問題一覧
1
安全機能及びその重要度分類
安全機能とは発電用原子炉施設の安全性を確保するために必要な機能であって、その重要度に従って分類したものが重要度分類である。 安全機能には、異常発生防止系(PS)と異常影響緩和系(MS)の2つがあり、それぞれ重要度が高いものからクラス1、クラス2、クラス3の3つに分類される。
2
冗長性、多重性、多様性、独立性
多重性 同一の機能を有し、かつ、同一の構造、動作原理その他の性質を有する二以上の系統又は機器が同一の発電用原子炉施設に存在することをいう。 多様性 同一の機能を有する二以上の系統又は機器が、想定される環境条件及び運転状態において、これらの構造、動作原理その他の性質が異なることにより、共通要因又は従属要因によって同時にその機能が損なわれないことをいう。 独立性 二以上の系統又は機器が、想定される環境条件及び運転状態において、物理的方法その他の方法によりそれぞれ互いに分離することにより、共通要因又は従属要因によって同時にその機能が損なわれないことをいう。 冗長性 系統や機器に、多重性、多様性、独立性などを持たせることにより、同一の機能を有する複数の系統や機器が同時に機能を喪失しないようにすること。
3
設計基準対象施設、重大事故等対処施設、特定重大事故等対処施設、重大事故等対処設備
設計基準対象施設 運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故の発生を防止し、又はこれらの拡大を防止するために必要となるものをいう。 重大事故等対処施設 重大事故に至るおそれがある事故又は重大事故に対処するための機能を有する施設をいう。 特定重大事故等対処施設 重大事故等対処施設のうち、故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムにより炉心の著しい損傷が発生するおそれがある場合又は炉心の著しい損傷が発生した場合において、原子炉格納容器の破損による工場等外への放射性物質の異常な水準の放出を抑制するためのものをいう。 重大事故等対処設備 重大事故等に対処するための機能を有する設備をいう。
4
受動的安全性
受動的安全性とは、システムの安全機能が外部からのエネルギーあるいは、信号、操作なしに、それ自体の有するメカニズムにより確保されていることである。
5
シビアアクシデント、アクシデントマネジメント
設計基準事象を大幅に超える事象であって、安全設計の評価上想定された手段では適切な炉心の冷却又は反応度の制御ができない状態であり、その結果、炉心の重大な損傷に至る事象をシビアアクシデントという。 また、原子炉で事故が発生した場合に、シビアアクシデントへの拡大を防止するとともに、シビアアクシデントに至った時の影響を緩和する対策を講じることをアクシデントマネジメントという。
6
原子炉冷却材圧力バウンダリ、原子炉格納容器及び原子炉格納容器バウンダリ
原子炉冷却材圧力バウンダリとは、一次冷却材を内包し、原子炉容器内と同様の圧力条件となり、かつ運転時の異常な過渡変化時及び設計基準事故時において、一次冷却系の圧力障壁となるもの。 原子炉格納容器とは、放射性物質の漏えいを防止するために設けられる容器であり、原子炉格納容器バウンダリとは、原子炉格納容器において想定される事象が発生した場合において圧力障壁及び放射性物質の漏えいの障壁となる部分をいう。
7
ATWS
原子炉の寿命中1回あるいは、それ以上起こると予想される運転時の異常な過渡変化中に、原子炉スクラムが要求したにも関わらず、原子炉安全保護系や停止系の故障により原子炉がスクラムしないといったスクラム失敗事象をATWSという。
8
多重防護と多重障壁
多重防護→深層防護に同じ。 多重障壁 放射性物質を閉じ込めることができる物理的障壁を多重化したものである。一般に、燃料ペレット、燃料被覆管、原子炉圧力容器、原子炉格納容器、原子炉建屋の順に、5重の障壁により放射性物質を閉じ込め、環境への放出リスクを低減している。
9
フィード・アンド・ブリード
事故などにより、原子炉にトラブルが発生した場合に、炉心冷却措置の一種として、高圧注入系などにより一次冷却系への注水(フィード)をしつつ、ベント弁や加圧器逃がし弁などから蒸気を逃がし(ブリード)、除熱を行うこと。
10
フールプルーフとフェイルセーフ
フールプルーフとは、人が誤って操作しても事故につながらないように設計された仕組みや構造のことであり、フェイルセーフとは、装置・システムにおいて、誤操作により障害が発生した際に、常に安全側に制御することである。
11
設計基準対象施設、安全施設、重要安全施設、工学的安全施設
設計基準対象施設とは、運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故の発生を防止し、又はこれらの拡大を防止するために必要となるもの。 安全施設とは、設計基準対象施設のうち、安全機能を有するものいう。 重要安全施設とは、安全施設のうち、安全機能の重要度が特に高い安全機能を有するものをいう。 工学的安全施設とは、発電用原子炉施設の損壊又は故障その他の異常による発電用原子炉内の燃料体の著しい損傷又は炉心の著しい損傷により多量の放射性物質の放出のおそれがある場合に、これを抑制し、又は防止するための機能を有する設計基準対象施設をいう。
12
ソースターム
原子力施設で事故・故障等が発生した場合に、施設外部に放出される可能性のある放射性物質の種類、量、物理的・化学的形態等の情報をソースタームという。
13
CAP
原子力発電所が自ら問題を特定し、これを解決する活動のことであり、是正措置プログラムとも言う。 CAPの状態報告では、不適合だけでなく、QMS活動の中で得られた気づきや改善提案、他事業者からの水平展開の情報も対象とする。 これらの状態報告を重要度に応じてスクリーニングし、是正措置等の管理を行う。
14
中央制御室外原子炉停止装置
火災等により中央制御室が使用できない場合に、中央制御室以外の場所から原子炉の運転を停止し、かつ、安全な状態に維持することができる装置。
15
フィルター付きベント設備
シビアアクシデントが発生した場合に、格納容器内の圧力や温度を下げると同時に大気中への放射性物質の放出を抑えるために、格納容器から配管で導いた気体をタンクに収められた薬液や金属フィルターを通すことで、その気体中のセシウムやヨウ素を1000分の1から10000分の1以下に減らして、大気中に放出する設備
16
DNBRとMCPR
DNBRとは核沸騰から膜沸騰へ遷移する際の熱流束である限界熱流束と局所熱流束の比であり、PWRで用いられる熱的余裕に関する指標である。 MCPRとは核沸騰から膜沸騰へ遷移する際の燃料集合体の出力である限界出力と実際の燃料集合体の出力の比のうち、最小のものをいう。BWRで用いられる熱的余裕に関する指標である。
17
工学的安全施設の役割
発電用原子炉施設の損壊又は故障その他の異常による発電用原子炉内の燃料体の著しい損傷又は炉心の著しい損傷により多量の放射性物質の放出のおそれがある場合に、これを抑制し、又は防止する。
18
工学的安全施設の具体例とその機能
①非常用炉心冷却系 蓄圧注入系、高圧注入系、低圧注入系から構成されており、LOCA等が発生した場合に、炉心に注水し、冷却を行う。 ②原子炉格納容器 LOCA等により一次冷却材が原子炉格納容器内へ漏洩した際に、圧力障壁となり、エネルギー放出に耐えるとともに、原子炉格納容器バウンダリを形成し、放射性物質の環境への放出を抑制する。 ③格納容器スプレイ系 LOCA時等において、ヨウ素除去薬剤を含むホウ酸水を原子炉格納容器内にスプレイすることにより、原子炉格納容器内圧力を低減し、原子炉格納容器内の放射性ヨウ素を除去する。
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異常発生防止系(PS)、異常影響緩和系(MS)とは
PS その機能の喪失により発電用原子炉施設を異常状態に陥れ、もって一般公衆ないし従事者に過度の放射線被ばくを及ぼすおそれのあるもの。 MS 発電用原子炉施設の異常状態において、この拡大を防止し、又はこれを速やかに収束せしめ、もって一般公衆ないし従事者に及ぼすおそれのある過度の放射線被ばくを防止し、又は緩和する機能を有するもの。
20
PS−1の定義と機能
定義 その損傷又は故障により発生する事象によって、(a)炉心の著しい損傷、又は(b)燃料の大量の破損を引き起こすおそれのある構築物、系統及び機器 機能 ・原子炉冷却材圧力バウンダリ機能 ・過剰反応度の印加防止機能 ・炉心形状の維持機能
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MS−1の定義と機能を2つ答えよ
① 定義 異常状態発生時に原子炉を緊急に停止し、残留熱を除去し、原子炉冷却材圧力バウンダリの過圧を防止し、敷地周辺公衆への過度の放射線の影響を防止する構築物、系統及び機器 機能 ・原子炉の緊急停止機能 ・未臨界維持機能 ・炉心冷却機能 ・原子炉停止後の除熱機能 ・原子炉冷却材圧力バウンダリの過圧防止機能 ・放射性物質の閉じ込め機能、放射線の遮蔽及び放出低減機能 ② 定義 安全上必須なその他の構築物、系統及び機器 機能 ・工学的安全施設及び原子炉停止系への作動信号の発生機能 ・安全上特に重要な関連機能
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当該系と関連系について説明せよ。又、LOCA時の当該系を1つ、関連系を2つ答えよ
当該系 安全機能を直接果たす構築物、系統及び機器 関連系 当該系がその機能を果たすために直接又は間接に必要とする構築物、系統及び機器 (LOCA時) 当該系:非常用炉心冷却系 関連系:起動信号を発生させる安全保護系、動力を供給する電源系
23
深層防護(多重防護)の考え方とは
深層防護とは、事象の進展に応じて安全対策が何重にもなされていることを意味している。一般に深層防護は5層からなり、ある対策が失敗した場合に備えて、次の対策を用意しておくというものである。 第1層は、異常発生防止の対策であり、第2層は発生した異常の事故への拡大防止であり、第3層は事故発生時の重大事故等への拡大の防止であり、第4層は重大事故の影響緩和であり、第5層は放射性物質の大規模な放出による放射線影響を緩和するための緊急時対応である。
24
大規模損壊の主要因を2つ 対応策を3つ答えよ
主要因 ・大規模な自然災害 ・故意による大型航空機の衝突 対応策 ・対応手順書の準備 ・対応できる体制の整備、教育及び訓練 ・大規模損壊時に資機材等が機能喪失しないように、原子炉建屋から離隔して保管する。
25
重大事故対策として深層防護の考え方に沿って考えれるるものを2つ答えよ
・格納容器の破損を防止するために、放射性物質を含んだ蒸気を大気中に放出し、格納容器の圧力を下げる必要がある。この時に大気中への放射性物質の放出を低減するために、フィルター付きベントを設置する。 ・格納容器や使用済燃料ピットに冷却水をスプレイするための設備が機能喪失した場合に備え、可搬型ポンプ車を設置する。また冷却水については、予備の貯水槽の設置、貯水池の水を利用するなど水源の多様化を図る。
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運転時の異常な過渡変化時において、当該事象の拡大を防止するための判断基準を述べよ。(設計基準対象施設が運転時の異常な過渡変化時に満たす要件)
①最小限界熱流束比又は最小限界出力比が許容限界値以上であること。 ②燃料被覆材が破損しないものであること。 ③燃料材のエンタルピーが燃料要素の許容損傷限界を超えないこと。 ④原子炉冷却材圧力バウンダリにかかる圧力が最高使用圧力の一・一倍以下となること。
27
設計基準事故時において、当該事象の拡大を防止するための判断基準を述べよ。(設計基準対象施設が満たす要件)
①炉心の著しい損傷が発生するおそれがないものであり、かつ、炉心を十分に冷却できるものであること。 ②燃料材のエンタルピーが炉心及び原子炉冷却材圧力バウンダリの健全性を維持するための制限値を超えないこと。 ③原子炉冷却材圧力バウンダリにかかる圧力が最高使用圧力の一・二倍以下となること。 ④原子炉格納容器バウンダリにかかる圧力及び原子炉格納容器バウンダリにおける温度が最高使用圧力及び最高使用温度以下となること。 ⑤設計基準対象施設が工場等周辺の公衆に放射線障害を及ぼさないものであること。
28
格納容器破損モードを全て答えよ
①雰囲気圧力・温度による静的負荷 ②高圧溶融物放出/格納容器雰囲気直接加熱 ③原子炉圧力容器外の溶融燃料ー冷却材相互作用 ④水素燃焼 ⑤格納容器直接接触 ⑥溶融炉心・コンクリート相互作用
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重大事故等対処設備には、常設型と可搬型があるが、事故が重大事故に進展する際に、より確実に機能を発揮するのはどちらか。
想定した重大事故を超える可能性があり、常設設備による対策に依存しすぎると、対処が困難になる可能性がある。可搬設備には柔軟性があり、接続時間の短縮、作業環境の分散等の選択肢を広げることができる。又、可搬設備は、常設設備よりも耐震上優れているため、より確実に機能を発揮するのは可搬設備である。
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単一故障とは
単一故障とは、単一の原因によって一つの機器又は器具が所定の安全機能を失うことであり、従属要因による多重故障を含む。
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可搬型重大事故等対処設備の分類(6種類)
①可搬型重大事故防止設備 設計基準事故対処設備の安全機能が喪失した場合において,その喪失した機能を代替することにより、重大事故の発生を防止する機能。 ②可搬型重大事故緩和設備 重大事故が発生した場合において,当該重大事故の拡大を防止し,又はその影響を緩和するための機能。 ③可搬型重大事故防止設備(設計基準拡大) 設計基準対象施設のうち,重大事故等時に機能を期待する設備であって,重大事故の発生を防止する機能。 ④可搬型重大事故緩和設備(設計基準拡大) 設計基準対象施設のうち,重大事故等時に機能を期待する設備であって,重大事故の拡大を防止し,又はその影響を緩和するための機能 ⑤可搬型重大事故等対処設備のうち防止でも緩和でもない設備 重大事故時に対処する機能を有するが、重大事故の発生防止でも緩和でもない機能。 ⑥可搬型重大事故防止設備兼可搬型重大事故緩和設備 設計基準事故対処設備の安全機能が喪失した場合において,その喪失した機能を代替することにより、重大事故の発生・拡大を防止し、又はその影響を緩和するための機能
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CV破損及び放射性物質の異常な水準での放出を防止する有効性評価はどのように進めたら良いか。
まず、想定する格納容器破損モードを選定する。次に選定したモードごとに、格納容器に対する負荷などの観点から厳しい事故シーケンスを評価事故シーケンスとして選定した上で、有効性評価を行う。
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「重大事故に至るおそれがある事故が発生した場合」として、炉心の著しい損傷に至る可能性があるとして必ず想定する事故シーケンスグループと重要事故シーケンスの例。
①2次冷却系からの除熱機能喪失 (運転時の異常な過渡変化又は設計基準事故の発生後、2次冷却系からの除熱機能が喪失し、炉心の著しい損傷に至る。 ② 全交流動力電源喪失 (全交流動力電源喪失(外部電源喪失+DG喪失)の発生後、安全機能を有する系統及び機器が機能喪失することによって、炉心の著しい損傷に至る) ③原子炉補機冷却機能喪失 (原子炉補機冷却機能喪失の発生後、RCP シール LOCA が発生する。このとき、原子炉冷却材の補給に必要な原子炉補機冷却機能の確保に失敗することによって、 炉心の著しい損傷に至る。) ④ 原子炉格納容器の除熱機能喪失 ( LOCA の発生後、原子炉格納容器の除熱機能喪失によって、原子炉格納容器が先行破損し、炉心の著しい損傷に至る。) ⑤ 原子炉停止機能喪失 (運転時の異常な過渡変化の発生後、原子炉停止機能が喪失し、炉心の著しい損傷に至る。) ⑥格納容器バイパス (蒸気発生器伝熱管破損の発生後、破損蒸気発生器の隔離に失敗することによって、原子 炉冷却材の漏えいが継続し、炉心の著しい損傷に至る。) ⑦ECCS 注水機能喪失 (大破断LOCA の発生後、ECCS 注水機能喪失によって、炉心の著しい損傷に至る。) ⑧ECCS 再循環機能喪失 (大破断LOCA の発生後、ECCS 再循環機能喪失によって、炉心の著しい損傷に至る。)
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炉心の著しい損傷を防止するために必要な措置の有効性確認における評価項目
(1) 炉心の著しい損傷が発生するおそれがないものであり、かつ、炉心を十分に冷却できるものであること。 (2) 原子炉冷却材圧力バウンダリにかかる圧力が最高使用圧力の 1.2 倍又は限界圧力を下回ること。 (3)原子炉格納容器バウンダリにかかる圧力が最高使用圧力又は限界圧力を下回ること。 (4) 原子炉格納容器バウンダリにかかる温度が最高使用温度又は限界温度を下回ること。
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設計基準事故対処設備の持つべき機能とその具体的な設備を3つ答えよ
①炉心冷却機能:非常用炉心冷却系 ②放射性物質の閉じ込め機能:原子炉格納容器 ③放射性物質の放出低減機能:格納施設雰囲気浄化系
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重大事故防止設備と重大事故緩和設備
重大事故防止設備 重大事故等対処設備のうち、重大事故に至るおそれがある事故が発生した場合であって、設計基準事故対処設備の安全機能又は使用済燃料貯蔵槽の冷却機能若しくは注水機能が喪失した場合において、その喪失した機能を代替することにより重大事故の発生を防止する機能を有する設備をいう。 重大事故緩和設備 重大事故等対処設備のうち、重大事故が発生した場合において、当該重大事故の拡大を防止し、又はその影響を緩和するための機能を有する設備をいう。
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特定重大事故等対処設備を説明せよ、また具体的な設備を2つ答えよ
特定重大事故等対処設備 重大事故等対処施設のうち、故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムにより炉心の著しい損傷が発生するおそれがある場合又は炉心の著しい損傷が発生した場合において、原子炉格納容器の破損による工場等外への放射性物質の異常な水準の放出を抑制するためのものをいう。 PWRにおける具体的な設備 ・フィルター付きベント ・緊急時制御室
38
炉心燃料の加熱と損傷による重大事故を判断する際の計測パラメータと判断基準
①炉心出口温度:350°以上 ②格納容器高レンジエリアモニタ:1×10^5mSv /h 以上
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重大事故等対処施設において、常設設備と可搬型設備の主な特徴について述べよ
常設設備は、設計する際に必ず設計上の想定を定めなければならないため、設計上の想定を超えた場合の効果が限定される可能性があり、常設設備に依存しすぎると、想定を超えた事象に対処することが困難となる可能性がある。 一方で、可搬型設備には柔軟性があり、接続時間の短縮、作業環境の分散等の選択肢を広げることができる。又、可搬型設備は、常設設備よりも耐震上優れているため、より確実に機能を発揮することができる。
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PRAを個別プラント評価における事故シーケンスグループの抽出に用いる理由
事故シーケンスグループの抽出の際に、PRAを用いるのは、起因事象、安全機能(注水設備等)及びサポート機能(電源等)の作動状態に着目して類型化した事故シーケンスグループを網羅的かつ体系的に検討できるからである。(すなわち、PRAでは原子力発電所の設計情報と運転情報を基に、起因事象を適切に洗い出すとともに、起因事象毎に安全停止状態に移行させるために必要な設備や操作を明確にした上でイベントツリーを作成することで、起因事象と安全機能の喪失の組合せを網羅的かつ体系的に検討することができる。)
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原子炉格納容器の最高使用圧力及び限界圧力について、それらの関係とその根拠を述べよ。
原子炉格納容器の最高使用圧力は、BWRが0.427MPa、PWRが0.245MPaであり、最も厳しい設計基準事象で放射性物質の閉じ込め機能が保持されるように決められている。これに対し、限界圧力は最高使用圧力の2倍で、BWRでは0.853MPa、PWRが0.490MPaに設定されており、重大事故条件でも放射性物質の閉じ込め機能が保持されるように決められている。
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イベントツリー解析
起因事象等を出発点に、事象がどのように進展して最終状態に至るかを、関連する緩和設備の作動の成否などを分岐として展開する解析手法。
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全交流電源喪失時における直流電源の役割
①原子炉の安全停止のために必要とする電気容量を一定時間確保する。 ②原子炉停止後の冷却のために必要とする電気容量を一定時間確保する。 ③原子炉格納容器の健全性の確保のために必要とする電気容量を一定時間確保する。
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代替電源設備に対して要求される事項
ⅰ)可搬型代替電源設備(電源車及びバッテリ等)を配備すること。 ⅱ)常設代替電源設備として交流電源設備を設置すること。 ⅲ)設計基準事故対処設備に対して、独立性を有し、位置的分散を図ること。
45
非常用ディーゼル発電機が利用できない全交流電源喪失(SBO)の事態に利用される代替電源設備について、設計基準事故対処設備との関係を含め、200 字程度で説明せよ。
全交流動力電源喪失に至った場合、非常用ディーゼル発電機に代わって交流動力電源として機能するための代替電源設備として、常設型の空冷式非常用ディーゼル発電機や、可搬型の電源車、バッテリー等を用意することとしている。また、これらの代替電源設備は、非常用ディーゼル発電機等の設計基準事故対処設備と、共通の要因によって同時に機能が喪失することがないよう、独立性を有し、位置的分散を図るものとすることとしている。
46
直流電源設備について、所内常設型及び可搬型の各々に求められる性能及びその理由について、300 字程度で説明せよ。
全交流動力電源、非常用直流電源設備等の機能が喪失し、また、代替電源設備も機能が喪失した場合は、蒸気を動力源とするポンプにより炉心冷却を行う設計となっている。当該ポンプを制御し、その他必要な設備を作動させるための直流電源として、24時間にわたり電気の供給が可能な、常設蓄電池式直流電源設備及び可搬型直流電源設備を用意することとしている。
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耐震重要度Sクラス、Bクラス、Cクラスの定義
Sクラス 地震により発生するおそれがある事象に対して、原子炉を停止し、炉心を冷却するために必要な機能を持つ施設、自ら放射性物質を内蔵している施設、当該施設に直接関係しておりその機能喪失により放射性物質を外部に拡散する可能性のある施設、これらの施設の機能喪失により事故に至った場合の影響を緩和し、放射線による公衆への影響を軽減するために必要な機能を持つ施設、これらの重要な安全機能を支援するために必要となる施設及び地震に伴って発生するおそれがある津波による安全機能の喪失を防止するために必要となる施設であって、その影響が大きいものをいう。 Bクラス 安全機能を有する施設のうち、機能喪失した場合の影響がSクラス施設と比べ小さい施設をいう。 Cクラス Sクラスに属する施設及びBクラスに属する施設以外の一般産業施設又は公共施設と同等の安全性が要求される施設をいう。
48
耐震Sクラス、Bクラスに属する施設を5つ答えよ
Sクラス 原子炉圧力容器、原子炉格納容器、使用済燃料ピット、制御棒クラスタ及び制御棒駆動装置、余熱除去系 Bクラス 放射性廃棄物処理設備、復水器、蒸気タービン、主蒸気系、燃料プール冷却浄化系
49
事故シーケンスと事故シーケンスグループについて
・事故シーケンス 炉心の著しい損傷に至る可能性のある事故のシナリオを、起因事象、安全設備や緩和操作の成功・失敗、物理現象の発生の有無等の組合せとして表したものである。 ・事故シーケンスグループ 著しい炉心損傷に至る事故シーケンスを、起因事象、安全機能(注水設備等)及びサポート機能(電源等)の作動状態、対策の共通点に着目して類型化したものが事故シーケンスグループである。
50
単一故障
単一の原因によって、一つの機器又は器具が所定の安全機能を失うこと(従属要因による多重故障を含む。)
51
共通要因と従属要因
・共通要因 二以上の系統又は機器に同時に影響を及ぼすことによりその機能を失わせる要因をいう。 ・従属要因 単一の原因によって確実に系統又は機器に故障を発生させることとなる要因をいう。
52
安全機能を有する系統のうち、系統の多重性又は多様性が要求される安全機能を3つ示し、各々について、系統の多重性又は多様性がどのように実装されているのか、炉型を明記して説明せよ。(運転制御ー58ー6)
・非常用炉心冷却系 複数系統の蓄圧注入系、高圧注入系、低圧注入系により構成されている。 ・安全保護系 多重性を有するチャンネル構成がされている。 ・非常用所内電源系 複数台の非常用ディーゼル発電機から構成されている。
53
原子炉制御室の環境条件として、考慮すべき点を2つ述べよ。
・運転員同士の会話が阻害されるような騒音が防止されていること。 ・照明反射による機器監視の阻害要因が排除されていること
54
非安全な操作や運転員の意図しない操作が出来ないようにする対応を2つ述べよ。
・インターロックを設ける ・取り外し可能な保護カバーを設置する。
55
運転時の異常な過渡変化とは
通常運転時に予想される機械又は器具の単一の故障若しくはその誤作動又は運転員の単一の誤操作及びこれらと類似の頻度で発生すると予想される外乱によって発生する異常な状態であって、当該状態が継続した場合には発電用原子炉の炉心又は原子炉冷却材圧力バウンダリの著しい損傷が生ずるおそれがあるものとして安全設計上想定すべきものをいう。
56
設計基準事故とは
発生頻度が運転時の異常な過渡変化より低い異常な状態であって、当該状態が発生した場合には発電用原子炉施設から多量の放射性物質が放出するおそれがあるものとして安全設計上想定すべきものをいう。