問題一覧
1
「承りぬ」とて、[やがて具せられて]下りて、世間後見て、楽しく、心安く、当時までありと闘こゆ。
そのまま連れられて
2
むかし、をとこ、津の国、むばらの形、龍屋の里に[しるよしして]、いきて住みけり。
領地があって
3
帝、ののしりあはれがりたまひて、[御しほたれたまふ]。
感動して涙をお流しなされた
4
ただ母君のそのままにうつしとり給へるを見給ふには、えたへ給はず、[かきくらされ給ふ]。
悲しみにくれていらっしゃる
5
例の思ひあまり、またなぐさむ方しなければ、何となく[あくがれいでて]、院へ参り給ひぬ。
ふらりと出かけて
6
余は奥の一間にありて、句をねり詩をうめきるけるが、やがて[こうじにたれば]、ふとん引きかうでとろとろと睡らんとするほどに、
くたびれたので
7
御母の更衣なやみ給ふことありき。[おこたりもやり給はで]、夏の頃は、いとしも重うわづらはせ給へば、御里にまかでなむとし給ふ。
病気がすっかりよくおなりにもならないで
8
帝、[ののしりあはれがりたまひて]、御しほたれたまふ。
口をきわめて感動なされて
9
薬の壷に御文そへ、まるらす。ひろげてご覧じて、いといたくあはれがらせたまひて、物も[きこしめさず]。
お召し上がりにならない
10
姉のゆかり、この君の御かげを、頼もしきことに思ふ身なれば、[いなぶべき方なきに]、
ことわることもできないので
11
心もとなきほどにうちそよめきたるも、[あかぬここち]のみぞせらるる。
物足りない気持ち
12
「召し具し給へるは、故宮に[後れさせ給ひて]、無礼にわたらせ給へるを、じじゅう よすが時従が縁となりて」
先立たれてしまわれて
13
いと久しくありて、思ひかけぬほどにおはしましたりければ、[えものもきこえで]逃げて戸のうちにいりにけり
挨拶のことばも申し上げることができないで
14
勧前ことことしからで、親しき限り五六人ばかり、常にて[さぶらふ]。
お供する
15
見れば、普賢菩薩、白象に乗りて、[やうやうおはして]、坊の前に立ち 給へり。
しずしずとおいでになって
16
帳のうちよりもいださず、[いつき養ふ]。
大事に養育する
17
世にすぐれ給ひければ、内へ参らせんとて[かしづき給ふ]ところに、
大切に育てていらっしゃる
18
「臨終の折は、風火のま去る。かるが故に、朝熱して苦多かり。鬱根の人は地水まづ去るが故に、緩慢して苦しみなし」とこそはあんめれ。されば善根者と見えさせ給ふ。あはれに内・東宮の御使ぞ隙なき。日頃いみじう[しのび]させ給へる殿ばら・御前達、声も惜しませ給はず。げにいみじゃ。
我慢する
19
天智天皇、太子にておはしましける時、筑前の国に朝倉といへる所に、[しのびて]住み給ひけり。
隠れて
20
童・下使ひなどまでに、[禄どもあまたかづけ給ふ]。
祝儀の品々をたくさんお与えになる
21
返事するとおほして、[うちおどろき]たまひぬ。「夢と知りせば」と思ふに、悲しさ、言ふはかりなし。
目をさます
22
音もし給はず。「[大殿ごもりにける]か。あこきに侍り」と言ふ。
おやすみになってしまった
23
のの強盗の首領とおぼしくて、[こと提てければ]、みなその下郷にしたがひて、主従のごとくなん待り
さしずすると
24
「大かたは、かくおそろしき物に領ぜられたりける所に参りける、やまちなり」と[かこちければ]、舅、いとほしと思ひて、
恨み言を言ったところ
25
昔、愛宕の山に、久しく[行ふ]聖ありけり。
修行する
26
は、この僧にまことに具しておはしたるにやと[おぼす]程に、その後また、僧都の夢に見給ふやう、
お思いになる