問題一覧
1
A法律の留保の原則における「法律」とは
そもそも、法律の留保の原則の趣旨は、自由主義の思想に基づき、一定の行政活動について、国民の代表からなる議会の事前承認を義務付けることによって、国民の権利自由を保護するという点にある。そこで、法律の留保の原則における「法律」とは、ある行政機関が、国民の権利義務に関する一定の行政活動をするに当たって必要とされる根拠規定、すなわち根拠規範を意味すると考えられ、組織規範や規制規範はこれに当たらない。
2
A+法律の留保の原則の適用範囲
そもそも、同原則の趣旨は、国民の代表からなる議会の事前承認を義務付けることで、国民の権利自由を保護する点にある。 そうだとすれば、個人の権利を制約し義務を課す侵害行政については、自由主義的見地から法律の根拠を要求すべきである一方、国民や公衆に便益を与える給付行政については、法律で縛ることなく行政の自由度を高めておく方が、むしろ国民の利益になる。 そこで、侵害的な行政活動についてのみ法律の留保の原則が適用され、法律の根拠が必要となる。
3
A+租税法律関係 信義則
この点について、法の一般原則である信義則は、本件のような租税法律関係においても適用され得る。もっとも、租税法規に適合する課税処分について信義則の適用を認め、個別に処分を違法とすることは、行政活動は法律の定めるところにより法律に従って行われなければならないとする法律による行政の原理に抵触する。さらに、租税法律関係においては、租税法律主義(憲法84条)の下、納税者間の平等、公平が特に要請される。そのため、租税法律関係における信義則の適用については慎重でなければならない。 そこで、租税法律関係においては、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に限り、信義則の適用が認められるものと解する。 当てはめ規範意識
4
A公定力
そもそも、公定力とは、違法な行政行為であっても、当然に無効であると認められる場合を除いては、正当な取消権限を有する機関によって取り消されるまでは、何人もその効力を否定することはできないとする効力をいい、行政行為一般に認められる効力である。 そして、行政行為に公定力が認められる根拠は、行政目的の早期実現、行政上の法律関係の安定の観点から、立法者が取消訴訟という訴訟類型を特に設けた(行政事件訴訟法3条2項、3項、8条以下)ことに求めることができる。すなわち、このような立法者意思からすれば、取消訴訟以外の訴訟類型で処分の有効性を争うことは原則としてできないことになり(取消訴訟の排他的管轄)、このことの反射的な効力として、公定力が導かれる。 かかる根拠からすれば、公定力は行政行為を有効なものとして扱う効力にすぎず、行政行為を適法とする効力までは有していないと解されるから、行政行為についての主張が公定力に抵触するのは、行政行為の効力の有無を争う場面に限られると解される。
5
A+「処分」
公権力の主体たる国又は公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。 当てはめで公権力性、法的効果、紛争の成熟性を書く
6
A+違法性の承継
この点について、取消訴訟に出訴期間を定めて行政過程の早期確定を図った趣旨から、原則として違法性の承継は認められない。もっとも、国民の権利保護の観点から、違法性の承継を認めるべき場合もあり得る。 そこで、①先行行為と後行行為が連続して一つの法律効果の発生を目指す場合であって、②先行行為について訴訟で争う手続保障が十分に与えられていない場合には、例外的に違法性の承継が認められると解する。
7
A無効事由の判断基準
まず、無効確認訴訟は時機に後れた取消訴訟として機能するから、無効確認訴訟は出訴期間を経過してもなお衡平の観点から当事者の救済を認める必要がある場合に限って認めるべきである。そうだとすると、無効原因には当該行政処分に重大な瑕疵があることを要する。 次に、行政法関係の安定性や第三者の信頼保護の観点から原則として瑕疵が明白であることも必要である。しかし、処分の性質上第三者の信頼を保護する必要がない場合には明白性の要件は不要と解する。そこで、その場合は被処分者に不利益を甘受させることが著しく不当といえる事情があるかを検討する。
8
A+いかなる手続の瑕疵が行政処分の取消事由となるか(行手法違反)
この点について、行手法の目的(1条)に照らすと、行手法は同法上の適正な手続によって行政処分を受ける権利を保障していると解されるから、同法の規定する重要な手続を履践しないで行われた処分は、特段の事情のある場合を除き、処分の取消事由となると解する。
9
A+いかなる手続の瑕疵が行政処分の取消事由となるか(行手法以外の手続違反)
この点について、行政手続は、行政決定の合理性や公正さを担保する機能を有している。そこで、当該手続が規定された趣旨に鑑み、重大な手続違反といえる場合には、処分の取消事由となる。
10
A理由の提示の程度
そもそも、理由提示の趣旨は、行政庁の判断の慎重・合理性を担保し恣意を抑制するとともに、処分の理由を被処分者に知らせ不服申立て等で争う場合の便宜を与える点にある。 そこで、理由の提示の程度としては、いかなる事実関係に基づいて、いかなる法規を適用して当該処分を行なったかということが、被処分者において、その記載自体から了知し得る程度に具体的に記載されている必要があると解する。
11
A処分基準が用いられた場合の理由の提示の程度
そもそも、同条の趣旨は、処分基準の策定と相まって、行政庁の判断の慎重・合理性を担保し恣意を抑制するとともに、処分の理由を被処分者に知らせ不服申立て等で争う場合の便宜を与える点にある。 そして、同条に基づきどの程度の理由を提示するべきかは、上記趣旨に照らし、当該処分の根拠法令の規定内容、当該処分に係る処分基準の存否及び内容並び公表の有無、当該処分の性質及び内容、当該処分の内容の原因となる事実関係の内容等を総合考慮して決することとなる。
12
A理由の追完
そもそも、理由付記の趣旨は、①処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制することと、②処分の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えることにある。 そして、処分の際に理由が付記されていない以上、処分そのものの慎重・合理性を担保することができない(①)。 また、処分の相手方も処分の段階で充分に理由を知り得ないので、十分な不服理由を主張することができない(②)。 そこで、理由の追完がなされた場合、理由付記の不備という瑕疵は治癒されない。
13
A理由の差替え
そもそも、取消訴訟の訴訟物は処分の違法性一般であり、処分理由は攻撃防御方法に位置付けられるから、行政庁は訴訟物の範囲内で客観的に存在する一切の法律上・事実上の根拠を主張できるはずである。 また、理由付記の趣旨は、①処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制することと、②処分の理由を相手方に知らせて不服申立ての便宜を与えることにある。 そして、処分の際に処分理由が具体的に示されていれば、上記の趣旨は実現されているといえるから、理由の差替えは認められるが、処分の同一性を失わせるような理由の差替えは別個の処分であり、許されない。
14
A確認訴訟 確認の利益
この点について、確認の利益が認められるためには、①確認対象の適切性、②方法選択の適切性、③即時確定の利益が認められることが必要である。
15
A裁量の逸脱
この点について、重要な事実の基礎を欠くか又は社会観念上著しく妥当を欠く場合に、裁量権の逸脱・濫用になると解する。
16
A+「法律上の利益を有する者」9条1項
この点について、「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。 そして、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たる。
17
A訴えの利益
訴の利益(行政事件訴訟法(以下「行訴法」という。)9条1項括弧書)とは、当該処分を取り消す必要性のことである。そして、訴えの利益の存否は、処分が取消判決によって除去すべき法的効果を有しているか否か、処分の取消しによって回復される法的利益が存在するか否か、という観点から判断すべきである。
18
A無効確認訴訟「続く処分により損害を受けるおそれのある者」ではないから、「現在の法律関係に関する訴えによつて目的をを達することができない」場合が必要
そもそも、同要件は、「現在の法律関係に関する訴え」と無効確認訴訟のいずれによるべきかという訴訟選択についての定めであるから、同要件の解釈に当たっては、いずれの方が当該紛争の解決に有効、適切であるかという観点からの判断が要求される。 そこで、「処分・・・・の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができない」とは、当該処分の無効を前提とする民事訴訟との比較において、当該処分の効力の有無を前提とする確認訴訟の方がより直截的で適切な争訟形態である場合を含むものと解する。
19
A不作為の違法確認訴訟「相当な期間」
相当の期間の経過の有無は、その処分をなすのに通常必要とする期間を基準として判断し、通常の所要時間を経過した場合には原則的に違法となるが、かかる期間を経過したことを正当とするような特段の事情がある場合には適法となると解する。
20
A仮の義務付けの申立て「償うことのできない損害」
まず、「償うことのできない損害」(37条の5第1項)には、国民の権利利益の実効的救済の見地から、金銭賠償のみによる救済では社会通念に照らして著しく不合理な場合も含まれると解される。
21
A差止訴訟「重大な損害を生ずるおそれ」
この点について、差止訴訟は、裁判所が行政庁の判断に先立ち適法性を判断するものであるから、国民の権利利益の実効的な救済、及び司法と行政の権能の適切な均衡との調整を図る必要がある。 そこで、「重大な損害」とは、処分がされることにより生じるおそれのある損害が、処分された後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることはできるものではなく、処分される前に差止めを命じる方法によるのでなければ、救済を受けることが困難なものをいうと解する。
22
A国家賠償訴訟「違法」の判断基準
そもそも、違法性の判断基準として、行政活動の法規範適合性が重要であるので、行為に着目すべきである。 そして、行政事件訴訟と国家賠償請求訴訟とは制度趣旨を異にしており、それらの訴訟における違法性は別個に判断されると考えられる。そこで、「違法」とは、職務上尽くすべき注意義務を尽くさなかったことをいうと解する。
23
A公務員個人が被害者に対して直接責任を負うか
この点について、「国又は公共団体が」責任を負うという国賠法1条1項の文言や、公務員個人の責任を認めると公務員を萎縮させ公務の適正な執行を妨げること、国家に責任を負わせることで被害者救済という目的は達成されることからすれば、公務員個人は、その公権力の行使としての行為に関して、被害者に対して直接責任を負わないと解する。
24
A「公権力の行使」国賠法1条1項
国又は公共団体の作用のうち純粋な私経済作用と国家賠償法2条によって救済される営造物の設置又は管理作用を除くすべての作用を意味する
25
A29条3項直接請求
そもそも、同項の保障する正当補償請求権は具体的権利と解されるので、個別法に損失補償規定がない場合であっても、私人の裁判的救済の見地から、同項を直接の根拠として損失補償を請求できる。
26
A「正当な補償」
そもそも、同項の趣旨は、財産権不可侵の原則(同条1項)及び平等原則を貫徹する点にある。 そこで、特別の犠牲といえる場合には保障を要すると解する。 具体的には、①侵害行為の対象が広く一般人か特定の個人ないし団体か、②侵害行為が財産権に内在する社会的制約として受忍すべき限度内であるかそれを超えて財産権の本質的内容を侵すほど強度なものであるかを、総合的に考慮して判断すべきである。
27
A申請に対する許可の留保はいかなる場合に「違法」となるか 行手法33条違反 行政指導
そもそも、行政指導の内容は、相手方の任意の協力によってのみ実現されるべきものである(行手法32条1項参照)。 そこで、相手方が行政指導に対する不協力の意思を真摯かつ明確に表明している場合には、行政指導の継続によって相手方が受ける不利益と行政指導の目的とする公益上の必要性とを比較衡量し、行政指導に対する不協力が社会通念上正義の観念に反するものといえるような特段の事情が存在しない限り、行政指導が行われているとの理由だけで許可を留保することは、「違法」であると解する。
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A信義則
もっとも、広範な裁量が認められるとしても、裁量権行使には一定の限界が存在する。そして、裁量権行使も法の一般原則に違反することは許されない。しかしながら、法律による行政の原理から、その適用は慎重になされるべきである。 そこで、行政権の限界を画する信義則に違反することは裁量権の逸脱•濫用として違法となると考える(行訴法30条)。具体的には、公的見解の表示の有無、その信頼、表示に反する処分により不利益を被ったか、信頼に基づいて行動したことについて帰責性の有無を考慮して判断する。