの所有権の取得を対抗することができない。
1. ア、イ
94
No.103 物権変動に関する次の記述のうち、最も適当なのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。
3. 動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができないが、占有改定は、ここにいう引渡しに当たる。
95
No.104 動産の取引に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 道路運送車両法(昭和44年法律第68号による改正前のもの)による登録をいまだ受けていない自動車については、即時取得が認められるが、一度登録を受けた自動車については、その後、当該自動車が抹消登録を受けたとしても、即時取得は認められない。 イ. 即時取得が認められるためには、占有の取得が平穏・公然・善意・無過失に行われる必要があるが、即時取得を主張する占有取得者は、自己に過失のないことの立証を要する。 ウ. 即時取得が認められるためには、一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるような占有を取得することが必要であり、占有取得の方法が一般外観上従来の占有状態に変更を来さないいわゆる占有改定の方法による取得では、即時取得は認められない。 エ. 即時取得が認められるためには、取引行為の存在が必要であるが、競売により執行債務者の所有に属しない動産を買い受けた場合は、取引行為が存在したとはいえず、即時取得は認められない。 オ. Aが自己の意思に基づき、自己の所有する動産甲をBに預けたところ、Bが甲を横領してCに売り渡した場合、甲はAの意思に反してCに処分されているため、甲の即時取得の成立が猶予され、Aは、甲を横領された時から2年間、Cに対して甲の回復を請求することができる。
1. ウ
96
No.105 民法に規定する即時取得に関する記述として、判例、通説に照らして、妥当なのはどれか。
3. 占有者が、古物商又は質屋以外の者である場合において、公の市場で盗品を善意で買い受け、即時取得したとき、被害者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。
97
No.106 即時取得に関する記述として最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。
5. 即時取得が成立する場合であっても、原所有者が盗難によって占有を喪失したときは取得者又は転得者に対して回復請求をすることができるが、詐欺によって占有を喪失したときは回復請求をすることができない。
98
No.107 民法に規定する即時取得に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
2. 執行債務者の所有に属さない動産が強制競売に付された場合であっても、競落人は、即時取得の要件を具備するときは、当該動産の所有権を取得することができるとした。
99
No.108 民法に規定する即時取得に関する記述として、判例、通説に照らして、妥当なのはどれか。
1. 即時取得は、動産取引の安全を図る制度であるため、その適用は有効な取引行為による動産取得の場合に限られ、当該取引行為には売買、贈与、質権設定のほか、代物弁済も含まれる。