問題一覧
1
No.1 人権の享有主体に関する次のア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 憲法第3章の人権規定は、未成年者にも当然適用される。もっとも、未成年者は心身ともにいまだ発達の途上にあり、成人と比較して判断能力も未熟であるため、人権の性質によっては、その保障の範囲や程度が異なる。 イ. 強制加入団体である税理士会が行った、税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するために、政党など政治資金規制法上の政治団体に金員を寄付するために特別会費を徴収する旨の総会決議は、無効である。 ウ. 強制加入団体である司法書士会が行った、大震災で被災した他県の司法書士会へ復興支援拠出金の寄付をすることとし、そのための特別負担金を徴収する旨の総会決議は、無効である。 エ. 基本的人権の保障は、その権利の性質上許される限り外国人にも及び、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動などを含む全ての政治活動について保障が及ぶ。
1. ア、イ
2
No.2 人権の享有主体に関するア〜オの記述のうち妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 天皇も日本国籍を有する日本国民であるため、人間であることに基づいて認められる権利は保障される。したがって、天皇に対して一般国民と異なる特別の制約をすることは認められない。 イ. 憲法第3章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り、内国の法人にも適用されるものと解すべきであり、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し又は反対するなどの政治的行為をなす自由を有するとするのが判例である。 ウ. 未成年者も日本国民である以上、当然に人権享有主体であると認められる。民法など未成年者に対して一定の制限規定を置いている法律もあるが、憲法上、未成年者に対する権利の制限規定は置かれていない。 エ. 我が国に在留する外国人には、政治活動の自由についても、我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶとするのが判例である。 オ. 憲法上、我が国に在留する外国人に出国の自由が認められる以上、日本国民が外国へ一時旅行する自由を保障されているのと同様、我が国に在留する外国人の再入国の自由も憲法上保障されているとするのが判例である。
2. イ、エ
3
No.3 外国人の人権に関する次のア〜オの記述のうち、適当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 個人の私生活上の自由の1つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有するものというべきであり、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、憲法第13条の趣旨に反して許されず、また、その自由の保障は、わが国に在留する外国人にも等しく及ぶ。 イ. 政治活動の自由については、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対してもその保障が及ぶ。 ウ. 外国移住の自由は、その権利の性質上外国人に限って保障しないという理由はなく、外国への移住が後にわが国への帰国ないし再入国することを前提としていることからすれば、わが国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されている。 エ. 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的に諸事情等に照らしながら、できる限りその保障を及ぼすべきであって、自国民を在留外国人より優先的に扱うことは許されない。 オ. 憲法第93条第2項は、わが国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙の権利を保障したものと解される。
1. ア、イ
4
No.4 法人及び外国人の人権に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 憲法第3章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り、内国の法人にも適用され、また、同章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ。 イ. 法人は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進し、又は反対するなどの政治的行為をなす自由を有し、公益法人であり強制加入団体である税理士会が、政党など政治資金規正法上の政治団体に金員を寄付するために会員らから特別会費を徴収することを多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務付けた上、当該寄付を行うことも、当該寄付が税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するためのものである場合は、税理士会の目的の範囲内の行為として認められる。 ウ. 会社が、納税の義務を有し自然人たる国民と等しく国税等の負担に任ずるものである以上、納税者たる立場において、国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁圧すべき理由はないが、会社による政治資金の寄付は、その巨大な経済的・社会的に影響に鑑みると、政治の動向に不当に影響を与えるおそれがあることから、自然人たる国民による寄付と別異に扱うべき憲法上の要請があるといえる。 エ. 政治活動の自由に関する憲法の保障は、我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動など外国人の地位に鑑みこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても及ぶことから、法務大臣が、憲法の保障を受ける外国人の政治的行為を、在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしゃくすることは許されない。 オ. 地方公務員のうち、住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするものについては、原則として日本国籍を有する者が就任することが想定されているとみるべきであり、外国人が就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではない。
2. ア、オ
5
No.5 日本国憲法に規定する法人又は外国人の人権に関する記述として、判例、通説に照らして、妥当なのはどれか。
5. 最高裁判所の判例では、現行の生活保護法は、第1条及び第2条において、その適用の対象につき「国民」と定めたものであり、外国人はこれに含まれないと解され、外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり、生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、同法に基づく受給権を有しないとした。
6
No.6 憲法の私人間効力に関するA説及びB説についてのア〜オの記述のうち、適当なもののみをすべて挙げているのはどれか。 【A説】憲法の人権規定は、私人間においても直接適用される。 【B説】憲法の人権規定は、私人間においては民法第90条の公序良俗規定のような私法の一般条項を媒介にして間接的に適用される。 ア. A説によれば、私人相互の関係においては、憲法の人権規定の効力が当該関係のもつ性質の違いに応じて相対化されることになる。 イ. A説は、国家類似の巨大な組織・集団が誕生している現代社会においては、それらの社会的権力から個人の人権を保障する必要性が高いことをより重視している。 ウ. B説に対しては、当事者の合意や契約の事由は最大限に尊重されなければならないから妥当ではないとA説の立場から批判がなされている。 エ. B説によれば、当然に、憲法上のいかなる人権規定も、私人間において直接適用されることはないことになる。 オ. A説に対しては、国家権力に対抗する人権の本質を変質ないし希薄化する結果を招くおそれがあるとの指摘がなされている。
4. イ、オ
7
No.7 人権保障規定の私人間効力に関する次のA・B各説についてのア〜オの記述のうち、適当なもののみを全て挙げているものはどれか。 A説 : 人権保障規定が私人間においても直接適用される。 B説 : 民法第90条のような私法の一般条項を媒介として、人権保障規定を私人間において間接的に適用する。 ア. A説は、人権保障規定を私人間に直接適用することで、私的自治の原則や契約自由の原則がより保障されることになると考えている。 イ. A説は、私人間における人権保障規定の相対化を認めた場合には、B説と実際上異ならない結果になると批判される。 ウ. B説は、私人間に直接適用される人権保障規定はないと考えている。 エ. B説は、人権が、本来、「国家からの自由」として、国家権力に対抗する防御権であったという本質を無視していると批判される。 オ. 判例は、思想・良心の自由を規定する憲法第19条について、私人間を直接規律することを予定するものではないとして、A説を否定している。
2. イ、オ
8
No.8 憲法第13条に関するア〜オの記述のうち妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし争いのあるものは判例の見解による。 ア. 幸福追求権は、人格的生存に必要不可欠な権利・自由を包摂する包括的な権利であり、個別的人権規定との関係では、個別的人権の保障が及ばない場合における補充的な保障機能を果たすものとされている。 イ. 速度違反車両の自動撮影を行う自動速度監視装置による運転者の容ぼうの写真撮影は、現に犯罪が行われている場合になされ、犯罪の性質、態様からいって緊急に証拠保全をする必要性があったとしても、その方法が一般的に許容される限度を超えるものであり、憲法第13条に違反する。 ウ. 個人の尊重の原理に基づく幸福追求権は、憲法に列挙されていない新しい人権の根拠となる一般的かつ包括的な権利であり、この幸福追求権によって根拠付けられる個々の権利は、裁判上の救済を受けることができる具体的権利である。 エ. 前科及び犯罪経歴は人の名誉、信用に直接に関わる事項であり、前科及び犯罪経歴のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有する。 オ. 刑事施設内において未決勾留により拘禁された者の喫煙を禁止することは、逃走又は罪証隠滅の防止という未決勾留の目的に照らし、必要かつ合理的な制限とはいえず、憲法第13条に違反する。
3. ア、ウ、エ
9
No.9 プライバシーの権利に関する次のア〜オの記述のうち適当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いがあるときは、判例の見解による。)。 ア. 個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしにみだりにその容ぼうを撮影されない自由を有するものであるから、警察官が犯罪捜査の必要上写真を撮影するなど正当な理由がある場合であっても、その対象の中に犯人のみならず第三者である個人の容ぼうが含まれることは許されない。 イ. 学生の学籍番号、氏名、住所、電話番号のような個人情報についても、プライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというべきであるから、学生に無断で外国要人の講演会への参加申込名簿を警察に提出した大学の行為はプライバシーを侵害するものとして不法行為を構成する。 ウ. 小説の出版等によるプライバシーの侵害行為が明らかに予想され、その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり、かつ、その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときであっても、小説の出版等の差止めを認めることは憲法第21条第1項に反し許されない。 エ. 前科は、人の名誉、信用に関わる事項であり、前科のある者もこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するのであって、市区町村長が、本来選挙資格の調査のために作成保管する犯罪人名簿に記載されている前科をみだりに漏えいしてはならない。 オ. 個人の私生活上の自由の一つとして、何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有するものというべきであり、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは憲法第13条の趣旨に反して許されず、これを強制する外国人登録法の規定は違憲である。
2. イ、エ
10
No.10 生命、自由及び幸福追求権に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 患者が、輸血を受けることは自己の宗教上の信念に反するとして、輸血を伴う医療行為を拒否するとの明確な意思を有している場合、このような意思決定をする権利は、人格権の一内容として尊重されなければならないとするのが判例である。 イ. 肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(パブリシティ権)は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから、人格権に由来する権利の一内容を構成するとするのが判例である。 ウ. 前科及び犯罪経歴は、人の名誉、信用に直接関わる事項ではあるが、刑事裁判における量刑や選挙資格など法律関係に直接影響を及ぼす場合が少なくない以上、前科及び犯罪経歴のある者がこれをみだりに公開されないという法律上の保護に値する利益を有するとまではいえないとするのが判例である。 エ. 憲法第13条により保障される幸福追求権の意味について、個人の人格的生存に不可欠な利益を内容とする権利の総体をいうと解する立場によれば、個人の自由な行為という意味での一般的行為の自由が侵害されても、憲法上問題となることはない。 オ. 個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう等を撮影されない自由を有しており、警察官が、正当な理由もないのに、個人の容ぼう等を撮影することは、憲法第13条の趣旨に反し許されないとするのが判例である。
4. ア、イ、オ
11
No.11 憲法の明文で規定されていない権利・自由に関する次のア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア.個人の私生活上の自由として、何人もその承諾なしにみだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有することから、警察官が正当な理由もないのに個人の容ぼう等を撮影することは、憲法第13条の趣旨に反する。 イ. 大学が講演会を主催する際に集めた参加学生の学籍番号、氏名、住所及び電話番号は、個人の内心に関する情報ではなく、大学が個人識別を行うための単純な情報であって、秘匿の必要性は高くないから、プライバシーに係る情報として法的保護の対象にならない。 ウ. 前科は人の名誉信用に直接関わる事項であり、前科のある者もこれをみだりに公開されないという法的保護に値する利益を有するが、「裁判所に提出するため」との照会理由の記載があれば、市区町村長が弁護士法に基づく照会に応じて前科を報告することは許される。 エ. 行政機関が住民基本台帳ネットワークシステムにより住民の本人確認情報を収集、管理又は利用する行為は、当該住民がこれに同意していなくとも、個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。
2. ア、エ
12
No.12 日本国憲法におけるプライバシーの権利に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
4. 作中人物と容易に同定可能な小説のモデルにされた者が、公共の利益にかかわらないその者のプライバシーにわたる事項を表現内容に含む小説を承諾なく公表されたことは、公的立場にないその者の名誉、プライバシー、名誉感情が侵害され、小説の出版等により重大で回復困難な損害を被るおそれがあるというべきであり、小説の出版の差止めは認められるとした。
13
No.13 基本的人権の限界に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なのはどれか。
4. 企業者が特定の思想、信条を有する者をそのことを理由として雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法としたり、直ちに民法上の不法行為とすることはできない。
14
No.14 法の下の平等に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なのはどれか。
5. 民法が、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1と定めることは、現在においては、社会の動向、家族形態の多様化、国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢、条約の内容、法制審議会の指摘等にかんがみ、また、子の尊重の観点からみても、合理的な根拠は失われており、憲法第14条第1項に違反する。
15
No.15 日本国憲法に規定する法の下の平等に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
3. 会社がその就業規則中に定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた場合において、少なくとも60歳前後までは男女とも通常の職務であれば職務遂行能力に欠けるところはなく、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別する合理的理由がないときは、当該就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は性別のみによる不合理な差別を定めたものとして無効であるとした。
16
No.16 憲法第14条第1項に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とすることは、子にとっては自ら選択ないし修正すること余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことになり許されないから、憲法第14条第1項に反し違憲である。 イ. 尊属殺重罰規定は、尊属を卑属又はその配偶者が殺害することを一般に高度の社会的道義的非難に値するものとし、かかる所為を通常の殺人の場合より厳重に処罰し、もって特にこれを禁圧しようとするものであるが、普通殺人と区別して尊属殺人に関する規定を設け、尊属殺人であることを理由に差別的取扱いを認めること自体が憲法第14条第1項に反し違憲である。 ウ. 日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子について、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り届出による日本国籍の取得を認めていることによって、出生後に認知されたにとどまる子と嫡出子たる身分を取得した子との間に日本国籍の取得に関する区別を生じさせていることは、憲法第14条第1項に反し違憲である。 エ. 租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様がその目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、その合理性を否定することができず、これを憲法第14条第1項に反し違憲であるとはいえない。 オ. 年金と児童扶養手当の併給禁止規定は、障害福祉年金(当時)の受給者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別を生じさせるものであり、憲法第14条第1項に反し違憲である。
3. ア、ウ、エ
17
No.17 日本国憲法に規定する法の下の平等に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
2. 尊属の殺害は、通常の殺人に比して一般に高度の社会的道義的非難を受けて然るべきであるため、法律上、刑の加重要件とする規定を設けることは、ただちに合理的な根拠を欠くものとすることはできないが、尊属殺の法定刑について死刑又は無期懲役刑のみに限っている点は、その立法目的達成のため必要な限度を遥かに超え、普通殺に関する法定刑に比し著しく不合理な差別的取扱いをするものと認められ、憲法に違反して無効であるとした。
18
No.18 法の下の平等に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。なお、以下で示す法律は、文中に特段の記述がない限り、判決当時のものとする。 ア. 参議院議員の選挙に関して、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準となるものではなく、参議院の独自性など、国会が正当に考慮することができる他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきものであり、国会が具体的に定めたところがその裁量権の行使として合理性を是認し得るものである限り、それによって投票価値の平等が一定の限度で譲歩を求められることになっても、憲法第14条第1項に違反するものとはいえない。 イ. 平成元年改正前の国民年金法の規定が、20歳以上の学生の保険料負担能力等を考慮し、20歳以上の学生を国民年金の強制加入被保険者としなかったことにより、20歳前に障害を負ったものと20歳以後に障害を負った学生との間に障害基礎年金の時給に関する区別を生じさせていたことは、その立法目的に合理性は認められるものの、大学への進学率が著しく増加し、20歳以上の学生の数も大きく増加していた立法当時の状況にかんがみると、立法目的との関連において著しく不合理で立法府の裁量の限界を超えたものであり、憲法第14条第1項に違反する。 ウ.国籍法の規定が、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子について、家族生活を通じた我が国との密接な結びつきをも考慮し、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した(準正のあった)場合に限り届出による日本国籍の取得を認めることによって、認知されたにとどまる子と準正のあった子との間に日本国籍の取得に関する区別を生じさせていることは、その立法目的自体に合理的な根拠は認められるものの、立法目的との間における合理的関連性は我が国の内外における社会的環境の変化等によって失われており、今日においては、憲法第14条第1項に違反する。 エ. 女性にのみ6ヶ月の再婚禁止期間を設けてその婚姻の自由を制約する民法の規定は、父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる血統の混乱に起因する紛争の発生を未然に防止するという立法目的自体に合理性は認められないから、憲法第14条第1項に違反する。 オ. 非嫡出子の相続分を嫡出子の2分の1とした民法の規定は、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図るものとして合理性を有しており、また、事実婚の増加等により非嫡出子をめぐる諸事情や今日までの社会状況の変化を踏まえると、法律感の尊重の合意性はいっそう高まっており、憲法第14条第1項に反しない。
1. ア、ウ
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No.19 法の下の平等に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 憲法第14条第1項は、国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱いをすることは、何ら同項の否定するところではない。 イ. 日本国民である父の嫡出でない子について、父母の婚姻及びその認知により嫡出子たる身分を取得したことを届出による日本国籍取得の要件とする国籍法の規定は、父母の婚姻及び嫡出子たる身分の取得を要件としている部分が憲法第14条第1項に違反し、無効である。しかし、そのことから日本国民である父の嫡出でない子が認知と届出のみによって日本国籍を取得し得るものと解することは、裁判所が法律に定めのない新たな国籍取得の要件を創設するという立法作用を行うことになるから、許されない。 ウ. 男子の定年年齢を60歳、女子の定年年齢を55歳と定める会社の就業規則の規定は、当該会社の企業経営上の観点から定年年齢において女子を差別しなければならない合意的な理由が認められない限り、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして、民法第90条の規定により無効である。 エ. 嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法の規定は、父母が婚姻関係になかったという、子が自ら選択する余地のない事柄を理由として不利益を及ぼすものであって、憲法第14条第1項に違反するものである。したがって、当該規定の合憲性を前提として既に行われた遺産の分割については、法律関係が確定的なものとなったものも含め、当該規定が同項に違反していたと判断される時点に遡って無効と解するべきである。 5. 企業は、自己の営業のために労働者を雇用するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、原則として自由に決定することができるが、労働者の採否決定に当たり、労働者の思想、信条を調査し、これに関連する事項について申告を求めた上で雇入れを拒否することは、思想、信条による差別待遇を禁止する憲法第14条第1項に違反する。
2. ア、ウ
20
No.20 法の下の平等に関する次のア〜ウの記述の正誤の組合せとして最も妥当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 被害者が尊属であることを加重要件とする規定を設けること自体は直ちに違憲とはならないが、加重の程度が極端であって、立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化し得る根拠を見出し得ないときは、その差別は著しく不合理なものとして違憲となる。 イ. 日本国籍が重要な法的地位であるとともに、父母の婚姻による嫡出子たる身分の取得は子が自らの意思や努力によっては変えられない事柄であることから、こうした事柄により国籍取得に関して区別することに合理的な理由があるか否かについては、慎重な検討が必要である。 ウ. 夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫又は妻の氏を称すると定める民法第750条は、氏の選択に関し、夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている状況に鑑みると、性別に基づく法的な差別的取扱いを定めた規定であるといえる。
1. ア正、イ正、ウ誤
21
No.21 法の下の平等に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 憲法第14条第1項は、合理的理由のない区別を禁止する趣旨であるから、事柄の性質に即応して合理的と認められる区別は許されるが、憲法第14条第1項後段に列挙された事由による区別は例外なく許されない。 イ. 判例は、夫婦が婚姻の際に定めるところに従い夫または妻の氏を称することを定める民法第750条について、同条は、夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねており、夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではないものの、氏の選択に関し、これまでは夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている状況にあることに鑑みると、社会に男女差別的価値観を助長し続けているものであり、実質的平等の観点から憲法第14条第1項に違反するものとした。 ウ. 判例は、衆議院議員の選挙における投票価値の格差の問題について、定数配分又は選挙区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態に至っているか否かを検討した上、そのような状態に至っている場合に、憲法上要求される合理的期間内における是正がされず定数配分規定又は区割り規定が憲法の規定に違反するに至っているか否かを検討して判断を行っている。 エ. 判例は、男性の定年年齢を60歳、女性の定年年齢を55歳と定める就業規則は、当該会社の企業経営上の観点から、定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、性別のみによる不合理な差別に当たるとした。 オ. 憲法第14条第1項の「社会的身分」とは、自己の意思をもってしては離れることのできない固定した地位というように狭く解されており、高齢であることは「社会的身分」には当たらない。
4. ウ、エ
22
No.22 法の下の平等に関するア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 憲法第14条第1項は、すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない旨規定しているが、同項後段に列挙された事項は例示的なものであるとするのが判例である。また、同項後段にいう「信条」とは、宗教上の信仰にとどまらず、広く思想上や政治上の主義を含むと一般に解されている。 イ. 租税法の分野における所得の性質の違い等を理由とする取扱いの区別は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された区別の態様が当該目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、憲法第14条第1項に違反するものではないが、給与所得の金額の計算につき必要経費の実額控除を認めない所得税法の規定(当時)は、事業所得者等に比べて給与所得者に著しく不公平な税負担を課すものであり、その区別の態様が著しく不合理であるから、同項に違反するとするのが判例である。 ウ. 憲法第14条の規定は専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではなく、私人間の関係においては、各人の有する自由と平等の権利が対立する場合の調整は、原則として私的自治に委ねられるのであって、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのことを理由に雇入れを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないとするのが判例である。 エ. 参議院議員の選挙において、公職選挙法上、都道府県を単位として各選挙区の議員定数が配分されているために、人口変動の結果、選挙区間における投票価値の不均衡が生じていることについて、国会が具体的な選挙制度の仕組みを決定するに当たり、都道府県の意義や実体等を要素として踏まえた選挙制度を構築することは、国会の合理的な裁量を超えるものであり、同法の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は憲法第14条第1項に違反するとするのが判例である。
2. ア、ウ
23
No.23 憲法第14条に関する教授の質問に対して、学生A~Eのうち、妥当な発言をした学生のみを全て挙げているのはどれか。 教授:今日は、法の下の平等を定めた憲法第14条の文言の解釈について学習しましょう。同条第1項は「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定していますが、同項にいう「法の下に平等」とはどのような意味ですか。 学生A:同項にいう「法の下に平等」とは、法を執行し適用する行政権・司法権が国民を差別してはならないという法適用の平等のみを意味するのではなく、法そのものの内容も平等の原則に従って定立されるべきという法内容の平等をも意味すると解されています。 学生B:また、同項にいう「法の下に平等」とは、各人の性別、能力、年齢など種々の事実的・実質的差異を前提として、法の与える特権の面でも法の課する義務の面でも、同一の事情と条件の下では均等に取り扱うことを意味すると解されています。したがって、恣意的な差別は許されませんが、法上取扱いに差異が設けられる事項と事実的・実質的差異との関係が社会通念から見て合理的である限り、その取扱上の違いは平等原則違反とはなりません。 教授:では、同項にいう「信条」とはどのような意味ですか。 学生C:同項にいう「信条」が宗教上の信仰を意味することは明らかですが、それにとどまらず、広く思想上・政治上の主義、信念を含むかについては、ここにいう信条とは、根本的なものの考え方を意味し、単なる政治的意見や政党的所属関係を含まないとして、これを否定する見解が一般的です。 教授:同項にいう「社会的身分」の意味についてはどうですか。 学生D:社会的身分の意味については、見解が分かれており、「出生によって決定され、自己の意思で変えられない社会的な地位」であるとする説や、「広く社会においてある程度継続的に占めている地位」であるとする説などがありますが、同項後段に列挙された事項を限定的なものと解する立場からは、後者の意味と解するのが整合的です。 教授:同項後段に列挙された事項を、限定的なものと解するか、例示的なものと解するかについて、判例の見解はどうなっていますか。 学生E:判例は、同項後段に列挙された事項は例示的なものであるとし、法の下の平等の要請は、事柄の性質に即応した合理的な根拠に基づくものでない限り、差別的な取扱いをすることを禁止する趣旨と解すべき、としています。
2. A.B.E
24
No.24 法の下の平等に関する次のア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 憲法第14条第1項の「平等」を形式的平等と捉える考え方は、各人には性別、能力、年齢等様々な差異があり、機械的に均一に扱うことは不合理であるため、同一の事情と条件の下では均等に取り扱うべきとする。 イ. 憲法第14条第1項後段の「信条」は、宗教上の信仰を意味し、思想上・政治上の主義はここにいう「信条」には含まれない。 ウ. 憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法自ら容認するところである。 エ. 国民の租税負担を定めるには、国政全般からの総合的政策判断と、極めて専門技術的な判断が必要となるので、租税法の分野における取扱いの区別は、立法目的が正当で、区別の態様が目的との関連で著しく不合理でない限り、憲法第14条第1項に違反しない。
5. ウ、エ
25
No.25 法の下の平等に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 会社の就業期則中、女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして、憲法第14条第1項の規定に違反し無効であるとするのが判例である。 イ. 憲法第14条第1項にいう法の下の平等とは、各人の性別、能力、年齢、財産などの種々の事実的・実質的差異を前提として、法の与える特権の面でも法の課する義務の面でも、同一の事情と条件の下では均等に取り扱うことを意味すると一般に解されている。 ウ. 国籍法の規定が、日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子について、父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した場合に限り届出による日本国籍の取得を認めていることによって、認知されたにとどまる子と父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した子との間に日本国籍の取得に関する区別を生じさせていることは、当該区別を生じさせた立法目的自体に合理的な根拠が認められず、憲法第14条第1項に違反するとするのが判例である。 エ. 社会保障給付の全般的公平を図るため公的年金相互間における併給調整を行うかどうかは、立法府の裁量の範囲に属する事柄であるものの、併給調整条項の適用により障害福祉年金(当時)受給者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別が生じることは、立法府の広範な裁量を考慮しても、合理的理由のない不当なものであり、憲法第14条第1項に違反するとするのが判例である。 オ. 嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法第14条第1項に違反していたとする最高裁判所の判断は、その当時から同判断時までの間に開始された他の相続につき、当該民法の規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判、遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないとするのが判例である。
4. イ、オ
26
No.26 思想及び良心の自由に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 憲法は、思想・信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に、経済活動の自由も基本的人権として保障しているから、企業者は経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由に決定することができ、企業者が特定の思想信条を有する者をその故をもって雇い入れることを拒んでも、当然に違法とすることはできないとするのが判例である。 イ. 最高裁判所裁判官の国民審査は解職の制度であるから、積極的に罷免を可とするものがそうでないものより多数であるか否かを知ろうとするものであり、積極的に罷免を可とする意思が表示されていない投票は罷免を可とするものではないとの効果を発生させても、何ら当該投票を行った者の意思に反する効果を発生させるものではなく、思想及び良心の自由を制限するものではないとするのが判例である。 ウ. 強制加入団体である税理士会が政党など政治資金規正法上の政治団体に金員を寄付することは、税理士会の目的の範囲内の行為であって、政党など政治資金規正法上の政治団体に金員の寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の税理士会の総会決議は、会員の思想・信条の自由を侵害するものではなく、有効であるとするのが判例である。 エ. 労働組合法第7条に定める不当労働行為に対する救済処分として労働委員会が使用者に対して発するポストノーティス命令は、労働委員会によって使用者の行為が不当労働行為と認定されたことを関係者に周知徹底させ、同種行為の再発を抑制しようとする趣旨のものであるが、当該命令が掲示することを求める文書に「深く反省する」、「誓約します」などの文言を用いることは、使用者に対し反省等の意思表明を強制するものであり、憲法第19条に違反するとするのが判例である。 オ. 憲法の下においては思想そのものは絶対的に保障されるべきであって、たとえ憲法の根本原理である民主主義を否定する思想であっても、思想にとどまる限り制限を加えることができないが、思想の表明としての外部的行為が現実的・具体的な害悪を生ぜしめた場合には当該行為を一定の思想の表明であることを理由に規制することができ、当該行為の基礎となった思想、信条自体を規制の対象とすることも許されると一般に解されている。
1. ア、イ
27
No.27 思想・良心の自由に関する次のア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかは、投票の自由と表裏をなすものとして、組合員各人が自主的に決定すべき事柄であり、労働組合が組織として支持政党又はいわゆる統一候補を決定し、その選挙運動を推進することは、組合員個人の政治的自由・信条を侵すことになりかねないから、原則として許されない。 イ. 思想・良心の自由は、人の内心の表白を強制されない、沈黙の自由も含むものである。 ウ. 国旗に向かって起立し国歌を斉唱する行為は、特定の思想の表明として外部から認識されるものと評価することができるから、都立高等学校の校長が教諭に対し、卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令については、特定の思想の有無について告白することを強要するものである。 エ. 中学校の内申書に、校内でその学校の全共闘を名乗り、機関紙を発行したことなどが記載されても、その記載に係る外部的行為によっては当該生徒の思想、信条を了知し得るものではない。
4. イ、エ
28
No.28 日本国憲法に規定する思想及び良心の自由に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
3. 税理士法で強制加入とされる税理士会が政治資金規正法上の政治団体に寄付をすることは、税理士会の目的の範囲外の行為であり、様々な思想、信条を持つ会員から特定の政治団体への寄付を目的として、特別会費を徴収する旨の総会決議は無効であるとした。
29
No.29 思想及び良心の自由に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。
5. 他者の名誉を毀損した者に対して、謝罪広告を新聞紙に掲載すべきことを裁判所が命じることは、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであれば、その者の良心の自由を侵害するものではないから、憲法第19条に違反しない。
30
No.30 日本国憲法に規定する思想及び良心の自由に関する記述として、判例、通説に照らして、妥当なのはどれか。
3. 最高裁判所の判例では、労働委員会が使用者に対し、使用者が労働組合とその組合員に対して不当労働行為を行ったことについて深く陳謝すると共に、今後このような行為を繰り返さないことを約する旨の文言を掲示するよう命じたポストノーティス命令は、使用者に対し陳謝の意思表明を強制するものではなく、憲法に違反するものとはいえないとした。
31
No.31 思想及び良心の自由に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 思想及び良心の自由は、いかなる内面的精神活動を行おうともそれが内心にとどまる限りは、絶対的に保障される。 イ. 思想及び良心の自由は、人の内心の表白を強制されない、沈黙の自由も含むものであり、国民がいかなる思想を抱いているかについて、国家権力が露顕を強制することは許されない。 ウ. 憲法上、公務員に対して憲法尊重擁護義務が課されているとまではいえず,公務員に対して憲法尊重擁護の宣誓を課すことは、思想及び良心の自由を制約するものとして違憲となる。 エ. 民法第723条にいわゆる「他人の名誉を毀損した者に対して被害者の名誉を回復するに適当な処分」として謝罪広告を新聞紙等に掲載すべきことを加害者に命ずる判決は、その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものにあっては、これを強制執行することも許されるとするのが判例である。 オ. 公務員が職務命令においてある行為を求められることが、当該公務員個人の歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行為を求められることとなる場合、それが個人の歴史観ないし世界観に反する特定の思想の表明に係る行為そのものとはいえなくとも、当該職務命令が個人の思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があると判断されるときは、当該職務命令は直ちに個人の思想及び良心の自由を制約するものとして違憲となるとするのが判例である。
3. ア、イ、エ
32
No.32 思想・良心の自由に関する次のア〜ウの記述の正誤の組合せとして最も妥当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 日の丸や君が代に対して敬意を表明することには応じ難いと考える者が、これらに対する敬意の表明の要素を含む行為を求められるなど、個人の歴史観ないし世界観に由来する行動と異なる外部的行為を求められる場合、その者の思想及び良心の自由についての間接的な制約が存在する。 イ. 税理士会のような強制加入団体は、その会員に実質的には脱退の自由が保障されていないことや様々な思想・信条及び主義・主張を有する者の存在が予定されていることからすると、税理士会が多数決原理により決定した意思に基づいてする活動にもおのずから限界があり、特に、政党など政治資金規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするなどの事柄を多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務付けることはできない。 ウ. 他人の名誉を毀損した者に対し、民法第723条の「名誉を回復するのに適当な処分」として謝罪広告を新聞紙等に掲載すべきことを命ずることは、単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度の場合であっても、これを強制することは意思決定の自由ないし良心の自由を不当に制限することになるから、代替執行によりこれを強制することは許されない。
2. ア正、イ正、ウ誤
33
No.33 日本国憲法に規定する信教の自由又は政教分離の原則に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
5. 市が、戦役者遺族会所有の忠魂碑を公費で公有地に移設、再建し、その敷地を同会に無償貸与した行為は、忠魂碑と特定の宗教とのかかわりは希薄であり、同会は宗教的活動を本来の目的とする団体ではなく、市の目的は移設後の敷地を学校用地として利用することを主眼とするものであるから、特定の宗教を援助、助長、促進するとは認められず、憲法の禁止する宗教的活動に当たらない。
34
No.34 信教の自由に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 裁判所による宗教法人に対する解散命令は、世俗的目的によるものではあるものの、当該宗教法人に属する信者の宗教上の行為を禁止したり、制限したりする効果を伴うものであるから、必要でやむを得ない場合に限り許される。 イ. 玉串料等を奉納することは、建築着工の際に行われる起工式の場合と同様に、時代の推移によって既にその宗教的意義が希薄化し、一般人の意識において慣習化した社会的儀礼にすぎないものになっていると評価することができるため、県が靖国神社等に対して玉串料等を公金から支出したことは憲法第20条第3項に違反しない。 ウ. 憲法第20条第3項にいう宗教的活動とは、国及びその機関の活動で宗教との関わり合いを持つ全ての行為を指すものではなく、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、 干渉等になるような行為をいう。 エ. 市立高等専門学校の校長が、信仰上の真摯な理由により剣道実技の履修を拒否した学生に対し、代替措置について何ら検討することもなく、必修である体育科目の修得認定を受けられないことを理由として2年連続して原級留置処分をし、さらに、それを前提として退学処分をしたとしても、これらの処分は、校長の教育的裁量に委ねられるべきものであるため、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を超える違法なものであるということはできない。 オ. 知事が大嘗祭に参列した行為は、大嘗祭が皇位継承の際に通常行われてきた皇室の伝統儀式であること、他の参列者と共に参列して拝礼したにとどまること、参列が公職にある者の社会的儀礼として天皇の即位に祝意を表する目的で行われたことなどの事情の下においては、憲法第20条第3項に違反しない。
2. ウ、オ
35
No.35 信教の自由に関する次のア〜オの記述のうち、適当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 人が神社に参拝する行為自体は、他人の信仰生活等に対して圧迫、干渉を加えるような性質のものではないから、他人が特定の神社に参拝することによって、自己の心情ないし宗教上の感情が害されたとし、不快の念を抱いたとしても、これを被侵害利益として、直ちに損害賠償を求めることはできない。 イ. 政教分離規定は、いわゆる制度的保障の規定であって、信教の自由そのものを直接保障するものではなく、国家と宗教との分離を制度として保障することにより、間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものである。したがって、宗教が、信仰という個人の内心的な事象としての側面を有するにとどまらず、同時に極めて多方面にわたる外部的な社会事象としての側面を伴うのが常であったとしても、上記の制度的保障を貫徹するために、国家と宗教との完全な分離を実現しなければならない。 ウ. 市立高等専門学校の校長が、信仰上の真摯な理由により剣道実技の履修を拒否した学生に対し、必修である体育科目の修得認定を受けられないことを理由として2年連続して原級留置処分をし、さらに、それを前提として退学処分をしたとしても,当該宗教に圧迫、干渉を与える目的を有さず、むしろ、当該学生に対して代替措置を採ることは、憲法上の政教分離原則に違反するおそれがあることから、上記各処分が社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を超える違法なものであるとはいえない。 エ. 宗教法人法上の解散命令によって、宗教法人が解散すると、その清算手続が行われ、宗教上の行為の用に供していた宗教法人の財産も処分されることになるから、信者らが行っていた宗教上の行為を継続するのに何らかの支障が生ずることはあり得るけれども、その解散命令自体は、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴うものではないため、信教の自由に対する制限として憲法適合性が問題となる余地はない。 オ. 国公有地が無償で宗教的施設の敷地としての用に供されている状態が、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えて憲法89条に違反するか否かを判断するに当たっては、当該宗教的施設の性格、当該土地が無償で当該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯、当該無償提供の態様、これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解するのが相当である。
5. ア、オ
36
No.36 日本国憲法に規定する信教の自由又は政教分離の原則に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
3. 信仰上の理由による剣道実技の履修を拒否した学生に対し、正当な理由のない履修拒否と区別することなく、また、代替措置について何ら検討することもなく、原級留置処分及び退学処分をした市立高等専門学校の校長の措置は、社会観念上著しく妥当を欠く処分をしたものと評するほかはなく、裁量権の範囲を超える違法なものといわざるを得ないとした。
37
No.37 信教の自由に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 憲法第20条第1項前段は、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する」と規定している。ここにいう信教の自由には、内心における信仰の自由及び宗教的行為の自由が含まれるが、宗教的結社の自由は、憲法第21条第1項で保障されていることから、信教の自由には含まれないと一般に解されている。 イ. 内心における信仰の自由とは、宗教を信仰し又は信仰しないこと、信仰する宗教を選択し又は変更することについて、個人が任意に決定する自由をいう。内心における信仰の自由の保障は絶対的なものであり、国が、信仰を有する者に対してその信仰の告白を強制したり、信仰を有しない者に対して信仰を強制したりすることは許されない。 ウ. 知事が大嘗祭に参列した行為は、それが地方公共団体の長という公職にある者の社会的儀礼として、天皇の即位に伴う皇室の伝統儀式に際し、日本国及び日本国民統合の象徴である天皇の即位に祝意を表する目的で行われたものであるとしても、大嘗祭が神道施設の設置された場所において神道の儀式にのっとり行われたことに照らせば、宗教との過度の関わり合いを否定することはできず、憲法第20条第3項に違反するとするのが判例である。 エ. 死去した配偶者の追慕、慰霊等に関して私人がした宗教上の行為によって信仰生活の静謐が害されたとしても、それが信教の自由の侵害に当たり、その態様、程度が社会的に許容し得る限度を超える場合でない限り、法的利益が侵害されたとはいえないとするのが判例である。 オ. 市が町内会に対し無償で神社施設の敷地としての利用に供していた市有地を当該町内会に譲与したことは、当該譲与が、市の監査委員の指摘を考慮し、当該神社施設への市有地の提供行為の継続が憲法の趣旨に適合しないおそれのある状態を是正解消するために行ったものであっても、憲法第20条第3項及び第89条に違反するとするのが判例である。
3. イ、エ
38
No.38 信教の自由に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
2. 宗教上の行為の自由は、内心における信仰の自由とは異なり、公共の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要な制約に服すると解されている。
39
No.39 信教の自由に関するア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 公立高等専門学校の校長が、信仰上の理由により必修科目の剣道実技の履修を拒否した学生に対し、原級留置処分又は退学処分を行うか否かの判断は、校長の合理的な教育的裁量に委ねられるところ、剣道は宗教的でなく健全なスポーツとして一般国民の広い支持を受けており、履修を義務とした場合に受ける信教の自由の制約の程度は極めて低く、また、信教の自由を理由とする代替措置は政教分離原則と緊張関係にあることから、代替措置をとることなく原級留置処分及び退学処分を行った校長の判断に裁量権の逸脱・濫用はないとするのが判例である。 イ. 内心における信仰の自由とは、宗教を信仰し又は信仰しないこと、信仰する宗教を選択し又は変更することについて、個人が任意に決定する自由をいう。内心における信仰の自由の保障は絶対的なものであり、国が、信仰を有する者に対してその信仰の告白を強制したり、信仰を有しない者に対して信仰を強制したりすることは許されない。 ウ. 市が町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての利用に供している行為が憲法第89条の禁止する公の財産の利用提供に当たるかについては、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為といえるか否かを基準に判断すべきであり、当該行為は、通常必要とされる対価の支払をすることなく、その直接の効果として宗教団体である氏子集団が神社を利用した宗教活動を行うことを容易にしていることから、公の財産の利用提供に当たり、憲法第89条に違反するとするのが判例である。 エ. 信教の自由は、憲法第13条に規定する生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利に含まれ、裁判上の救済を決めることができる法的利益を保障されたものとして私法上の人格権に属するから、配偶者の死に際して、他人の干渉を受けることのない静謐の中で宗教的行為をすることの利益は、宗教上の人格権の一内容として法的に保護されるとするのが判例である。
1. イ
40
No.40 信教の自由に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なのはどれか。
3. 信教の自由の保障が、何人も自己の信仰と相容れない信仰を持つ者の信仰に基づく行為に対して、それが強制や不利益の付与を伴うことにより自己の信教の自由を妨害するものでない限り寛容であることを要請していることは、死去した配偶者の追慕、慰霊等に関する場合においても同様であり、静謐な宗教的環境の下で信仰生活を送るべき利益なるものは、直ちに法的利益として認めることができない。
41
No.41 学問の自由に関する次のア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 学問の自由は教授の自由を含むと解されるところ、普通教育において、教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ、その個性に応じて行わなければならないという本質的要請に照らし、教授の具体的内容及び方法につき自由な裁量が認められなければならないから、普通教育における教師に対しても、完全な教授の自由が認められる。 イ. 大学の自治は、大学における学問の自由を制度的に保障するために憲法第23条によって保障されていると解されるから、研究教育の内容に直接関係しない大学の教授その他の研究者の人事に関しては、大学の自治権は及ばない。 ウ. 普通教育の場において使用される教科書は、学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、教科書検定は、一定の場合に教科書の形態における研究結果の発表を制限するにすぎないから、憲法第23条に反しない。 エ. 大学における学生の集会について大学の自治の保障が及ぶか否かの判断に当たっては、その集会の目的や性格を考慮することも許される。
5. ウ、エ
42
No.42 学問の自由に関する次のア〜ウの記述の正誤の組合せとして最も妥当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 教科書検定制度は、教科書の形態における研究結果の発表を著しく制限するから、学間の自由を保障した憲法第23条に反する。 イ. 学間の自由には教授の自由が含まれるが、普通教育においては、大学教育と異なり、教師に完全な教授の自由は認められない。 ウ. 大学における研究と教育は、大学が国家権力等に干渉されず、組織としての自立性を有することにより全うされるから、大学の自治は、学問の自由と不可分である。
5. ア誤、イ正、ウ正
43
No.43 日本国憲法に規定する表現の自由に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
1. 筆記行為の自由は、様々な意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限り、憲法の規定の精神に照らして尊重されるべきであり、裁判の公開が制度として保障されていることに伴い傍聴人は法廷における裁判を見聞することができるのであるから、傍聴人が法廷においてメモを取ることは、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、尊重に値し、故なく妨げられてはならないとした。
44
No.44 表現の自由に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 報道機関の取材源は、一般に、それがみだりに開示されると将来にわたる自由で円滑な取材活動が妨げられることになるため、民事訴訟法上、取材源の秘密については職業の秘密に当たり、当該事案における利害の個別的な比較衡量を行うまでもなく証言拒絶が認められる。 イ. 新聞の記事が特定の者の名誉ないしプライバシーに重大な影響を及ぼし、その者に対する不法行為が成立する場合には、具体的な成文法がなくても、新聞を発行・販売する者に対し、その記事に対する自己の反論文を無修正かつ無料で掲載することを求めることができる。 ウ. 報道機関の報道は国民の知る権利に奉仕するものであるため、報道の自由は、表現の自由を保障した憲法第21条によって保障され、報道のための取材の自由も報道が正しい内容を持つために報道の自由の一環として同条によって直接保障される。 エ. 都市の美観・風致の維持を目的として、電柱等へのビラ、ポスター等の貼付を禁止することは、表現の自由に対して許された必要かつ合理的な制限である。 オ. 意見知識情報の伝達の媒体である新聞紙、図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは、表現の自由を保障した憲法第21条の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれる。
5. エ、オ
45
No.45 表現の自由に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
2. 各人が自由に様々な意見、知識、情報に接し、これを摂取する機会を持つことは、個人として自己の思想及び人格を形成、発展させ、社会生活の中にこれを反映させていく上において欠くことのできないものであり、民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達、交流の確保という基本的原理を真に実効あるものたらしめるためにも必要であって、このような情報等に接し、これを摂取する自由は、憲法第21条第1項の趣旨、目的から、その派生原理として当然に導かれるとするのが判例である。
46
No.46 日本国憲法に規定する表現の自由に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
3. 人格権としての名誉権に基づく出版物の印刷、製本、販売、頒布等の事前差止めは、その出版物が公職選挙の候補者に対する評価、批判等に関するものである場合には、原則として許されず、その表現内容が真実でないか又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときに限り、例外的に許される。
47
No.47 表現の自由に関する次のア〜エの記述のうち、判例の立場として妥当なもののみを全て挙げているものはどれか。 ア. 裁判所の許可を得ない限り公判延における取材活動のための写真撮影を行うことができないとすることは、憲法に違反しない。 イ. 事実の報道の自由は、国民の知る権利に奉仕するものであるものの、憲法第21条によって保障されるわけではなく、報道のための取材の自由も、憲法第21条とは関係しない。 ウ. 美観風致の維持及び公衆に対する危害防止の目的のために、屋外広告物の表示の場所・方法及び屋外広告物を掲出する物件の設置・維持について必要な規制をすることは、それが営利と関係のないものも含めて規制の対象としていたとしても、公共の福祉のため、表現の自由に対して許された必要かつ合理的な制限であるといえる。 エ. 人の名誉を害する文書について、裁判所が、被害者からの請求に基づいて当該文書の出版の差止めを命ずることは、憲法第21条第2項の定める「検閲」に該当するが、一定の要件の下において例外的に許容される。
2. ア、ウ
48
No.48 表現の自由に関する次のア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならず、個人によるその政治的意見を記載したビラの配布は、表現の自由の行使ということができるところ、ビラの配布のために、「人の看守する邸宅」に管理権者の承諾なく立ち入った行為につき、刑法第130条前段の罪に問う場合には、表現内容そのものの規制として憲法適合性を検討する必要がある。 イ. 道路、公園、広場などの一般公衆が自由に出入りできる場所は、表現のための場として役立つことも少なくないから、このような場所が表現の場所として用いられるときは、所有権や、本来の利用目的のための管理権に基づく制約を受けざるを得ないとしても、その機能に鑑み、表現の自由の保障に可能な限り配慮する必要がある。 ウ. 営利広告も表現の自由の保障に含まれ、その制約に関しては、厳格な基準が適用されるべきであるから、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律第7条第1項の定める広告制限は、憲法第21条の趣旨に反し許されないと解されている。 エ. 知事によって有書図書として指定されると、青少年への販売、配布、貸付及び自動販売機業者が自動販売機に納入することが禁じられる旨の規定が条例に定められている場合、知事が、著しく性的感情を刺激し、または著しく残忍性を助長するため、青少年の健全な育成を阻害するおそれがある図書を有害図書として指定することは、憲法第21条第2項前段の検閲に該当する。 オ. 出版物の頒布等の事前差止めは、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批評等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないが、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、例外的に許される。 【あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律】 第7条第1項 あん摩業、マツサージ業、指圧業、はり業若しくはきゆう業又はこれらの施術所に関しては、何人も、いかなる方法によるを問わず、左に掲げる事項以外の事項について、広告をしてはならない。 一 施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所 二 …(中略)… 三 施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項 四 施術日又は施術時間 五 その他厚生労働大臣が指定する事項
3. イ、オ
49
No.49 表現の自由に関する次のア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 筆記行為の自由は、様々な意見、知識、情報に接し、これを摂取することを補助するものとしてなされる限り、憲法第21条第1項により保障されるものであることから、傍聴人が法廷においてメモを取る自由も、その見聞する裁判を認識、記憶するためになされるものである限り、同項により直接保障される。 イ. 放送法の定める訂正放送等の規定は、真実でない事項の放送がされた場合において、放送内容の真実性の保障及び他からの干渉を排除することによる表現の自由の確保の観点から、放送事業者に対し、自律的に訂正放送等を行うことを国民全体に対する公法上の義務として定めたものであって、放送事業者がした真実でない事項の放送により権利の侵害を受けた本人等に対して訂正放送等を求める私法上の請求権を付与する趣旨の規定ではない。 ウ. 報道関係者の取材源は、一般に、それがみだりに開示されると、報道関係者と取材源となる者との間の信頼関係が損なわれ、報道機関の業務に深刻な影響を与え、以後その遂行が困難になると解されるため、憲法第21条は、報道関係者に対し、刑事事件において取材源に関する証言を拒絶し得る権利を保障していると解される。 エ. 公共的事項に関する表現の自由は、特に重要な憲法上の権利として尊重されなければならないものであることに鑑み、当該表現行為が公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図るものである場合には、当該事実が真実であることの証明があれば、当該表現行為による不法行為は成立しない。 オ. 雑誌その他の出版物の印刷、販売等の仮処分による事前差止めは、表現物の内容の網羅的一般的な審査に基づく事前規制が行政機関によりそれ自体を目的として行われる場合とは異なり、個別的な私人間の紛争について、司法裁判所により、当事者の申請に基づき差止請求権等の私法上の被保全権利の存否、保全の必要性の有無を審理判断して発せられるものであって、憲法第21条第2項前段にいう「検閲」には当たらない。
5. イ、エ、オ
50
No.50 憲法第21条に関する次のア〜オの記述のうち、適当なもののみをすべて挙げているのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 公共の安全を脅かす現住建造物等放火罪、騒乱罪等の重大犯罪のせん動は、表現活動としての性質を有しているが、社会的に危険な行為であるから、公共の福祉に反し、表現の自由の保護を受けるに値しない。 イ. 裁判所の仮処分による出版物の差止めは、憲法第21条第2項にいう検閲に当たり、原則として許されないが、その表現内容が真実でなく、またはそれがもっぱら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、例外的に許される。 ウ. 集会は、国民が様々な意見や情報などに接することにより自己の思想や人格を形成、発展させ、また、相互に意見や情報等を伝達、交流する場として必要であり、さらに、対外的に意見を表明するための有効な手段であるから、憲法第21条第1項の保障する集会の自由は、民主主義社会における重要な基本的人権の一つとして特に尊重されなければならない。 エ. 戸別訪問の一律禁止(公職選挙法第138条)は、一つの意見表明の手段方法に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない反面、禁止により得られる利益は失われる利益にしてはるかに大きいから、許される。 オ. 結社の自由や団結権に基づいて結成された団体は内部統制権を有し、労働組合も、特定の候補者を支持する政治活動を行うことが認められ、それに対抗して立候補した組合員を除名することも認められる。
2. ア、ウ、エ
51
No.51 日本国憲法に規定する表現の自由に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
1. 報道関係者の取材源の秘密は、民事訴訟法に規定する職業の秘密に当たり、民事事件において証人となった報道関係者は、保護に値する秘密についてのみ取材源に係る証言拒絶が認められると解すべきであり、保護に値する秘密であるかどうかは、秘密の公表によって生ずる不利益と証言の拒絶によって犠牲になる真実発見及び裁判の公正との比較衡量により決せられるべきであるとした。
52
No.52 次の文章の空欄①〜⑤に語句群から適切な語句を入れると、表現の自由に対する規制に関する記述となる。空欄に入る語句の組合せとして適当なもののみを挙げているものはどれか。ただし、異なる空欄に同じ語句は入らない。 一般的に、表現の内容に着目した規制は(①)、表現の内容に関係ない表現の手段・方法等に対する規制は(②)といわれる。 ( ①)の例としては、(③)に対する規制が挙げられる。他方で、(②)には、表現活動の規制を直接の目的とする場合と、何らかの弊害をもたらす行為を規制した結果、付随的に表現活動も規制されることになり得る場合とを区別して考える見解もある。前者の例としては、(④)が挙げられる。ここでは、ビラ配布という表現行為を一定の範囲で規制することが目的となっているからである。他方で、後者の例としては、(⑤)などが挙げられる。 【語句群】 ア.内容規制 イ.内容中立規制 ウ.わいせつ表現や名誉毀損表現 エ.ビラ配布 オ.特定の時間帯や場所でのビラ配布を規制する場合や交通の重大な妨害となる態様でのビラ配布の規制 カ.ビラ配布のために他人の管理する建物などに立ち入った者を建造物侵入罪により処罰する場合
4. ②イ、③ウ、⑤カ
53
No.53 表現の自由に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等を掲載する出版物の頒布等を裁判所が事前に差し止めることは、公務員又は公職選挙の候補者の名誉権を保護する手段として不可であるから、原則として許される。 イ. 図書の著作者は、自らの著作物を公立図書館に所蔵させる権利を有しており、公立図書館の図書館職員である公務員が、図書の廃棄について、基本的な職務上の義務に反し、著作者や著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは、当該権利を侵害するものとして違法となる。 ウ. 私人の私生活上の行状であっても、その携わる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法第230条の2第1項にいう「公共の利害に関する事実」に当たる場合がある。 エ. 取材の自由が憲法第21条の精神に照らし尊重に値するとしても、公正な刑事裁判の実現は憲法上の要請である以上、取材の自由は公正な刑事裁判の実現の要請に劣後するため、報道機関の取材活動によって得られたフィルムが刑事裁判の証拠として必要と認められる場合には、当該フィルムに対する裁判所の提出命令が憲法第21条に違反することはない。 オ. 現代民主主義社会においては、集会は、国民が様々な意見や情報等に接することにより自己の思想や人格を形成、発展させ、また、相互に意見や情報等を伝達、交流する場として必要であり、さらに、対外的に意見を表明するための有効な手段であるから、憲法第21条第1項の保障する集会の自由は、民主主義社会における重要な基本的人権の一つとして特に尊重されなければならない。 (参考)刑法(名誉毀損) 第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。 (第2項略) (公共の利害に関する場合の特例) 第230条の2 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。 (第2項以下略)
5. ウ、オ
54
No.54 検閲の禁止に関する次の説明文中のA〜Dの空欄に入る語句の組み合わせとして最も適当なのはどれか。 判例によれば、検閲とは、(A)が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、(B)、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的・一般的にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものをいう。検閲の禁止について、公共の福祉を理由とする(C)。 これを前提とすると、裁判所の仮処分による表現物の事前差止めは(D)。
1. A.行政権、 B.発表前に、 C.例外も認められない D.検閲にあたらない
55
No.55 次の文章は、国家公務員法(以下「国公法」という。)第102条1項、人事院規則14ー7(以下「規則」という。)5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止が憲法21条に違反するかという点に関する最高裁の判決の理由の一部である。次の1~5の文章を正しい順序に並び替えてA~Eの空欄に入れるとき、Dの空欄に入る文として適当なのはどれか。 「( A )。そして、( B )。しかしながら、( C )。すなわち、( D )。したがって、( E )。」
1. 行政の中立的運営が確保され、これに対する国民の信頼が維持されることは、憲法の要請にかなうものであり、公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益にほかならないというべきである。
56
No.56 憲法第21条に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 破壊活動防止法第39条及び第40条のせん動は、政治目的をもって、特定の犯罪を実行させる目的をもって、文書若しくは図画又は言動により、人に対し、その犯罪行為を実行する決意を生ぜしめ又は既に生じている決意を助長させるような勢いのある刺激を与える行為をすることであり、このようなせん動は、公共の安全を脅かす重大犯罪を引き起こす可能性のある社会的に危険な行為であるから、公共の福祉に反し、表現の自由の保護を受けるに値しないものとして、制限を受けるのはやむを得ない。 イ. 地方自治法にいう普通地方公共団体の公の施設として、集会の用に供する施設が設けられている場合、住民は、その施設の設置目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになるので、管理者が正当な理由なくその利用を拒否するときは、憲法の保障する集会の自由の不当な制限につながるおそれが生ずることになる。 ウ. 表現の自由を規制する法律の規定について、その解釈により規制の対象となるものとそうでないものとを明確に区別することができず、かつ、合憲的に規制し得るもののみが規制の対象となることを明らかにすることができない場合であっても、一般国民の理解において具体的場合に当該表現物が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめる基準をその規定から読み取ることができるものであれば、当該法律の規定について限定解釈をすることが許される。 エ. ある条例がその文言どおりに適用されることになると、規制の対象が広範囲に及び、憲法第21条第1項及び第31条との関係で問題がある場合に、当該条例を限定解釈によって合憲と判断することができるかどうかの判断に当たっては、当該条例の規定それ自体から、通常人の判断能力をもって限定解釈をすることができる可能性等を考慮すべきであり、当該条例の委任規則である施行規則の規定までも考慮することは許されない。 オ. 戸別訪問を禁止する公職選挙法の規定は選挙の自由と公正を確保することを目的としているところ、当該目的は正当であり、戸別訪問の一律禁止と禁止目的との間には合理的な関連性がある。また、戸別訪問の禁止によって失われる利益は、当該規定の萎縮効果により戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由が制約されるおそれがあることであるが、禁止により得られる利益は、民主主義の根幹を成す選挙の自由と公正の確保であるから、得られる利益は失われる利益に比して大きいということができ、当該規定は憲法第21条に違反しない。
1. ア、イ
57
No.57 表現の自由に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。 ア. 屋外の公共用物利用の規制に関し、管理上の必要から、管理者がメーデーのための皇居外苑使用許可申請を不許可とした処分は、管理権の適正な運用を誤ったものであり、憲法第21条に違反する。 イ. 表現行為の事前抑制は、事後制裁の場合よりも広範にわたりやすく、濫用のおそれがある上、実際上の抑止的効果が事後制裁の場合より大きいと考えられることから、表現の自由を保障し検閲を禁止する憲法第21条の趣旨に照らして、およそ許容されない。 ウ. 報道のための取材の自由は、憲法第21条の精神に照らして十分尊重に値するものであるが、もとより何らの制約を受けないものではなく、例えば公正な裁判の実現というような憲法上の要請があるときは、ある程度の制約を受けることがある。 エ. あん摩師、はり師、きゆう及び柔道整復師法(当時)の規定による広告制限は、虚偽、誇大にわたる広告のみならず、適応症に関する真実、正当な広告までも全面的に禁止するものであるから、国民の保健衛生上の見地から公共の福祉を維持するためのやむを得ない措置ということはできず、憲法第21条に違反する。 オ. 私人の私生活上の行状であっても、私人の携わる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、刑法第230条の2第1項にいう「公共の利害に関する事実」に当たる場合がある。 (参考)刑法 (名誉毀損) 第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。 [第2項略] (公共の利害に関する場合の特例) 第230条の2 前条第一項の行為が公の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判所し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。 [第2項以下略]
5. ウ、オ
58
No.58 精神的自由権に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なのはどれか。 (参考)刑法 (名誉毀損) 第230条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。(第2項略) (公共の利害に関する場合の特例) 第230条の2 前条第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。 (第2項以下略)
5. 憲法第21条第2項にいう「検閲」とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものをいい、検閲の禁止については、公共の福祉を理由とする例外の許容も認められない。
59
No.59 集会・結社の自由に関する次のア〜エの記述のうち妥当なもののみを全て挙げているものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 集会の用に供される公共施設の管理者は、当該施設の利用申請に対し、集会が開かれることによって、人の生命身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる抽象的な危険があれば、当該施設の利用を拒否することができる。 イ. 集会の自由について、民主主義社会における重要な基本的人権の一つとして特に尊重すべきである理由は、集会が、国民が様々な意見や情報等に接することにより自己の思想や人格を形成、発展させ、また、相互に意見や情報等を伝達、交流する場として必要であり、さらに、対外的に意見を表明するための有効な手段であるためである。 ウ. 地方公共団体が定める条例において、集団行進等の集団行動を一般的な許可制を定めて事前に抑制することは憲法第21条第1項に反し許されない。 エ. 特定の団体への加入を強制する法律は、団体に加入しないといった結社の自由を侵害するものであるから、憲法第21条第1項に反する。
3. イ、ウ
60
No.60 集会及び結社の自由に関する次のア〜エの記述の正誤の組合せとして最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 現代民主主義社会においては、集会は、国民が様々な意見や情報等に接することにより自己の思想や人格を形成、発展させ、また、相互に意見や情報等を伝達、交流する場として必要であり、さらに、対外的に意見を表明するための有効な手段であるから、集会の自由は、民主主義社会における重要な基本的人権の一つとして特に尊重されなければならないが、公共の福祉による必要かつ合理的な制限を受けることがあるのはいうまでもなく、このような制限が是認されるかどうかは、制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決めることになる。 イ. 市民会館の使用について、「公の秩序をみだすおそれがある場合」を不許可事由とする規定は、当該会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、当該会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであるが、危険の発生が明らかに差し迫っていなくても、不許可とすることができる。 ウ. 公安条例による公共の場所での集会、集団行進等の集団行動についての事前規制については、単なる届出制を定めることは許されるが、許可とは一般的禁止を特定の場合に解除することを意味するから、表現の自由の保障により本来自由たるべき集団行動に許可制を適用することは許されず、一般的な許可制を定めて集団行動を事前に抑制する場合はもちろん、実質的に届出制と異なることがないような規制であっても文面上において許可制を採用することは許されない。 エ. 弁護士会や司法書士会等の職業団体が強制加入を定めていることは、職業が高度の専門技術性・公共性を持ち、その専門技術水準・公共性を維持確保するための措置としての必要があって、その団体の目的及び活動範囲がその職業従事者の職業倫理の確保と事務の改善進歩を図ることに厳格に限定されている限り、必ずしも結社の自由の侵害とはいえない。
5. ア正、イ誤、ウ誤、エ正
61
No.61 集会・結社の自由に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なのはどれか。
1. 空港建設に反対する集会の開催を目的とした公の施設(市民会館)の使用許可申請を不許可にした処分に関し、市の市民会館条例が不許可事由として定める「公の秩序をみだすおそれがある場合」とは、集会の自由を保障することの重要性よりも、集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要である。
62
No.62 日本国憲法に規定する職業選択の自由に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
5. 酒類販売業の免許制は、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための規制であり、その必要性と合理性についての立法府の判断が、政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱し、著しく不合理であるとまでは断定し難いとして、免許制を合憲とした。
63
No.63 職業選択の自由に関する次のア〜オの記述のうち、適当なもののみをすべて挙げているのはどれか(争いのあるときには、判例の見解による。)。 ア. 小売市場の許可規制は、過当競争によって招来されるであろう小売商の共倒れから小売商を保護するために採られた措置であるが、立法目的との関係において、合理性と必要性のいずれをも肯定することができないから、憲法第22条第1項に違反し、無効である。 イ. 特定の団体でなければ生糸を輸入することができないとする一元輸入措置を内容とする法律を制定することは、営業の自由に対し制限を加えるものではあるが、積極的な社会経済政策の実施の一手段として、一定の合理的規制措置を講ずることは許容されることなどからすると、その立法行為が国家賠償法第1条第1項の適用上例外的に違法の評価を受けるものではない。 ウ. 薬局の開設等の許可における適正配置規制は、主として国民の生命及び健康に対する危険の防止という消極的、警察的目的のための規制措置であり、公共の福祉の確保のために必要な制限と解されるから、憲法第22条第1項に違反するものではない。 エ. 公衆浴場法による適正配置規制は、国民保健及び環境衛生を目的とするものであるが、その目的を達成する手段としては過度の規制であるから、公衆浴場の経営の許可を与えないことができる旨の規定を設けることは、憲法第22条に違反する。 オ. 医業類似行為を業とすることが公共の福祉に反するのは、かかる業務行為が人の健康に害を及ぼすおそれがあるからである。それゆえ、あん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師法が医業類似行為を業とすることを禁止処罰するのも人の健康に害を及ぼすおそれのある業務行為に限局する趣旨と解しなければならないのであって、このような禁止処罰は公共の福祉上必要であるから、憲法第22条に反するものではない。
3. イ、オ
64
No.64 日本国憲法に規定する職業選択の自由についての最高裁判所の判例に関する記述として、妥当なのはどれか。
3. 薬事法の薬局の開設等の許可における適正配置規制は、実質的には職業選択の自由に対する大きな制約的効果を有するものであり、設置場所の制限が存在しない場合に一部地域において業者間に過当競争が生じ、不良医薬品の供給の危険が発生する可能性があるとすることは、単なる観念上の想定にすぎず、必要かつ合理的な規制とはいえないため、憲法に違反するとした。
65
No.65 憲法第22条に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、ア〜オの記述に掲げられた法律の規定には、現行において廃止・改正されているものも含まれている。 ア. 憲法第22条の保障する居住・移転の自由は、自己の住所又は居所を自由に決定し移動することを内容とするものであり、旅行のような人間の移動の自由は含まれないため、旅行の自由は、国の内外を問わず、同条によってではなく、一般的な自由又は幸福追求権の一部として憲法第13条により保障される。 イ. 憲法第22条第1項は日本国内における居住・移転の自由を保障するにとどまり、外国人に入国の自由は保障されないが、同条第2項にいう外国移住の自由はその権利の性質上外国人に限って保障しないという理由はなく、出国の自由は外国人にも保障される。 ウ. 職業の許可制は、職業選択の自由そのものに制約を課すもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定するためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置ではなく、社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては目的を十分に達成することができないと認められることを要する。 エ. 法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処する司法書士法の規定は、登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどに鑑みたものであり、公共の福祉に合致した合理的な規制を定めたものであって、憲法第22条第1項に違反しない。 オ. 薬局及び医薬品の一般販売業(以下「薬用等」という。)の開設に適正配置を要求する薬事法の規定は、不良医薬品の供給による国民の保健に対する危険を完全に防止するためには、薬局等の乱設による過当競争が生じるのを防ぎ、小企業の多い薬局等の経営の保護を図ることが必要であることなどに鑑みたものであり、公共の福祉に合致した合理的な規制を定めたものであって、憲法第22条第1項に違反しない。
4. イ、エ
66
No.66 日本国憲法に規定する職業選択の自由に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
5. 法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公共託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰する司法書士法の規定は、公共の福祉に合致した合理的なもので憲法に違反するものでないとした。
67
No.67 職業選択の自由に関する記述として最も妥当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。
4. 憲法第22条第1項が「公共の福祉に反しない限り」という留保を伴っているのは、職業活動は社会的相互関連性が大きく、精神的自由と比較して、公権力による規制の要請が強いことを強調する趣旨によるものである。
68
No.68 職業選択の自由に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべてあげているのはどれか。 ア. 酒税法に基づく酒類販売の免許制度は、制度導入当初は、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという重要な公共の利益のためにとられた合理的措置であったが、その後の社会状況の変化と酒税の国税全体に占める割合等が相対的に低下したことにより、当該免許制度を存置しておくことの必要性及び合理性は失われていると解されるから、憲法第22条第1項に違反する。 イ. 旧繭糸価格安定法(平成20年廃止)に基づく生糸の一元輸入措置及び価格安定制度は、養蚕業及び製糸業の保護政策としての規制措置であるが、外国産生糸を国際糸価で購入する途を閉ざされるなど、絹織物生地製造業者の経済的活動の自由を著しく制限するものであり、当該保護政策の目的達成のために必要かつ合理的な規制の範囲を逸脱するものであるから、憲法第22条第1項に違反する。 ウ. 薬事法に基づく薬局開設の許可制及び許可条件としての適正配置規制は、主として国民の生命及び健康に対する危険の防止という消極的、警察的目的のための規制措置であるが、許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっても、その目的を十分に達成することができると解されるから、許可制の採用自体が公共の利益のための必要かつ合理的措置であるとはいえず、憲法第22条第1項に違反する。 エ. 小売商業調整特別措置法に基づく小売市場の許可規制は、国が社会経済の調和的発展を企図するという観点から中小企業保護政策の一方策としてとった措置ということができ、その目的において一応の合理性を認めることができ、また、その規制の手段・態様においても著しく不合理であることが明白であるとは認められないから、憲法第22条第1項に違反しない。 オ. 公衆浴場法に基づく公衆浴場の許可制及び許可条件としての適正配置規制は、既存公衆浴場業者の経営の安定を図り、自家風呂を持たない国民にとって必要不可欠な厚生施設である公衆浴場自体を確保するという積極的、政策的目的とともに、国民保健及び環境衛生の確保という消極的、警察的目的も有しているが、後者の目的との関係では、目的を達成するための必要かつ合理的な措置であるとはいえず、悪法第22条第1項に違反する。
2. エ
69
No.69 財産権に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 憲法第29条第1項は、「財産権は、これを侵してはならない。」と規定し、私有財産制度を保障するだけではなく、社会的経済的活動の基礎をなす個人の財産権を基本的人権として保障している。 イ. 憲法第29条第2項は、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定し、財産権が公共の福祉による制約に服することを明らかにしている。同項にいう公共の福祉は、社会国家的公共の福祉に基づく財産権に対する制約を意味しており、自由国家的公共の福祉に基づく財産権に対する制約を意味するものではない。 ウ. 憲法第29条第3項は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ることができる。」と規定しているが、同項にいう補償の対象となるのは、特定の者に対してその財産権に内在する社会的・自然的制約を超えて特別の犠牲を課する場合であり、例えば、ため池の堤とうの土地利用制限は、その制限が堤とうを使用する財産上の権利を有する者の財産権の行使をほとんど全面的に禁止するものであるときは、特別の犠牲を課するものとして、当然に同項の補償を要する。 エ. 憲法第29条第3項は、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」と規定しているが、同項にいう正当な補償とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常にかかる価格と完全に一致することを要するものではない。 オ. 公共のためにする財産権の制限が憲法第29条第3項により補償を必要とするにもかかわらず、当該財産権の制限を定めた法令に損失補償に関する規定を欠く場合、そのことをもって当該法令があらゆる場合について一切の損失補償を否定する趣旨とまでは解されず、その損失を具体的に主張立証して、直接憲法第29条第3項を根拠にして、補償請求をすることができる。
4. ア、エ、オ
70
No.70 財産権に関するA〜Dの記述のうち、判例の見解に合致するもののみをすべて挙げているのはどれか。 A. 共有森林につき共有持分価格が2分の1以下の者による共有物分割請求を禁じた森林法の旧規定は、森林の細分化を防止することによって森林経営の安定を図ること等を目指すという立法目的自体は公共の福祉に合致するとしても、立法目的達成のための手段としては、合理性と必要性のいずれをも肯定することのできないことが明らかであって、憲法第29条第2項に違反し無効である。 B. 憲法第29条第3項が規定する財産権の補償について、法律が財産権の補償規定を置いていない場合、裁判所において当該補償額を認定することは困難であるといわざるを得ないことから、直接憲法第29条第3項に基づいて財産権の補償を請求することはできない。 C. 憲法第29条第2項は「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定しており、財産権は全国的な取引の対象となる場合が多いことにもかんがみれば、財産権の制限は、統一的に法律で規定するべきであり、条例によることは許されない。 D. 土地収用法に基づいて土地を収用する場合、その補償は完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償をなすべきであり、金銭をもって補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得するに足りる金額でなければならない。
3. A.D
71
No.71 憲法第29条に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 憲法第29条第1項は「財産権は、これを侵してはならない」と規定するが、これは、個人の現に有する具体的な財産上の権利の保障を意味し、個人が財産権を専有し得る法制度の保障までも意味するものではない。 イ. 憲法第29条第2項は「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める」と規定するが、この「公共の福祉」は、各人の権利の公平な保障を狙いとする自由国家的公共の福祉を意味し、各人の人間的な生存の確保を目指す社会国家的公共の福祉までも意味するものではない。 ウ. 特定の個人に対し、財産上特別の犠牲が課せられた場合と、生命、身体に対し特別の犠牲が課せられた場合とで、後者の方を不利に扱うことが許されるとする合理的理由はないから、痘そうの予防接種によって重篤な後遺障害が発生した場合には、国家賠償請求によらずに、憲法第29条第3項を直接適用して、国に対して補償請求をすることができる。 エ. 憲法第29条第3項は「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる」と規定するが、この「公共のため」とは、ダムや道路などの建設のような公共事業のためであることを意味し、収用全体の目的が広く社会公共の利益のためであっても、特定の個人が受益者となる場合は該当しない。 オ. 補償請求は、関係法規の具体的規定に基づいて行うが、法令上補償規定を欠く場合であっても、直接憲法第29条第3項を根拠にして、補償請求をすることができる。
2. オ
72
No.72 財産権の保障に関する次のア〜オの記述のうち、判例の見解に合致するもののみを全て挙げているものはどれか。 ア. 法律で一旦定められた財産権の内容を事後の法律で変更することは、法的安定性を害し、公正さにも欠けるため、許されない。 イ. 憲法第29条は、第1項において「財産権は、これを侵してはならない。」と規定し、第2項において「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定し、私有財産制度を保障しているのみではなく、社会的経済的活動の基礎をなす国民の個々の財産権につき、これを基本的人権として保障している。 ウ. 土地収用法に基づいて土地を収用する場合、その補償は、当該土地について合理的に算出された相当な額であれば、市場価格を下回るものであっても、適正な補償であるといえる。 エ. 憲法第29条第2項は、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定しており、財産権が全国的な取引の対象となる場合が多く、統一的に法律で規定すべきであることからすると、財産権を法律によらずに条例で規制することは同項に反し許されない。 オ. ある法令が財産権の制限を認める場合に、その法令に損失補償に関する規定がない場合であっても、その制限によって損失を被った者が、直接憲法第29条第3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではない。
4. イ、オ
73
No.73 日本国憲法に規定する財産権に関するA〜Dの記述のうち、最高裁判所の判例に照らして、妥当なものを選んだ組合せはどれか。 A. ため池の破損、決かいの原因となるため池の堤とうの使用行為は、憲法、民法の保障する財産権の行使のらち外にあり、これらの行為を条例によって禁止、処罰しても憲法に抵触せず、条例で定めても違憲ではないが、ため池の堤とうを使用する財産上の権利を有する者は、その財産権の行使をほとんど全面的に禁止されることになるから、これによって生じた損失は、憲法によって正当な補償をしなければならないとした。 B. インサイダー取引の規制を定めた証券取引法は、証券取引市場の公平性、公正性を維持するとともにこれに対する一般投資家の信頼を確保するという目的による規制を定めるものであるところ、その規制目的は正当であり、上場会社等の役員又は主要株主に対し、一定期間内に行われた取引から得た利益の提供請求を認めることは、立法目的達成のための手段として、必要性又は合理性に欠けることが明らかであるとはいえないのであるから、憲法に違反するものではないとした。 C. 森林法が共有森林につき持分価額2分の1以下の共有者に民法所定の分割請求権を否定しているのは、森林の細分化を防止することによって森林経営の安定を図るとする森林法の立法目的との関係において、合理性と必要性のいずれをも肯定することができ、この点に関する立法府の判断は、その合理的裁量の範囲内であるというべきであるから、憲法に違反するものではないとした。 D. 財産上の犠牲が、公共のために必要な制限によるものとはいえ、単に一般的に当然に受認すべきものとされる制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものである場合に、法令に損失補償に関する規定がないからといって、あらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、直接憲法を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではないとした。
5. B,D
74
No.74 財産権に関するア〜エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。 ア. 財産権に対して加えられる規制が憲法第29条第2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して決すべきものである。 イ. 森林法が定める持分価格2分の1以下の森林共有者に対し共有物分割請求権を認めない旨の規定は、当該規定の立法目的が、森林の細分化を防止することによって森林経営の安定を図り、ひいては森林の保続培養と森林の生産力の増進を図るとするいわゆる消極目的の規制であることからすると、公共の福祉に合致しないことが明らかであり、憲法第29条第2項に違反する。 ウ. 憲法第29条第1項は、「財産権は、これを侵してはならない。」と規定しており、法律で一旦定められた財産権の内容を事後の法律で変更することは、国民の財産権への期待を裏切ることとなり、公共の福祉に適合するようにされたものであっても許されない。 エ. 自作農創設特別措置法による農地改革は、耕作者の地位を安定させ、その労働の成果を公正に享受させるため自作農を急速かつ広汎に創設し、また、土地の農業上の利用を増進し、もって農業生産力の発展と農村における民主的傾向の促進を図るという公共の福祉のための必要に基づいたものであるから、同法により買収された農地、宅地、建物等が買収申請人である特定の者に売り渡されるとしても、当該買収の公共性は否定されない。
2. ア、エ
75
No.75 財産権に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。 ア. 憲法第29条第1項にいう、「財産権」とは、個人の有する現実の個々の財産上の権利を保障するものではなく、それらの権利の主体となり得る能力の意味であり、同項は専ら私有財産制を保障するものであると解されている。 イ. 憲法第29条第3項にいう「公共のために用ひる」とは、直接公共の用に供する公共事業のための財産権の侵害に限られないが、広く社会公共の利益を収用全体の目的とするものであっても、自作農創設を目的とする農地買収のように、収用された財産が特定の個人に分配される場合は含まれないと解されている。 ウ. 憲法第29条第3項にいう「正当な補償」とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常にかかる価格と完全に一致することを要するものではないとするのが判例である。 エ. 財産権は個人の生存の基礎をなし、自己実現の重要な手段であるという普遍性をも併せ持つものであるから、財産権に対して加えられる規制が憲法第29条第2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるかについての判断は一般に厳格にすべきであり、規制目的が正当であり、かつ、規制手段が当該目的の達成にとって必要最小限度のものでない限り、当該規制は同項に違反するとするのが判例である。 オ. ため池の堤とうを使用する財産上の権利に対する法令による制限が、当該権利の行使をほとんど全面的に禁止するものである場合は、それが災害を未然に防止するという社会生活上のやむを得ないものであっても、当該権利を有する者が当然に受忍しなければならないものとまではいうことはできないから、その制限に当たっては、憲法第29条第3項の補償を要するとするのが判例である。
2. ウ
76
No.76 日本国憲法に規定する財産権に関する記述として、判例、通説に照らして、妥当なのはどれか。
3. 財産権の制約の根拠としての「公共の福祉」は、自由国家的な消極的な公共の福祉のみならず、社会国家的な積極的・政策的な公共の福祉の意味をもつものとして解釈され、財産権は積極目的規制にも服するものとされる。
77
No.77 経済的自由権に関するア〜エの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 公共の福祉には内在的制約と外在的制約の2種類があり、いずれの原理が妥当するかは基本的人権の性質によるものとされるが、精神的自由権は外在的制約に服し、経済的自由権は外在的制約に加えて内在的制約に服すると一般に解されている。 イ. 本人は司法書士の資格がなくても登記の申請ができるのに、行政書士が本人から依頼されても登記申請を代理することが許されないのは合理性を欠くことから、司法書士以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰する司法書士法の規定は、憲法第22条第1項に違反するとするのが判例である。 ウ. 憲法第22条第2項の外国に移住する自由には外国へ一時旅行する自由が含まれ、また、旅券法が旅券発給を拒否することができる場合として、「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」と規定したのは、外国旅行の自由に対し、公共の福祉のために合理的な制限を定めたもので、同条項に違反しないとするのが判例である。 エ. 憲法第29条第3項にいう「正当な補償」とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであり、必ずしも常に当該価格と完全に一致することを要するものではなく、この趣旨に従うと、収用する土地の補償金の額の算定について定めた土地収用法第71条の規定には十分な合理性があり、同条は憲法第29条第3項に違反しないとするのが判例である。
3. ウ、エ
78
No.78 経済的自由に関する次の記述のうち、妥当なのはどれか。
3. 憲法第22条第2項は、国籍離脱の自由を認めるものであるが、無国籍になる自由を含むものではないと解されている。
79
No.79 経済的自由権に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 財産権に対する規制が憲法第29条第2項にいう公共の福祉に適合するものとして是認されるべきものであるかどうかは、規制の目的、必要性、内容、その規制によって制限される財産権の種類、性質及び制限の程度等を比較考量して判断すべきものであるとするのが判例である。 イ. 憲法第29条第3項の「公共のために用ひる」とは、学校、鉄道、道路等の公共事業のために私有財産の収用等を行うことを意味しており、特定の個人が受益者となる場合はこれに当たらないとするのが判例である。 ウ. 憲法第22条第2項は、外国に移住する自由を保障しているが、外国へ一時旅行する自由も同項により保障されるとするのが判例である。 エ. 憲法第22条第2項は、国籍離脱の自由を認めており、その中には無国籍になる自由も含まれていると一般に解されている。 オ. 租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理なものでない限り、これを憲法第22条第1項の規定に違反するものということはできないとするのが判例である。
5. ア、ウ、オ
80
No.80 経済的自由権に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 憲法第22条第1項が保障する居住・移転の自由は、経済活動の目的だけでなく、広く人の移動の自由を保障するという意味において、人身の自由としての側面を有すると一般に解されている。 イ. 憲法第22条第2項が保障する外国に移住する自由には外国へ一時旅行する自由が含まれるが、外国旅行の自由といえども無制限のままに許されるものではなく、公共の福祉のために合理的な制限に服するとするのが判例である。 ウ. 酒税法による酒類販売業の許可制は、致酔性を有する酒類の販売を規制することで、国民の生命及び健康に対する危険を防止することを目的とする規制であり、当該許可制は、立法目的との関連で必要かつ合理的な措置であるといえ、より緩やかな規制によっては当該目的を十分に達成することができないと認められることから、憲法第22条第1項に違反しないとするのが判例である。 エ. 憲法第29条にいう「財産権」とは、所有権その他の物権や債権といった私法的な権利を指し、水利権や河川利用権といった公法的な権利は含まれない。 オ. 憲法第29条第3項にいう「公共のために用ひる」とは、学校や道路の建設といった公共事業のために私有財産を直接供する場合を指し、広く社会公共の利益のために私有財産の収用を行う場合は含まれない。
1. ア、イ
81
No.81 日本国憲法に規定する生存権の法的性格に関する記述として、判例、通説に照らして、妥当なのはどれか。
4. 最高裁判所の判例では、国は、特別の条約の存しない限り、政治的な判断により、限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことは許されるべきことと解され、在留外国人を障害福祉年金の支給対象者から除外することは、立法府の裁量の範囲に属するとした。
82
No.82 生存権に関する次のア〜ウの記述の正誤の組合せとして最も適当なものはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 ア. 具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって、はじめて与えられているというべきであって、憲法第25条第1項の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法が、生活に困窮する要保護者又は被保護者に対し具体的な権利として賦与した保護受給権も、時の政府の施政方針によって左右されることのない客観的な最低限度の生活水準に基づく適正な保護基準による保護を受け得る権利である。 イ. 憲法第25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用に該当するか否かの点についても、裁判所が審査判断するのに適しない。 ウ. 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許される。
5. ア誤、イ誤、ウ正
83
No.83 生存権に関する次のA説〜C説についてのア〜エの記述の正誤の組合せとして、最も適当なのはどれか。 A説) 憲法第25条第1項は、国民の生存を確保すべき政治的・道義的義務を国に課したにとどまり、個々の国民に対して具体的権利を保障したものではない。 B説) 憲法第25条第1項は、国に立法・予算を通じて生存権を実現すべき法的義務を課している。 C説) 憲法第25条第1項は、国に対する具体的な権利を定めたものである。 ア. A説を前提にしても、健康で文化的な最低限度の生活を積極的に侵害するような国の具体的措置については違憲無効を主張しうる。 イ. B説を前提にすれば、憲法第25条第1項が法律により具体化されていない場合であっても、生存権侵害を理由として憲法違反を主張できる。 ウ. C説を前提にすれば、生存権を具体化する立法がなされていない場合に、立法不作為の違憲確認訴訟を提起することが可能である。 エ. C説を前提にしても、直接、国に対し、憲法第25条第1項に基づいて具体的な生活扶助の請求をすることはできないと解することは可能である。
1. ア正、イ誤、ウ正、エ正
84
No.84 次の文章は、昭和31年当時の生活扶助費月額600円が健康で文化的な最低限度の生活水準を維持するに足りるかが争われた事件に関する最高裁判所の判決の理由の一部(原文縦書き)である。次の1〜5の文章を正しい順に並び替えて、A〜Eの空欄に入れるとき、Eの空欄に入る文章として、最も適当なものはどれか。 憲法第25条第1項は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定している。この規定は、( A )。 生活保護法は、「この法律の定める要件」を満たす者は、「この法律による保護」を受けることができると規定し(第2条参照)、その保護は、厚生大臣の設定する基準に基づいて行なうものとしているから(第8条第1項参照)、右の権利は、厚生大臣が最低限度の生活水準を維持するにたりると認めて設定した保護基準による保護を受け得ることにあると解すべきである。もとより、( B )。しかし、( C )。したがって、( D )。ただ、( E )。
2. 現実の生活条件を無視して著しく低い基準を設定する等憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となることをまぬかれない
85
No.85 日本国憲法に規定する生存権に関する記述として、妥当なのはどれか。
5. 最高裁判所の判例では,健康で文化的な最低限度の生活の内容について、どのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するのに適しない事柄であるとした。
86
No.86 子供に対する教育内容の決定権能の帰属等について論じた最高裁判所昭和51年5月21日大法廷判決(刑集第30巻5号615頁)に関するア〜オの記述のうち、当該判決に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 憲法第26条の規定の背後には、国民各自が一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること、特に、自ら学習することのできない子供は、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在している。 イ. 憲法第23条の保障する学間の自由には、学問研究の結果を教授する自由は含まれるものではないが、普通教育の場においては、子供の教育が教師と子供との間の直接の人格的接触を通じ、その個性に応じて行われなければならないという本質的要請に照らし、憲法第26条により一定の範囲における教師の自由な裁量が認められる。 ウ. 普通教育においては、児童生徒に教授内容を批判する能力がなく、教師が児童生徒に対して強い影響力支配力を有すること、また、子供の側に学校や教師を選択する余地が乏しく、教育の機会等を図る上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請があることなどからすれば、普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることは、許されない。 エ. 親は子供に対する自然的関係により、子供の将来に対して最も深い関心を持ち、かつ、配慮をすべき立場にある者として、子供の教育に対する一定の支配権、すなわち子女の教育の自由を有すると認められるが、このような親の教育の自由は、主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれる。 オ. 憲法の採用する議会制民主主義の下においては、国は、法律で、当然に、公教育における教育の内容及び方法についても包括的にこれを定めることができ、また、教育行政機関も、法律の授権に基づく限り、広くこれらの事項について決定権限を有する。
4. ア、ウ、エ
87
No.87 学問の自由及び教育を受ける権利に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 憲法第23条の学問の自由は、学問的研究の自由とその研究結果の発表の自由を含み、学問の自由の保障は全ての国民に対してそれらの自由を保障するとともに、大学が学術の中心として真理探究を本質とすることから、特に大学におけるそれらの自由を保障することを趣旨とする。 イ. 大学における学生の集会について、大学の許可した学内集会は、真に学問的な研究とその結果の発表のためのものでなくても、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治を享有する。 ウ. 普通教育における学問の自由については、教師が公権力によって特定の意見のみを教授することを強制されない必要があることから、大学教育と同様、普通教育における教師にも完全な教授の自由が認められる。 エ. 憲法第26条の規定の背後には、国民各自が、成長し、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利を有すること、特に、自ら学習することのできない子供は、その学習要求を充足するための教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの観念が存在すると考えられる。 オ. 憲法は、子女の保護者に対して普通教育を受けさせる義務を定めていることから、憲法の義務教育を無償とする規定は、教育の対価たる授業料及び教科書その他教育に必要な費用を無償としなければならないことを定めたものと解すべきである。
2. ア、エ
88
No.88 日本国憲法に規定する学問の自由又は教育を受ける権利に関するA〜Dの記述のうち、最高裁判所の判例に照らして、妥当なものを選んだ組合せはどれか。 A. 学生の集会は、大学の許可したものであっても真に学問的な研究又はその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的社会的活動に当たる行為をする場合には、大学の有する特別の学問の自由と自治は享有しないといわなければならないとした。 B. 憲法における学問の自由の保障が、学問研究の自由ばかりでなく、教授の自由をも含み、教授の自由は、教育の本質上、高等教育のみならず、普通教育におけるそれにも及ぶと解すべきであるから、学校において現実に子どもの教育の任に当たる教師は、完全な教授の自由を有し、公権力による支配、介入を受けないで自由に子どもの教育内容を決定することができるとした。 C. 高等学校学習指導要領が法規としての性質を有すると解することは、憲法に違反するものであり、学習指導要領から逸脱する授業をしたことを理由とする県立高等学校教諭に対する徹戒免職処分は、社会観念上著しく妥当を欠き、懲戒権者の裁量権の範囲を逸脱したものであるとした。 D. 憲法の義務教育は無償とするとの規定は、授業料のほかに、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用まで無償としなければならないことを定めたものと解することはできず、国が保護者の教科書等の費用の負担についても、これをできるだけ軽減するよう配慮、努力することは望ましいところであるが、それは、国の財政等の事情を考慮して立法政策の問題として解決すべき事柄であるとした。
3. A.D
89
No.92 社会権に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 厚生労働大臣が、生活保護基準を改定し、生活保護法に基づく生活扶助につき定められていた70歳以上の高齢者を対象とする老齢加算制度を廃止する場合には、老齢加算が支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者の期待的利益について特別な配慮をすべきであり、厚生労働大臣がかかる特別な配慮をせずに判断を行ったときは、その裁量権の範囲を逸脱するものであるとするのが判例である。 イ. 個人の基本的自由を認め、その人格の独立を国政上尊重すべきものとしている憲法の下においては、子供が自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入、例えば、誤った知識や一方的な観念を子供に植え付けるような内容の教育を施すことを強制することは、憲法第26条、第13条の規定上からも許されないと解されるから、国は、子供の教育内容についてこれを決定する権能を有しないとするのが判例である。 ウ. 憲法第26条第2項後段にいう義務教育の無償とは、授業料不徴収の意味と解するのが相当であり、授業料のほかに、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用まで無償としなければならないことを定めたものと解することはできないとするのが判例である。 エ. 労働組合が、地方議会議員の選挙に当たり、統一候補を決定し、組合を挙げて選挙運動を推進している場合において、統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し、立候補を思いとどまるように勧告又は説得することは、組合の統制権を超えるものとして違法であるとするのが判例である。 オ. 労働基本権は、国との関係で労働者に保障されるだけでなく、使用者対労働者という関係において労働者の権利を保護することも目的としている。したがって、労働基本権の保障は私人間の関係にも直接適用される。
4. ウ、オ
90
No.93 社会権に関するア〜エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみを挙げているのはどれか。 ア. 親は、子どもの教育に対する一定の支配権、すなわち子女の教育の自由を有すると認められ、また、私学教育における自由や普通教育における教師の教授の自由も、それぞれ限られた一定の範囲において認められる。 それ以外の領域においては、一般に社会公共的な問題について国民全体の意思を組織的に決定、実現すべき立場にある国は、国政の一部として広く適切な教育政策を樹立、実施すべく、また、し得る者として、憲法上は、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有する。 イ. 高等学校の教育は、高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とするものであり、高等学校においても、教師は依然生徒に対し相当な影響力、支配力を有しているが、生徒の側には、教師の教育内容を批判する能力が備わっており、教師を選択する余地もあるため、国が定立する高等学校教育の内容及び方法について遵守すべき基準は必要最低限とすべきであって、高等学校の教師には、教育の具体的内容及び方法につき広い裁量が認められる。 ウ. 地方議会議員の選挙に当たり、労働組合が、その組合員の居住地域の生活環境の改善その他生活向上を図る目的で、その利益代表を議会に送り込むための選挙活動をすること、そして、その一方策として、いわゆる統一候補を決定し、組合を挙げてその選挙運動を推進することは、組合の活動として許されないわけではないが、立候補の自由は、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあり、自由かつ公正な選挙を維持する上で極めて重要であるため、労働組合が、統一候補以外の組合員で立候補しようとする者に対し、立候補を思いとどまるように勧告し又は説得することは、組合の統制権の限界を超えるものとして違法である。 エ. 政党や選挙による議員の活動は、各種の政治的課題の解決のために労働者の生活利益とは関係のない広範な領域にも及ぶものであるから、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかは、投票の自由と表裏をなすものとして、組合員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断ないしは感情等に基づいて自主的に決定すべき事柄であり、したがって、労働組合が、組合員に、臨時組合費として、選挙に際し特定の立候補者支援のためにその所属政党に寄付する資金の支払を強いることは許されない。
2. ア、エ
91
No.94 社会権に関するア〜エの記述のうち、妥当なもののみを挙げているのはどれか。ただし、争いのあるものは判例の見解による。 ア. 国民年金法が、20歳以上の学生について、国民年金の強制加入被保険者として一律に保険料納付義務を課すのではなく、任意加入を認めて国民年金に加入するかどうかを当該学生の意思に委ねることとした措置は、著しく合理性を欠くものとして憲法第25条に違反する。 イ. 厚生労働大臣が、生活保護法による保護の基準を改定し、原則として70歳以上の者を対象とする老齢加算を廃止することは、老齢加算が支給されることを前提として現に生活設計を立てていた被保護者の期待的利益を害することとなるため、裁量権の範囲を逸脱し違法である。 ウ. 憲法第26条第2項が規定する義務教育の無償とは、授業料不徴収の意味と解するのが相当であり、授業料のほかに、教科書、学用品その他教育に必要な一切の費用まで無償としなければならないことを定めたものと解することはできない。 エ. 憲法第28条は労働基本権を保障しており、そのうち団体行動権とは、労働者の団体が労働条件の実現を図るために団体行動を行う権利であり、その中心は争議行為である。労働組合が同条により保障される正当な争議行為を行った場合には、刑事責任だけに限られず、正当な争議行為によって生じた損害についての民事上の債務不履行責任や不法行為責任も免責される。
5. ウ、エ
92
No.96 次の記述は、選挙の原則に関する教授と学生との問答である。正しい発言をしている学生の組合せとして、最も適当なのはどれか(争いのあるときは、判例の見解による。)。 教授) 選挙の原則には、どのようなものがありますか。 学生A) 平等選挙があります。これは、財力、教育、性別等を選挙権の要件としないという原則であり、憲法は、成年者による平等選挙を保障する旨規定しています。 学生B) 憲法は、被選挙権についても、衆議院及び参議院の議員の資格を人種、信条、性別等によって差別してはならない旨規定しています。また、判例は、いわゆる立候補の自由につき、選挙権の自由な行使と表裏の関係にあるものとして、憲法の保障する重要な基本的人権の一つであるとしています。 教授) ほかにはどのような原則がありますか。 学生C) 秘密選挙があります。これは、誰に投票したかを秘密にする原則をいいます。秘密選挙については、憲法上の明文規定はありませんが、公職選挙法において具体的な規定が置かれています。 学生D) また、選挙人が公務員を直接に選挙する直接選挙という原則があります、憲法は、衆議院及び参議院の議員の選挙につき、直接選挙を採用する旨明文で規定していませんが、同選挙につき、既に選挙されて公職にある者が選挙人となるという複選制を採ることは、国民意思との関係が間接的になりすぎ、違憲となると解されています。
4. B.D
93
No.97 参政権に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
3. 憲法は立候補の自由について直接には規定していないが、立候補の自由も憲法の保障する基本的な人権の一つと解すべきであり、労働組合が、組合の方針に反して立候補しようとする組合員に対し、立候補を取りやめることを要求し、これに従わないことを理由に当該組合員を統制違反者として処分するのは、組合の統制権の限界を超えるものであり、違法である。
94
No.98 法定手続の保障等に関するア〜エの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。 ア. 裁判において、起訴された犯罪事実のほかに、起訴されていない犯罪事実をいわゆる余罪として認定し、実質上これを処罰する趣旨で量刑の資料に考慮し、そのため被告人を重く処罰することは憲法第31条等に反し許されないが、量刑のための一情状として、いわゆる余罪をも考慮することは、必ずしも禁ぜられるところではない。 イ. 憲法第31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、財産や自由の剥奪ないし制限といった不利益は、行政処分によって課されることも十分あり得ることにかんがみると、行政手続にも刑事手続と等しく同条による保障が及び、その相手方に対し、事前の告知、弁解、防御の機会を与える必要がある。 ウ. 関税法において、同法所定の犯罪に関係のある船舶、貨物等が被告人以外の第三者の所有に属する場合においてもこれを没収する旨規定しながら、その所有者たる第三者に対し、告知、弁解、防御の機会を与えるべきことを定めておらず、また、刑事訴訟法その他の法令においても何らかかる手続に関する規定を設けていないときに、関税法の規定により第三者の所有物を没収することは、憲法第29条及び第31条に違反する。 エ. 刑罰法規があいまい不明確のゆえに憲法第31条に違反するかどうかは、通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうかによって決定され、罰則を伴う条例が、集団行進等について抽象的に「交通秩序を維持すること」とのみ定めているにすぎない場合は、その意味を一般人が理解することは困難であり、同条に違反する。
3. ア、ウ
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No.99 日本国憲法に規定する人身の自由に関する記述として、最高裁判所の判例に照らして、妥当なのはどれか。
3. 刑事被告人が迅速な裁判を受ける権利を保障する憲法の規定は、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定である。
96
No.100 人身の自由に関するア〜オの記述のうち、妥当なもののみを全て挙げているのはどれか。 ア. 憲法第31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と規定しているが、これは手続が法律で定められることを要求するものであり、法律で定められた手続が適正であることまでを要求するものではないと一般に解されている。 イ. 憲法第33条は、「何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となってゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。」と規定している。このため、たとえ厳格な制約の下に、罪状の重い一定の罪のみについて、緊急やむを得ない場合に限り、逮捕後直ちに裁判官の審査を受けて逮捕状を求めることを条件としても、令状なく緊急に被疑者を逮捕することは認められないとするのが判例である。 ウ. 憲法第37条第1項は、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」と規定しているが、個々の刑事事件について、審理の著しい遅延の結果、被告人の迅速な裁判を受ける権利が害されたと認められる異常な事態が生じた場合であっても、裁判所は、これに対処すべき具体的規定がなければ、その審理を打ち切るという非常救済手段を用いることはできないとするのが判例である。 エ. 旧所得税法に定める検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることを一般的要件としていないところ、検査の性質が刑事責任の追及を目的とするものではなく、所得税の公平確実な賦課徴収を図るという公益上の目的を実現するため不可欠のものであるとしても、強制的に行われ、検査の結果として刑事責任の追及につながる可能性があることから、憲法に定める令状主義に反するとするのが判例である。 オ. 刑事事件における証人喚問権は、憲法上明文で認められている権利であるが、裁判所は、被告人又は弁護人からした証人申請に基づき全ての証人を喚問し、不必要と思われる証人までをも全て尋問する必要はなく、当該事件の裁判を行うのに必要適切な証人を喚問すればよいとするのが判例である。
2. オ
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No.101 日本国憲法に規定する人身の自由に関する記述として、判例、通説に照らして、妥当なのはどれか。
5. 最高裁判所の判例では、憲法の定める法定手続の保障が、行政手続に及ぶと解すべき場合であっても、一般に行政手続は刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を常に必ず与えることを必要とするものではないとした。
98
No.102 日本国憲法に規定する人身の自由に関する記述として、通説に照らして、妥当なのはどれか。
5. 憲法の定める法定手続の保障は、手続が法定されることのみならず、その法定手続が適正でなければならないこと、実体もまた法律で定められなければならないこと、及び法律で定められた実体規定も適正でなければならないことが必要である。
99
No.103 人身の自由に関する次の記述のうち、判例に照らし、妥当なのはどれか。
5. 下級審における無罪又は有罪判決に対し、検察官が上訴をして有罪又はより重い刑の判決を求めることは、被告人を二重の危険にさらすものではなく、憲法第39条に違反して重ねて刑事上の責任を問うものでもない。
100
No.104 基本的人権の保障に関するア〜オの記述のうち、判例に照らし、妥当なもののみをすべて挙げているのはどれか。 ア. 喫煙の自由は、憲法第13条の保障する基本的人権の一つに含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではなく、未決勾留により拘禁された者に対し喫煙を禁止する旧監獄法施行規則の規定は、同条に違反しない。 イ. 憲法第47条は、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は法律でこれを定めると規定しており、その具体化は立法府の裁量に広く委ねられている。したがって、国民の選挙権又はその行使に対する制限は、当該制限が著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ない場合を除き、憲法第15条に違反しない。 ウ. 外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として勘酌されないことまでの保障を含むものではない。 エ. 憲法第21条第2項にいう検閲は、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することをその特質としてそなえるものを指し、公共の福祉を理由とする例外を除き、原則として禁止される。 オ. 憲法第31条の定める法定手続の保障は、刑事手続に関するものにとどまらず、原則として行政手続に関するものについても等しく及ぶものと解すべきであり、また、同条による保障が及ばないと解すべき例外的な場合であっても、同条の法意に照らし、行政処分により制限を受ける権利の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量した上で、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかを決定すべきである。
2. ア、ウ