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植物病原学
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  • 1

    ウイルスの定義を答えよ

    ウイルスはDNA・RNAのどちらか一方を核酸として持ち、1から数種類のタンパク質、脂質タンパク質に覆われている。ウイルスは核酸を細胞から細胞へと伝える。複製のために、宿主のDNA合成系、転写系、タンパク質合成系を利用。核酸の変異・組み換えにより複数の変異株、組み換え体を生じる。

  • 2

    ウイルスが植物に感染した際に病徴が現れるメカニズムについて答えよ。

    ウイルスは侵入・増殖の際に宿主植物の核酸合成系・タンパク質合成系に作用し、これが植物側の正常な代謝反応・細胞分裂を阻害する。

  • 3

    ウイルスの外部病徴について答えよ。

    モザイク:本来の緑色と退緑色の混在, 斑紋:本来の緑色と退緑色がはっきりと区別できる。, 葉脈透過、葉脈黄化:葉脈のみが白色化・黄化, 条斑:本来の緑色と退緑色が混在し、葉脈に沿って細長くのびる。, 輪点:葉あるいは果実上に現れる褐色の同心円状の病斑, クロローシス:葉緑体の異常により退緑し、白色あるいは灰白色になる。, ネクローシス:葉の細胞の壊死により茶色になる壊疽。

  • 4

    葉に現れ、変形を伴う病徴

    葉巻、巻葉:前者は葉脈を中心に筒状にまく場合を指し、後者は方向が一定ではない場合を指す。, ひだ葉:葉脈部を中心に葉がひだのように盛り上がること。, 腫瘍:盛り上がったこぶ状構造を伴う奇形。, 糸葉:葉身部が未発達となり、葉脈部分のみが成長し糸状になる。, 漣葉:葉の表面に細かく凹凸。, 縮葉:葉全体が縮れて、しわになる。, 上偏成長:葉の上が下よりも偏って成長するため葉が巻く。

  • 5

    内部病徴における封入体の種類を4つ答えよ。

    結晶状封入体:多数のウイルス粒子が細胞質内で結晶状構造を形成。, 顆粒状封入体:ウイルス粒子に加えて宿主細胞内小器官とその破片の集合体。, 細胞質内封入体:Ⅰ型は風車・巻物・束、Ⅱ型は風車、束、層板、Ⅲ型は、風車、束、巻物、層板、Ⅳ型は風車、束、巻物、短く湾曲した層板。, 核内封入体:核内に2種類のウイルスタンパクから構成される結晶状の封入体を形成。

  • 6

    ピロプラズムについて説明せよ。

    細胞質内に形成される不整形で、電子顕微鏡では濃色にみられる構造物、ウイルス粒子の形成の場。

  • 7

    病徴型とは何か

    同一の宿主植物における反応が異なるため、病徴によって区別することができる系統。

  • 8

    ウイルスの潜在感染とマスキングの違いについて

    潜在感染とは、宿主植物がウイルスに感染していたとしても、外観から病徴が認められなかった場合を指し、マスキングとはウイルスによる病徴が一時的に肉眼では確認できなくなることを指す。

  • 9

    ウイルス精製の原理について説明せよ。

    ウイルスの精製とは、感染植物組織から病原性のあるウイルス粒子のみを単離することであり、一般的に次の2つに要約される。①ウイルスがタンパク質サブユニットに覆われていることから、タンパク質の単離方法に従っている、②ウイルス粒子の形や大きさが細胞内顆粒や細胞タンパク質からウイルスを分離するのに使われる。

  • 10

    ウイルス精製用植物に接種するウイルス源に変異体ウイルスなどが混在している場合の対処法について述べよ。

    単一病斑分離法を実施する。この方法では、局部病徴を形成する植物にウイルスを接種して、形成される局部病徴を1個切り取り、1滴の緩衝液と共にすりつぶして再び局部病斑を形成する植物に接種する。これを繰り返すことにより、単一のウイルス系統が得られる。

  • 11

    ウイルスの精製方法で一般的なものを2つ述べよ。

    1.感染葉の摩砕 緩衝液内で感染葉を摩砕してウイルス粒子を抽出する。アルファルファモザイクウイルスなど一部のウイルスでは、感染性や構造維持のためにカルシウムイオンなどの2価のカチオン陽イオンを必要とする。

  • 12

    ウイルスの濃縮法を3つ答えよ。

    ウイルスの濃縮法として高速遠心、ポリエチレングリコール、密度勾配遠心が挙げられる。高速遠心では、40000~100000gで1,2時間程度遠心することでウイルスが沈殿する。この方法は宿主細胞由来の低分子を除去することにも有効である。 ポリエチレングリコールでは、濃度やイオン強度を調製して、ウイルスを沈殿させる。 密度勾配遠心法には、速度ゾーン密度勾配遠心、平衡密度勾配遠心の2つが挙げられる。前者はあらかじめ作製したショ糖勾配にウイルス溶液を重ねて、40000~100000gで1,2時間遠心する方法である。この時、ウイルス粒子は沈降速度に応じて沈降帯を形成。後者は、塩化セシウムなどの無機塩類を用いて長時間遠心を行う。これによりウイルス粒子は密度が同じところに静止する。

  • 13

    ウイルスの定量法について説明せよ。

    ウイルスの定量として、植物への感染性を測定する生物的定量法、ウイルス精製試料への紫外線吸光度測定、血清学的手法が行われる。 生物的定量法として、局部病斑法が行われる。ここでは、接種葉に局部病斑を生じる宿主植物を用いる。例えば、タバコモザイクウイルスに対してはN因子を持つタバコを、キュウリモザイクウイルスに対してはササゲなどが用いられる。応用例として、半葉法と対葉法があり、半葉法では、葉脈を境に左右に濃度既知と未知のウイルス溶液を接種する方法である。対葉法では、初生葉(双葉)に濃度既知と濃度未知のウイルスをそれぞれ接種して局部病斑の数を比較する方法である。 紫外線吸光度測定では、純度の高いウイルス試料のみ使用可能である。核タンパク質である植物ウイルスは波長260~265㎚に吸収極大、240~245nmに吸収極小を示す。予め吸光度260㎚の検量線を作製し、ウイルスのmgと合わせてウイルス濃度を算出。ここでは、ウイルスの吸光係数は中性ウイルス溶液におけるウイルス濃度1mg/mlの波長260㎚での吸光度を示す。 血清学的診断法には、ELISA法や二重免疫沈降法が用いられる。

  • 14

    ウイルスが持つ核酸成分

    一本鎖RNA(直鎖), 二本鎖RNA(直鎖), 一本鎖DNA(環状), 二本鎖DNA(環状)

  • 15

    ウイルス粒子のウイルスゲノムの分布様式について説明せよ

    単一の核酸分子の形で存在する単一ゲノムと2種以上の分節の形で存在する分節ゲノム

  • 16

    分節ゲノムの種類と概要について説明せよ

    二粒子分節ゲノム:コモウイルス, 三粒子分節ゲノム:ブロモウイルス, 単粒子分節ゲノム:分節ゲノムが一つのウイルス粒子内に存在する

  • 17

    ウイルス粒子の構造について説明せよ

    核酸としてDNAあるいはRNAを持ち、外側は外被タンパク質(カプシド)に包まれている。カプシドにはらせん型と正二十面型が存在する。らせん型はタンパク質サブユニットが軸に沿ってらせん型に配置されており、正二十面型はサブユニットが集合した形態的単位(カプソメア)が正二十面体の形で配列したものである。

  • 18

    ポリプロテインについて説明せよ

    RNAウイルスのみで見られ、ウイルスが持つ複数の機能タンパクが最初融合タンパクとして発現し、プロテアーゼによる切断を受け、個々の機能を持ったウイルスタンパクへと成熟する。 ポティウイルス

  • 19

    サブゲノムについて説明せよ

    RNAウイルスで見られる反応機構。ウイルスの複製時に2つ以上のORFを含むRNAの途中から1つ以上のORFを持つRNAがRdRPにより転写される。サブゲノムRNAを転写することにより、下流のORFの発現が可能。 サブゲノムの転写は、ゲノムRNAのサブゲノミックプロモーターをRdRPが認識することで開始される。 サブゲノムRNAの合成機構として、インターナルイニシエーションとプレマチュアターミネーションの2つが挙げられる。 インターナルイニシエーションは、プラス鎖ゲノムRNAから合成された完全長マイナスRNA上のサブゲノムプロモーターからサブゲノムRNAが転写される。 一方でプレマチュアターミネーションでは、不完全長のマイナスRNAを鋳型としてサブゲノムRNAを合成する。

  • 20

    インターナルイニシエーションについて説明せよ

    RNAウイルスで見られ、IRESと呼ばれるRNA配列にリボソームや宿主翻訳関連因子が結合し、下流のORFが発現する。2つ以上のORFを持つゲノムRNAにおいて下流側のORFを発現する場合やキャップを持たないRNAから発現する際に用いられる。

  • 21

    リーキースキャニングについて説明せよ

    リボソームがウイルスRNA5’付近の開始コドンを読み過ごし、下流の開始コドンから翻訳を開始する。 2つのAUG開始コドンが同じフレーム上にある場合は、N末端が異なる2つのタンパク質が、異なるフレーム上にある場合は、完全に異なる2つのタンパク質が合成される。

  • 22

    リ・イニシエーションについて説明せよ

    カリフラワーモザイクウイルスなどのポリシストロニックmRNAを翻訳する際に、ウイルス由来の翻訳アクチベーター(TAV)と宿主由来のリイニシエーションサポートタンパク質(RISP)、タンパク質キナーゼTOR、翻訳開始因子eIF3の存在下で、リボソームが1つのORFの翻訳を終了した直後に3’側に存在する次のORF開始コドンを認識して翻訳を再開する。

  • 23

    リボソームシャントについて説明せよ

    リボソームがmRNAの5’キャップ構造に結合して、mRNA上を移動する際に、途中の非翻訳領域を飛び越して下流の最初のタンパク質翻訳領域の開始コドンから翻訳を開始する。 全長mRNAが比較的長いカリモウイルス科に属するウイルスの5’末端非翻訳領域上で見られる。 5'末端からスキャニングしていたリボソームがドナーサイトからアセプターサイトに移動し、その間には巨大なヘアピン構造が形成。

  • 24

    リードスルーについて説明せよ

    リボソームがORFの終止コドンを読み過ごすことで、下流のORFが融合タンパクとして発現する。宿主のサプレッサーtRNAにより終始コドンがアミノ酸として認識される。

  • 25

    フレームシフトについて説明せよ。

    リボソームが翻訳の途中で別のORFに移動することにより、C末端の異なる2種類のタンパク質が合成される。 翻訳フレームシフトが起こる頻度は、mRNA上のスリップ配列の塩基配列とその後に続くRNAステムループ構造に左右される。

  • 26

    クロスプロテクションとRNAサイレンシングの関係性について述べよ。

    クロスプロテクションとは、ウイルスに対して抵抗性を持つ植物が近縁のウイルスに対しても抵抗性を発揮する現象をさす。植物の抵抗性誘導には、RNAサイレンシングが関わっているとされ、ウイルス由来のsiRNAあるいはmiRNAを記憶し、RISC複合体が相補的なウイルスmRNAを切断分解、あるいはメチル化による転写抑制を行うことが予想される。

  • 27

    ウイルス複製の実験法について説明せよ。

    ①植物体を用いる ウイルスに感染した植物を用いて、接種した葉とその後展開する上位葉でのウイルス量、病徴発現を定量化する。 ただし一次感染細胞で増殖したウイルスは隣接細胞へと移行するため、複製のプロセスは一致しない。 ②プロトプラストを用いる 植物細胞から細胞壁を除いたプロトプラストにウイルス粒子、ゲノム核酸を感染。複製過程が一致しており、ウイルスの複製を時間経過とともに詳細に調べることができる。 ③酵母を用いる BMVやTBSVでは、酵母にプラスミドベクターを用いてウイルス複製成分を導入すると、植物細胞に感染したときと同じようにウイルスRNAが発現する。酵母は全ゲノムが明らかにされており、変異体の作製も容易なため、ウイルス複製に関わる宿主因子の役割を明らかにするために用いられる。

  • 28

    In vitoro無細胞系におけるウイルス複製実験について

    ①部分純化酵素 RNAウイルスでは、ウイルス感染葉、プロトプラストを摩砕し、分画遠心分離にかけると細胞膜画分で感染特異的なRNA合成活性が検出される。細胞膜画分を界面活性剤で可溶化し、イオン交換カラムにて精製すると鋳型依存性、鋳型特異性を持った複製酵素画分が得られる。 ここでは、ウイルスRNAを鋳型として効率よくマイナス鎖の合成が起きるため、RNA合成開始、伸長反応の解析に用いられる。 ②細胞抽出液 液胞を除いたBY2培養細胞のプロトプラスト細胞抽出液(BYL)にウイルスゲノムRNAを添加するとウイルスタンパク質の翻訳とRNA複製が起こる。ウイルス翻訳機構と複製機構を同時に解析するときに用いられる。

  • 29

    ウイルス感染の過程について説明せよ。

    ウイルスは傷口侵入、媒介昆虫の吸汁行為によって侵入し、エンドサイトーシスあるいはピノサイトーシス機構により植物細胞内に取り込まれる。植物細胞内にてウイルス粒子からゲノム核酸が放出される脱外被が起こる。

  • 30

    ウイルスmRNAの合成と、タンパク質への翻訳機構について説明せよ。

    プラス一本鎖RNAウイルスは、ウイルス粒子から放出されたRNAを鋳型として、直接タンパク質を翻訳することができる。 一方で、DNAウイルス、二本鎖RNAウイルス、マイナス一本鎖RNAウイルスは、ゲノムからmRNAを転写し、翻訳に用いる。 DNAウイルスはDNA依存RNAポリメラーゼの働きにより、mRNAを転写する。二本鎖RNAウイルス、マイナス一本鎖RNAウイルスは、RNA依存RNAポリメラーゼを用いてmRNAを転写する。 キャップ構造とポリA尾部を持つRNAウイルスは真核生物mRNAと同じように翻訳される。キャップ構造を持たないRNAウイルスは5’末端にVPg結合タンパクを持つ。キャップ構造、VPgを持たないRNAウイルスは3’非翻訳領域にリボソームと翻訳因子を誘導するための塩基配列、RNA構造を持つ。

  • 31

    プラス一本鎖RNAウイルスの複製機構について説明せよ。

    RNAポリメラーゼがプラス一本鎖RNAを鋳型として、相補的なマイナス一本鎖RNAを合成。合成されたマイナス一本鎖RNAを用いてプラス一本鎖RNAを合成する。

  • 32

    プラス一本鎖RNAの複製モデルを3つ答えよ。

    ①RNAポリメラーゼがプラス一本鎖RNAの3’末端プロモーターを認識し、相補的なマイナス一本鎖RNAを合成する。合成が終了した後、マイナス一本鎖はプラス一本鎖RNAから離れる。次にRNAポリメラーゼはマイナス一本鎖RNAの3’末端プロモーターに結合し、ゲノムであるプラス一本鎖RNAを合成する。 ②マイナス一本鎖RNAはプラス一本鎖RNAから解離することなく、二本鎖RNAを合成する。RNAポリメラーゼは二本鎖RNAの内、マイナス一本鎖RNAを鋳型として、プラス一本鎖RNAを合成する。プラス一本鎖RNAの合成は、既存の配列に置き換わる形で行われる。 ③二本鎖RNAが合成され、新たにプラス一本鎖RNAが合成される際も、既存の配列は維持される。

  • 33

    ウイルスが持つRNAポリメラーゼに含まれる各ドメインについて説明せよ。

    RNA依存RNAポリメラーゼ:RNAを鋳型として新たにRNAを合成する, HEL:ヘリカーゼ活性。二本鎖RNA,一本鎖RNAに形成される高次構造を解きほぐし、RNA合成反応を促進する。, MT:5’末端にキャップ構造を持つウイルスに特異的なドメイン。Sーアデノシルメチオニンにより、GTPのグアニン7位をメチル化する。

  • 34

    RNAサイレンシングサプレッサーの種類と抑制機構

    HC-Pro:ポティウイルス、二本鎖siRNA,miRNAに結合し、RISC複合体への取り込みを阻害する。, P19:トムプスウイルス、21塩基の二本鎖siRNAに結合し、RISC複合体への取り込みを阻害する。, P20、21、22、23、CP:クロステロウイルス、P21が二本鎖siRNA、miRNAに結合し、RISCへの取り込み阻害。 20は、CPはサイレンシングシグナルの全身意向を阻害する。 20、23は局所的にサイレンシング機構を抑制。, p27、p88:RCNMV サイレンシング因子を複製開始複合体として利用する, 2b:キュウリモザイクウイルス、AGO1と直接作用して、切断活性を阻害する。

  • 35

    混合感染による病徴激化

    PVXとポティウイルスの混合感染。ポティウイルスが持つRNAサイレンシングサプレッサーHC-Proが二本鎖siRNA,miRNAに結合して、RISC複合体への取り込みを阻害することにより、RNAサイレンシングを抑制。これにより、病徴が激化する。

  • 36

    複数のウイルスを同時に検出する際に用いられる方法とプライマー設計における注意点。

    マルチプレックスPCR ①プライマーの特異性 ターゲット配列に高い相補性を持ち、プライマー同士は相補性ではない必要がある。また、ゲノム内の他の領域に非特異的に結合することを防ぐ必要がある。 ②プライマーのアニーリング温度 複数のプライマーを同一の反応条件で増幅させるために、アニーリング温度を一定にする。 ③プライマー間の相互作用 ダイマー二量体形成や自己アニーリングを防ぐ ④プライマー濃度 濃度が高いと非特異的な増幅が増える。反対に濃度が低いと目的の遺伝子を効率的に増幅させることが出来ない。

  • 37

    弱毒ウイルスの選抜方法について説明せよ。

    弱毒ウイルスとは、植物に全身感染しても病徴を生じない、あるいは軽度な病徴のみを生じる系統・分離株であり干渉効果によるウイルスの防除に用いられる。 選抜法としては、自然環境からの選抜に加えて、通常より高温・低温条件下で生育したウイルス感染植物から選抜する温度処理、亜硝酸ナトリウム溶液処理や紫外線処理によりウイルスに突然変異を誘導して選抜する方法、病徴を軽減するサテライトRNAを付加する方法などが挙げられる。

  • 38

    植物が持つ抵抗性遺伝子産物を分類せよ。

    NB-LRRクラス NB(ヌクレオチド結合部位)とLRR(ロイシンリッチリピート)の両ドメインを持つタンパク質群, Pto・Xa21クラス Ptoはセリン・スレオニンキナーゼであり、細胞質に存在する。Xa21はこれに加えて細胞外LRRと膜貫通ドメインを持ち、細胞膜上に存在する。, Cfクラス 細胞外LRRを持つ膜貫通型タンパク質、トマトの葉かび病に対するCf-2、5,4,9

  • 39

    植物の抵抗性タンパク質は、エフェクターをどのようにして認識するか。

    ①レセプターリガンド型 NB-LRRタンパクがレセプターであり、エフェクターがリガンドとして働く。 アマとアマさび病菌を例にすると、アマが持つ抵抗性遺伝子LはLRRドメインにて直接非病原力遺伝子AvrL567を認識するが。病原菌側は非病原力タンパクの表面に変異を入れることで認識を逃れている。 ②ガード型 トマト斑葉病細菌が合成するエフェクターAvrRpm1、AvrBは標的タンパク質RIN4のリン酸化を、AvrRpt2はRIN4の切断を行う。これに対して植物側のNB-LRR型抵抗性タンパク質RPM1,RPM2はRIN4のリン酸化・切断を認識して活性化する。

  • 40

    植物が病原体の共通分子パターンPAMPsを認識する過程について説明せよ。

    シロイヌナズナでは、真菌由来のキチンをPRRであるCERK1が認識してPTIを誘導する。同様に細菌フラジェリンflg22はシロイヌナズナのPRRであるFLS2に認識されて、PTIを誘導する。 FLS2は細胞外LRRと膜貫通ドメイン、セリンスレオニンキナーゼドメインを持つ。 FLS2がflg22を認識すると、共受容体BAK1がFLS2と複合体を形成。両者がリン酸化されてシグナル伝達系が活性化される。 FLS2,CERK1は活性化されると受容体様細胞質キナーゼであるBIK1をリン酸化し、下流にシグナル伝達を行う。

  • 41

    デコイモデルについて説明せよ。

    トマト葉かび病菌のエフェクターであるAvrPtoA、BはシロイヌナズナのPRRであるFLS2に結合してその機能を阻害している。 トマトが持つPtoはFLS2のセリンスレオニンキナーゼドメインの囮(デコイ)として機能している。 NB-LRRタンパク質は、PTIの因子を直接ガードするのではなく、そのデコイを監視している。

  • 42

    植物が持つウイルス抵抗性を分類し、其れに関わる抵抗性遺伝子について説明せよ。

    非宿主抵抗性 ウイルスが植物に感染しない。その原因としては、ウイルス翻訳、複製に必要な宿主因子が欠損あるいは変異している。 植物がウイルス翻訳・複製阻害因子を持つ場合、極度抵抗性という。 ToMv(トマトモザイクウイルス)に対するTm-1はRdRpに作用してウイルスRNAの複製を阻害する。 PVXジャガイモXウイルスに対するRx1,2はNB-LRR型の抵抗性タンパク質をコードしており、ウイルスRNAの複製を阻害する。 翻訳開始因子eIF4E、4Gの潜性対立遺伝子上に変異があるため、潜性ホモ植物体においてウイルスRNA、翻訳、複製を阻害する。, サブリミナル感染 ウイルスが感染しても、隣接細胞へと移行することが出来ない。 CMVに対するcum1,2遺伝子はeIF4E、4Gの潜性変異に関わり、ウイルスMP(移行タンパク質)の翻訳を特異的に阻害する。, 局在感染 過敏感反応による感染細胞の壊死 NB-LRR型抵抗性タンパク質をコードしており、ウイルスのRdRp、CP(外被タンパク)、VPg、MP、NSP(核シャント)、IP(封入体タンパク質)を認識し、ROS、NOの生産、MAPKカスケード、SA、JA、ETによるシグナル伝達を経て最終的に過敏感反応、全身獲得抵抗性を誘導する。 長距離移行阻害 TEV(tobaco etch virus)に対するシロイヌナズナのRTM1、RTM2。それぞれレクチン、熱ショックタンパク質をコードしている。, 耐性 ウイルスが感染しても、ほとんど病徴を生じない潜在感染 RNAサイレンシングに関わる因子

  • 43

    植物が行うRNAサイレンシングについて以下の用語を必ず用いて説明せよ。 secondary siRNA、HEN1、RDR、DCL2,DCL4、21nt-siRNA、22nt-siRNA、ta-siRNA、phasiRNA

    植物のRNAサイレンシング誘導因子としてRNAウイルスの複製中間体、mRNAステムループ、DNAウイルスのmRNAステムループ、ウイロイドのゲノム二本鎖RNAが挙げられる。 宿主のRdRpによって二本鎖RNAが合成。 植物はこれらのサイレンシング誘導因子をDCLによって切断し、二本鎖siRNAを合成。通常、DCL4が作用し、21nt-siRNAを合成するが、DCL4が働かない場合には、DCL2によって22nt-siRNAが合成される。メチルトランスフェラーゼHEN1による3’末端のメチル化、HELによる一本鎖への解離を経て、一次siRNAが合成。RNA分解酵素活性を持つAGOと結合してRISC複合体を形成する。RISC複合体はsiRNAに相補的なmRNAを切断、分解する。 分解されたRNAは宿主のRdRpによって再び二本鎖RNAを合成し、DCLによって切断されてta-siRNAやphasiRNAなどのsecondary siRNAを生じる。secondary siRNAは感染細胞内のRNAサイレンシングシグナルを増強すると共に、プラズモデスマータを介して周辺細胞に移行。増幅を重ねながら、全身獲得抵抗性を誘導する。 ta-siRNAやphasiRNAはmiRNAの標的RNAを鋳型として鋳型として、RDRが合成する二本鎖RNAをDCL4が切断することによって生じる21ntの二次的siRNAである。

  • 44

    グラム陰性細菌が持つタンパク質分泌装置について説明せよ。

    グラム陰性細菌は、植物細胞の内膜だけでなく、外膜を通過させる必要があるため、6種類の複雑なタンパク質分泌装置を持っている。この内、タイプ2,5は2段階に分けてタンパク質を分泌し、残りの1,3,4,6は内膜・外膜を貫通して1段階でタンパク質を分泌する。

  • 45

    タイプ1,3,4,6のタンパク質分泌装置について説明せよ。

    タイプ1 内膜、外膜、ペリプラズムにそれぞれタンパク質分泌に関わるタンパク質が存在。内膜には、ABCトランスポーター、外膜にはOMP、ペリプラズムにはABCトランスポーターとOMPを結び付けるMFPが存在する。, タイプ3 hrp遺伝子群によってコードされているトンネル状の構造物でエフェクターを直接送り込む 実験、活用例, タイプ4 アグロバクテリウムで発見。Vir領域がATPアーゼ活性により、ATP分解のエネルギーを利用して、T-DNAを植物細胞に組み込む。 遺伝子組み換え実験に利用。, タイプ6 細菌同士の競合

  • 46

    タイプ2,5のタンパク質分泌装置について説明せよ。

    タイプ2 軟腐病菌において複数の細胞壁分解酵素の分泌に関与している。, タイプ5 分泌にエネルギーを必要としない。

  • 47

    TMVについて封入体やタンパク質翻訳戦略、植物との相互作用について網羅的に説明せよ。

    TMVは結晶状封入体と顆粒状封入体を持つ。結晶状封入体は、針状、多角体であり、顆粒状封入体はウイルス粒子、ER(小胞体)膜の破片、リボソーム、微小管などの宿主細胞内小器官の破片の集合体から構成される。 TMVはプラス一本鎖RNAウイルスのトバモウイルス属に分類される。 5’キャップ構造を持ち、3’末端にはtRNA様構造を持つ。タンパク質翻訳戦略として、リードスルーにより126KDaタンパク質から183KDaのタンパク質を合成することやサブゲノム、インターナルリボソームエントリーを用いる。 移行タンパク質、外被タンパク質は2種類のサブゲノムRNAが作られることによって翻訳される。アブラナ科系のTMVのCPは、サブゲノムRNAからの翻訳以外にゲノムRNAから直接インターナルリボソームエントリーによって翻訳される。 また、複製関連宿主因子として、翻訳開始伸長因子のeEFIA/eEFIBを用いる。 植物は抵抗性遺伝子Nを持ち、過敏感反応により抵抗性を発揮する。弱毒株としては、L11Aが知られている。 植物はRNAサイレンシング機構により、TMVの増殖を抑制するが、TMVはRSSとして126Kタンパクを用いて、siRNAに結合しRISC複合体への取り込みを阻害する。

  • 48

    TMVの感染機構と植物側の抵抗性応答について説明せよ。

    TMVは細胞内に侵入したのち、脱外被してゲノムRNA・サブゲノムRNAを放出。RdRp、MP、CPへと翻訳する。 RdRpとHFr(複製関連宿主因子)が作用してゲノムRNAを複製。CPが結合することでウイルス粒子が完成する。 MPが結合した新生ゲノムRNAがHFm(移行関連宿主因子)によりプラズモデスマータを介して隣接細胞へと移行する。 植物側の抵抗性応答として、抵抗性遺伝子Nを持つ植物では、レセプターに126Kタンパク質が結合し、シグナル伝達を経てPCD(プログラム細胞死)遺伝子群を発現。HR(過敏感反応)を誘導する。 また、HFrを欠失している植物やRdRp非親和性、抑制因子を持つ植物ではTMVのRNA複製を抑制する。HFmがMP非親和性の場合には、ウイルスの移行を防止する。

  • 49

    ウイルスゲノムの発現形式について答えよ。

    ポリシストロニックmRNA, 分節ゲノム, ポリプロテイン, アンビセンス鎖, サブゲノムRNA, RNAスプライシング, キャップスナッチング, 転写スリップ, 非AUG開始コドン, リーキースキャニング, インターナルイニシエーション, リボソームシャント, リイニシエーション, リードスルー, フレームシフト, 翻訳エンハンサー, 複製共役翻訳, キャップ非依存性翻訳, ポリA配列非依存性翻訳

  • 50

    キャップスナッチングについて説明せよ。

    一部のマイナス一本鎖RNAウイルス(トスポウイルス科、テヌイウイルス属)において、宿主mRNAの5’末端からキャップ構造を含むオリゴヌクレオチドを切り出し、これをプライマーとして用いてウイルスmRNAを転写する機構である。

  • 51

    転写スリップについて説明せよ。

    ゲノムDNAあるいはRNAのRNAポリメラーゼによる転写・複製の際にAあるいはT(U)に富む配列部位で転写産物にAあるいはU塩基の挿入、欠失が生じる現象をいう。これにより、転写産物のリーディングフレームも変化する。

  • 52

    非AUG開始コドンについて説明せよ。

    植物RNAウイルスゲノムでは、種ごとにAUC、AUA,AUU、GUG、CUGなどが用いられる。

  • 53

    翻訳エンハンサーについて説明せよ。

    プラス一本鎖ウイルスRNAの5’非翻訳領域に認められる翻訳を促進する配列でTMVのΩ配列、ジャガイモXウイルスのαドメインが知られている。

  • 54

    ウイルスの複製共役的翻訳について説明せよ。

    プラス一本鎖RNAウイルスで、ウイルスRNAの複製進行中にウイルスRNAの翻訳が共役して行われる。

  • 55

    キャップ非依存性翻訳とポリA非依存性翻訳について説明せよ。

    キャップ非依存性翻訳 ポティウイルス、ルテオウイルス、コモウイルス、ポレロウイルス、ソベモウイルスで見られる。 共通点として、5’末端にキャップ構造を欠くプラス一本鎖ウイルスRNAなどの翻訳様式でこれらのウイルスRNAの多くが5’末端にゲノム結合タンパクVPgを有しており、翻訳開始因子eIF4Eと結合して翻訳の開始が促される。 キャップ構造やVPgを持たないウイルスRNAやキャップ構造がウイルスmRNA5’末端から離れている場合、ORFはインターナルイニシエーション機構によって翻訳が開始される。 また、オオムギ黄化萎縮ウイルス(BYDV)では、5’末端キャップ構造、VPg、ポリA配列のいずれも持っていないため、ゲノムRNAの5’末端と3’末端にステムループ間で塩基対を形成すると共に、3’末端のステムループに存在するキャップ非依存性翻訳エレメントCITEに翻訳開始因子eIF4Gが結合して翻訳を開始する。 ポリA配列非依存性翻訳 ビルガウイルス科、ルテオウイルス、トンブスウイルス、ブロモウイルス、ティモウイルス属、ソベモウイルス属 共通点として3’末端にポリA配列を欠くプラス一本鎖RNAで見られる。 例としてアルファルファモザイクウイルス(AMV)では、外被タンパク質がウイルスRNAの3’末端ステムループ構造と翻訳開始因子eIF4Gに架橋結合することで翻訳開始が促進される。 ハクサイ黄化モザイクウイルス(TYMV)やBrome mosaic virus(BMV)では、ウイルスRNA3’末端に存在するtRNA様構造(TLS)が翻訳を促進する。

  • 56

    一本鎖DNAウイルスゲノムの発現について説明せよ。

    ジェミニウイルス・ナノウイルス ①ジェミニウイルス科ウイルスでは、遺伝子がウイルスセンス鎖、相補センス鎖の両方にコードされており、複製中間体の遺伝子間領域に存在する両鎖の各プロモーターによって、ウイルスセンス鎖のORFはゲノムの相補鎖から、相補センス鎖のORFはゲノム鎖からそれぞれ転写されるmRNAを介して翻訳される。この時、ウイルス由来の転写促進タンパク質TrAPも関与。 ②ナノウイルス科ウイルスでは、遺伝子は全て分節ゲノムのウイルスセンス鎖にコードされており、各分節ゲノムの複製中間体の相補鎖から宿主RNAポリメラーゼなどの転写機構により、一方的にmRNAが合成され、ウイルスタンパク質が翻訳される。

  • 57

    アンビセンス鎖について説明せよ。

    一分子上にプラスセンス(mRNAと同一の塩基配列)とマイナスセンス(mRNAと相補的な塩基配列)のORFが共存している一本鎖RNA鎖あるいはDNA鎖。 プラスセンスのORFは、ゲノム鎖の複製過程で生じる相補鎖から転写されるmRNAを経由して、マイナスセンスのORFはゲノム鎖から転写されるmRNAを経由してそれぞれ翻訳される。 例 一本鎖DNAウイルスのジェミニウイルス マイナス一本鎖RNAウイルスのオルトトスポウイルス属、テヌイウイルス属のウイルス。

  • 58

    二本鎖DNA逆転写ウイルスのゲノム発現について説明せよ。

    遺伝子はいずれも全長プロモーターによってマイナス鎖から転写されたmRNAを経由して発現する。 全長mRNAはウイルスゲノムの複製中間体として働くと共に、ポリシストロニックmRNAとしても働く。 ポリシストロニックの翻訳については、リボソームシャントやリイニシエーションが用いられる。カリモウイルス属とソイモウイルス属の翻訳アクチベーター遺伝子は専用プロモーター遺伝子(19SRNAプロモーター)によって独立に転写される。

  • 59

    一本鎖RNA逆転写ウイルスゲノムの発現について説明せよ。

    メタウイルス、シュードウイルス属ウイルスは、プロウイルスDNAから転写された全長mRNAが1個のORFとしてポリプロテインとして翻訳されるものと、フレームシフトによって2個のORFとして翻訳されるものがある。

  • 60

    二本鎖RNAウイルスゲノムの発現について説明せよ。

    二本鎖RNAウイルスでは、ウイルス粒子に内包されたRdRpによって単一・分節ゲノムのマイナス鎖から転写されたプラス鎖RNAがmRNAとして機能する。

  • 61

    マイナス一本鎖RNAウイルスゲノムの発現について説明せよ。

    ウイルスに内包されたRdRpによって純粋なマイナス鎖の場合は、ウイルスゲノム鎖から各ORFごとに転写されたmRNAを、アンビセンス鎖の場合は、マイナス鎖領域は、ウイルスゲノム鎖から転写されたmRNAをプラス鎖領域はゲノム複製過程の相補鎖から転写されたmRNAをそれぞれ用いて翻訳が行われる。

  • 62

    プラス一本鎖RNAウイルスゲノムの発現について説明せよ。

    ウイルスゲノム鎖をmRNAとして翻訳に利用できるが、植物体内では、ポリシストロニックな翻訳が不可能なため5’末端の最初の遺伝子が翻訳されるにすぎない。 そのため、分節ゲノムやポリプロテイン、サブゲノムRNAの転写、複製を用いる。さらに限られたゲノム情報を効率よく利用するために非AUG開始コドンの利用、リーキースキャニング、インターナルイニシエーション、リードスルー、フレームシフトなどの機構を合わせて持つウイルス種も存在。 植物ウイルスのプラス一本鎖RNAには、5’末端キャップ構造や3’末端ポリA配列を欠いているものが多いが、キャップ非依存性翻訳やポリA配列非依存性翻訳を用いて、正常なmRNAとして翻訳される。

  • 63

    ウイルス粒子の合成とその種類について

    ウイルス粒子の構築には、インビトロ構築とインビトロ再構成が挙げられる。インビトロ構築では、試験管内でウイルスのRNAあるいはDNAと外被タンパク質が自己会合してウイルス粒子が構築される。 インビトロ再構成では、本来のウイルス粒子をその構成成分に分けて再構築する。 ウイルス粒子の種類 成熟ウイルス粒子:構築が完成した感染性ウイルス粒子 未成熟ウイルス粒子:構築途上のウイルス粒子 偽ウイルス粒子:本来のゲノム核酸以外の核酸を持つ感染性のないウイルス粒子 中空粒子:ゲノム核酸を全く含まない不完全なウイルス粒子

  • 64

    細胞内移行におけるNSP(核シャントタンパク質)の働きについて説明せよ。

    NSPは一本鎖DNAウイルスがコードするタンパク質でCPあるいはMPと複合体を形成してウイルスゲノムDNAを核内における複製場所へと輸送すると共に新生ウイルスの核からの細胞質内移行、隣接細胞への移行に働く。

  • 65

    ウイルスの細胞内移行について説明せよ。

    ウイルスの細胞内移行は、脱外被を経たゲノム核酸の細胞質内・核内の特定場所への移行と、複製・増殖されたゲノム核酸あるいはウイルス粒子のプラズモデスマータ付近への2段階に分けて行われる。 細胞内輸送には、細胞内膜系における小胞輸送、細胞骨格におけるアクトミオシン系、核孔を介した核ー細胞質間輸送などの細胞内輸送機構が関わる。 この時、宿主因子の他に、ウイルス由来のRdRp、MP、CP、VPg、熱ショックタンパク質ホモログ(Hsp70h)、核シャトルタンパク質などが関与している。

  • 66

    ウイルスの細胞間移行について説明せよ。

    植物ウイルスは、ゲノム核酸あるいはウイルス粒子の形で細胞膜間に存在するプラズモデスマータを通って隣接細胞に移行する。この時、移行タンパク質がプラズモデスマータが通すことができる排除分子量限界を拡大する。 細胞間移行の様式には非細管誘導型移行と細管誘導型移行の2つが存在する。 非細管誘導型移行では、MPがゲノム核酸と結合して、プラズモデスマータまで輸送し、排除分子量限界を拡大したうえで、ゲノム核酸と結合したヌクレオタンパク質の形でプラズモデスマータを通過して隣接細胞へと移行する。 細管誘導型移行では、MPがプラズモデスマータ内のプラズモデスマータ局在タンパク質(PDLP)と結合したのち、デスモ小管(細胞間移行に使われる経路)を除去してその場所に重合・配列することで大きさ50㎚の特異的な管状構造物を形成する。ウイルスはこの管状構造物を通って、ウイルス粒子あるいはヌクレオキャプシドの形で移行する。

  • 67

    ウイルスの全身移行について説明せよ。

    第一次感染細胞からプラズモデスマータを通過して周囲の細胞に移行・増殖したウイルスは維管束組織に達すると、維管束鞘、師部柔組織、伴細胞を経て篩管に侵入し、篩管流に乗って植物体全身に移行し、全身感染を引き起こす。

  • 68

    ウイルスの緩衝作用について説明せよ。

    クロスプロテクション、交叉防御 あるウイルスに一次感染した植物で、同種・近縁のウイルスの2次感染が抑制される。 欠陥干渉DNA/RNAは親ウイルスゲノムの一部を欠損しており、欠陥干渉ウイルスはウイルスゲノムの代わりに欠陥干渉DNAあるいはRNAを持つ。 欠陥干渉ウイルスの複製は、親ウイルスに依存しつつも親ウイルスゲノムの複製に対して干渉作用を発揮する。

  • 69

    ウイルスの相乗作用について説明せよ。

    シナージズム 2種以上のウイルスの感染によって、宿主が各ウイルスが単独で感染した場合の和よりも激しい病徴を発揮する。 ウイルスが持つRNAサイレンシングサプレッサーが関与。

  • 70

    トランスコンプリメンテーションについて説明せよ。

    互いに異種のウイルスが一方のウイルスの感染・増殖・伝染を補助・相補する現象。多種のウイルスあるいは同種の欠陥ウイルスやサテライトの増殖・伝搬を補助・相補するウイルスをヘルパーウイルスという。 例 トバモウイルス属の異種ウイルス間での細胞間移行の相補 外被タンパク質を欠いたウンブラウイルス属ウイルスと移行タンパク質を欠いたエナモウイルス属ウイルス間でのウイルス粒子形成

  • 71

    トランスエンキャプテーションについて説明せよ。

    2種のウイルスの混合感染により一方のウイルスゲノムが他方のキャプシドに包まれる現象。これによって構築されたウイルスを混成ウイルス、あるいはキメラウイルスという。 ただし、2種以上の異なるウイルス由来の遺伝子で構成されたウイルスも同じくキメラウイルスという。

  • 72

    ウイルスの非生物的伝染の種類を述べよ。

    汁液伝染 ウイルス感染植物の汁液が植物の傷口から侵入して感染する。大部分の植物ウイルスが該当, 種苗伝染(種子伝染、花粉伝染、栄養繁殖による伝染、接ぎ木伝染) 花粉伝染:花粉を介した次世代宿主への伝染

  • 73

    ウイルスの虫媒伝染に関する以下の用語について説明せよ。 獲得吸汁、虫体内潜伏期間、接種吸汁、絶食効果

    獲得吸汁:ウイルス媒介能を持った昆虫が、感染植物からウイルスを獲得するための吸汁行為。, 虫体内潜伏期間:媒介虫がウイルスを獲得してから媒介能力を得るまでにかかる時間。, 接種吸汁:保毒昆虫を放し飼いにして、健全植物にウイルスを接種させる吸汁行為。, 絶食効果:アブラムシを獲得吸汁前に絶食させると、媒介効果が高くなる。

  • 74

    ベクターによるウイルスの媒介形式について説明せよ。

    非循環型・非永続性伝染 吸記されたウイルスが口針付近に停滞し、唾液と共に植物体内に侵入するが、虫体内を循環することはない。潜伏期間を必要とせずにすぐに媒介能力を得るが、数分~数時間で媒介能力を失う, 非循環型・半永続性 獲得したウイルスが前腸付近にとどまり、虫体内を循環しないため、潜伏期間を必要とせず、直ちに媒介能力を獲得する。数時間~数日間で媒介能力を失う。, 循環型・非増殖性伝染 吸汁したウイルスが後腸に到達し、その上皮細胞を通過して血体腔に放出、次いで唾腺、唾液管を通過して口針に移行することで虫体内を循環することができる。 数時間~数日間の潜伏期間を得て媒介能力を得る。虫体内では増殖しないために数日~数週間後に媒介能力を失う。, 循環型・増殖伝染性 吸汁したウイルスが中腸に感染したのち、昆虫体内で増殖、唾腺、唾液管を経て、口針に移行することで虫体内を循環し、数日~2週間の潜伏期間を経て、媒介能力を獲得する。 媒介能力は昆虫において終世保持される。

  • 75

    線虫の定義について説明せよ。

    線虫は、線形動物門に属する動物の総称。18SrDNAに基づいた分子系統的解析により、クロマドラ綱とエノプルス綱あるいはクロマドラ綱の2綱、エノプルス綱、ドリライムス綱の3綱に分けられる。

  • 76

    線虫の分離方法について説明せよ。

    羅病植物の組織から分離する方法と土壌中から分離する方法の2通りがある。 羅病植物感染組織から分離する方法では、羅病組織を水中で解剖、摩砕、酵素処理、穂推して線虫を遊出して分離する方法が用いられる。 土壌中から分離する方法としては、ベルマン法、篩分け法、2層遠心浮遊法の3つが用いられる。 ベルマン法:ガラスロートに網皿とろ紙で作ったフィルターを装着し、感染土壌を網皿の上にのせて水を流し込むことで土壌中から水中へと遊出する線虫をフィルターを通して底部で収集する。 篩分け法:土壌を水中で攪拌懸濁し、短時間静置した後、浮遊している線虫を小口径の篩で集める。 2層遠心浮遊法:遠心管中で土壌を水に懸濁したのち、比重1,2のショ糖液を管底に注入して低速遠心することにより、上層に浮遊した線虫分画を集める。

  • 77

    植物寄生線虫の寄生様式について説明せよ。

    植物寄生線虫の寄生様式としては、外部寄生性、半内部寄生性、内部寄生性の3つに分けられる。 外部寄生は、植物組織の外部から植物を加害する。半内部寄生性は、植物組織の中に頭部だけを入れて加害する。内部寄生性は植物組織の内部に寄生して加害する。

  • 78

    線虫病による病徴について説明せよ。

    地上部で病徴を区別することは難しいが、地下部では根の形態異常により識別することが可能となる。 外部寄生性、地上部のハセンチュウは、葉枯れ、萎縮、不稔、枯死 半内部寄生性、地下部のネセンチュウ、ニセフクロセンチュウでは、根の褐変、生育不良、樹勢劣化などが認められる。 内部寄生性、地下部のネグサレセンチュウ、ネモグリセンチュウでは根、塊茎、根茎の奇形、腐敗、地上部の生育不良、腰などを引き起こす。 内部寄生性、地下部のネコブセンチュウ 根の組織内に細胞質分裂を伴なわない核分裂の連続によって生じる多核の巨大細胞を誘導・形成し、これが肥大して根こぶとなる。 シストセンチュウでは、根の組織内に細胞壁の崩壊と原形質体の融合によって生じる多核細胞を誘導・形成して栄養を摂取すると共に、肥大・成熟した雌成虫が死後に植物体外で多くの卵を産む褐色でレモン型のシストに変化し、これが休眠状態の耐久器官として次代の伝染源となる。

  • 79

    線虫の昆虫伝搬について例を挙げて説明せよ。

    マツノザイセンチュウとマツノマダラカミキリ マツノザイセンチュウは、通常、マツの組織内で卵→1~4期幼虫→成虫の生活環で増殖する。 食物条件が不良になると、耐久型3期幼虫に移行する。 その組織近辺にカミキリムシが産卵することで増殖型4期幼虫に変化。幼虫はカミキリムシの蛹室周辺に集まり、カミキリが羽化した段階でその気門に侵入する。 カミキリの成虫がマツの感染樹から離脱して健全樹の新梢を後食(成熟するために食べる)と、センチュウがカミキリから離れて、カミキリの食害痕から新しいマツの体内に侵入する。 なお、カミキリの雌成虫は、センチュウによって衰弱あるいは枯死したマツに産卵する。

  • 80

    ジグザグモデルについて説明せよ。

    最初に植物が病原体のPAMPs、MAMPsを認識して、PTIを誘導。これに対して病原体が病原性エフェクターを獲得・分泌してPTIを抑制し、植物の病原体への感受性が上昇する。エフェクター中にAvr遺伝子由来のAvrタンパク質が含まれ、かつ植物がAvrタンパク質に対応するRタンパク質を持つとき、Avrタンパク質が特異的エリシターとして作用し、過敏感反応を伴うETIが誘導される。

  • 81

    植物ウイルスの病原性発現機構について説明せよ。

    宿主選択機構と病徴発現機構が存在。 宿主選択機構 初期感染細胞での増殖・複製、隣接細胞への移行、全身移行 病徴発現機構 局部感染、全身感染が挙げられる。局部感染は、ウイルスタンパク質が特異的エリシター(非病原性エフェクター)として、誘導される植物の過敏感反応、RNAサイレンシングによる全身移行の阻害が挙げられる。 一方で、全身感染はウイルスが植物の各種抵抗性反応を逃れることで初めて達成される。

  • 82

    病原性の分化とレース分化の違い

    病原性の分化とは、病原体の一つのグループ(単一種)が病原性の異なるグループ、系統に分かれることを指し、レース分化とは、植物品種に対して病原性が分化する現象をいう。

  • 83

    糸状菌の宿主特異的毒素についてその定義を答えよ。

    宿主植物に限り毒性を示す, 植物の毒素耐性と病害抵抗性が一致すること, 病源菌の毒素生産能と病原性が一致すること, 病原菌胞子の発芽時に毒素が生産、放出されること, 毒素によって宿主細胞の生理的変化が引き起こされ、病原菌の感染を可能にすること

  • 84

    タイプⅢエフェクター分泌機構とその利用例について説明せよ。

    多くのグラム陰性細菌において、hrp遺伝子群に含まれる遺伝子の多くがタイプⅢタンパク質分泌装置の構成タンパク質をコードしている。この分泌装置は、細菌の内膜と外膜を貫通して細菌細胞外へと伸長して植物細胞に到達し、植物の細胞膜を貫通するトンネル状の構造物である。 タイプⅢ型タンパク質分泌装置は、ゲノム編集において、キサントモナス族細菌が生産するTALエフェクターを利用したTALENが用いられている。 TALENはTALエフェクターのDNA結合ドメインと制限酵素FokIのヌクレアーゼドメインを融合させたものである。TALエフェクターのDNA結合ドメインにおけるRVD(繰り返し単位の12,13番目の塩基)を改変することで任意のDNA配列を認識させることができる。 FokIは二量体になるとヌクレアーゼ活性を獲得する。これにより、植物や動物のゲノム上のある部位に変異を加える場合、その部位でFokIのヌクレアーゼドメインが二量体を形成するようにその両側を指定するTALENを設計する。 切断されたDNAは細胞機構により修復されるが、その中で塩基の欠損や付加などの変異を生じる。

  • 85

    CMV(cucumber mosaic virus)について属名やタンパク質翻訳、媒介様式を網羅的に説明せよ。

    プラス一本鎖RNA、ブロモウイルス科、ククモウイルス属 29~30nmの小球状ウイルス粒子、3粒子分節ゲノム、3’末端はtRNA様構造、5’末端にキャップ構造を持つ。 アブラムシによって非永続的に伝搬。 ORF1a:サブゲノムRNA1、メチルトランスフェラーゼ、ヘリカーゼ ORF2a:サブゲノムRNA2、ポリメラーゼ ORF2b:RNAサイレンシングサプレッサー ORF3a:MP ORF3b:CP

  • 86

    カリフラワーモザイクウイルスについて属名、タンパク質翻訳戦略、媒介様式に触れながら網羅的に説明せよ。

    2本鎖DNAウイルス カリモウイルス科、カリモウイルス属 病徴として、斑紋、葉脈緑帯が生じる。 非局在で、細胞質に封入体を生じる。機械的接種は容易であり、アブラムシによって非永続的に伝搬される。35Sプロモーターは植物体内で強力に作用するため、遺伝子工学に用いられる。 α鎖に7つのORFをコードしている。 ORF1:MP ORF2,3:アブラムシによる非永続伝搬 ORF4:CP ORF5:逆転写酵素、RNaseH ORF6:トランスアクチベーター、封入体 ORF7 CaMVのゲノムDNAから、35S、19SのRNAが転写される。 35SRNAプロモーターは、ORF1~5、7を翻訳するためにリイニシエーション機構を用いる。この時、19SRNAプロモーターによって転写されたTAVが宿主の翻訳開始因子eIF4B、eIF3、60Sリボソームと相互作用。リボソームが一つのORFを翻訳し終えた後、3´末端の別のORF開始コドンを認識して再度翻訳を行う。 複製 ±DNA→+DNA→±DNA 逆転写酵素によるRNA合成を介したDNA合成を行う。 ①ウイルス粒子二本鎖DNAは核内に移行し、ギャップ構造でオーバーラップしている塩基配列が取り除かれて、完全な二本鎖DNAになる。 ②宿主のDNA依存RNAポリメラーゼⅡにより、19S、35Sの2種類のmRNAが転写される。 ③19S、35SmRNAは細胞質に移行してウイルスタンパクが翻訳される。 ④19SRNAから大量のORF6産物が翻訳され、ゲノム複製の場所であるピロプラズムが形成。 ⑤35SRNAからは逆転写酵素と4つのタンパクが翻訳。また、35SRNAはDNA合成の鋳型としても機能する。 ⑥35SRNA3’末端領域の14塩基にmet-tRNAが結合。逆転写酵素により全長のα鎖DNAが合成。 ⑦α鎖に相補的なDNA(β、γ)が合成。逆転写酵素RNaseH活性により、RNAは除去される。

  • 87

    ジャガイモXウイルスについて説明せよ。

    プラス一本鎖RNAのフレキシウイルス科、ポテックスウイルス属 細胞間移行に関わるタンパク質がトリプルジーンブロックの形をとる。 5’にキャップ構造、3’にポリA構造、サブゲノム 塊茎による栄養繁殖、摂食伝染を行う。 5つのORFを持つ。 ORF1:複製酵素成分、メチルトランスフェラーゼ、ヘリカーゼ、ポリメラーゼ ORF2,3,4:トリプルジーンブロックTGBp1,2,3 ORF5:外被タンパク質 TGBp1はRNAサイレンシングサプレッサーとして機能。TGBp2,3は同じサブゲノムから翻訳される。TGBp3はTGBp2の開始コドンのリーキースキャニングによって発現する。

  • 88

    ジャガイモYウイルス(PVY)について説明せよ。

    プラス一本鎖RNA フレキシウイルス科、ポテックスウイルス属 分節ゲノム、非局在性、細胞質に存在、風車状、束状の細胞質封入体、ポリプロテイン 病徴として、ジャガイモでえそ、漣葉、タバコでえそ、モザイクを引き起こす 塊茎による栄養繁殖、モモアカ、チューリップシグナガ、ワタアブラムシで非永続的伝搬 機械的接種が可能。 キャップ構造を持たないゲノムRNAからのポリプロテインの翻訳は、5’末端非翻訳領域の働きによって行われる。 ポリプロテインからヌクレアーゼの切断を受けて生じるタンパク質 P1プロテアーゼ、媒介介助タンパク質HCーPro、P3、6K1、管状封入体(CI)、6K2、核内封入体aゲノム結合タンパク質(Nia-VPg),NIaプロテアーゼ、核内封入体b、外被タンパク質CP(アブラムシ伝搬性) ポリプロテインから機能性タンパク質を切り出すためのプロテアーゼは、P1タンパク質、HCタンパク質、NIaタンパク質の3つが担う。

  • 89

    プラス一本鎖RNAの分類と代表的なウイルスの特徴について説明せよ。

    トンブスウイルス科 キャップ非依存的翻訳を行う。 TBSV(tomato bushy stunt virus)は4つのORFを持ち、5つのタンパク質を翻訳する。 ORF1:複製に関与。33kDaタンパク質のリードスルーによって、92KDaのタンパク質を生じる。 ORF2:外被タンパク質、サブゲノムRNAより転写 ORF3:p22 RNAサイレンシングサプレッサーとして働く、サブゲノムRNAより転写 ORF4:p19, コモウイルス科 2分節ゲノム Comovirus属のCPMV(cowpea mosaic virus)は2分節ゲノムRNA-1,2を持つ 5’末端にVPg、3’末端にポリA尾部を持つ。, ポティウイルス科 Potyvirus属に属するウイルスは5’末端にVPg、3⁷末端にポリA尾部を持つ ポリプロテイン ①p1プロテアーゼ ②媒介介助タンパク質HC-Pro(RNAサイレンシングサプレッサー) ③管状封入体CIー風車状封入体 ④核内封入体aーゲノム結合タンパクとして機能 ⑤Niaプロテアーゼ ⑥外被タンパク質CPーアブラムシによる伝搬, トバモウイルス属 5’にキャップ構造、3’にtRNA様構造 TMV(タバコモザイクウイルス) 4つのタンパク質を合成 183KDa:126KDaのリードスルーによって生じる 126KDa:ゲノム複製に関与 30KDa:移行タンパク質(サブゲノムRNAから翻訳) 17.5KDa:外被タンパク質(サブゲノムRNAから翻訳)、IRESにより直接翻訳, ルテオウイルス科 5’にVPg、3’にポリA尾部 BYDV(barley yellow mosaic virus) キャップ、ポリA非依存性翻訳 6つのORF ORF1,2:RdRp、ORF1の39KDaタンパク質のフレームシフトによってORF2の99KDaタンパク質が合成 ORF3:外被タンパク質、終止コドンのリードスルーによってORF5との融合タンパク質(72KDa)を生じる。72KDaタンパク質はアブラムシによる伝搬に関与。 ORF4:ORF3,4は同じサブゲノムから翻訳されるが、ORF4はORF3の開始コドンリーキースキャニングにより翻訳される。ORF4はウイルスの長距離移行に関与, ティモウイルス科 5’キャップ構造、3’tRNA様構造 Tymovirus属、TYMV(Turip yellow mosaic virus) 3つのORFを持つ ORF1:ORF2の開始コドンリーキースキャニングによって翻訳。翻訳に関与し、メチルトランスフェラーゼ、パパイン様プロテアーゼ、ヘリカーゼ、ポリメラーゼを翻訳する ORF2:69KDaのRNAサイレンシングサプレッサー ORF3:サブゲノムRNAより翻訳、20KDaの外被タンパク質, ブロモウイルス科 3分節ゲノム 5’キャップ構造、3’tRNA様構造 Bromoviridae属のBMV(brome mosaic virus)は4つのORFを持つ RNA1:ORF1a、メチルトランスフェラーゼ、ヘリカーゼ RNA2:ORF2、ポリメラーゼ RNA3:ORF3a移行タンパク質、ORF3b外被タンパク質, フレキシウイルス科 5’キャップ構造、3’にポリA構造 PVXジャガイモXウイルスは5つのORFを持つ ORF1は複製に関与しメチルトランスフェラーゼ、ヘリカーゼ、ポリメラーゼを合成 ORF2,3,4はトリプルジーンブロックp1、p2、p3をそれぞれコード p1はRNAサイレンシングサプレッサーとして働く p2、p3は移行タンパク質として働く。p3はp2の開始コドンリーキースキャニングにより生じる。 ORF5は外被タンパク質として働く, クロステロウイルス 5’キャップ構造、3’ヘアピン構造 BYV(beet yellows virus) 9個のORFを持つ ORF1aはパパイン様プロテアーゼ、メチルトランスフェラーゼ、ヘリカーゼをコード 1bはポリメラーゼをコード、1a終止コドン付近でフレームシフトが起こり、1aとの融合タンパク質として働く ORF2:p6膜局在、疎水性 ORF3:熱ショックタンパク質70ホモログ、Hsp70h ORF4:p69 ORF5:外被タンパク質(CPm) ORF6:外被タンパク質 ORF7:p20、全身移行 ORF8:p21、複製促進、RNAサイレンシングサプレッサー

  • 90

    ウイルスに対する植物遺伝子抵抗性について説明せよ。

    植物ウイルスへの抵抗性遺伝子として、トマトのTm-1遺伝子、各種植物のeIF4E遺伝子、ジャガイモのRx遺伝子が知られている。 ①トマトのTm-1遺伝子 Tm-1遺伝子を持つトマト品種はToMV(トマトモザイクウイルス)に対して、強い抵抗性を示す。Tm-1抵抗性打破株と野生株を比較することで、Tm-1はウイルスの複製酵素タンパク質の979番目、984番目のアミノ酸に作用することが判明。また、トマトのTm-1の対立遺伝子tm-1を導入した形質タバコにおいて、TMGMVやPMMoVに対する抵抗性が誘導された。 これらの研究より、トマトが本来持つTm-1/tm-1遺伝子座にコードされた因子とウイルス複製酵素タンパク質との相互作用がトバモウイルスの宿主特異性の決定に関わっていることが分かった。 ②各種植物のeIF4E遺伝子 eIF4EはmRNAの5’キャップ構造に直接結合する翻訳開始因子の一つである。ポティウイルスが5’末端のVPgがeIF4Eを効率よく翻訳に利用できないため、本遺伝子はポティウイルスに対する劣勢抵抗性遺伝子として知られている。 ③ジャガイモのRx遺伝子 PVXはRx遺伝子を持つジャガイモに感染することはできない。Rx抵抗性はPVXの外被タンパク質で誘導され、PVXだけでなくTMVに対しても有効である。 Rx遺伝子を導入した形質転換植物で、PVXCPを発現させると、過敏感細胞死が誘導される。

  • 91

    ウイルスに対する過敏感反応について説明せよ。

    ウイルスが植物に感染すると、感染部位に小さな病斑が形成される。これを局部病斑あるいは局部壊死斑といい、ウイルスは病斑とその周辺に閉じ込められるため、それ以上感染が広がらない(過敏感反応)。 過敏感反応は遺伝子対遺伝子説に基づき、ウイルス側の非病原性遺伝子Avrに対して抵抗性遺伝子Rを持つ植物において誘導される。

  • 92

    ウイルスが持つ代表的なRSSとその作用点を答えよ。

    ポティウイルスHC-Pro 二本鎖siRNA、miRNAに結合し、RISC複合体への取り込みを阻害する。, トムブスウイルスP19 TBSV(tomato bushy stunt virus) 分子間で二量体を形成し、21塩基(DCL4)の二本鎖siRNAに特異的に結合することで、siRNAのRISCへの取り込みを阻害する。, クロステロウイルスP20/P21/P22、P23、CP BYV(beet yellow virus)のP21は二本鎖siRNA、miRNAに結合してRISCへの取り込みを阻害する。 P20とCPはRNAサイレンシングシグナルの全身移行を阻害する。P23は全身移行の阻害はできない。 P20とP23は局所的なRNAサイレンシングを抑制できるが、CPは局所的なRNAサイレンシングを抑制できない。 BYVP21、CTV(citrus tristeza virus)P20のホモログ、P22もRNAサイレンシングを抑制する。, ダイアンソウイルスp27+p88+ウイルスRNA RCNMV(red clover necrotic mosaic virus)は二分節のプラス一本鎖RNA(RNA1、RNA2)を持つ。 RNA1には複製酵素成分のp27、p28とCPが、RNA2にはMPがコードされている。 それぞれのタンパク質でRSS活性は見られないが、RNA1あるいは複製酵素成分のp27、p88とRNA2でRNAサイレンシングが抑制される。このことから、RCNMVはRNAサイレンシング関連因子を複製複合体へと転用することで、RNAサイレンシングを抑制していると考えられる。, ククモウイルス2bとポテックスウイルスp25 CMVの2bとPVXのp25はRNAサイレンシングの全身移行を阻害する。 また、CMVの2bはAGO1と直接作用して、RNA切断活性を阻害する。

  • 93

    植物で発生した病害が特定の植物ウイルスで引き起こされることを証明するにはどうすればよいか。

    コッホの3原則に当てはめて考える。 ①病気が発生している植物体から常に決まったウイルスが単離できる。 ②単離したウイルスを健全な植物に接種すると、同じ病気が発生する。 ③接種して、発病した植物から単離したウイルスと同じものが検出分離される。

  • 94

    圃場などで発生した病害がウイルスによるものかを特定するための方法について説明せよ。

    ウイルスの診断には、ウイルスを検出して同定することが行われる。 ウイルスの検定には、生物検定、電子顕微鏡による検出、二本鎖RNAの検出が行われる。 生物検定は、指標植物に汁液接種によってウイルスを接種し、単離させる方法がある。後の検出では、PCRなどが用いられるが、未知のウイルスを検出することはできない。未知のウイルスを単離する際には、必ず生物検定を行う必要がある。 電子顕微鏡を用いる場合には、ネガティブ染色法(植物汁液や純化ウイルス標品を用いる)、超薄切片法(感染植物を固定・包理)。 棒状・ひも状のウイルスを検出する際には、植物汁液をリンタングステン酸や酢酸ウラニルにてネガティブ染色する(DIP法)が用いられる。 ゲノムとしてRNAを持つウイルスでは、ゲノム複製中間体として、二本鎖RNAを形成したりするため、感染植物から二本鎖RNAを検出し、電気泳動で識別することができる。

  • 95

    T2SSについて説明せよ。

    グラム陰性細菌で広く保存されているタンパク質分泌装置 折り畳まれたタンパク質をペリプラズムから細胞外に放出する際に用いられる。T2SSは外膜複合体、プラットフォーム、ATPアーゼ、pseudopilusの4つの構成要素からなる。 タンパク質分泌の流れとしては、ピストンモデルが提唱されており、ペリプラズムのpseudopilus内にあるminorタンパクがプラットフォーム上にtip complexを形成し、タンパク質を複合体の上に乗せる。 ATPアーゼのエネルギーを利用して複合体の下にmajorタンパク質を集積させ、外膜複合体のチャネル繊毛様構造を伸長させる。これにより、タンパクを外膜セクレチンチャネルを通過して排出させることができる。

  • 96

    RNAサイレンシングサプレッサーが導入されたかを判断するには、アグロバクテリウム法が用いられる。その理由について説明せよ。

    T-DNAが組み込まれた細胞では、オーキシンやサイトカイニンの合成が行われる一方で、オーキシンレセプターの発現を抑制するための、miRNAが合成され、RNAサイレンシングが誘導される。 ここで、RSSタンパクが組み込まれている場合は、RNAサイレンシングが誘導されず、オーキシンレセプターの抑制は起こらない。

  • 97

    マイナス一本鎖RNAウイルスの分類と特徴について説明せよ。

    ラブドウイルス科 シドラブドウイルス属LNYV、ヌクレオラブドウイルス属SYNV 全塩基配列が解析されている。 3’末端から順番にヌクレオキャプシド、複製・細胞間移行に関わるsç4、マトリックス、糖鎖スパイク、RdRp, ブンヤウイルス科 トスポウイルス属, バリコサウイルス属 レタスビッグベイン病, テヌイウイルス属 4分節ゲノム

  • 98

    マイナス一本鎖RNAウイルスの翻訳について説明せよ。

    ゲノムセンスマイナスRNAから相補的なプラス一本鎖RNAあるいはアンビセンス鎖を合成。これを鋳型として、ゲノムセンス鎖のマイナス一本鎖RNAを合成する。